ビジネスの現場では、デジタル化や業務効率化が求められる今、システム開発を外部のプロに委託する「受託開発」がますます注目されています。しかし、「本当に外部委託で大丈夫?」「どう選べば失敗しないの?」と悩む方も多いのではないでしょうか。この記事では、国内の受託開発市場の現状や成長の理由、導入によるメリット、実際に外部パートナーを選ぶ際に押さえておきたいポイントを分かりやすくご紹介します。これからIT導入やDXを進めたい方、自社に最適な開発体制を考えたい方は、ぜひ最後までご覧いただき、貴社の成長戦略にお役立てください。
目次
新規案件開拓の課題は「発注ナビ」で解決システム開発に特化したビジネスマッチング
受託開発市場の全体像:現状の規模と構造を理解する
日本のビジネス現場では、システム開発の外部委託、つまり「受託開発」が、デジタル化を進めるための選択肢として広く定着しています。とくに近年は、企業のデジタル戦略が進み、それに伴い外部パートナーへのシステム開発委託がますます一般的になっています。ここからは、国内の受託開発市場の現状と特徴について見ていきましょう。
●国内IT関連市場の動向と受託開発の位置づけ
近年、国内のソフトウェア市場は着実に拡大を続けています。IDC Japanの調査では、2024年上半期のソフトウェア市場規模が2兆5,498億円を超え、前年同期比で10.8%増という大幅な伸びを記録しました。これは単なる景気の回復というより、各企業が積極的にデジタル投資を進めている証拠と言えます。業務効率化やAI、サイバーセキュリティ対策への投資が増えたことが背景にあります。
また、ITサービス市場全体も成長が続いており、2023年の規模は6兆5,380億円と報告されています。2024年にはさらに成長し、7兆円を超えると予測されています。特にITコンサルティングやシステムインテグレーションの需要が伸びており、企業がDX推進に向けて新しいシステム導入やクラウドへの移行を進めていることが大きな要因です。
システムインテグレータ分野、つまりSIerが中心となる市場も10兆円を超えており、その中で「受託開発ソフトウェア業」が約半分を占めています。受託開発は、単なる一部のサービスではなく、IT産業を支える主要な領域となっています。大手SIerから中小の開発会社まで、多くの企業がこの領域で活躍しています。
企業のDX推進が進むなかで、社内だけでのシステム開発が難しいケースが増えてきました。その結果、外部の専門家や受託開発パートナーへの依頼が増加しています。システム開発の専門知識や最新技術への対応が必要となり、外部委託がより一般的な選択肢となっているのです。
なお、受託開発市場については単独での公式な統計は少ないものの、情報サービス業全体の売上高の約半分を受託開発が占めていることからも、その重要性が分かります。今後もこの傾向は続き、受託開発はますます広範なニーズに応える存在として期待されます。
参考:2024年上半期の国内ソフトウェア市場は前年比10.8%増 ~IDC Worldwide Semiannual Software Tracker を発行~
●受託開発の具体的な市場規模感と最近の変動
アプリケーション開発分野では、2024年上半期の市場成長率が15.1%を記録しています。とくにAIやビジネスインテリジェンス(BI)、CRM分野では二桁成長が続いています。AI基盤市場は前年比58.8%増、BI市場も17.5%増、CRM市場も15%を超える成長となっており、最新技術を活用した開発案件が増えています。
SIer市場全体も今後5年間で年率5%ほどの成長が予想されており、大手SIerだけでなく中小企業にも新たなチャンスが広がっています。ソフトウェア関連売上の8割以上が受託開発などの開発業務に充てられているという過去のデータからも、開発業務が今後も市場の中心であることがうかがえます。
また、AIやIoT、クラウド、サイバーセキュリティ、金融や医療など専門知識が求められる領域では、企業内だけで人材を確保・育成するのが難しいため、外部の受託開発会社への依頼が拡大しています。これにより、開発会社はますます高付加価値なサービスを求められる時代になっていると言えるでしょう。
●業界の特色と主要な開発分野
受託開発がカバーするシステムは幅広くありますが、とくに業務効率化システムやスマホアプリ、各種ウェブサービスの開発が主力となっています。企業の業務効率化やコスト削減に貢献するシステムが求められ、スマホアプリでは顧客接点の強化、ウェブサービスでは企業の公式サイトや予約システム、会員向けサイトなど、多様なニーズに対応しています。
受託開発のプロジェクトは、要件のすり合わせから始まり、見積もり、設計、実装、検収、保守という段階的な流れで進みます。この一連の流れにより、品質と納期がしっかり守られる体制が築かれています。
また、日本の受託開発では「請負契約」が基本であり、開発会社は成果物を納期までに納品する責任を負います。大規模な案件では多重下請け構造も残っていますが、最近は中堅・中小企業でも元請けとなるケースが増えてきています。納品後も運用サポートや機能拡張、メンテナンスまで一貫して対応する企業が増えており、クライアントにとって安心できるパートナー選びが重要になっています。
受託開発の利点と考慮すべき点
受託開発は、企業が自社でまかなえない技術やリソースを外部から取り入れるための有効な手段です。その利点と、導入時に考慮すべき点を整理します。
●開発リソース不足を補う受託開発の主なメリット
受託開発を利用することで、企業は自社で採用や育成をしなくても、必要な専門人材を短期間で確保できます。特にAIやクラウド、セキュリティ分野のような先端技術では、人材を自社で揃えるのが難しいため、受託開発による即戦力の導入は大きなメリットです。
また、開発会社が開発環境やツールを整えているため、発注企業側は高額な設備投資をする必要がありません。こうした体制によって、社内メンバーは本来の業務に集中でき、全体の生産性が向上します。
受託開発では契約前に詳細な見積もりが提示されるため、プロジェクトごとの予算管理もしやすくなります。契約内容に沿わない場合には修正や損害賠償を求めることもできるため、品質面でも一定の安心感があります。
加えて、受託開発会社の多様な開発経験を活かした提案によって、発注企業の業務改善や新しいアイディア創出にもつながります。これにより、単なる作業依頼ではなく、事業の成長に貢献できるパートナーシップが生まれやすくなります。
●初めて受注する開発会社が事前に検討すべきポイント
初めて受託開発案件を受ける際には、まず自社のリソースと体制を客観的に把握しておくことが大切です。具体的には、社内にいる開発メンバーのスキルセットや工数が十分確保できるかを確認し、案件を遂行するための最適なプロジェクト体制を組む必要があります。
加えて、受注前にはクライアントが求める要件を細かくヒアリングし、仕様の抜け漏れがないかをきちんとすり合わせましょう。提案段階で要件や作業範囲を明確にしておけば、後から追加工数が発生したときにも適切に対応できます。
さらに、契約条件については自社にとって無理のない納期や報酬設定になっているか、リスク分担の範囲を含めてしっかり検討してください。納期遅延時のペナルティや、変更要望が発生した際の追加費用ルールなどを事前に明文化しておくことで、トラブルを未然に防止できます。
●他の提供形態(内製支援・SES参画・SaaS連携)との違いと自社戦略
自社が提供できるサービス形態には、純粋な受託開発以外にもいくつかの選択肢があります。どの形態を軸にするかによって営業アプローチや社内体制が変わるため、自社の強みや顧客ニーズに合ったモデルを選ぶことが重要です。以下では主要な形態の違いと、それぞれをどう自社戦略に組み込むかを整理します。
提供形態 | 主な内容・目的 | プロジェクト責任 | 売上構造・収益モデル | プロジェクト期間 | 技術・品質のカスタマイズ度 |
---|---|---|---|---|---|
内製支援(オンサイト) | 顧客社内に自社エンジニアを常駐させ、開発支援や技術コンサルを行う | 顧客と自社の共同責任 | 時間単価・契約期間に応じた請求 | 案件により変動 | 顧客要件に準じて調整可能 |
SES参画(技術派遣) | 顧客プロジェクトにエンジニアを派遣し、チームの一員として機能強化 | 顧客(要件定義は顧客主導) | 人月ベースでの契約 | 短期~中期 | 部分的な対応、顧客指示が中心 |
SaaS連携開発 | 既存のクラウドサービスやツールと連携するための拡張機能やカスタマイズ開発 | 開発会社が連携部分を担当 | 固定開発費+場合によっては保守費用 | 短期 | 標準機能にプラスαを追加 |
受託開発 | 要件定義~設計・実装~テスト・保守まで一括で納品 | 開発会社が成果物全責任 | 見積もりによる固定報酬制 | 中長期 | 完全カスタマイズが可能 |
自社のビジネス戦略としてどの形態を重視するかを明確にし、営業資料や技術スキルマップに反映することで、提案先に「この会社なら任せられる」と思ってもらえる体制を築きましょう。
受託開発市場のこれから:成長予測と注目される技術領域
IT市場全体が堅調に拡大する中、受託開発分野にも大きな成長が期待されています。今後どのような技術やニーズが注目されるのか、見通しを整理します。
●今後数年間の市場成長に関する見通し
IDC Japanの予測では、国内のソフトウェア市場は2028年に約7兆9,000億円へと拡大する見込みです。アプリ開発分野はとくに成長が著しく、年率17%台で伸びるとされています。ITサービス市場も2028年には8兆8,000億円規模に達し、インテグレータ市場も年率5%程度の安定した成長が続くと見込まれています。
こうした全体の拡大は、受託開発会社にとってもさらなる事業機会の増加を意味しています。企業はDX推進のための新たなシステム投資を強化しており、最新技術への対応が求められる時代です。
●特に成長が期待される開発ニーズと分野
今後、特に需要が高まると考えられているのは、AIを組み込んだシステムや業務自動化の分野です。企業は業務プロセスの自動化や高度なデータ分析、顧客体験の向上を目指し、AI活用のための開発依頼が増えています。
クラウド技術を前提としたマイクロサービス設計も重要な分野です。大規模で柔軟なシステム構築を可能にし、企業の変化への迅速な対応を支えます。
また、サイバー攻撃への対策として、開発段階からセキュリティを重視した設計が不可欠です。国内のセキュリティ市場も拡大しており、堅牢なシステム構築が強く求められています。
レガシーシステムの刷新や業務再構築も、DX推進の現場でニーズが高い分野です。古い基幹システムを新しい技術でリニューアルし、業務全体の効率化や新しい事業モデルに対応できる体制づくりが進んでいます。
ローコード/ノーコード開発プラットフォームの導入も進み、専門的な知識がなくても業務担当者がアプリを作れる環境が広がっています。その一方で、品質やセキュリティのガバナンス体制構築が新たな課題となっています。
●クラウドサービスの普及が受託開発にもたらす変化
SaaSやPaaSなどクラウドサービスの普及は、受託開発の内容にも大きな影響を与えています。汎用機能の開発依頼は減る一方で、SaaS間のデータ連携や、標準機能ではカバーしきれない部分の追加開発ニーズが増えています。
PaaSを活用すれば、開発者はインフラ管理の手間を省き、アプリの本質的なロジック開発に集中できます。こうした変化を受け、開発会社には運用や監視、クラウド特有のセキュリティ対応など、幅広い知識が求められるようになっています。
受託開発のパートナーとして選ばれるために
競争が激しい受託開発市場で選ばれるパートナーになるためには、技術力だけでなく、提案力や信頼性、経営基盤の安定性が欠かせません。ここでは、クライアントから安心して任せてもらうためのポイントを紹介します。
●安心して任せられる受託開発企業と認識されるポイント
まず、過去の開発実績や課題解決の事例を分かりやすく示すことが大切です。ただ「システムを作りました」と説明するのではなく、どのような課題に対してどんな工夫をしたか、そしてどんな成果が出たのかを具体的に伝えることで、信頼性が高まります。
また、要件定義から保守・運用まで、システムのライフサイクル全体に一貫して対応できる体制を整えていることを示しましょう。これにより、クライアントは安心して長期的な関係を築けます。
顧客の業界や事業背景をよく理解し、単なる技術提案にとどまらず、経営や業務の観点からも課題解決を目指す姿勢を示してください。さらに、打ち合わせや進捗報告の頻度や方法を事前に明確に伝え、プロジェクトの透明性を高めましょう。
特定の大口顧客に依存しすぎず、多様なクライアントと安定した取引をしていることも、安心材料のひとつです。こうした点をアピールすることで、信頼されるパートナーとなることができます。
●請負契約で信頼関係を築くためのポイント
請負契約は、事前に合意した成果物を納品する契約形態です。この点をクライアントにきちんと説明し、スコープや品質、納期、費用についても具体的に書面で合意しておくことがトラブル防止に役立ちます。
仕様変更が発生した場合のルールや費用の算出方法についても、あらかじめ明確にしておきましょう。知的財産権や秘密保持契約(NDA)も契約時にきちんと定めることで、安心してプロジェクトに取り組む土台ができます。
納品後のサポート体制や、不具合が発生した場合の対応についても明記し、長期的な信頼関係を築くことが重要です。
●開発実績の見せ方と継続的な情報共有の工夫
開発実績を紹介する際は、表面的な成果物の説明だけでなく、クライアントの課題やそれをどう解決したかまで詳しく伝えてください。クライアントから許可が取れれば、推薦コメントやインタビューも活用しましょう。
プロジェクト進行中は、定例会などで進捗や課題を共有し、信頼関係の構築に努めることが大切です。また、設計書やテスト結果などのドキュメントも整備し、保守や運用の透明性を高めることで、クライアントにとって安心できる体制を作りましょう。
アジャイル開発の場合は、短いサイクルごとにクライアントからのフィードバックを得られる仕組みを提案することで、より柔軟なプロジェクト運営が可能になります。
受託開発市場の理解と受注に向けて
特に中堅・中小規模の開発会社にとっては、受託案件の獲得と継続的な実績積み重ねが成長の大きな原動力となります。自社の技術力や得意分野を明確に打ち出し、マーケティングや営業活動を通じて受注機会を広げることが求められます。
開発会社としては、自社の強みや専門領域をクライアントにわかりやすく伝え、提案力を高めることが重要です。単なる案件受注ではなく、クライアントと信頼関係を築き、要件定義から保守フェーズまで一貫してサポートできる体制を整えることで、「この企業に任せたい」と思ってもらえるパートナーシップを構築しましょう。
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