株式会社DBPowersは、北海道を拠点にClaris FileMaker(以下「FileMaker」)を活用したシステム開発を中心に事業を展開しています。北海道という地域特性上、10年以上前からリモートワークの環境を整え、北海道内はもちろん全国のお客様に対応。北海道内の大学でFileMakerを活用した仕組みで課題解決に取り組むFileMakerキャンパスプログラムを実施したり、FileMakerの世界開発者会議に登壇者として参加したりと、自社の取り組みを道内外や世界に発信することにも力を注いでいます。同社の代表取締役の有賀 啓之様に、同社がシステム開発において大切にしている「4つのR」と、FileMakerを活用したシステム開発のメリットについて伺いました。
憧れの北海道で、中堅・中小から小規模事業者を対象にカスタムメイドのシステムを
―― 事業の基盤として北海道を選ばれたことについて、特別な事情や理由はあるのですか?
DBPowers 有賀氏 当社は、2000年に起業したときから北海道を拠点にしつつも、道外と世界に向けて発信するスタイルで事業を展開してきました。北海道を選んだ理由のひとつには、私の「憧れの場所」だったことがあります。テレビドラマの影響もあり小さい頃からアメリカに憧れていて、「広いところで生活したい」と考えていました。国内で広いところといえば北海道、私は東京で生まれて長野で育ちましたが、そんな憧れから北海道の大学に進学し、そこから縁が始まりました。
起業した当初は個人事業主で、「ITのなんでも屋」的に、ホームページ制作や役所のITコンサルタントとしての仕事などをしてまいりました。創業以前からデータベースソフトであるFileMakerを使ったシステム開発を手がけていたことあって、2006年にFileMaker開発元のClarisのビジネスアライアンスに参加いたしました。それが、最初の転機になりましたね。事業の方向性を「FileMakerを活用したシステム構築」に定めて、会社も法人化しました。
データベースは、どんなシステムを構築するときにも必要となる重要な構成要素です。顧客管理も受発注管理も売上げの管理も、企業の業務においては様々な情報を蓄積して必要に応じて抽出・分析できるようにする仕組みが不可欠です。その根幹を担うのがデータベースですが、当時の北海道で私が関われる範囲では、まだ、「データベースをきちんと構築しているのは大手企業だけ」といった状況のように見えました。つまり、大手企業が比較的大きなシステム開発会社にデータベースシステムの構築を依頼するといったパターンです。
そうした状況でしたので、当社は、中堅・中小から小規模事業主向けを対象に、規模に応じて使いやすくカスタムメイドしたデータベースを提供しようと考えました。ニーズがあるかどうかは手探りのところもありましたが、敢えてリスクを取ってその市場を開拓する道を選択したのです。そして、少しずつ領域を広げていき、現在では「北海道でFileMakerといえばDBPowers」とお客様に認知していただけるようになったと自負しております。
「役割分担」「敬意」「責任」「ルール」の「4つのR」がなければシステム開発は成功しない
―― 御社が開発のポリシーとして掲げられている「4つのR」は、FileMakerを活用したシステム開発に舵を切っていく中で生まれてきた考え方ですか。
有賀氏 「4つのR」とは、「Role(分担役割)」、「 Respect(敬意)」、「Responsibility(責任)」、「Rule(ルール)」のことで、当社がシステム開発を進めるにあたって大切にしている考えです。システム開発においては、そのシステムがどういったビジネス(業務)で、どのように使われるのかを明確にすることが必要です。その際、お客様は自社のビジネス(業務)においてプロフェッショナルであり、ビジネスのお困りごと、それをシステムでどう改善・解決したいのかについて、プロとしてのお考えをお持ちです。一方、当社は、システム開発のプロとして、お客様のお困りごとをシステムで改善・解決します。つまり、お客様は「ビジネスにおけるプロ」、当社は「システム開発のプロ」という役割分担が重要になるのです。これが最初のR、「Role(分担役割)」です。
この役割分担に基づき、お互いに敬意(Respect)を払い、責任(Responsibility)を持って自分の役割を全うする、そして、お互いに「こうした考え方をもとにシステム開発を一緒に進めていきましょう」とルール化する。これが4つめのR、「Rule(ルール)」です。
この「4つのR」が、システム開発を成功に導くうえで重要になると考えるに至ったのは、当社が医療系システム開発のプロジェクトに参画したことがきっかけでした。日本の医療の現場では、電子カルテシステムなど大規模なシステムが導入されている一方で、大がかりな仕掛けのサブシステムを医師が自らFileMakerを使って作りあげることは珍しいことではありません。
意外に思われるかもしれませんが、FileMakerでのシステム開発なら「玄人はだし」の医師も少なくなく、その医師たちは詳しいだけにシステムの細部に至るまで独自のお考えを持つこともあります。当社が医療系システムの開発プロジェクトに参画したときも、そうした状況に近いものがありました。
ところが、あるプロジェクトでは中心の医師の方が、FileMakerにすごく詳しいのに、当社が開発するシステムの構築手法については、任せていただけた。「医師は医療のプロ、DBPowersはシステム開発のプロ。全て任せるから責任を持って、素晴らしい医療システムを作って欲しい」とおっしゃったのです。そのときに「役割分担」、「敬意」、「責任」という言葉が私の頭に非常に強く印象づけられました。そして、「3つのR」をシステム開発の基本コンセプトに掲げ、さらに、それをルール化して徹底しようという意味を込めて「4つのR」としたのです。
その医師は「プロに任せる」と敬意を払って私達に接してくださったのです。プロとしての仕事を期待されたからには、こちらとしても手は抜かずに頑張ります。結果、最高のシステムとなったと自負しています。
「4つのR」は、システム開発に限らず、どんな仕事でもチームで仕事を進めたり、パートナー企業や取引先の企業と一緒にコラボレーションでプロジェクトを進めたりする場合に有効な考え方だと思っています。
―― 「4つのR」は、御社のシステム開発におけるポリシーですね。どんなタイミングでお客様にお伝えしているのですか。
有賀氏 例えば、当社が最終プレゼンをするときや、大きな開発プロジェクトではキックオフのときなどに、当社のポリシーとして「4つのR」を必ず話しています。お伝えしたいことは、当社は「お客様の注文を『ただやるだけの請負い業者』ではない」ということ。誤解を招きかねない表現ですが、もしお客様が「ごちゃごちゃ言わずに、言われたとおりに作ればいいんだよ」くらいに思われているのなら、そういったお客様とは仕事はしない、「発注してくださらなくてけっこうです」というくらいの気構えを伝えます(笑)。
「お客様との間で役割分担、お互いに敬意を払う気持ち、責任感、それらを大切にしましょうというルールがなければ、システム開発が成功するわけはないですよね。」 と、そのことも、もちろん同時に強調してお伝えします。
お客様においては経営層やそれに近い役職の方々に「4つのR」をご理解いただいていると感じています。このことは、当社にとってもとてもありがたく、嬉しく、モチベーションが上がりますね。
もちろん、お客様だけではなく、社内のスタッフにも「4つのR」の大切さをことあるごとに話しています。ただ、じつは、私自身が「社長、4つのRをお忘れですか」とたしなめられたことがあるんです(笑)。あるプロジェクトで、お客様の担当者の傍若無人ぶりに、カッとなってしまったことがありました。
そのとき、当社のスタッフが「あそこで怒ってしまったのは、やはり、ビジネスパートナーとして、相手への敬意が欠けていたと思います」と指摘されました。当社では、スタッフにも「 4つのR」が浸透していると思っています。たとえ社長であっても、私の言動が「4つのR」に反していたら、みなが「それは違う、おかしい」と反対するでしょう。規範でもありますね。
「情報デザイン」の考え方をベースにFileMakerを活用したシステム開発を実践
―― 「4つのR」をベースにFileMakerを活用したシステム開発に注力されています。データベースのプログラムを作るソリューションは他にもありますが、FileMakerの魅力、お客様に提供できる付加価値をどうお考えでしょうか。
有賀氏 通常のデータベースソフトは、いわば「データベースを構築」ソフトで、そこからどんなデータを抽出して「どう見せるか」、インタフェースのところなどは、別途にデータ抽出とデータ表示のプログラムを作成して連携させなくてはなりません。つまり、データベースを作ることはできても、その分析結果などを見やすく表示させるにはもう1つプロセスが残っているのです。
ところが、FileMakerは、データベースを構築できるのは当然として、「どのデータを抽出してどう見せるか」も一緒に作れてしまう作り方が可能です。「データベースを作り」「必要なデータを見やすい画面で表示する」までを柔軟にプロセス化できるのが魅力です。だから、システムを作るときには、「こんなデータがこんな画面で表示されて、このボタンを押すと、次にこのデータの分析結果がこう表示される」というように、画面構成を共有しながら進めていけます。ITやシステムの知識がなくても、ビジネスのプロが「このデータをこの視点で分析した結果を時系列で見たい」などの要求を出していただければ、それをシステム化できるのです。
私は、大学でFileMakerの講義も行っているのですが、学生には、どんなシステムにするか、どんな機能を持たせるのか、画面を絵描くことから始めて、どんな機能をつけていくか考えてもらうようにしています。
当社のシステム開発でも、同じスタイルでやっています。要件定義から仕様まで、お客様がほしいものをまず絵に描き起こしてもらうところからスタートします。ITのプロではない人たちも「こういう画面にこういうボタンがあって、押すとこういうのが出てくるのがほしい」と、ビジュアルでなら分かりやすく自分たちの望むことを表すことができます。
こうした情報をデザイン化してから入るのは、効率的で効果的だと私は考えています。そしてこれを、素早く早くできるのがFileMakerだと思います。
絵で描くと誤解が生じにくいことも大きなメリットです。言葉だけで「売上を管理したい」、だとどこか認識のずれがあって結果が変わってくることもよくあります。「こういうものができます」と絵で示しておけば、出来上がってから見て「ちょっと違う」ということがなくなります。
実は、これは、アメリカのFileMakerのワークショップで学んだやり方です。業務の整理にもなりますし、問題点も明らかになることもメリットだと思います。絵を描くことを、我々は「システムデザイン」「情報デザイン」と呼んでいます。
―― 北海道を拠点にしながらも、北海道以外の国内、さらには世界に向けて自社の情報を発信し、システム開発事業を拡大されています。
有賀氏 当社のお客様は北海道だけでなく、全国にいらっしゃいます。「4つのR」に興味を持ったと、京都のお客様からお問い合わせをいただいたこともあります。
世界に向けての情報発信では、FileMakerの世界開発者会議(FileMaker Developer Conference / Cralis Engage)でアピールしています。この20年以上の歴史を持つこの会議のオフィシャルスピーカーとして、アジア圏の企業が壇上に上がったのは、当社が初めてだったとお聞きしています。それ以降、毎年発表申請はしていますが、毎回ではないにせよ、登壇回数も増えてきました。
また、この会議で知り合った、アメリカの開発会社のFileMakerとWeb公開に関する本を、日本語化して出版したこともあります。現地で著者の方に直接「とてもいい本だから、翻訳したい」と言ったら、あっさり「いいよ」と言ってくれて実現しました。翻訳には相当てこずり、多くの方々に御迷惑をおかけしましたが、これもいい経験でした。
日常的には、当社のポスターやホームページにも掲げている言葉の「No matter where you are.」という気持ちを大切にしています。お客様が「どこにいてもかまいません」という意味合いです。当社は、コロナ禍以前から基本的にリモートワークが通常の業務スタイルです。日本には「現地に行って打ち合わせすることは大事」との考え方が根強くあることは理解していますし、私自身は大学を卒業して最初の会社に入ってから、基本的に現場主義者です。ただお客様との間を3~4時間の時間をかけて移動し1時間の打ち合わせをするよりは、リモートでもいいので毎日10~15分の打ち合わせをしたほうが良いことも多いでしょう。システム開発においては、物理的な距離は全く問題になりませんし、それは、この広大で自然環境が厳しい北海道という土地で20年ほど事業を営んできた身としての実感です。
当社は、道内の数百キロ離れた先のお客様のメンテナンスもリモートで対応しています。10年前からこのスタイルでやっており、発注も開発もメンテナンスもパートナーシップも、全く問題なく進めている経験と実績があります。どうぞ安心してご相談、ご発注ください。