コンサルティングからマーケティング、プロモーション、Web制作までワンストップで提供する後藤ブランド株式会社。今回は、Webマーケティングで重要な役割を果たすLP(ランディングページ)について、同社の代表取締役の後藤 晴伸氏と、取締役の後藤 江美理氏、クリエイティブディレクターの河上 明菜氏、コンサルタントの野田 拓郎氏にお話を伺いました。
クライアントのビジネスモデルを理解しないまま、LPを作ってしまう制作会社が多い
―― 前回のインタビューでは、クライアントに言われた通りのWebサイトをさっと短納期で作っておしまい、という制作会社が多いというお話がありましたが、LPに関しても同様の傾向がありますか?
野田氏 LPの意味合いをきちんと理解していない制作会社が多い印象です。LPは、おもにWeb広告などを見て、クリックしたユーザー(サイトを利用する方)が訪れるページです。企業における広告展開やSEO対策など、全体のプロモーションがあり、その一環としてLPが必要とされているのです。
そう考えると、広告を見てLPにやってきたユーザーに、ユーザーが求めている情報をきちんと提供できているかが重要になります。LPはそれだけが単独に存在するのではなく、広告やDMなどを含め、企業のWebマーケティング戦略と連動しなくてはなりません。
それなのに、LPを「それだけで完結するページ」と安易に考えてしまう制作会社が多いのです。「見栄えよく作ろう」とデザインに凝りすぎ、カッコイイLPができあがったら「それでおしまい」というケースもありますね。本来なら、例えばユーザーが「どういう検索ワードでLPを訪れたのか」、それが「どのように、商品やサービスの問い合わせにつながったのか」など、「LPを作った後のこと」までを考えて、LPを設計することが重要なのに、そこまでは考えない。クライアントから言われた通りにLPを作ってしまう制作会社が多いです。制作会社というより、担当者ベースで変わってくるのかもしれませんが…
後藤 晴伸氏 そういった制作会社はクライアントのビジネスモデルを理解していないんですよね。ビジネスモデルを理解できていないから、LPを訪れるユーザー、つまりクライアントにとっての顧客像をイメージできていない。LPにやってくる人たちを具体的にイメージできないままに、クライアントから提供された情報や素材だけで「さっと」作ってしまう。これでは、いくらWebサイトを構築する知識や技術があってもダメです。肝心なのは、クライアントのビジネスモデルを理解しているかどうか。LPを訪れるユーザーのいわゆる「ペルソナ」をどこまで「具体的にイメージできているか」です。これができないと、ユーザーが本当に欲しい情報やコンテンツを用意することができず、ピントがずれたLPになってしまうのです。
河上氏 当社がLPを制作するときは、まず、クライアントに「どういう人たちにアクセスして欲しいですか」とターゲットに関する情報を徹底的にお聞きします。ただお聞きするだけで終わりではなく、その情報をどこまで深掘りしてコンテンツに落とし込んでいくかが大切で、そこが「LPの品質」に関わってきます。
安価にLP制作を請け負う制作会社は本当に数多くありますが、クライアントからの情報を深掘りせず、ただ、提供された情報を載せるだけのLPを作るケースがほとんどです。品質が低いLPでは、広告やマーケティングの効果も期待できません。それなのに、「なんとなく見栄えがいいし、値段も手頃だからまあいいか」と思ってしまう方も意外に多いようです。LPの目的は何なのかを考える必要があります。
後藤 江美理氏 目的をはき違えてしまっているクライアントは、結構いらっしゃいます。LPの目的は、ブランディングではなく「集客」です。これは明確なことなのに、LPを作りましょうといいながらも、企業としてのブランディングに偏ってしまい、目的がブレてしまうケースはよくあるのです。
ですから、当社では「LPの目的は、あくまでも『集客』です」、「集客につながるページを作ります」ということを、必ずクライアントにはご説明します。せっかくページを作るのだから、「ブランディング重視で格好よく見せたい」という気持ちもわかります。でも、それはブランンディングを目的とした自社のホームページなどでやるべきことです。そこをしっかりお伝えして、LPの目的を明確にし、クライアントと意識共有することを心がけています。
LPは「点」ではなく「線」。コンバージョンをゴールとした導線作りを意識
―― クライアントのビジネスモデルを理解せず、また、LPの目的を明確にしないままLPを制作する会社が多いということですが、そういった制作会社との違い、後藤ブランドならではのLP制作の進め方を教えてください。
河上氏 具体的な進め方をご説明しますと、まずはクライアントと打ち合わせして、ご要望をお聞きし、その内容をもとに、当社のコンサルティング部門とクリエイティブ部門とで意見を出し合います。それを踏まえて、クリエイティブ担当者がクライアントへの提案資料のベースを作り、それをさらにコンサルティング部門担当者が確認して、意見を出し合いながらブラッシュアップしていきます。要は、クライアントのご要望をお聞きしてから、コンサルティング部門とクリエイティブ部門で「深掘り」する作業を繰り返すのです。そうしていくうちに、クライアントのビジネスモデルも、LPを訪れるユーザーのペルソナもより明確になってきます。ここの部分の作業を、当社はとても大切にしています。ここが他社とは大きく違うところですね。
野田氏 他の制作会社の場合、初めは営業担当者がクライアントを訪ね、そこでお聞きした内容を、自社内の制作部門に伝えてLP制作を進めます。ここが問題ですね。制作部門がクライアントのところに出向かないのです。だから、品質の高いLPを作れないのです。
クライアントにお会いせず、ご要望をダイレクトに聞きもしないまま、営業担当者からの「又聞き」だけの内容で制作するのでは、きちんとしたLPを作ることはできません。当社は、コンサルタントとクリエイティブの両担当者で打ち合わせに参加し、直接話をお伺いして、クライアントがどういう企業なのか、どういうビジネスモデルなのかなどをしっかり理解した上で作っていきます。
営業担当者だけがクライアントとやり取りする「分業」ではなく、制作担当者もクライアントと直にやり取りするので、「肌感覚」を取り入れることができます。そこが他社と違うところではないかなと思います。
コンサルタントとクリエイティブがクライアントとやり取りをする過程で、特に重視しているのは、「LPは『点』ではない」ことをご理解いただくことです。クライアントによっては、LPをあくまでもページとして、単体で「点」で捉えてしまっているケースがあります。
大切なのは、ユーザーがどういうキーワードで検索してきて、どのページ、どのコンテンツを見て問い合わせし、コンバージョンに結びついたのか、そのゴールまでの「線」で捉えることです。そこを踏まえて、より効果的な導線作りを提案するようにしています。
後藤 江美理氏 LPを「線」で捉えるには、先に説明したように、クライアントのビジネスモデルを理解することがとても重要です。その上で、実際のユーザーの気持ちになって、どんな情報を求めるか、どんな情報を探すか、この商品やサービスを購入するときには何を考えるのか、どんなイメージを持って購入するのかなど、いろいろなことを考えます。それを、きちんとクライアントにお伝えしながらLP制作をしています。
Web接客ツールや漫画コンテンツなども活用して、ユーザー目線で分かりやすいLPを
―― コンバージョンに繋げるための具体的な工夫についてもお伺いします。さまざまなツールを活用されていますよね。
野田氏 例えば、ユーザーがLPの中のどのコンテンツをよく見ているのか、どのコンテンツにアクセスが多いのかをたどれるヒートマップでは、後藤ブランドが契約しているツールがありますので、そちらをクライアントのLPにも比較的安価で組み込むことを提案できます。
クライアントがヒートマップの利用契約を結ぶと、1年間など一定期間を使い続けなくてはなりません。それに対して、当社が契約しているツールをご提供できるので、「広告を展開する1カ月間だけヒートマップを使いたい」といったクライアントの細かなご要望にも柔軟に対応できます。
また、Web接客ツールも提案しています。色々なキーワードでユーザーが流入してきますが、ファーストビューを毎回切り替えるのは難しいので、キーワードごとに異なるバナーを表示して、ユーザーに興味をもたせて離脱させないような工夫をしています。
一例を紹介すると、医療用ウィッグのWebサイトがあります。「医療用ウィッグ」や「医療用ウィッグ 試着」などのキーワードで流入するユーザーは多くいますが、その中でも、「かぶるタイプのフルウィッグを求めているのか」、「部分的なウィッグを求めているのか」など、ユーザーによってニーズは細かく異なります。
こうした細かなニーズにも対応できる機能がLPには求められます。そこで、Web接客ツ-ルで、フルウィッグだけでなく、部分ウィッグもあることを示すポップアップバナーをLP上に表示し、誘導するようにしました。こうした工夫でコンバージョン率を高めることができるのです。
仮に、このポップアップバナーが表示されないとすると、部分ウィッグを求めてきたユーザーは「ここにはフルウィッグしかないのか」と思って離脱してしまいます。Web接客ツールを使うことで離脱を防げたのです。
河上氏 これも医療用ウィッグには、フルウィッグと部分ウィッグがあることを知らないと提案できないことです。こうした提案できるようにするには、やはり、ユーザーの目線でLPを作れないとなりません。使いやすさ、見やすさを重視することはもちろん、ビジネスも理解するように心がけています。
あわせて、使いやすさや見やすさの点では、例えば、伝えたい情報が多くてページが長くなる場合は、ヘッダーを固定したり、サイドにメニューを常時表示したりすることでユーザーが見たい箇所へアクセスしやすくするなどの工夫もします。
また、LPで説明する商品やサービスの内容が難しく、テキストと写真だけでは理解しにくい場合は、漫画でストーリー仕立てにして説明するコンテンツなどを作成します。
LPは「大切なクライアントとの最初の接点」
―― お話しを伺って、品質の高いLPを作るには、クライアントのビジネスモデルや、クライアントの「クライアント」、つまりLPを見ている方のイメージを共有することがとても大切だと感じました。最後に「こんなLPを制作しようとする制作会社には注意した方がいい」などのアドバイスはありますか。
河上氏 広告の観点からこんな情報や文言を入れた方がいいとか、ユーザービリティを考えてデザインはこうした方がいいなどの提案することもせず、クライアントから言われただけの内容でしか作らない制作会社はお勧めしませんね。
野田氏 Webマーケティングの世界は競争が激しく、クライアントのライバル会社もさまざまな方法でマーケティング戦略を展開していると思います。そうした競争が激しい中で、検索されやすいキーワードや標準的なユーザーのイメージを描いてしまうと、あえて「レッドオーシャン」で勝負をしなくてはならなくなってしまいます。つまり、直球勝負だけでは、必ずしも良い結果を得られないとわかっていても、変化球を投げる工夫ができない制作会社はやめたほうがいいです。
例えば、化粧品やダイエット商品などは、すでに多くの会社が見栄えの良いLPを作って マーケティング戦略を展開しているので、その真似をすれば、それなりのデザインのLPを作ることはどの制作会社でもできるでしょう。
でも、他社と同じようなLPを作ってしまったことで、自社サービスを競合他社と差別化することができず、自らレッドオーシャンに入り込んでしまい、クライアントが反響を獲得するのに苦戦を強いられてしまうケースがあります。
そこに気づけなかったり、それをわかっていながら、何の工夫もしない提案をしてくるのは、マーケティングやその後の運用のことを考えていない、「LPを作っておしまい」という、いわば無責任な制作会社の可能性があります。
後藤 江美理氏 費用の安さを売りにしている制作会社には注意です。クライアントにも、安さに飛びつくと、しっかり内容がディレクションされていないだけではなく、デザインも安っぽく運用面もきちんとされないということになりかねないことをご理解いただきたいですね。
LPは、ただのWebページにすぎないかもしれませんが、そこから集客して申し込みや購入に繋げて、自社の売り上げを何倍にも引き上げる可能性を持った、とても大切で重要な「クライアントとの接点」です。その入り口にお金をかけることをしないで、費用を惜しんでLPを作ってしまって良いものでしょうか。費用をかけずに作ったLPが、この先も何千万円、何億円という売り上げを生み出し続けてくれるのか、を冷静に考えていただきたいと思います。
後藤 晴伸氏 確かに最近では、「LPを無料で制作します」ということをウリにしている広告会社もあります。フリーランスのWebサイト制作者に依頼すれば費用を抑えられますが、LPは、やはり「クライアントとの最初の接点」、いわば「自社の顔」にもなるのです。
当社は、LP制作にはそれなりの費用をいただきますが、それはきちんと工数をかけ、きちんと効果がでて、クライアントの目的を実現できるLPを作るために必要な費用といえます。さまざまな工夫をし、コンバージョンのとれるLPを提案しています。LP制作でお悩みのクライアントは、ぜひお問い合わせください。
今回のインタビューでは、「LP制作のポイント」をお聞きしましたが、後藤ブランドさんは、Webマーケティングやプロモーションなどのトータルサポートが強み。そのノウハウを書籍「ウェブマーケティングという茶番」(増補改訂版)にまとめています。
インタビューでは書き切れなかった、「こんな会社には発注するな」が満載の一冊です。ぜひ、お手にとってみてはいかがでしょうか。
ウェブマーケティングという茶番(増補改訂版)