近年、都市部で見かけるようになった無人ゴルフスタジオ。その運営・管理システムを開発し、自社でゴルフスタジオを運営しているシステム開発会社がある。東京は日本橋に本社を構えるキャリオット株式会社だ。
システム開発会社が自らゴルフスタジオを運営することで、システムの使いやすさが大幅に向上し、スタジオ利用客からの評判も上々ということから、同システムを外部にも提供していくという。
なぜ、システム開発会社がゴルフスタジオ運営を手掛けるようになったのか、運営・管理システムのどのような部分が高く評価されているのかについて、同社の代表取締役である松本 茂樹氏に詳しくお話を伺いました。
自社で運営・管理システムを開発し、自ら運営する無人ゴルフスタジオ運営で得たノウハウをフィードバック。
―― 御社で無人ゴルフスタジオを運営され、その運営・管理システムも開発されているとのことですが、そもそも無人ゴルフスタジオとはどのようなものでしょうか。
キャリオット 松本氏: 都内では、この1~2年ほどで無人ゴルフスタジオの運営が流行ってきました。当社も2年ほど前から都内に「日本橋ゴルフ倶楽部」という無人ゴルフスタジオを開設し運営しています。
無人ゴルフスタジオは屋内ゴルフシミュレータによりレッスンをしたりバーチャルなラウンドを回って楽しんだりするための施設で、個室で仕切られたスペースにゴルフシミュレータが設置されており、会員はネット経由で予約し、スマホで個室のロックを解錠し、利用することができるというものです。
当社が運営する「日本橋ゴルフ倶楽部」には米LPGA公認のGOLFZONのシミュレータを設置しており、セント・アンドリュース、ペブルビーチ、川奈ホテルGCなど世界の約240コースがプレーでき、ヘッドスピード、バックスピン量、フェース角度、飛距離やスイングフォームなども確認できます。
当社では会員管理、予約管理、個室のロック・アンロックなどゴルフシミュレータ以外の部分をすべて自社開発しました。
―― なぜ、無人ゴルフスタジオの運営を始めたのですか?
松本氏: 当社はもともとソフトウェア開発事業を20年以上行い、数多くのWebシステムやスマホアプリなどを開発しています。コロナ禍になり、世の中の人たちの外出が減ったときに、自社のソフトウェア技術を使って、何か新しいことができないかと模索しました。外出先でも安全で安心して健康のために体を動かすことができるものは何かと考えました。
―― コロナがまん延していた時期は“三密”の状態やチーム競技はクラスタ感染が発生してしまうかもしれないと、一人でできるランニングやウォーキングが流行りましたが、そうした世の中のニーズをキャッチアップしたということですね。
松本氏: はい。そうして24時間運営のゴルフスタジオにたどり着き、場所を確保しゴルフシミュレータを導入。会員用システム、運営管理システムなどを独自で開発しました。そこから何度かシステムのアップデートを行っていったのですが、この管理・運営システムが施設を利用されるお客様から、他の施設のものよりも使いやすい、という評価を数多くいただきました。
利用客からの使いやすさ、分かりやすさが好評につき、自社システムを外部に拡販へ。
―― ゴルフスタジオを利用するお客様からは、具体的にどのような声があったのでしょうか。
松本氏: 会員登録や予約時の操作や手順が分かりやすく、マニュアルを見なくとも操作できると。また予約状況なども確認しやすいという声が多かったですね。そうした声をもとに、もしかすると同様の事業を運営する方々にも当社のシステムの需要があるのではないかと思い至り、拡販も視野に入れつつ改良を重ねています。
―― インターフェイスの良さが評価されたということでしょうか。
松本氏: それだけではありません。セキュリティについても評価のお声をいただいております。無人で運営する施設ということで、施錠・解錠も確実に行え、かつ使い勝手についてもシステムのUIに統合されていることが望ましいでしょう。他社運営のスタジオでは、施錠・解錠は予約システムと独立した別のものを採用していて、利用に際して煩わしさが感じられるケースや、実は誰でも空けられてしまったり、時間外に空けられてしまったりするというケースがあるということも聞きおよびました。
さらに、クレジットカードの登録や変更といった決済手続きは、他社のシステムのものをそのまま利用していて、一元化されていないというケースもあるそうです。当社も、決済処理そのものはGMOさんのサービスを利用していますが、当社では、会員が各自のマイページを作り、スマホでマイページにアクセスし、そこから予約、開錠という普段の利用はもちろん、カードの登録変更、コース変更、退会まで、すべての操作が一元的に行えるようにしています。
また、店側の運営・管理についても、会員の利用状況把握、利用率の集計、運営側からの予約変更なども行えるようにしています。
システム導入だけでなく実運営ノウハウもアドバイス可能!
―― 利用されるお客様や管理・運営といった現場からの声がすぐにフィードバックできるというのは大きな強みですね。
松本氏: 自分たちで作っているので、細かな改善、お客様向けのカスタマイズも自在です。さらに、2年の間、自分たちの手で運営してきたこともあり、でいろいろなトラブルを経験していますから、起きうるトラブルに対しては対策していますし、システムを超えた部分の対処についても、運営ノウハウとして社内に蓄積しています。
―― そうすると、運営上のアドバイスも可能で、コンサル的なこともできるのではないでしょうか。
松本氏: フランチャイズ経営で加盟店を増やしているところも多いですが、売上の何パーセントというロイヤリティを払う必要があります。しかし当社はそうではありません。あくまでも自社で開発したシステムを販売していきたいと考えています。一般的なシステムの販売と、導入後の保守というカタチなので、一概には言うことはできませんが、フランチャイジーとして運営するのに比べると、経費はおそらく1/3以下に納まるのではないでしょうか。
当社は、運用・管理システムさえ導入・利用していただけたらと考えておりますが、もちろんご要望があれば、システム以外の部分についても当社の知る限りご相談に乗らせていただきます。
新規にゴルフスタジオ運営を検討するお客様はもちろん、フィットネスのジムなど、その他の施設にも利用できる。その他の業務システムとの連携・連動もお任せください。
―― 導入を希望されるお客様からの反響はいかがでしょうか。
松本氏: システムは2023年にリリースし、現在、お問い合わせをいただいているお客様が3件、もう少し話が進んでいて、具体的に物件をお探し中のお客様が2件という状況です。
―― 物件探しは時間がかかるのでしょうか。
松本氏: ビジネスを始めるに当たっては場所探しが一番難しいと言えるでしょう。実際に当社にご相談をいただいているお客様も、場所が見つからないということで、動き出していないケースがあります。クラブを振り上げますから、天井高が3.5メートル必要なこと、運営形態によりますが、24時間利用者が出入りできるという2つを満たす物件が、なかなか見つからないことが多いようです。
―― 24時間利用は必須なのでしょうか。
松本氏: 無人施設として運営できるため24時間営業がしやすいという面があるでしょう。当社は事務所とスタジオが同じフロアにあります。周辺はオフィス街のようで、実は住んでいる人のほうが多いため、日中や休日の利用も多く、また役職によっては仕事中にちょっと抜け出して昼間の時間帯に利用するという方もいるようです。夜間は帰宅した人たち、深夜から早朝は飲食業にお勤めの人が仕事明けに利用しているケースもあります。立地にもよるでしょうが、すべての時間帯に利用者が見込めます。
―― お問い合わせくださるのはどういったお客様でしょうか。
松本氏: 新規参入のケースが多いですね。まったくの異業種ながら、社長さんがゴルフ好きで何か新しいビジネスを始めたいというケースや、ゴルフレッスンをメインにしている企業が方向性を変え、人件費を抑えたビジネス展開をしていこうというケースなどがあります。利用者側も、トレーナーは不要だが練習場所が欲しいという要望が増えているようです。また、季節や天候に関係なくラウンドを楽しみたいというニーズもあります。
また、当社が事例としているのはゴルフスタジオですが、このシステムが使えるのはゴルフスタジオだけに限りません。最近ではフィットネスやトレーニングのためのジムもトレーナーが常駐しないタイプのものが登場していますし、ほかにもいろいろなビジネスの可能性があるのではないでしょうか。
―― 新規にビジネスを立ち上げる場合には、その他の業務システムも必要になりますよね。
松本氏: 当社はこれまでにも、さまざまなシステムの開発を手掛けてきました。各種の業務システム開発についてもご用命くださればと思います。もちろん、スタジオ運用・管理システムとその他の業務システム間の連携や連動についてもお任せください。ご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。