サイボウズ社のクラウド型ノーコード業務アプリ構築プラットフォーム「kintone」は、社内業務のデジタル化推進、いわゆる「DX推進」という波に乗り、数多くの企業で導入されています。しかし、自社の業務をkintone上でシステム化していくには、目に見えないハードルがあります。そこのところを、しっかりサポートしてくれるのが株式会社八芳園の伴走型DX推進支援サポートです。
株式会社八芳園は、東京近郊では、東京都港区白金台に位置する結婚式場として昔から知られています。その八芳園が企業のDX推進をサポートするサービスを提供していて、しかもそのサービスがきめ細かく行き届いており、分かりやすいと好評です。
「異業種からの参入なのになぜ?」と思うかもしれませんが、実は異業種からの参入だからこそ成しえた部分がたくさんあるといいます。同社のサービスについて、同社DX推進室 室長である治部 隆宏氏と推進室のメンバーである豊岡 若菜氏の2名に、詳しくお話を伺いました。
現場の人たちの気持ちがリアルに分かる。DX推進の当事者目線に立ってお客様に寄り添えるのが当社の強みです
―― 株式会社八芳園様がITの導入支援サービスを提供されているというのが意外でした。
八芳園 治部氏: みなさんそうおっしゃいます(笑)。当社は2023年に創業80周年を迎えました。八芳園と言えば、ブライダル業界をイメージされる方が多いのではないでしょうか。実際に、当社では東京都港区白金台にて、日本庭園を構えた結婚式場やレストランを運営しています。
そして多くの企業と同様、当社もDX化で悩んでいました。昨今の少子高齢化により労働人口が減少すれば、当社のようなサービス業では生産性が著しく下がってしまいます。それをカバーするにはデジタル化を推進し、業務を効率化することで、現場スタッフの負荷を軽減させる必要があることは明白でした。
未来を見ているからこそ、早々に対策を講じなければならず、一足先にDX推進に取り組み、社内のデジタル化を進めていきました。
その過程で得られた多大なノウハウを、どこかで有効活用できないかと考え、他企業にこれをご提供していこうと、このビジネスをスタートさせました。
そのため、IT企業からの目線というよりは、事業者目線、DXを推進する当事者の目線で見て、考えられるのが当社の大きな強みとなっています。
―― 当事者目線があると、どのように違ってきますか。
治部氏: DX推進と言っても、システムソフトウェアを導入すれば、それでデジタル化できる、という単純なものではありません。
システムを導入する先には、既存のアナログ業務があり、さらにその業務を担う従業員、組織、そして部署間の力学のようなものまであります。企業でDXを推進していく際は、そうした複雑に絡み合った要素を一つひとつ解きほぐしながら進めていかなければ、どこかで行き詰ってしまうことにもなりかねません。
当社の導き出す解答は机上論ではなく、現場で身をもって体験してきたものばかりです。DX推進において、どこでつまずきやすいのか、どこにしわ寄せがいきやすいのか、見落としやすいところはどこか、といった実践的な情報を蓄積し、それをお客様にフィードバックすることで、DX推進をスムーズかつ着実に遂行できるようにサポートしています。
―― なるほど。同じ方法論でも実践的データの裏付けがあるということですね。
治部氏: また、私たち自身が体験してきたからこそ、お客様側の立場に立つことができるという強みもあります。
たとえば現場では、現場で本当に実現したいことが、なかなか実現できていません。情報システム担当者やIT企業の担当者から提案されると、現場の人たちは、そのまま受け入れてしまいがちです。
そこで私たちは「本質をしっかりと伝える必要がある」と感じています。なぜなら、DXを推進していた当時、私たち自身が本質を理解しないまま、数多くの失敗をしてきた経験があるからです。
「ITのことはよく分からないから」という理由だけで、安易に判断して進めてしまうリスクを熟知しているからこそ、当社はお客様に理解していただくまで説明を尽くすよう心がけています。
そんな、現場の方々の気持ちに寄り添えるところが当社の大きな強みだと考えています。
kintoneで自社のDX推進をしてきたからこそ分かる、システム化・業務効率化だけではない導入の副次的な効果
―― 御社ではkintoneを使ったDX推進をサポートしていますね。
治部氏: はい。そもそも当社がkintoneを使ってDX推進をしたというのが大きな理由です。その過程でさまざまなノウハウを蓄積し、さらに使い込んだ結果、運用についても多くの知見を持つことができました。
当社はkintoneの販売元であるサイボウズ社と、kintone導入支援のオフィシャルパートナー契約も結んでいます。
―― kintoneによる御社のDX推進はどのようなものだったのでしょうか。
八芳園 豊岡氏: たとえばブライダル事業における顧客管理では、1件ずつ「お衣装はどうするか」「お化粧はどうするか」「お料理はどうするか」というように、さまざまな部分で細かく打ち合わせをして、その情報を各部門で共有しておく必要があります。
当社も、オンプレミス(自社内にサーバを置き運用すること)のブライダル業界向けパッケージシステムを導入し、予約から結婚式当日までの管理を行っていました。
当社の業務に合わせたカスタマイズもしてもらっていたのですが、それでもなお対応し切れない処理についてはExcelに逃げていた部分もありました。
しかし、ひとたびシステムから外れてExcelで処理していると問題が生じます。Excelのワークシートはコピーして使えるため内容を改変して使用してしまい、複数バージョンが存在するようになってしまいました。
埋め込まれた数式を信頼していたはずが、誤った結果になってしまい、ミスが発生したこともありました。
顧客管理はもちろん、そうしたExcelで行っていた業務もkintoneに一元化することで、業務が効率化されミスもなくなりました。しかし、kintone導入の効果はそれだけではありません。
―― 既存システムを置き替えて効率化されただけではなかった。
豊岡氏: そうです。現場の方は自部署のことは分かるけれど、その先のシステムは分からないというケースも少なくありません。目の前の業務が、どのように処理されていくのか知らずにいたのです。
kintoneで業務アプリを作るのにプログラミングの知識は必要ありません。しかし、自分たちが行う業務については知っておかなければなりません。
その過程で、自分たちの業務をスタートから終わりまで全体の流れを俯瞰的に見ることになり、必然的に、自分の業務の前工程と後工程がどうなっているのかを知ることになります。
こうした業務理解の“深化”も業務の効率を向上させたり、業務改善の提案などにつながったりします。
せっかくkintoneを導入するのだから、小さな課題解決を通じて、お客様に自走できる力を養ってもらいたい
―― DXを推進しなければいけないのは何となく分かっているものの、具体的にどうすれば良いのか分からないというお客様も多いと思います。
豊岡氏: 私はDX推進を希望されるお客様と実際に商談する機会が多いのですが、お客様も課題が定まっていないというケースは確かに多いですね。当社も最初はそうでした。
「業務改善をしたい」「効率化したい」という漠然とした思いはあっても、ではどうすれば良いのかという具体的な話になると、発想がわかず、なかなか踏み込めません。
もう一歩踏み込んで「紙を無くしたい」「Excelの利用をやめたい」というところまではたどり着くかもしれませんが、それでも、どこのポジションから始めていけば良いのかが分かりません。
当社では、お客様とディスカッションしながら目標地点を定めていくところから始め、定めた目標にアプローチしていく具体的なお手伝いをしていきます。
―― お客様の「こうしたい」という要望を受け、御社が構築するということではなく、一緒に作っていくということでしょうか。
豊岡氏: 当社は常に、お客様が直面している喫緊の課題解決に伴走していくことに重きを置いています。これは将来的に大きな目標を達成するためでもあります。
―― どういうことでしょうか。
豊岡氏: kintoneを導入するからには、この先システムに変更を加える必要が生じたり、業務フローが変わったりしたときにも、お客様が自分たちの手でシステムを最適化できるようにしておくこと、すなわち「自走していけるようにすること」が大切だと考えています。
「こちらで作っておいたので、これを使ってください」というスタンスだけでは、お客様に負荷がかかりませんが、それではいつまでも自走できません。
まずは小さな課題でも良いので、一緒に要件定義をするところから始めていきます。ワークフローを確認し、業務上の課題を洗い出していき、システムに置き替えていく際の要件を決めていきます。これには3~4カ月かかることもありますが、当社がしっかり伴走しながらサポートしていきます。
自走できるところまで理解してもらえれば、後は自分たちでもカスタマイズできます。もちろん、その上で当社に構築をご依頼いただくのもありです。
今日の100点が明日の100点とは限らない。いつでも自分たちの業務を100点に改善できる力を磨いていくことが大切!
―― kintoneだけであらゆることをカバーできるのでしょうか。
豊岡氏: kintoneは確かに多機能ですが、基本機能だけで、何から何までを実現しようとすると、無理が生じたり複雑になったりしてしまうかもしれません。そうした時のために用意されているのがカスタマイズのためのプラグインです。
プラグインはkintoneの機能を拡張したり、処理に合わせた使いやすいものに変更したりすることができる追加用のソフトウェアです。プラグインを使えば、帳票出力やカレンダーのような機能拡張、外部サービスとの連携、さらにはkintoneを業務に特化したアプリパッケージにしてしまうことも可能です。
使い込んでいくうちに「こういうところ使いづらいよね」とか「あのサービスと連携できないかな」というニーズが発生することがあります。そのような時には、プラグインを使うことで最適化できます。
プラグインを使うだけなら、プログラミングの知識は必要ありません。一方で、もし現場にJavascriptやCSSの知識を持つ人がいれば、自社の業務に合わせた新たなプラグインを自分で作ることも可能です。ある意味でkintoneの可能性は無限に広がっているとも言えます。
―― 他のサービスとの連携というのは簡単なのでしょうか。
豊岡氏: 既存のプラグインを使って連携するのであれば難しいところはありません。kintoneと連携可能なサービスはたくさんあり、そのためのプラグインも用意されています。それらを想定された範囲で使う分にはまったく問題ありません。
ただし、kintoneのある部分をいじると、結果が他の部分、場合によってはサービス連携の部分に波及してしまうというケースもあります。
ところがほとんどの場合、そうした情報は連携先のサービス側では説明されていません。kintone側もkintoneの範囲内でしか注意喚起していません。つまり、こうした情報は使った人だけ、試した人だけが知っています。
当社は、これまでkintoneで、さまざまなサービスとの連携を試してきました。そこで得た失敗体験や成功体験がたくさんあるため、お客様の失敗を未然に防ぐことができます。こうしたことも当社の強みと言えるのではないでしょうか。
―― 最後に、これからkintoneの導入を検討しているお客様に向けて、メッセージがあればお願いします。
治部氏: DX推進やシステム導入というと、最初から100点満点を目指したくなりがちです。すべての業務が定型ならば、そうしたことも可能かもしれません。
しかし、そうした定型業務も将来にわたって同じ流れで進められるとは限りません。法改正や組織改編などで、業務の進め方が変わることだってあるでしょう。
今日の100点が明日も100点とは限りません。95点に下がっているかもしれませんし、80点になっているかもしれません。
それならば、いつでも80点を100点に改修できる現場の地力を鍛えておくというのは、とても価値があることだと思いませんか?
当社はkintoneの活用をご支援することで、お客様の毎日の業務を100点満点に近づけるお手伝いができるものと考えています。私たちと一緒に「いつでも100点にできる力」を磨いていきませんか。
―― ありがとうございました。
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