発注ナビ注目のシステム開発会社を紹介するインタビューコラム。今回は、世界中のアーティストに仕事を依頼したり、アーティスト同士がコラボレーションしたりできるプラットフォーム「YAYAY!(イエイイエイ)」を提供する特定非営利活動法人 日本アーティスト協会の代表理事 宇田川哲男氏と、システムを開発したカスタメディアの代表取締役 宮﨑耕史氏、専務取締役COO 浦坂 周氏にお話を伺いました。
アーティストが社会に認められるポジションとは
―― 宇田川さんは2015年に、日本アーティスト協会を立ち上げ、アーティストの活動の支援に取り組んでいます。まずは、日本アーティスト協会を立ち上げた経緯から聞かせてください。
日本アーティスト協会 宇田川氏 私自身、もともとボーカリストで、ちょうど10年前の2008年にR&B(リズム・アンド・ブルース)のバンドでメジャーデビューをしました。デビュー前は、例えば、テレビのオーディション番組で優勝するなど、業界では知られた存在でしたが、いざデビューしてみると、「売れ続ける」ことの難しさが、やはりありました。結果的に、メジャー契約が単発で終わってしまったのです。
ただ、それが自分のそれまでの活動を見直す、良い契機となり、アーティストとして何ができるだろうかと改めて考えるようになったのです。当時は、考えながらも、とにかく行動を起こそうと、全国のショッピングモール、お祭りやイベントの主催者、地方自治体の行事担当者などに片っ端から電話をしました。
いくつかお仕事をいただいていくうちに、自分の中では、「地に足が着いた」仕事をさせていただけているという感覚が生まれました。そして、「アーティストの仕事とは、何もメジャーになって活躍するだけじゃなく、こういった地道な活動を継続するほうが理解してもらえるのではないか」と思ったのです。
しかも、我々の活動を見ていただいたある自治体の関係者の方から、ある県で開催される全国規模イベントのサポートソングをやってみないかというお話もいただきました。これは、私の中で大きな契機になりました。「アーティストが社会に認められるポジションを築くのは、メジャーデビュー以外にもさまざまな方法があるはずだ」と思えるようになったのです。その方法のスタンダードを作りたい、それによってアーティストを支援したいと考えNPO法人を立ち上げました。
世界中のアーティストに仕事を依頼したり
アーティスト同士でコラボできるプラットフォーム
―― それが日本アーティスト協会ですね。
宇田川氏 日本アーティスト協会は、「アーティストの力を社会に生かす参加型音楽団体」です。ミッションとして、アーティストの社会的地位の向上と、アーティストがもっと身近に必要とされる文化創りを掲げています。
アーティストは一芸に秀でているだけではなく、「総合的な能力」を備えています。例えば、ミュージシャンでも、歌詞も楽曲のタイトルも、ジャケットのイメージも考えるので、例えば、文章やコピーライティング、デザイン、写真などの知識もスキルも備えています。ステージに立つことが多いミュージシャンであれば、衣装のコーディネート、メイクなどについても、「演じる側の目線」から独特のノウハウやスキルを持っています。
このように、アーティストは、総合的な能力を備えている人材が多く、それらを含めて、アーティストが「できること」の認知度を高めていくことで、アーティストの力を社会に活用できます。アーティストのスキルを細分化して、そういったスキルを持った人材を探している企業や個人、アーティスト仲間と、アーティストをマッチングできる仕組みを構築して支援していきたいと考えました。
―― その取り組みのひとつとして、日本アーティストでは「YAYAY!(イエイイエイ)」を提供しているのですね。
宇田川氏 「YAYAY!」は、世界中のアーティスト、表現者と直接にやりとりして仕事を依頼したり、アーティスト同士がコラボレーションしたりできるプラットフォームです。どなたでも無料で利用できます。
デザイナーやフォトグラファーなど、あるスキルに特化した人材のマッチングサービスはいくつかありますが、「YAYAY!」は、アーティスト同士がコラボレーションすることで、作品の生産性を高めることができることが特色です。例えば、あるバンドが楽曲を収録するのに、サポートのギタリストが必要といった場合に、バンドがサポートギタリストを探して、仕事として依頼できるのです。企業や団体、自治体などが、アーティストを探して仕事を依頼できるだけではなく、アーティスト同士でも仕事を依頼できるプラットフォームでもあるのです。
「カスタメディアMASE」をベースにシステム開発
―― この仕組みはカスタメディアの「カスタメディアMASE」をベースにしています。どういった経緯でカスタメディアのシステムを採用したのですか?
宇田川氏 たしか、2011年頃にリリースされた「おんがく遊園地」というサービスが、とても面白くて記憶に残っていました。「YAYAY!」のシステム構築を考えていたとき、「あのサービスを開発したところに依頼できたらいいな」と考えて、いろいろと調べていくうちにカスタメディアにたどり着きました(笑)。そのときは、土曜日でしたが、電話を入れてみたら、なんとすぐに返信が来たのです。そのレスの早さから、カスタメディアに依頼したいなと決めました。じつは、そのときに5つくらいのシステム開発会社に相談して、3社くらいから話しを聞いていました。
カスタメディア 浦坂氏 ちょうど当社にとっても良いタイミングでした。シェアリングサービス、マッチングサービスのプラットフォームにさらに注力していこうと舵を切った頃で、どんどん導入実績、事例を増やしていきたいところだったのです。
宇田川さんからアーティストの仕事についてのお話を伺い、日本アーティスト協会を立ち上げた経緯をお聞きし、その理念には強く共感するところがありました。我々からすれば、アーティストといえば、その世界の「表現者」でしょう。ところが、実際には、世に知られたアーティストばかりではなく、それ以外のアーティストの方々がたくさんいること、表現するだけではなく、そのアーティストの力をもっと、社会のさまざまな課題解決に活用できる可能性があることなどを、宇田川さんからの話を聞いて、改めて考えるようになったのです。
当社のシステムや技術が、アーティストと社会を繋げることに役立つなら、これは非常に興味深いプロジェクトになるなと思いました。
気づいていないことに「気づいてもらう」ことで
社会の課題を解決する
カスタメディア 宮﨑氏 当社のビジネスの根幹には、「今、気づかれていないもの」に「気づいてもらう」ことがあります。そのことこそが、社会課題の解決になると考えています。例えば、地方にいくと若い世代の仕事がない、だから、若い世代が大都市圏に集中してしまい、人口も減ってしまう。こうした社会の課題に対し、例えばクラウドソーシングなどのサービスを活用すれば、遠隔地にいてもできる仕事が多くあります。ところが、地方の人では、そういったことができることを知らないケースがまだまだあります。
知らないところに、まずは気づいていただいて、さらに自分がちょっと頑張ると、仕事が得られることにも気づいていただきたい。それが社会を変える力になっていくと考えています。その考えは、アーティストがじつは身近な存在で、その力をさまざまに社会に生かせることを「気がついていない人」に「気づいてもらう」というところで、日本アーティスト協会が考えるサービスとがマッチしていたのです。
浦坂氏 当社もスタートアップやベンチャーの方々とコラボレーションをさせていただくことで、刺激もいただけるし、素晴らしアイデアから新たな「気づき」を得ることが多くあります。スタートアップの方々には、発想は素晴らしく、イノベーションを起こす可能性があっても資金がない、など、「何かがない」ケースが多いと感じています。
今回の日本アーティスト協会との取り組みでは、宇田川さんの素晴らしい理念やアイデアを、具体的にシステムに落とし込んで、具現化するところで、コアボレーションをさせていただき、少しでもお役にたてればと考えています。
宇田川氏 ありがとうございます。私が、この「YAYAY!」をなぜ、こんなに急いで、リリースし広く利用してもらいたいと思ったかというと、「日本アーティスト協会の基幹とは何か」と尋ねられたときに、「これです」といえるようなサービスがなかったのです。その意味では、スピード感を持って取り組んでいいただけるパートナーが必要でした。私たち日本アーティスト協会は、「YAYAY!というサービスを提供するプラットフォーマーです」と、きちんと言い切れるようにしたかったのです。その点では、カスタメディアには、我々と同じ気持ちを共有していただき、スピード感を持って取り組んでいただきました。
今後はアーティストの「リカレント教育」のサポートも
宇田川氏 今後は、YAYAY!を中心に、もっと具体的に「アーティストの副業兼業サポート」を打ち出していきたいと考えています。アーティストの力を社会に生かすという理念とあわせて、さらに、「社会で通用するアーティストを育てる」ということも考え始めています。海外では、アーティストが自分自身で企画書を作成して、持ち込んで、予算交渉をして音楽を作るといった取り組みがスタンダードです。つまり、例えばミュージシャンでも非音楽のスキルが非常に強く求められます。
「自分の才能さえあればいい」と考えるだけではプロとしてやっていけないことを、日本のアーティストたちは、まだ、気がついていないと感じています。どうしても、プロダクションに所属すれば仕事は取ってきてもらえると思いがちです。でも、そうはならないケースが圧倒的に多い。
浦坂氏 多くの人が「気がついていない」ことに「気づいてもらう」ことは、私たちが大切にしている考え方です。
宇田川氏 アーティストのセカンドキャリアも視野に、例えば企画立案のノウハウや、プレゼンの仕方、売り込み方など、アーティストとして特化した才能の部分だけでなく、それ以外のスキルを磨くことを支援する、多分、日本で初めてであろうシステムの構築を今、考えています。アーティストの育成と、アーティストのキャリアパスを考えた教育なども視野に入れています。社会一般では、35歳を超えたら、リカレント教育が必要だと言われていますが、アーティストにもリカレント教育が必要かもしれません。そこでも、カスタメディアとコラボレーションできるように、と考えています。
宮﨑氏 ぜひ、よろしくお願いします。日本アーティスト協会の理念や、今後の目指す方向性などを宇田川さんからじっくり伺うことができて、とても楽しみになりました。ワクワクします。今後もシステム開発でサポートをさせていただければと思います。本日はありがとうございました。
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