コンサルティングからマーケティング、プロモーション、Web制作までワンストップで提供する後藤ブランド株式会社。今回は、制作における同社の強みと共に、「こんな制作会社には発注してはいけない」という制作会社選びのポイントについて、同社の代表取締役の後藤 晴伸氏と、取締役の後藤 江美理氏、Creative Directorの河上 明菜氏、藤本 恵未氏にお話を伺いました。
お客様に言われた通りのWebサイトをさっと作って「はい、お終い」が多すぎる
――後藤 晴伸さんが、2020年3月3日に書籍「ウェブマーケティングという茶番」(増補改訂版)を上梓されましたね。
後藤 晴伸氏 はい。書籍ではWebマーケティングや広告、プロモーションを中心に業界の課題について解説していますが、制作については語り切れていません。しかし制作面でもさまざまな課題があり、「こんな会社には発注するな」と言いたくなるような制作会社があるのも事実です。そこで今回は、書籍に書き切れなかった制作の実態についてお話したいと思います。
――御社では、これまでのWebサイト制作を通じて、お客様から「こんな制作会社に依頼して苦労した」といった話も伺っているかと思います。実際にはどんな制作会社が多いとお感じですか?
後藤 晴伸氏 Webサイトを活用したマーケティング、プロモーションまでを戦略的に考えず、発注者側が作りたいと言ったものを、さっと短納期で制作して納品するだけのところが多いのが実情ですね。
マーケティングやプロモーションの施策を具体的に考えているわけではないので、Webサイトを作ってもアクセスが増えるわけではなく、また、Webサイトを通じて広くアピールしたいサービスや商品への問い合わせやダウンロード数などが増えるわけでもない。
ようはWebサイトを作ってもなんらアクションが起きないのです。何年かしたら、「うちのWebサイトって何の役にも立っていないけど、これでいいんだっけ?」と発注者側でも考え始め、結果的にリニューアルが必要になると再びお金がかかってしまいます。なんの効果もなかったのに、再びお金がかかるという悪循環になりがちです。
そんなWebサイトを作る制作会社に限って、最初に提示してくる費用が安いのです。だからといって飛びついてしまうと、結局、作り直すことになってしまいます。安いとは言え最初にかけたお金が無駄になってしまうのです。
――Webサイト構築後のマーケティングやプロモーションまでを考えた取組みが重要ということですね。最近ではWebサイトを使ったマーケティングやプロモーション、SEO対策などを得意としている制作会社も増えてきていると思いますが、実際はどうなんでしょうか。
後藤 晴伸氏 確かに、Webサイトの制作とマーケティングの「両方に対応します」という制作会社も増えてきました。中には「ワンストップで対応します」という制作会社もありますが、やはり見極めが必要です。蓋を開けてみると社内が縦割りで、プロモーション担当、営業担当、リスティング広告などの運用担当、制作担当と分かれているところが多いのです。
本来、Webサイトを活用したマーケティングやプロモーションでは、お客様の目標や目的に応じたマーケティングやプロモーションの戦略の立案、その戦略を実現するためのサイト設計、コンテンツ設計、広告展開などが重要です。つまり、マーケティングやプロモーションの担当部門、制作部門などが一体となって取り組まないとなりません。それが、本当の意味での「ワンストップ」です。
ワンストップでの取組みを実現するには、Webサイトの制作やプロモーションの全体について、責任を持ってハンドリングするポジションの人材が不可欠です。コンサルタントやプロジェクトマネージャー(PM)と呼ばれるポジションの人材ですが、発注者側が、制作会社を見極めるときには、そういった人材がプロジェクトにアサインされているかどうかをぜひ確認してください。
スピード感と提案力が強み。お客様にご提案する内容も、噛み砕いて説明します。
――御社がWebサイトの制作を請け負うときには、Webサイトの制作からマーケティング、プロモーションなど全体を統括するコンサルタントやPMがしっかりとアサインされるのですね。
後藤 江美理氏 もちろんです。全体を統括する人材が必ずつきますので、そこは他社と明確に違うところだと思います。また、スピード感があることも、当社のクリエイティブの強みだと感じています。他社の場合だと、相談してから着手するまで2週間かかったり、見積もりを出すまでに1週間かかったりといったことを耳にしますが、当社は基本的に「オンタイム」です。つまり「すぐにやる」ことを心がけています。
――御社で実際にWeb制作を担当している立場としては、他社とは違う強みはどこにあるとお考えでしょうか。
河上氏 Webサイトを活用したマーケティングやプロモ-ションは、実は難しいのです。多くの会社では他の仕事とWeb業務を兼任していたりしますが、言うほど簡単にできるものではありません。これは、私が以前にアパレル業界で、自社のマーケティングやプロモーションなどを担当する部署に所属していた時に切に感じました。効果的なWebの施策を考えていくためには、専門的な知識を持ったスペシャリストからの適確なアドバイスが不可欠です。
そういった専門的な知識を持った担当者がきちんといることが当社の強みです。マーケティングに長けた人が施策を考え、それを実現するためには、どんなWebサイトにするのかを制作担当者とディスカッションして、実際のWebサイトへと落とし込んでいきます。
さらに、当社の制作スタッフは「こうした方がマーケティング施策の効果がでやすいのではないでしょうか」など、お客様に対して次々と提案をしていきます。この提案が重要だと考えています。というのも、発注者となるお客様の企業では、「次にどのような施策を実施するのが最適なのか」までを、自分達で考えるのは難しいのが実情です。
ですから、そこを当社でカバーしてあげながら、例えばバナー広告の配置や見せ方ひとつにしても、「こう変えたらもっと効果が上がるのではないでしょうか」など提案しています。提案力が当社の制作の強みです。
後藤 江美理氏 しかも、ただ、提案するだけでなく「提案の内容をしっかりとお客様に説明する」ことも大切だと考えています。当社では、提案書をご提出するだけではなく、時にはお客様のもとに足を運んで提案の意図などを説明します。
そうすることで、お客様のご担当者の方々のお考えを伺うこともできます。そこが大切なのです。当社から提案するばかりではなく、お客様からもきちんとご意見をいただき、コミュニケーションをとりながら一緒に考えていくスタイルを構築していることも当社の特徴といえるでしょう。
藤本氏 コミュニケーションといった視点では、お客様とのコミュニケーションはもちろんのこと、社内でも私たち制作のディレクターと全体を統括するコンサルタントとの間のコミュニケーションも大切にしています。
冒頭に代表の後藤が「ワンストップ」と表現しましたが、当社は制作の現場と全体を統括するコンサルタントが相談して、「今月はマーケティング効果をさらに高めるためにここを修正しよう」といった内容を詰め、お客様にご提案しています。これがまさにワンストップでの対応と言えると思います。
私は、SEO対策やサイト改修など、長期にわたって改修が必要な業務を担当することが多いので、常にコンサルタントと連携して提案させていただいております。
発注者側がWeb制作会社を選ぶときに知っておくべきポイントは?
――後藤ブランドのこれまでのWebサイト制作やWebマーケティングの経験から、こういう制作会社には発注しない方がいいというポイントはどこでしょうか。
河上氏 要注意なのは「サーバを握ろうとする会社」です。少し詳しくお話しをすると、Webサイトを構築するときのサーバの管理を「当社にお任せください」と言い切って「握ってしまおう」とする制作会社です。
なぜ、そういう制作会社に要注意かというと、サーバの保守・管理という名目で毎月のランニングコストを取られてしまう上に、Webサイトのリニューアルのときなどに別の制作会社に切り替えようとすると、サーバの移行や再構築などに意外に大きな費用がかかってしまうことがあるからです。これは、発注者側、お客様にとってメリットのあることではないですよね。
実際、最初に発注するときには、「サーバの保守・管理までまとめてやってくれるなんてありがたい」と任せてしまうケースも多いのです。確かにサーバの保守・管理をしなくていいのは楽に見えますが、後々のことを考えるとその選択は最善とは思えません。
後藤 晴伸氏 サーバの保守・管理に毎月5万円や10万円の費用をとるWeb制作会社もあります。中には、毎月、ほぼ「何もしない」のに費用をもらっているケースもあるほどです。そこで、当社では、「サーバやドメインは自社で持ってください」と直契約をご案内し、推奨しています。中間マージンも発生しませんし、Webサイト制作会社を切り替えるときにもサーバ移行費などが発生しません。
当社は、お客様のサーバ、ドメインを教えていただき、そこにWebサイトを構築し、修正があったら修正費だけもらいます。お客様の費用負担が減りますし、万が一当社が契約を切られても、そのサーバを別の制作会社にバトンタッチすれば問題なく更新できます。お客様にとってはメリットが大きいでしょう。
藤本氏 その他にも注意点があります。Web制作会社の中には、発注者側の担当者の方に、「なぜこういう方法で作るのか」、「なぜこの施策を実施するのか」といったことをきちんと説明しないところもあります。そうなると、発注者側の担当者が中身をしっかりと理解しないままに、Webサイトの構築やWebマーケティングのプロジェクトが進んでいってしまうことになります。
発注者側の担当者がきちんと理解せず、納得もしていないのに先へ先へと進めていってしまう制作会社は信頼できないと思います。当社では、最初の提案の段階でお客様のご担当者の不明点をなくすように徹底的に説明します。
ケースによって、「これ、本番のデザイン?」と思われるほどに作り込んだ構成資料を作成し、目指す形をお客様がイメージしやすいように心がけています。それにより、「こんなはずじゃなかった…」というようなズレが生じることも回避することができるのです。
納品したものが「お客様の大切な財産になるかどうか」を考えれば、「安易なWebサイト」は作れないはず
後藤 江美理氏 ちょっと視点を変えてお話しをすると、当社では、制作して納品させていただいたものが、「お客様の財産になるかどうか」をきちんと考えるように心がけています。そこに目を向けている制作会社であれば、軽い気持ちで「安易なWebサイト」を作ることはできないはずです。
発注者側、つまりお客様には、自社のことをしっかりと考えている制作会社かどうか、または、自社のことを考えてくれる担当者かどうかを見定めてほしいと思います。
もうひとつ、当社は常にお客様にとっての最善のことを考えるようにしています。そのためにお客様のご担当者とWebサイトの制作やマーケティングのやり方などについて、意見が食い違ってしまうこともあります。
そんなときにもお客様と議論を重ねるので、ときには「バトル」になってしまうこともあります(笑)。それでも、当社はお客様のことを考えて最善と思えることはきちんとお伝えします。その上で、もちろん私たちも意見を押し通したり、押し切ったりするのではなく、お互いに着地点を見つけ、お客様にもご納得いただいて作りあげていきます。
後藤 晴伸氏 発注者側は、Webサイトの制作やマーケティングについて、十分な知識や経験があるとは限りません。例えば「サーバの保守・管理まで安価にやりますよ」というところに飛びついてしまい、後々、年間通して何も更新されていないWebサイトに結構な費用をかけていることに気付き、改修したいとなったときに更に大きなコストがかかってしまうというお客様も本当にいらっしゃるのです。
目先の費用の安さとか、納期の短さといったことだけで、制作会社を選んで発注してしまうことで、結果的に自社が望んでいたWebサイトを持つことも、Webサイトを活用したマーケティングなどの施策を実施することもできないといったことが実際に起きています。
そういったことが少しでも減っていけばいいなと考えています。それが当社だけではなく、WebマーケティングやWeb制作にかかわる業界全体の健全な発展、成長に結びつくと考えているのです。
今回のインタビューでは、「制作会社選びのポイント」をお聞きしましたが、後藤ブランドさんは、Webマーケティングやプロモーションなどトータルサポートが強み。そのノウハウを書籍「ウェブマーケティングという茶番」(増補改訂版)にまとめています。
インタビューでは書き切れなかった、「こんな会社には発注するな」が満載の一冊です。ぜひ、お手にとってみてはいかがでしょうか。
ウェブマーケティングという茶番(増補改訂版)