ネットを通じて、国内だけでなく海外にもビジネスのすそ野を広げたいという企業は少なくありません。しかし外国語版のページを制作する際には注意が必要だとPJ-T&C合同会社の藤本 篤志氏は警告します。ネイティブが読んだ時の違和感の解消、現地での周知を徹底させるマーケティングの必要性など、サイトの多言語化とその周辺に関する同社の持つ豊富なノウハウについてお話を伺いました。
海外の日本語サイトを読んだときに感じた違和感が、あなたのサイトの外国語版ページでも起きているかも!?
―― 多言語対応のサイト制作を行う制作会社さんは少なくありません。その中で御社はクオリティの高い海外向けサイトを制作しています。
PJ-T&C 藤本氏: 越境ECやインバウンド需要を狙ったビジネスなど、海外に向けて情報やサービスを発信していく企業も少なくありません。そのため多言語対応のサイト制作を行う制作会社も増えています。
当社の特徴は、コンテンツの多言語対応をネイティブが担当するという点です。世の中では、以前は機械翻訳、最近ではAI翻訳が使われていることが多く、また外国人が担当していても必ずしもネイティブではないケースも少なくありません。
―― ネイティブでない、というのはどういう場合でしょうか。
藤本氏: たとえば、英語は世界中で使用されていますが、アメリカ・イギリス・オーストラリアの人たちから見ると、インドやシンガポールで使用されている英語はかなり違和感があります。どちらかと言えば、アメリカやイギリスの英語が「スタンダード」とみなされていますので、海外向けの英語サイトはアメリカ英語やイギリス英語のネイティブ話者が翻訳するのが良いでしょう。フランス語やスペイン語などでも同じことが言えます。
実際に私たちも、海外サービスの日本語ページに記載されている文章や、ECサイトに並ぶ海外製品の日本語での説明文が何かおかしいと感じたり、写真やイラストが日本人ウケしないものだったり、極端なケースでは日本だというふれこみで、アジアの別の国の写真が使われていたりと、そんな場面に遭遇したことが1度ぐらいはあるのではないでしょうか。それがあなたのサイトの外国語版ページでも起きているかもしれません。
こうしたことは「些細なこと」と考えるかもしれませんが、その違和感のせいで、せっかくのブランド価値を低下させたり棄損させたりしてしまうのはもったいないでしょう。
―― ローカライズ先として依頼が多い言語はどこでしょうか。
藤本氏: ご依頼いただくのは圧倒的に英語と中国語が多いですが、フランス語やスペイン語など、主要な言語であればすべて対応可能です。珍しいところでは、ネパール語に対応したこともあります。
最近ではベトナム語のニーズも増えていて、当社でもいくつか手掛けています。
―― なぜ今ベトナム語なのでしょうか。
藤本氏: 日本企業にとって、これまではベトナムと言うと、現地に工場を建設して製品を製造してもらうイメージが強かったかと思いますが、近年はベトナムも経済力をつけてきており、日本から現地向けのビジネスが多数参入し始めています。
たとえばベトナム人の若者に向けた化粧品ビジネスなどは好評で、当社も20代のベトナム人女性メンバーをアサインして、デザインやキャッチコピー、写真選定などを担当してもらっています。
―― そこまで幅広い言語のネイティブスピーカーを用意できるのはなぜですか。
藤本氏: 実は当社は、世界各国の知日人材とのネットワークを持っているからです。
当社はかつて、世界中から留学生のインバウンドをサポートしており、その時の学生さんたちと今でもつながっています。つまり日本で学んだ知的水準高い人たちのネットワークが世界中に構築できているのです。日本の文化や風習を知る現地の人たちが監修してくれるため、誤った情報発信をしてしまうこともなく、また、こちらのニュアンスを上手に伝えてくれます。
楽天やアマゾンをやめて自社ECサイトへ移行する際にはサイト制作以前にやるべきことがある。
―― 現地のネイティブの方々が監修を務めてくださるのであれば、現地のちょっとしたマーケティングリサーチ的なこともお願いできますか。
藤本氏: ありがとうございます。とても良い質問です。具体的なマーケティングの施策は、関連の別会社が担当していますが、当社がワンストップで承ります。
ご指摘のように、海外にビジネスを展開する際、マーケティングはとても重要です。
ECサイトを発注する場合、多くのお客様が制作費のことしか考えていません。「サイト作った後、どうしますか?」「サイトにアクセスしてもらうための予算はつけていますか?」「事前に潜在顧客がいるかどうか調査するための予算を準備していますか?」という質問をぶつけると返答に窮してしまうお客様が多いのが実情です。
―― サイトさえ開設すれば売上げがあがると思い込んでしまう、ということですね。
藤本氏: これは海外も国内も関係ないのですが、たとえば自社でECサイトを構築したいというお客様の多くは、すでにアマゾンや楽天、ヤフーなどのネットモールである程度売上を上げています。しかしモールの運営元にこれ以上手数料を払うのはイヤだから自社ECサイトを構築したい、というのが自社サイト立ち上げの動機であることが少なくありません。
しかし勘違いをしてはいけないのは、多くのケースでは、「アマゾンや楽天だから売れている」という事実です。特別に有名な企業やサイトでない限り、自社サイトに切り替えたからといって、すぐに同じ売上は上がらないということです。たとえ、そこそこ有名だとしても、何の手も打っていなければ、ネット検索の結果の上位には決して登場しません。
―― 楽天やアマゾンのおかげで露出度が上がっていたということですね。高い手数料はその費用だと。
藤本氏: ですから、当社がよくアドバイスを差し上げるのは「まずアマゾンや楽天なしでも売れる体制作ってから自社サイトを作りましょう」ということです。SNSで知名度を上げ、フォロワーも増やしておく。そこからアマゾンへ流入させるといった仕組みを作るのが先。それができれば、アマゾンから自社サイトへ流れを変えてやるだけで、集客することができます。
日本国内向けでもそうなのですから、海外となればなおさらです。せっかく何百万円もかけてサイトを作っても、誰にも見てもらえません。
中小企業や個人事業主の場合、予算は限られていることも少なくありません。そうした場合には「(今回はサイトを)作るのはやめて予算はマーケティングに投入し、既存のネットモールに消費者を誘導できるぐらい知名度をつけてから(サイトを)作りましょう」と提案することもあります。
集客のための多言語化されたコンテンツ制作もお任せ。すでに外国のお客様がいるのであれば、なぜ売れているのか調査だけでもしてみるべき。
―― 知名度を向上させ、海外からも集客できるサイトに育てるためには、どうすれば良いでしょうか。
藤本氏: ネット広告、SEO対策、SNSを通じた発信や、インフルエンサーを通じた拡散など、国内と同様にさまざまな方法があります。
また、当社の多言語対応力は、現地に向けたコンテンツマーケティングの強みにもなっています。
検索エンジンの上位に表示されるようにするためのSEOライティング、リピーターを定着させるオウンドメディアの展開など、自社サイトのコンテンツを継続的に増やしていくことは効果的です。こうしたコンテンツも多言語で展開できるのが当社の強みと言えるでしょう。
マーケティングを行う当社の関連会社は、独自のコンテンツライティングチームを持っています。リーダーは日本人ですが、拠点はコロンビアに構えていて、日本語、英語、スペイン語、ポルトガル語の4か国語でマーケティングを行っています。
―― すでに外国人のお客様が買ってくれているというケースは、多言語ページ制作を進めてOKでしょうか。
藤本氏: 基本的にはOKですが、日本語サイトだけで販売しているのに、明らかに外国人が買っているとか、実店舗に外国人がよく訪れるとか、すでに実績があるのであれば、その人たちはどのようして来店したのかを知っておくべきです。Google翻訳で調べてきたのか、インフルエンサーのような誰かに紹介されてきたのか、どこかに何か理由があるはずです。
既存のお客様による再現性がどれぐらいあるのか、果たしてフランス語版のページを作れば、フランス人にも売れるようになるのかが分からないのに、フランス語版のページを作るのはリスクが大きいでしょう。
まず事前調査だけ行ってみるというのも一つの方法かもしれません。多言語版のページを作るかどうかは、その結果を見てからでも良いのではないでしょうか。
サイトだけでなくリアル店舗にも多言語対応。時には言語に頼らない手法が有効なことも!
―― 店舗を構えている場合にはサイトと実店舗との連携も大切とのことですか。
藤本氏: インバウンド需要の場合、多言語対応しなければならないのはWebサイトだけとは限りません。リアル店舗に来店されるお客様に対する案内文なども多言語対応しておかなければ、せっかく来店されたお客様にご満足いただけないからです。
ところで、多言語対応と言っても、中には言語に頼らない対応策もあります。
―― それはどういうものでしょうか。
藤本氏: ある旅館では、風呂の入り方なども含め、館内表示も変更するというご提案を差し上げました。それ以前は、日本人でも読めないような達筆の文字で書かれた案内が掲げられ、イラストも添えられていませんでした。デザイナーの手を借り、それらを出来る限りイラストで構成されたものに置き替えていきました。
そもそも長文で案内を書いてあると、日本人でさえ細かく読む人はいません。そこで「こういう格好で歩き回らない」などのメッセージを可能な限りイラストで表現して掲示するようにします。Webサイトも言語は日本語と英語だけにして、店内と同じイラストを散りばめます。
たとえば空港や新幹線からのアクセスなど、日本語版でも文字だけだったものを、イラストマップに置き替えました。
―― できるだけ言葉で説明しなくても分かるようにするということですね。
藤本氏: こうすることで副次的効果もあります。たとえば私たちが海外に行ったときに日本語表記があると、日本人スタッフいるのかと思ってついつい日本語で話しかけてしまうことがあります。同じように英語対応をするとネイティブのスタッフがいるのかと思われてしまうかもしれません。
スタッフ全員が日本語しかできなくても対応できる店舗作りができれば、指を指して示すだけでコミュニケーションがとれ、スタッフの対応もやりやすくなります。
そういうお店の方針というか、カルチャーのようなものを、サイト作りの面から醸成していくこともできます。
当社は、多言語対応について、さまざまな視点から多様なアイデアをご提案させていただきます。継続的に発注いただければECサイト制作はできるだけ費用を抑えることも可能です。予算配分なども含めて、ぜひ一度ご相談ください。