「最近よく耳にするAIは、具体的に何ができるものなのだろうか?」「AIを用いた業務を効率化したいけれど、何から始めるべきかわからない」、昨今流行りのAIについて、こうした疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。そのような場合に紹介させていただきたいのが、AIを利用した画像解析技術で企業の課題を解決し続けてきた株式会社ワイ・シーソリューションです。同社代表取締役の梅田 真氏によると、AIはあらゆる業界において業務のあり方を変える可能性を秘めたソリューションになるとのこと。一方で、その特性上、受け身の姿勢ではAIの可能性を引き出すことができません。AIを使いこなすために発注者はどのような知識を習得しておくべきなのか。今回は、画像解析AIを用いた業務改善を実現する3つのポイントについて、詳しくお話を伺いました。
最新のAIで業務改善を実現する3つのポイント
―― はじめにAIが企業の業務においてどのように活用できるか教えてください。
ワイ・シーソリューション 梅田氏: AIにはさまざまな可能性が秘められていますが、企業の日常的な業務における活用という観点では、膨大な量のデータ処理に関する能力に着目すべきだと考えています。また、関連するものとして膨大なデータからパターンを見つける能力も利用しやすいでしょう。AIの持つこれらの基礎的な能力から発展させる形で、さまざまな業務への活用が期待できます。
例えば、単純な内容の問い合わせに対応するためのパターンを構築できれば、AIが自動で問い合わせ対応を行ってくれます。また、画像解析の技術とAIを組み合わせることで、道路や施設内における人の動きをパターン化し、それをセールスに活用することもできます。このようにAIを業務に活用するためには、そもそもAIが何を得意としているのかを把握する必要があるのです。
―― AIを用いた業務改善を成功させるための3つのポイントがあると伺いました。こちらについてもご説明いただけますか。
梅田氏: 結論から述べると、3つのポイントは次の通りになります。
- AIの特性を理解すること
- AIに任せる作業と人の手で行う作業の違いを理解すること
- AI開発を依頼する場合は、ワンストップで開発できる会社を選ぶこと
1つ目「AIの特性を理解すること」は、AIに何ができて何ができないのかを知るという意味です。先ほども申し上げた通り、業務にAIを活用するためには膨大なデータの処理および分析の能力を起点として考えるのがおすすめです。一方で、参照すべきデータがない状態でのアウトプットはAIにはできません。また、同様に人が行うような意思決定やプロジェクトの管理もAIには難しいでしょう。
―― なるほど。参照すべきデータがあって、その分析から最適解を導くツールがAIということですね。2つ目以降のポイントについてもお聞かせください。
梅田氏: AIに任せずに人の手で行わなければならない代表的な作業に「アノテーション」があります。これは無機質なデータに意味を与える作業を指します。例えば、弊社はカメラとAIを組み合わせて公道上の車両を検知するシステムの開発を得意としていますが、カメラを通してAIに提供される動画の中で、どれが車なのかをAIに教える作業がアノテーションです。昨今は自動でアノテーションの一部を行う技術も発達してきましたが、これまでアノテーションは全て人の手で行うものでした。動画を確認して全ての車を赤枠で囲い、「これが車です。ビル、標識、歩行者は車でありません。」とAIに教えていたのです。非常に地道な作業ですが、AIによる検出の精度を高めるために必要不可欠なものになります。参照データがない状態で、AIが自ら車を車と認識することはできません。こうした人の手で行う作業により参照データを構築できて初めてAIの能力を活かせます。こうしたAIに任せる作業と人の手で行う作業の違いは、AIを用いた開発に臨む前に把握しておくべきポイントです。
また、AI開発を依頼する場合は、開発に関連する全工程をワンストップで開発できる会社を選ぶべきだと考えています。画像解析AIに関する開発であれば、カメラの設定、ネットワークの構築、AIの開発、AIの設定、AIが収集分析したデータを確認するためのWEBアプリケーションの開発。こうした工程を複数の会社に依頼すると、情報共有コストが高くなり、結果としてAI開発のコストも高くなります。また、各社による認識の齟齬によりお客様のイメージと異なる成果物が納品される恐れも高くなるでしょう。こうしたリスクを避けるために、AI開発は全工程に対応できる1社と取り組むのをおすすめしています。
AI開発を進める5つのプロセス
―― 続いて、AI開発を進める手順について教えてください。多くの企業様が気になるポイントかと思います。
梅田氏: AIを開発する一般的な手順は次の通りです。
- AIが学習に使う素材の収集(写真や動画)
- 素材にアノテーションを付与
- アノテーションを付与した素材をAIに学習させる
- 学習結果に対して評価を実施(検知範囲や検知率など)
- AIの実装(必要に応じてユーザー用WEBアプリケーションの調整・作成)
原則として、素材の収集およびアノテーションは人の手で行います。また、AIの学習結果に対する評価も人が行います。このようにAIの開発手順には人の手で実行する部分が多く含まれているのです。AIというと自動化・省力化というイメージが強いかもしれませんが、AIがデータを正しく評価できるようになるまでは、人の手による作業が必要になります。そうした作業の先に自動化や省力化のメリットを得られるとイメージしてほしいと思います。
―― AIの開発手順を把握していないために開発が頓挫するようなケースはあるのでしょうか?
梅田氏: これらの手順を詳しく説明すると「AIは何でも自動でやってくれるものだと思っていた」という反応を頂戴するケースがあります。また、人の手で行う作業に関連する工数がハードルとなって、AI開発を断念する場合も少なくありません。
弊社の場合は、3Dシミュレータ上に構築した現実空間で学習データの作成を行い、人の手で行うべき作業工数を大幅に削減する取り組みも行っています。しかし、何よりも重要なのは、開発手順の中で発生する作業工数を正確に把握した上で、業務にAIを導入して将来的に得られるメリットを確認することだと考えています。こうした戦略的なアプローチでAI開発を評価できるようになると、業務にAIを活用する具体的なイメージも構築できるはずです。
AI開発のコストの課題を解決する2つの取り組みで、誰もがAIを利用できる社会を実現
―― 御社には、これまで多くのAI開発を行ってきてきた実績があるかと思います。AI開発をサービスとして提供する上で気をつけているポイントがあれば教えてください。
梅田氏: AIは先端的な技術であり、これまでのシステムではできなかったことを実現できます。しかし、開発において弊社のような開発会社が担う役割は従来のシステム開発と大きく変わりません。私たちは、はじめにAIに関する専門的な知識をお客様にお伝えします。AIで対応できる業務の範囲、AIの特性といった知識を丁寧に説明いたします。
その上で、お客様のビジネス、ビジネスにおける課題、課題が解決された姿のイメージなどについてお客様からご説明いただき、それらの個別具体的な状況に対してAI開発を用いて提供できるソリューションを提案いたします。こうしたプロセスは従来のシステム開発と同様であり、正確かつ膨大な専門知識があるからこそお客様の課題をより良い形で解決する提案ができると考えています。
―― 御社にはAI開発を導入するハードルを下げるさまざまな取り組みがあると伺いました。具体的な内容について説明してください。
梅田氏: 該当する取り組みは2つあります。1つ目は、先ほども申し上げた3Dシミュレータを利用した学習データの作成です。現実の空間ではなく3Dシミュレータを利用することで、アノテーションを含めた学習データの作成にかかる膨大なコストを大幅に削減できます。また、現実の空間では発生率が低い珍しい事象の学習も容易にできるため、短期間でより正確なデータをAIに学習させることが可能です。こうしたデータ作成に関するコストおよび工数を削減することで、AI開発全体にかかるコストの削減につながります。AI開発において発生するコストに不安を抱えているお客様には、ぜひともお問い合わせいただきたい取り組みです。
2つ目は、新しいアイデアの実現可能性を探るPoC(Proof of Concept:概念実証)の段階では、検出の精度を落とした分、コストも削減する形でAIを用いたシステムのテストができます。AIの利用により成果が出るかどうかをリーズナブルに確認したいお客様に提供するサービスです。こうしたPoCを経て、AIを導入するために必要なコストと導入後のメリットを正確に把握でき、リスクの低い形でAI開発に臨むことができます。
また、弊社では画像生成型AIをアノテーションに利用する研究も行っています。AI開発について一定の知識を得たときに、多くの企業がハードルに感じる工程がアノテーションです。こうしたアノテーションに関連する工数やコスト削減の取り組みを継続していくので、お客様に提案できる内容も幅広くなると考えています。
道路業界等における画像解析AIで培った知見を他の業界にも広めていく
―― ここまでのお話でAI開発に臨むために必要な知識を理解することができたと感じます。AIによる検出の精度を高めるためにアノテーションが重要であり、それにかかる工数とコストをふまえてAI開発全体の計画を立てる必要があると理解しました。続いて、御社でAI開発を行った過去の実績について聞かせてください。
梅田氏: 弊社ではさまざまなAI開発を行っていますが、実績として高速道路の出入口で使用する逆走・侵入検知システムを紹介します。当該システムは、高速道路の出入口に赤外線カメラを設置し、取得したデータについて画像解析AIを用いた分析を行い、侵入や逆走があった場合に警告を発するものです。高速で車両が移動する現場において、人、自転車、車、それぞれの進む方向を正確に検出する必要がありました。また、屋外のため時間帯や天候によって観測環境が変化する中で、事故を未然に防ぐための正確なAI開発が求められたプロジェクトです。
このように環境の変化がある中で、高い安全性が求められる開発では、当社の次のような知見が役立ちます。
- 画像データを取得するカメラに関する知見
- エッジコンピューティングに関する知見
エッジコンピューティングとは、データを収集するカメラなどの端末から物理的に近い場所でデータ処理を行う手法です。全てのデータを収集してクラウドで一元的に処理するクラウドコンピューティングと比較して、ネットワーク負荷が小さく、ネットワークがダウンした場合もデータ処理を継続しやすいという特徴があります。これらの現場で培った知見を活かしたAIの開発ができる点が当社の強みの1つです。
●逆走・侵入検知 | ●駐車場監視 | ●交通量測定・アニメーション変換 |
―― 御社が過去に培ってきたAI開発の技術はさまざまな業界に応用できるものと聞いております。具体的にはどういったビジネスを営む企業様の開発に強みを発揮できるでしょうか?
梅田氏: 弊社はもともと土木建設コンサルタントを営む会社のグループ会社として、建設業界および周辺業界に対してAI開発サービスを提供していました。現在は独立していますが、現場における専門的な知見を用いた開発を得意としています。
一方でこれまで培ってきた画像解析およびAI開発の技術はさまざまな業界における課題解決に役立つと考えています。例えば、陸海空をはじめとした屋外における異常検知には当然対応できますし、都市における人や物の動線を検出してマーケティングや開発計画に活かすような取り組みの支援もできます。このように本来は収集・分析すべき膨大なデータがあるにも関わらず、工数やコストの問題で収集・分析できていなかったという課題に対して全工程をワンストップで支援できる点が弊社の強みです。
AIを用いて何を実現できるのか?疑問を抱えた状態でもぜひともご相談ください
―― 御社のお話を聞いて、AIの活用が身近に感じられるようになりました。最後に、御社の今後のビジョンをお聞かせください。
梅田氏: AIを開発している弊社だからこそAIの可能性を理解しています。AIはこれまでに存在しなかった強力なツールであり、さまざまな業界の課題を解決する可能性を秘めているでしょう。こうした中で、弊社はこれまでの開発経験を活かし、各業界に対してAIに関する知識を広めていきたいと考えています。
自社のビジネスにAIを活用して何を実現できるのか。こうした疑問を抱えている段階でのご相談で差し支えないので、ぜひとも一度お打ち合わせの機会を頂戴できたらと考えております。その際はAIの特性をはじめとした内容をお伝えした上で、AI開発を用いて実現できるものについて幅広く提案させていただきます。
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