「受託開発でアジャイルは難しい」と感じていませんか?実は、適切な準備とチームづくり、そして顧客とのパートナーシップを重視することで、受託開発でもアジャイルは十分に実現可能です。本記事では、現場で使える実践ポイントや契約形態の工夫、そして継続的なチーム設計のポイントまで、分かりやすく解説します。変化に強い開発体制を目指す方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
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アジャイルは受託開発でも導入できる
現代のビジネス環境は変化が非常に早く、従来の開発スタイルだけでは顧客のニーズに十分に応えきれない場面が増えています。そんな中で注目されているのがアジャイル開発です。これまで、「受託開発の現場ではアジャイルの導入は難しいのではないか」と感じていた方も多いかもしれません。しかし、実際には、受託開発とアジャイル開発は決して矛盾するものではありません。むしろ、適切な方法を取れば、両立させることで顧客と開発会社の双方に大きなメリットをもたらすことができるのです。ここでは、受託開発の現場でアジャイルを実践する際のポイントや考え方、具体的なメリットについて解説します。
●受託とアジャイルは両立できる
受託開発の特徴を理解したうえで、アジャイル開発の考え方や手法を取り入れることで、柔軟な価値提供を実現できます。従来の受託開発では、契約時に決められた仕様書に沿って納期内に成果物を仕上げることが最優先されがちでした。しかし、アジャイル開発の本質は「顧客にとって本当に価値のあるものは何か」を繰り返し問い、その価値を最大化していくことにあります。開発の過程で顧客や市場から得られるフィードバックを重視し、それをプロジェクトの進行に活かしていくことが求められます。
アジャイル開発を受託開発で実現するためには、仕様を最初から細かく決め切るのではなく、プロジェクトが進む中で学びや発見を反映しながら作り上げていく流れを許容する姿勢が重要です。顧客と開発チームの密な連携が欠かせず、両者が共に価値を創出するパートナーとして協力し合う文化を作ることがポイントとなります。こうした関係性を築くことで、成果物として何を作るかだけでなく、その成果物がどのように顧客の課題解決やビジネスへの貢献につながるか、という本質的なゴールに集中することができるようになるでしょう。
●「できない」と思い込む前に、まずはチーム体制と目的を見直す
受託開発でアジャイルが向かないと感じる主な理由は、組織やメンバーの知識不足、役割分担の不明確さ、コミュニケーション不足、そして契約の仕組みなど、さまざまな現場要因が絡んでいるからです。こうした壁を取り除くためには、まずその理由を具体的に洗い出し、それぞれに対応した打ち手を検討することが効果的です。
さらに、アジャイル開発を成功させるには、開発チームが単なる受け身の集まりではなく、一人ひとりが主体的に判断し、提案できる自律的なチームを目指すことが大切です。プロジェクトの契約段階から開発メンバーが関与することで、後工程との認識のズレや手戻りのリスクを抑えることができ、より現実的で質の高い計画を立てることが可能になります。「考える人」と「作る人」の分断が生まれない体制づくりも意識したいポイントです。
受託開発にアジャイルを導入するメリット
アジャイル開発を受託開発の現場に導入することには、様々なメリットがあります。中でも、変化への迅速な対応力や顧客との強いパートナーシップ、開発チームの成長や信頼構築などが挙げられます。
●変化への柔軟な対応がしやすくなる
現代のビジネスでは、市場や顧客のニーズが絶えず変化しています。アジャイル開発は、こうした変化を前提として、数週間単位で開発サイクルを回しながら少しずつ成果物を作り上げていきます。この短いサイクル(スプリント)ごとに顧客からフィードバックをもらうことで、万が一プロジェクトの方向性にズレが生じても早い段階で修正ができます。
また、すべての要件が固まりきっていなくても重要な機能から開発を始めることができるため、早期に動くものを顧客に見せて理解と納得を得やすくなります。この進め方によって、開発途中で「思っていたものと違う」といったギャップを早めに発見でき、無駄なコストや時間を抑えることもできます。
●顧客と同じ方向を向いて伴走できる
アジャイル開発では、開発チームと顧客が一体となって課題解決に取り組むことが大切にされています。顧客との密なコミュニケーションやフィードバックを短期間で反映できる体制が整うことで、成果物の精度が高まりやすくなります。また、開発チームがただ作業をこなすだけでなく、顧客のビジネス課題を一緒に考え提案できる関係を築くことが可能です。
このような関係性が生まれると、開発会社と顧客は単なる発注者・受注者の立場を超え、真のパートナーとして共通の目標達成に向けて協力し合うことができます。実際に、アジャイル型の組織ではチームに一定の権限を与え、顧客の変化や要望にも柔軟に応えられる文化が定着しています。
受託アジャイルを実現するための契約形態とは
アジャイル開発を受託案件で円滑に導入するためには、契約形態の選び方が大きなカギを握ります。ここでは、請負契約と準委任契約の特徴を比較し、アジャイル開発との相性について見ていきます。
●請負契約はアジャイルと相性が悪い
請負契約は、あらかじめ決めた仕様や納期、金額に沿って「完成品」を納品することが主な目的となっています。そのため、開発中に顧客から新しい要望やフィードバックがあっても、契約上すぐに対応することができません。仕様変更や機能追加には新たな契約や追加交渉が必要となり、柔軟な対応が難しいのが現実です。
請負契約では、最初の見積もり時点で決めたスコープに縛られやすく、開発を進める中でより価値の高い方向が見つかっても、追加コストや手間が増える原因になります。特にビジネス環境の変化やユーザーの新しいニーズに素早く対応したい場合、請負契約の硬直性は大きな足かせとなります。
●準委任契約がアジャイルに適している理由
一方で、準委任契約は「業務プロセスそのもの」に対して報酬が支払われる形態です。プロジェクトの途中で仕様や優先順位が変わったとしても、そのまま柔軟に対応しやすくなります。成果物の「完成」ではなく、「作業の遂行」自体に価値が置かれているため、顧客と開発チームが一体となり、共にプロジェクトを進めていくスタイルに適しています。
この契約形態を選ぶことで、開発チームはフィードバックや学びを活かしながら段階的に価値を高めることができ、顧客も積極的に開発プロセスに関与しやすくなります。
特徴 | 請負契約 | 準委任契約 | アジャイル開発への影響 |
---|---|---|---|
契約の主目的 | 完成品の納品 | 業務プロセスの遂行 | 準委任契約は価値の進化に適応しやすい |
仕様変更への柔軟性 | 低い(契約変更が必要) | 高い(契約範囲内で柔軟に対応可) | 準委任契約はフィードバックを反映しやすい |
報酬の対象 | 完成した成果物 | 作業時間や労働力 | 優先順位変更や新発見への対応が容易 |
責任範囲 | 成果物の契約不適合責任 | 善管注意義務 | リスクを双方で分担しやすい |
顧客との関わり方 | 限られた検収・確認 | 継続的な協調・フィードバック | 理想的なアジャイルの関係性を築きやすい |
このように、受託アジャイルを実現したい場合は、契約形態の工夫が非常に重要です。
受託アジャイルを成功させるためのチーム設計
アジャイル開発の効果を最大限に引き出し、受託開発の現場で成果を上げるためには、適切なチーム設計も欠かせません。特に短期的なチーム編成より、長期的な視点でのチーム育成や文化づくりが成功のカギとなります。
●長期的なチーム継続がカギ
アジャイル開発では、プロジェクト単位で都度チームを組んで解散するのではなく、固定されたメンバーが長期間活動を共にするスタイルが推奨されています。これにより、チーム内の相互理解が深まり、コミュニケーションが円滑になります。過去の経験やノウハウも継続的に蓄積され、問題解決力や生産性が向上していくのです。
同じチームで複数のプロジェクトを経験することで、技術的な知識だけでなく、顧客対応やプロセス改善に関するノウハウも積み上がっていきます。属人性が下がり、特定の人に依存しない安定した体制が整うことも、大きなメリットです。
●チームが顧客と直接話す文化を育てる
アジャイルの現場では、開発チームが顧客との窓口となり、ダイレクトに意見交換や合意形成を行う文化づくりが重要です。間に営業担当やマネージャーを挟まず、開発メンバーが直接顧客の声を聞くことで、情報の伝達ミスや誤解が減り、的確な意思決定ができるようになります。
また、プロジェクトの見積もりや契約交渉といったビジネス面にも開発メンバーが関与することで、より現実的な提案や判断ができるようになり、開発者としての成長も促されます。こうした文化が根付くことで、チーム全体の自律性や提案力が高まり、顧客からの信頼も一層深まるでしょう。
まず取り入れたいアジャイル実践ポイント
アジャイル開発の全てを一度に導入するのは難しい場合もあるでしょう。そんなときは、まずは取り入れやすいプラクティスから始めるのがおすすめです。
●スプリントレビューやふりかえりを導入してみる
アジャイルの実践でまず試したいのが「スプリントレビュー」と「ふりかえり」です。スプリントレビューは、定期的なミーティングで開発した機能を顧客に見せて、フィードバックを直接受け取る機会です。これによって開発の方向性がずれることなく、早期に軌道修正が可能になります。
ふりかえりは、チームメンバーが集まって開発プロセスを振り返り、良かった点や改善策を共有する場です。このサイクルを繰り返すことで、チームは継続的に成長し、問題解決力も養われます。どちらのミーティングにも顧客を積極的に巻き込むことで、チームと顧客に一体感が生まれ、開発プロジェクト全体の質が高まります。
●ユーザーストーリーマッピングやデモを活用する
ユーザーストーリーマッピングは、開発前に「どんな人がどんな目的で使うか」を整理し、関係者全員で共通理解を深める手法です。顧客の要望やニーズを具体的なユーザーの行動に落とし込み、開発チームが本当に作るべき価値を見極めやすくなります。
また、実際に動く画面や機能を顧客に見せるデモンストレーションも非常に有効です。言葉だけの説明よりも直感的に伝わり、フィードバックも具体的になります。こうしたやりとりを通じて顧客の意見を積極的に取り入れ、次に何を優先すべきかを柔軟に判断することで、価値あるプロダクトを一緒に育てていけるのです。
アジャイルは受託開発でも「できる」
これまで解説してきた通り、アジャイル開発は受託開発の現場でも十分に実現可能です。成功のためには、顧客との対話や信頼関係を大切にし、固定化されたチームでスキルやノウハウを継続的に育てていく姿勢が求められます。契約面でも準委任契約などの柔軟性を持たせることで、よりスムーズな導入が期待できます。
そして何よりも、作って終わりではなく、顧客と共に「使われるもの」を育てていくというスタンスを共有することが、アジャイルの真価を発揮するポイントです。変化を前向きに受け止め、学びと改善を繰り返しながら、真に価値あるサービスやプロダクトを目指していきましょう。
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