SNSや動画メディアの普及により、動画コンテンツの需要はかつてないほど高まりを見せています。それに伴い、「動画クリエイター」を目指す人も増えていますが、編集スキルだけではプロとして仕事を獲得し続けることは難しいのが現実です。
そんな中、注目を集めているのが、“動画で企業の課題を解決できる人材”の育成に特化した動画編集スクール「UP!START」です。動画制作を軸に、営業力や提案力といったビジネススキルも総合的に学べる点が特徴です。
このスクールを運営するのは、株式会社PRstoreの代表・杉林 諭氏。今回の取材では、「UP!START」設立の経緯やカリキュラムの特徴、そして今後の展望について杉林氏にお話を伺いました。
「動画編集スキルだけではもう生き残れない」、”動画で人が行動する心理学を駆使した企画・構成力”や”提案力・営業力”まで学べるのが動画編集スクール「UP!START」
―― ネットで「動画クリエイター養成スクール」と検索すると、たくさんのスクールが出てきます。そうした一般的なスクールと比べて、御社が運営する「UP!START」にはどんな特徴や違いがあるのでしょうか。
杉林氏: 多くの動画クリエイタースクールでは、撮影技術や編集スキルを学ぶことがゴールです。これらは、動画クリエイターになるための“基礎”として欠かせないものです。ただ、もうそれだけでは、「プロとして活躍するのは難しい時代になった」というのが実情です。実際、撮影や編集ができる人は、今や「たくさんいる」のです。
では、プロとして求められる“強み”とは何か。それは、「売上や集客、採用につながる動画」や「ブランド認知を高める動画」など、企業が求める成果を出せる動画を企画・構成・制作できる力です。「UP!START」は動画制作スキルに加え、【売れる構成力】【企業課題を読み取る力】【高単価案件を獲得する営業スキル】までを一貫して教える点が、他スクールと大きく異なります。 加えて、“成果に直結する動画”とは何かを学び、それをクライアントに「どう伝え」「どう納得してもらうか」までを実践的に学ぶカリキュラムを用意しています。
―― 単に編集スキルだけでなく、プロとして仕事を続けていくための要素も、包括的に学べるのですね。
杉林氏: その通りです。たとえば、「高単価だけではなく、継続的に案件を獲得する方法」もカリキュラムに含まれています。
稼げる人と稼げない人の差は「売り場」と「売り物」の違いにある
―― それは、すでに現場で活躍している人でも知りたい内容ですね。具体的に、どんなことがポイントになるのでしょうか。
杉林氏: たとえば、売れない動画クリエイターと売れてる動画クリエイターでは、具体的に何が違うのか?それは、「売り場」と「売り物」がまったく違うという点にあります。売れない動画クリエイターがよく陥るのが、「クラウドソーシングで単発の安価な案件を受け続ける」という構造です。単価3,000〜5,000円の案件を積み上げても、生活できる収入にはなりません。
そこで「UP!START」では、「売り場=年間予算を組んでいる中小企業」、「売り物=動画そのものではなく“課題解決策”」として指導をしています。企業が求めているのは“かっこいい動画”ではなく、「集客を増やしたい」「採用を成功させたい」などの成果です。つまり、動画はあくまで手段であり、成果を生み出す設計力と提案力こそが武器なんです。
私たちは、「信頼性(あなたにお願いしたい)+必要性(動画を作りたい)=100」を目指そうと教えています。この状態をつくることができれば、営業しなくても自然と案件の相談が来るようになります。
―― 御社は動画制作を中心とした事業を展開されておりますが、「UP!START」開校のきっかけには、どんな経緯があったのでしょうか。
杉林氏: 私が動画クリエイターとして独立したのは2018年のことです。そして3年後には、案件が多すぎて一人では抱えきれないほどの状態になっていました。当時は外注メンバーを20名ほど抱えていたのですが、まさに「2:6:2の法則」通りの状況でした。スキルが非常に高いのは2割。普通が6割。そして、残りの2割は明らかにスキル不足だったのです。結果として、外注費を払いながら、全体の8割に動画制作の基礎から教える日々が続いていました。これは非常に非効率で、「さすがにこのままでは限界だ」と感じていたのです。
そんなとき、信頼している経営者の方から「杉林くんの持っているノウハウを継承できるスクールを作って、そこで育った人たちとホールディングスの形でビジネスを拡大してみたらどうか」というアドバイスをいただきました。その言葉に背中を押され、半年後にスクールを立ち上げたという流れです。
―― 杉林さんと同じようなノウハウを持ったクリエイターを育て、協業できる体制が整えば、本業である動画制作にもプラスに働く、という考えだったのですね。
杉林氏: はい、まさにその通りです。実際にスクールを開校してみて改めて気づいたのは、どれだけスキルが高くても、コミュニケーションが取れない人とは一緒に仕事ができないということです。動画制作の現場では、クライアントとのやり取りやチームメンバーとの連携が欠かせません。だからこそ、技術やノウハウだけでなく、“価値観の共有”がとても大切なんです。
「UP!START」では、その点も意識して、私自身の理念や考え方もカリキュラムの中で伝えるようにしています。スキルだけを教えるのではなく、「どんな姿勢で仕事に向き合うか」も含めて、一緒に学んでもらっています。
動画教材とライブ講座の併用で、動画編集から営業力まで徹底サポート
―― スクールでは、具体的にどのような教え方をしているのでしょうか。
杉林氏: 基本的には、動画教材を使ったオンラインスクールです。ただ、それだけでは受講生の成長を十分にサポートできないこともあるため、双方向型の教育にも力を入れています。具体的には、週に2回〜3回ほどのライブ講座を取り入れています。動画をただ視聴するだけの一方向型の学習だけでは、ちょっとしたつまずきで自信を失う可能性を考慮し、フォローアップとして、ライブ講座を行っています。

代表取締役社長
杉林 諭氏
ライブ講座では、直接ビデオ通話を通じた個別相談にも乗っています。その場でリアルタイムにやりとりをしながら、受講生の悩みや疑問を一緒に解決していきます。「UP!START」では動画編集だけでなくデザインの基礎も学べるため、たとえばPhotoshopの操作方法をライブ講座で取り上げることもあります。操作につまずいたときは、その場で質問してすぐに解決できる仕組みです。また、「自分の作った動画を、どんな媒体でお客様に使ってもらうか」、動画の活用方法や提案の仕方も指導しています。技術だけでなく、実際の“仕事の現場”を意識した学びができるのが大きな特徴です。
―― 単に動画を作るだけでなく、“作ったあとのこと”まで指導されているのですね。
杉林氏: はい。私たちは、動画はあくまで“課題解決の手段のひとつ”にすぎないという考え方を大切にしています。たとえば、お客様によっては「動画を作ること」よりも、ホームページの改修が必要な場合もありますし、SNS(LINEやTikTok、Instagramなど)の運用強化が優先されることもあります。そのため、「UP!START」は動画スクールとは言われていますが、現代のビジネスにおいて必要な知識として、LINE構築のノウハウなども同時に教えているんですよ。
だからこそ、まずはしっかりとヒアリングを行い、お客様の“真の課題”を発見すること。その上で、動画が最適な解決策であるなら、それを提案・制作する。そうした「課題解決型の提案」ができるクリエイターの育成を目指しています。
また、営業スキルについても、ただ動画教材で学ぶだけでは不十分です。学んだことが実際の場面で“使えなければ意味がない”と考えています。そこで、ライブ講座では営業や商談のロールプレイを取り入れ、受講生が実践的な経験を積めるようにしています。単に知識を教えるだけではなく、「行動に移せるスキル」として身につけてもらうことを重視しています。
―― 動画スキルだけでなく、営業スキルまで身につけられるというのは、とてもユニークですね。
杉林氏: ありがとうございます。私たちは、「売れる動画を作るスキル」と「動画を売るスキル」は、まったくの別物だと考えています。多くの人が、この2つを同じものとして捉えてしまっている。その結果、せっかく技術があっても仕事につながらない…という失敗をしてしまうのです。
「UP!START」では、動画制作のスキルと営業力を“車の両輪”と位置づけ、両方をバランスよく学べるカリキュラムを組んでいます。特に営業スキルは、どんな時代になっても通用する“一生モノ”の武器です。たとえば、今後動画の時代が終わり、課題解決の手段が「ホログラム」に変わったとしても、営業スキルがあれば、その新しいツールを学び、提案していくことができます。
「動画編集ができるから自分は一人前」と思ってしまう人は多いですが、本当に大切なのは、お客様に「動画が必要だ」と感じてもらえる提案力・プレゼン力です。いくらスキルがあっても、それを伝える力がなければ宝の持ち腐れになってしまいます。そうならないように、ぜひ営業スキルも一緒に学んでほしいと考えています。
卒業は通過点。無制限教材にリアル講座、案件コンペなど「UP!START」が育むビジネスパートナー
―― 実際には、どのような方がスクールを受講されているのでしょうか。
杉林氏: 受講者は大きく3つのタイプに分かれます。「本業を持ちながら、副業として動画編集を学びたい方」「主婦の方」「フリーランスや経営者の方」。それぞれの割合としては、副業希望の方と主婦の方がそれぞれ約4割、経営者の方が約2割となっています。
受講生の人数としては「UP!START」単体では現在約180名(2025年4月時点)の方が在籍していますが、提携している別のスクールでもライブ講座を提供しており(2025年4月時点)、そちらを含めると延べ約1,800名の方に受講いただいています。
―― スクールには、どのようなプランが用意されているのでしょうか。
杉林氏: 現在、「UP!START」では2つのプランをご用意しています。(2025年4月時点)
■ プレミアムコース
最大の特徴は、私が商談に同席してサポートする特典が付き。このサポートは6ヶ月間、何度でも利用可能で、実際の営業現場を体感していただくことができます。商談の様子は録画データとしてお渡ししているので、後から復習したり、自分の営業活動の参考にしたりできるのも好評です。
■ スタンダードコース
このコースには商談同席の特典は付きませんが、それ以外のカリキュラム内容はプレミアムと共通です。
■ 共通カリキュラムとサービス内容
受講期間の目安は6ヶ月。ただし、「卒業」の概念はなく、修了後も以下のサービスが利用可能です。
・動画教材は無制限に閲覧可能
・受講生同士のチャット交流環境も利用し放題
・北海道・東京・大阪のリアル講座に参加可能(撮影技法などを実地で学習)
・スクール運営側が受注した案件のコンペに応募可能(実案件に関われるチャンス)
■ サポート体制と継続オプション
フィードバック対応やチャットでの個別相談など、私たちの人件費を伴うサポートは、受講開始から6ヶ月で一旦終了とさせていただいています。ただし、7ヶ月目以降もサポートが必要な方のために、月額定額制の継続サポートプランをご用意していますので、長期的に学びたい方も安心してご利用いただけます。
スクールからビジネスパートナーへ。“売上につながる人材”を育てる
―― 卒業という概念がないのも、とてもユニークですね。
杉林氏: ありがとうございます。「UP!START」は、もともとビジネスパートナーを育成する目的で立ち上げたスクールです。そのため、単にスキルを教えるだけでなく、私たちと同じ“ビジネスの厳しさ”や“やりがい”を共有できる人材の育成を目指しています。
講座のカリキュラム自体は6ヶ月を目処に修了しますが、修了後もビジネスパートナーとして関係は続いていきます。実際に、スキルや姿勢が合えば、お仕事をお願いするケースもあります。たとえば、「UP!START」の講座を修了した方は全国にいらっしゃるので、当社が受注した地方の案件に対しては、現地のクリエイターに担当してもらうということも可能です。この仕組みは、移動費や宿泊費といったコストがかからないため、動画制作を発注される企業様にとっても大きなメリットになります。
企業とのアライアンスも視野に。紹介制度や研修導入によるB向け拡大も
―― 最後に、今後の展望について教えてください。
杉林氏: 今後は、企業とのアライアンスによる紹介制度(代理店化)も積極的に推進していきます。具体的には、「社員のスキル育成」や「社員の自己成長支援」として「UP!START」を導入いただく企業をパートナーとして募集しています。
企業がUP!STARTとパートナーになるメリットを5つに落とし込むと、
1. 社員のスキルアップを支援
動画編集、デザイン、マーケティング、営業スキルまで、ビジネスに直結するスキルをオンラインで学べます。
2. 人材育成コストの削減
社員を個別に外部講座に通わせるよりも、UP!STARTのオンラインカリキュラムを活用することで、コストを抑えつつ確実にスキルアップを実現できます。
3. 企業ブランディングの強化
社員が動画制作やマーケティングスキルを持つことで、企業の広報・マーケティング施策を内製化でき、迅速かつ効果的な情報発信が可能になります。
4. 成果保証型カリキュラム
ただ学ぶだけでなく、案件獲得や実践的な営業スキルを学べるため、成果に直結しやすいのが特徴です。
5. 紹介報酬制度
企業がUP!STARTを他社に紹介し、受講生が入会した場合、紹介報酬をお支払いします。これは、企業にとっての副収入にもなります。
また、企業の研修プログラムとして導入し、社員が実際の企業案件に取り組みながらスキルを習得する「実践型カリキュラム」も提供可能です。企業が持つ課題をベースにした動画制作プロジェクトに取り組み、即戦力となる人材育成が可能です。
UP!STARTは今後、「動画スキルを学びたい個人」と「スキルを持つ人材を確保したい企業」をつなぐハブのような存在として、さらなる価値を提供していきたいと考えています。
合宿型リアル講座やクリエイターズカフェ──未来をつくる“遊び心”と“仕組み”の両立へ
杉林氏: さらに直近の取り組みとして、営業×マーケティングに特化した合宿型講座を本格始動させます。これは、ただ学ぶだけじゃなく、実際にその場でお客様の課題を発見し、提案し、売るところまでやってみる──そんな、ビジネスの“筋トレ合宿”のようなもの。すでにテストでは好反応をいただいており、今後は定期開催も視野に入れています。
そして、個人的に一番ワクワクしているのが、“クリエイターズカフェ”の開設構想です。全国から動画クリエイターが集まり、案件が掲示され、講座やイベントが開かれ、企業ともつながる――
いわば、“モンスターハンターみたいに案件を選べるギルド”のようなリアル拠点です。ここでは、スキルに応じた案件を選んだり、仲間とチームを組んで挑んだり、カフェで商談したり。
「学ぶ・働く・出会う・育つ」が全部叶う、クリエイターの秘密基地のような空間にしたいと考えています。
“育成するだけ”で終わらず、“業界ごと動かしていく”。
それが、今の「UP!START」が見ているビジョンです。