経済産業省が2018年に発表したDXレポート“2025年壁”では、日本のIT人材不足が叫ばれています。さらには止まらない円安や物価高、外国人労働者の不足が追い打ちをかけ、従来のコスト削減のためのオフショア開発では優秀人材と高品質を担保できなくなっております。そこで、グローバルにIT人材を確保して新たな付加価値を生み出す、「ワンチーム」のオフショア開発が注目されています。
2000年に創業の英国に本社を構えるNashTechの日本法人・NashTech Japan株式会社の日本支社代表である神谷 攻氏と営業兼新規事業開発マネージャーの伊東 憲吾氏に、同社が目指す新たなオフショアのかたちについてお話を伺いました。
「7割が失敗」しているシステム開発業界の中で、プロジェクトの成功率8割以上を誇るNashTechの秘密
―― 日本では、まだまだオフショア開発に難色を示す発注者が多くいます。この現状をどうお感じになっていますか。
NashTech Japan 神谷氏: 以前のオフショア開発は、特にベトナムオフショアといえば、「簡単な開発業務の一部を安価に依頼する」ところでした。正直、いまだにそういったオフショア開発会社は多く存在すると思います。この場合、結果的に開発プロジェクトが失敗してしまうケースも多くオフショア開発そのものに難色を示す発注者がいても当然だと考えます。
ただし、はっきりと言えることは「当社は違います」ということです。これだけは自信を持って言い切れます。
NashTech Japan 伊東氏: 他社との違いには確かな根拠があります。なぜ、自信を持って「当社は違う」と言い切れるのか。これからご説明する「2つ」からご理解いただければと思います。
初めに、アメリカの調査機関であるスタンディッシュグループが発表した「CHAOSレポート」に記載されている調査結果によるものです。実は、システム開発のプロジェクトを「スケジュール通り」かつ「予算内」で完了することは非常に難しく、業界全体(グローバル)で成功している割合はわずか34%にすぎないのです。7割はスケジュール遅れや予算オーバーが発生しているのが実情です。
―― 7割も失敗しているとは驚きです。オフショアに限らず、システム開発はそこまで難しいということですね。
伊東氏: そうですね。実際、システム開発はスケジュール通りに予算内で仕上げるのがとても難しいのですが、この調査ではNashTechグループが手がけた案件では83%が「スケジュール通り」に「予算内」で完了していると報告されており、当社のグローバル基準の厳しいプロセスを通過した案件のみを受注する意識が要因と考えております。
―― 確かに、驚異的な成功率です。業界全体で34%、つまりは3割ちょっとなのに、そこに「打率8割以上」の打者がいるような印象です。もう一つの事実はどんなことですか。
伊東氏: 当社の独自調査などをもとにした結果では、なんらかの形でオフショア開発を利用している国内のシステム開発会社、事業会社様のうち、約7割がオフショア先をベトナムに選んでいるということです。インド、中国、ミャンマー、バングラデシュ、東欧圏などさまざまな国や地域でオフショア開発がありますが、日本の会社が開発パートナーとして選んでいるのはベトナムオフショアであり、それだけ国策としてのITが整っており、高品質、優秀人材が確保できるということなのです。その中で、後述されるNashTechアカデミーという当社が実施している優秀人材採用のためのトレーニングは、選りすぐりの人材確保を可能にしております。
―― なるほど。御社の特長を示すとすれば、まずは「プロジェクト成功率8割以上」という世界的にも驚異的な実績を誇るトップクラスのITサービス/システム開発会社の日本法人であること、次に国内のシステム開発担当が最先端技術や高品質を認めているオフショア開発会社であるということですね。
神谷氏: はい。その上で、もうひとつ。「もはやオフショアではない」ということを付け加えておきます。
当社はイギリスに本社があり、ベトナムにはハノイとホーチミン、ダナンに開発拠点を持つグローバル企業・NashTechの日本法人です。この3拠点には、ベトナム人エンジニアだけで約2000名以上、今年度インドに拠点を持つカナダの企業を買収したことで、合計2300名規模のエンジニアが在籍しております。エンジニア全体の平均年齢も30歳前後で、新しい技術の習得にも常に積極的に取り組んでいます。
先ほど、NashTechのプロジェクト成功率が8割以上ということを話しましたが、「スケジュール通り」や「予算内」で開発できるようにプロセスやプロジェクトの品質管理、クオリティアシュアランス(品質保証)を徹底しています。システム開発におけるプロセス管理のレベルを評価する世界水準であるCMMI(Capability Maturity Model Integration)で、最も高いレベル5に到達している経験があり、ベトナムでレベル5の評価を得ているのは当社を含め5社しかありません。発注先の企業様は開発の内製化のニーズなどを当社に依頼しており、安心してお任せいただけると考えています。
伊東氏: プロセス管理の徹底は品質管理の高さにも直結すると考えています。先ほどのアメリカの調査機関のレポートでは、NashTechでは業界全体の平均と比べて「難航するプロジェクト」の数が3分の1程度と少なく、しかも、プロジェクトが途中で頓挫する「中止」は1%未満です。業界全体はプロジェクトの中止が15%にも達しているのに、NashTechでは引き受けた開発案件はほぼ100%完了しているのです。
―― 引き受けた開発案件はほぼ100%完了し、その内の8割以上がスケジュール通りに予算内で開発を終えている・・・。「もはやオフショア」ではないという言葉にも納得できます。
神谷氏: エンタープライズ向けのエンドツーエンドの大規模ソリューションなど、難易度の高い案件も数多くこなしている中でのこの実績です。日本の発注者の方々にはぜひ、これらの事実をご体感いただければ幸いです。
発注側企業のIT開発部門となり、「ワンチーム」で展開するグローバル式の新オフショアのかたち
―― 「もはやオフショアではない」…。日本国内の発注者にとっても、御社にシステム開発を依頼するとさまざまなメリットがありそうですね。
神谷氏: 開発コストや品質、納期、プロジェクトが失敗する可能性が極めて低いなど、いろいろとありますが、当社が強調したいのは、NashTech Japanを「御社のIT開発部門としてお使いいただける」ということです。ベトナムに拠点があるオフショアだからといって、コスト削減のための「単なる開発部門」とは考えずに、「自社の中にある開発チーム」、つまり「自分たちとワンチーム」であるとお考えいただきたいのです。
オフショア開発がうまくいかなくなる主な理由は、ブリッジSEとの日本語でのコミュニケーションがうまく出来ないことなどが挙げられますが、そもそもブリッジSEの能力に成否の大半が委ねられてしまうような仕組み、プロセス管理の手法が間違っているのです。当社はそこを変えたい。お客様のIT開発部門となって、プロジェクトマネージャー、SEといった役割を明確にし、お客様と一体となったワンチームでの開発体制を構築します。グローバル基準では当たり前になっている、オンラインを活用したバーチャル的なチームとなることもありますが、当社のPMやSEのスキルに応じて適材適所でチームのメンバーを構成していくことで、これまでのようなブリッジSEに頼るオフショア開発とはまったく異なる、新たなオフショアモデルを目指しています。
NashTechが目指す付加価値を提案する「足し算」のオフショアとは
―― そのワンチームの中には、CMMIレベル5に到達させた優秀なエンジニアなどが参画する、安心ですね。
伊東氏: 日本市場における発注者のニーズも、変化し続けております。近年、オフショア開発に「単なる下請け」の機能を求めるイメージは払拭されてきている印象です。発注者自体が従来型のオフショア開発では満足できなくなっており、請負や下請けではないワンチームのビジネスパートナーとしてのオフショア開発を求めてきております。
そのような高度なニーズに応えられる要素が当社にはたくさんあると考えており、当社の最大の売りは、繰り返しになりますが「品質」と「柔軟性」です。まず、当社にはベトナム全土でわずか5名しかいないMicrosoftより MVP認定されたエンジニアが3名在籍しています。そのような、最先端技術を持つエンジニアを揃えたスター集団、CTO直下のいわゆるSWAT(Special Weapon And Tactics)チームが2000人超のエンジニアに日々トレーニングを行い、開発レベル全体の向上を行っております。また、NashTechが実践するアジャイル開発を中心にしたより柔軟で発注者を巻き込む開発スタイルは、発注者に当社のワンチームとしてプロジェクトに参画いただき、オフショア開発の成功に向けて積極的なコミュニケーションをとっていくことが出来る体制になっております。
R&D分野では、「NashTechレーダー」と呼ばれている仕組みがあり、最先端のトレンドについて研究開発を行う部隊がいます。例えば、ChatGPTのような生成AIは市場で流行する前からサービス化に向けて研究開発を行っております。発注者側のニーズと当社の能力を照らし合わせ、そこにSWATチームが3カ月ごとのロードマップを作成し、多岐にわたる新技術を取得し提供しています。
―― 単に技術力の高いメンバーを揃えているITサービス/オフショア開発の会社というわけでもないということですね。
伊東氏: その通りです。2023年ベトナムの人口は1億人に到達しました。年齢構成が非常に若く、約70%が30代前後となっており、国策によって選抜された若くて熱心なIT人材が豊富に存在する国です。特に大学や専門学校のコンピューターサイエンス関連学部の数が多く、優秀なソフトウェアエンジニアやプログラマーが育成されています。
NashTechのベトナム開発拠点では、英語を社内公用語にしており、言語能力は人材採用基準において、重視されているスキルのひとつで、上級エンジニア及びプロジェクトマネージャー以上の役職を持つメンバーはバイリンガルが必須スキルとなっています。なかには流暢に日本語で顧客とコミュニケーションをとり、プレゼンテーションまで実施できる人材もおります。
NashTechはなぜ高い技術力を持つエンジニアを常に多数在籍しているかというと、毎年新卒/ 中途を問わず、応募者数が多い中、決して選考レベルを下げず、技術力やソフトスキルなどの厳しい選考で勝ち抜いた方だけを採用しているからです。それだけではなく、すべての新入社員には、Nashアカデミーという、当社独自で行うエンジニアの育成及びテストのプログラムを用いて社員の育成にも力を入れており、そのため高い技術力を学ぶ一方、グローバル基準のビジネス感覚も備えて、ソフトスキルまで習得しながらキャリアアップできる環境があるこそ、当社が常に優秀な人材を担保できていると考えております。
当社が考えるNashTechが提供できるオフショアの支援は、経済産業省が「2025年の壁」で発表した、日本が直面するIT人材不足の解決に必要不可欠なものになると考えております。発注者側がNashTechとワンチームになることで、DXを促進させ、お客様がグローバル競争の中で競合優位を得られると確信しております。そして、オフショア開発をコスト削減といった「引き算」として考えるのではなく、プラスαの付加価値と利益向上を目的とした「足し算」の開発で、お客様のビジネス促進にお手伝えさせて頂きたいと考えております。
新しいオフショア活用へのパラダイムシフト:日本全体のDX促進に向けたグローバル基準の効率化、利益向上の挑戦
―― NashTech Japanとワンチームになり、ベトナムオフショアを活用して成功した事例をいくつか教えてください。
神谷氏: まずは、中古自動車輸出販売のシェアを拡大したいという経営課題を抱えていたジャポックス株式会社様の事例です。同社では自社ECサイトを通して海外への販路の拡大を実現したいと考えていたのですが、その実現にはシステム開発のプロフェッショナルが必要不可欠でした。
ジャポックス様では顧客が海外にいることもあり、英語と日本語ベースでのコミュニケーションを取れるシステム開発会社の中からNashTech Japanをパートナーにお選びいただき、当社の強みである最新のテクノロジーを活用した結果、ご依頼からわずか3ヵ月でグローバル向けのECサイトを立ち上げ、ジャポックス様の経営課題の解決及びビジネスの発展をご支援することができました。
さらに、中堅・中小製造業向けの生産管理パッケージシステムの開発・販売、および導入をメインの事業として行ってきた、株式会社エクス様の事例です。エクス様は、オンプレミスで稼働しているパッケージを提供しておりましたが、当社にソフトウェアのクラウド化についてのご依頼があり、お手伝いをさせていただきました。
エクス様にはアジャイル型開発の経験がなかったため、NashTechが強みとするアジャイル(当社の90%以上)の仕組みを取り入れ、プロジェクトが成功したことに高い評価と驚きを実感していただくことができました。初期段階では、オフショア開発の定期的なコミュニケーションや一見柔軟すぎる開発手法に不安や懸念がありましたが、プロジェクトは順調に進み、バグの少ない高品質のサービスを提供したことで、最終的に非常にご満足いただくことができました。
日本でのオフショア開発がうまくいかないのは、ドキュメントがしっかりしていないほか、伝え方が曖昧という日本人の国民性にもあると思っています。当社が実践している英国で実績されたグローバル基準のオフショア開発には、日本のITシステム部門が目指す新しい体制が整っております。ベトナム拠点を活用したオフショア開発と発注される日本側の双方の協力が必要不可欠となります。当社NashTech Japanは、ワンチームとなって、グローバル基準の技術を活かしたオフショア活用によって、お客様の効率化やROI向上を目指すお手伝いをしていきます。
■関連リンク
Global Technology Consulting Services | NashTech (nashtechglobal.com)