家電ECの老舗「PCボンバー」にECサイト構築戦略を聞いた
株式会社アベルネット(PCボンバー運営) 床鍋 義博さんに聞く
ECサイト構築ベンダー選びのポイントは価格よりも実績と相性
家電ECサイト「PCボンバー」で有名なアベルネット。1998年の創業から7年間は自社でサイトを構築してきた。転機となったのは2005年。ECサイトにショッピングカートを導入するため、ECサイト構築ベンダーのソフトクリエイトとの付き合いが始まったのだ。以来、今日まで良好な関係を続けているという。失敗しないECサイト構築ベンダー選びについて、アベルネットの床鍋義博経営企画部長に聞いた。

――自社でECサイトを構築することからスタート
どんな大企業も誕生したころはベンチャーだった。アベルネットもご多分にもれず、1998年に現・代表取締役の小山励基さんと現・専務取締役の渡邉健次さんの二人だけでスタートを切った。だが、よくあるベンチャー企業と違ったのは、初年度から20億円を売り上げるほどの成功を収めたことだ。
その理由は当時、1台20~30万円と高価だったPCを、ECサイト「PCボンバー」で安く販売することによって多くの顧客を獲得したため。PCブームにも乗り、破竹の勢いで売り上げを伸ばしていった。
そう聞くと、とても立派なECサイトを構築していたと思うかもしれないが、じつはそうではなかった。創業当初は、表計算ソフト「Microsoft Excel」にPCの型番と価格を入力し、それをECサイト上に掲載するだけのシンプルなものだったという。
「その当時は、PCに詳しい人向けに情報を提供していたので、型番が分かればスペックも分かってもらえました」。アベルネットの床鍋義博経営企画部長はこう話す。
――失敗だった基幹系システムのSIer選び
転機を迎えたのは2005年。長らく懸案事項に上がっていた、ECサイトにショッピングカートを導入することを決めたのだ。
それまでECサイトを自社で構築してきたが、今回はECサイト構築ベンダーの力を借りることにした。当時、売れ行きは絶好調で、10人いた受注オペレーターの電話は鳴りっぱなし。情報システム部門のスタッフも日々の業務のオペレーションだけで手いっぱいという状態だった。
「自社で構築できないことはありませんでした。しかし、もし自社でやっていたら、2年ぐらいはかかっていたでしょう」と床鍋さんは当時を振り返る。
ベンダーの選定には力を入れた。それというのも、基幹系システムを構築する際、ベンダー選びに失敗した経験があるからだ。「規模の小さいSIerの方が、小回りが利くと考えて採用しましたが、出来上がったシステムは欠陥だらけでした」(床鍋さん)。
ECサイト構築ベンダーを決めるに当たっては、同じ轍を踏まないよう7社によるコンペを行ない、各ベンダーのプレゼンテーションを聞いた。時間をかけて比較検討した結果、採用したのがソフトクリエイトだった。
「ソフトクリエイトよりも安い価格を提示したベンダーはありました。しかし、当社はソフトクリエイトの導入実績に注目し、採用を決めました。当社と同じようにECサイトを構築・運用した経験があるからです。企業規模が大きいことも採用の1つの決め手になりました。以前、基幹システムを構築した際、実績のない小規模な企業では限界があることがわかったからです」(床鍋さん)
――社風である体育会系のノリに合うSEを要望
新しいECサイトをオープンしたのは2006年12月。基幹系システムとの連動も実現した。だが、それもつかの間、基幹系システムでトラブルが続出し、ECサイトとの連動もうまくいかなくなってしまった。
「基幹系システムに不具合が多かったため、現在は3~4カ月ごとに行っている在庫の棚卸を、その当時は毎月行っていました。売り上げ伝票も手書きで行うなど、非効に業務効率が悪かったのです」と床鍋さんは苦い顔を浮かべる。
2007年12月。アベルネットはついに基幹系システムの刷新を決断する。その際に相談役となってくれたのがソフトクリエイトの倉田淳さんだった。前回の失敗を繰り返さないため、ECの基幹系システム構築の実績のあるSIerを日本中から探して欲しいと頼んだこともあった。
「ソフトクリエイトの営業担当倉田さんは、50社ほどのSIerの資料を集めてくれました。そのなかから当社の要求に応えられそうな企業を20社ほど選び、各社のプレゼンテーションを受けて信頼の置ける規模の大きい企業を選ぶことができました」と床鍋さんは笑みを見せる。
2008年5月に構築プロジェクトをスタートし、新しい基幹系システムが稼働したのは2009年1月。それと同時にECサイトも刷新した。
ECサイトを刷新するに当たり、ソフトクリエイト以外のベンダーを検討に上げることはなかったと床鍋さんは言う。
「なにしろ不満がまったくありませんでした。ソフトクリエイトが構築したECサイトの機能を凌駕するようなベンダーはなかったし、同じ機能で価格がめっぽう安いというベンダーもなかった。ソフトクリエイトの提供してくれるサービスに十分満足していたので、コンペなどは行わず、引き続きパートナーとなってくれることをお願いしました」(床鍋さん)
ECサイト刷新に当たり、アベルネットがソフトクリエイトに依頼したのは、同社の気風に合うSEを担当に付けて欲しいということ。「具体的には当社の社風である体育会系のノリに合う人を担当SEにして欲しいとお願いしました」(床鍋さん)。
企業同士の付き合いとはいえ、やはり重要なのは担当者同士の相性。パートナーシップとはそういうものだ。
「その点ソフトクリエイトは、1を言えば10わかってくれるSEを担当に付けてくれました。パートナーとして良好な関係を長く続けていくにはこういうことが重要で、単純に価格が安いという理由でベンダーを選ぶと、失敗することが多いでしょう」(床鍋さん)
ECサイトの刷新では、顧客にとってより使いやすいインターフェースにするなどの改良を加えた。また、基幹系システムとECサイトの連動もスムーズに行えるようにもなり、2008年から始まったプロジェクトは、アベルネットにとって大きなメリットをもたらすものとなった。
――リアル店舗の運営で顧客満足度を上げる
家電ECサイトの運営会社としては珍しく、アベルネットはリアル店舗も運営している。その理由を床鍋さんは「顧客満足度を高めるため」と説明する。
「リアル店舗は人件費などのコストがかかり、利益面からみればプラスになるとは言い難いです。しかし、実際にお客様に応対することで得られるものは少なくありません。リアル店舗でお客様に接することで、どうすればお客様に喜んでいただけるのか、なぜお客様からお叱りを受けたのかといったことが実体験できるからです」(床鍋さん)
もちろん、店舗のスタッフとECサイトのスタッフは分業化されている。だが、リアル店舗の中にオペレーティングルームがあるため、オペレーターは店舗の様子をよく見ながら電話に応対している。それによって丁寧な接客を心掛けるようになり、顧客満足度を高められるというわけだ。
「利益だけを追うならECサイトだけやっていた方がいいでしょう。しかし当社は、より多くのお客様に満足してもらいたいと考えており、そのためにリアル店舗は不可欠なのです」(床鍋さん)
また、リアル店舗を持つことで、ECサイトの顧客に安心感を与えられる効果もあるという。
「特に地方のお客様にとって、ECサイトを運営する企業の所在地がマンションの1室では不安になるでしょう。その点、当社はリアル店舗を持っているので、逃げも隠れもしませんよというメッセージを送ることができます」と床鍋さんは語る。
EC事業者にとっての発注ナビとは

――企業名を出した事例紹介がサイト利用者の参考に
家電EC業界において、歴戦の勇士とも言える床鍋さんは発注ナビをどう評価するのか。とても気になるところだ。オープンしてからまだ日の浅いサービスだけに、厳しい言葉が投げかけられるかと思いきや、最初に発せられたのは「これは見やすい」というほめ言葉だった。
「インターフェースが工夫されていて、直感的に操作できます。しかも予算、商材、特徴といったカテゴリーには、それぞれ具体的な検索項目が設定されており使いやすい。また、企業名を出して事例が紹介されているので、サイト利用者にとってとても参考になります。技術者の顔が見えるのもいい。サイト利用者に親近感を感じさせる工夫が施されていますね」(床鍋さん)
創業者二人からスタートしたアベルネットは今、年商250億円を叩き出すまでに成長した。だが、それで満足することはない。「将来的には海外展開の可能性もある」と床鍋さんは話す。海の向こうの人たちが、PCボンバーで買い物をする日が来るのはそう遠くないに違いない。
出典:東京IT新聞162号
