
EDI(電子データ交換)は、発注・納品・請求といった商取引データを、人手を介さずにシステム間でやり取りする仕組みです。標準化されたフォーマットと自動連携により、転記ミスや待ち時間を減らし、在庫や会計など他システムへの再利用も進みます。ISDN終了や電子帳簿保存法・インボイス対応をきっかけに、インターネットEDIへの移行が現実的になりました。
まず自社の業務フローと取引先の状況を整理し、最適な方式と導入形態を選んで、効率化の一歩を始めましょう。
目次
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EDIの基本定義
EDI(Electronic Data Interchange/電子データ交換)は、企業や組織のあいだで発生する発注書・納品書・請求書などの商取引データを、コンピュータ同士が電子的かつ自動でやり取りする仕組みです。紙やFAX、メール添付のPDFのように人手で作成・送付・再入力する方法とは異なり、あらかじめ取り決めた標準化フォーマットに沿ってシステム間で直接データを交換します。これにより、手入力による転記ミスのリスクを抑え、処理時間を短縮しやすくなります。メール添付やPDF送付は人手による再入力を前提とした単なる電子化であり、EDIには含まれません。EDIの価値は、標準化と自動化の組み合わせにあります。
●EDIの特徴
EDIの最大の特徴は、人の手を介さずシステム同士でデータを送受信できる点です。紙ベースの作業で発生していた印刷・郵送・受信後の再入力といった手間がなくなり、発注から請求までの一連の流れを自動化できます。取引先ごとにフォーマットを合わせる負担も、共通規格に準拠することで大きく減らせます。一度規格に対応すれば、同じ規格を使う多くの取引先と容易に接続でき、導入・運用のコストを抑えられます。さらに、交換したデータは会計や在庫管理など社内の他システムへ再利用でき、重複入力を避けられます。結果として、受発注の正確性が高まり、サプライチェーン全体の見える化と意思決定の迅速化につながります。
●EDIの対象業務
EDIは、商品の受注・発注、出荷・納品の通知、請求・支払い処理といった、企業間の幅広い取引業務を電子化します。加えて、振込依頼や入金通知など資金決済に関わるデータを扱う「金融EDI」にも対応できます。これらの情報がリアルタイムに共有されることで、在庫切れや過剰在庫の防止にも役立ちます。
EDIの仕組み
EDIは、異なる企業のシステムを標準化フォーマットでつなぐことで機能します。発注側は自社システムで作成したデータを標準形式へ変換し、専用回線またはインターネット回線を通じて送信します。受信側は標準形式のデータを自社フォーマットに再変換し、基幹システムへ自動取り込みします。この変換処理を担うソフトウェアが「トランスレーター」です。トランスレーターは、各社固有のデータを共通規格へ、共通規格を各社固有の形式へと相互にマッピングします。これがあるからこそ、取引先ごとに個別開発を繰り返す負担を避けられます。
●必要な変換処理
EDIでは見えにくい部分の変換が安定運用の鍵になります。第一に文字コード変換です。Shift-JIS、EUC、Unicodeなど環境差を吸収し、文字化けを防ぎます。第二にデータフォーマット変換です。CSV、XML、固定長など多様な形式の相互変換を行います。第三にデータコード変換です。自社と相手先で異なる商品コード等を自動で置き換え、表記ゆれや食い違いを避けます。これらの処理が整ってこそ、システム間の正確なデータ交換が成立します。
EDIの種類
EDIは利用方法やルールの違いでいくつかに分類されます。自社と取引先の関係性、取引量、運用体制に合わせて選ぶことが大切です。
●個別EDI
個別EDIは、特定の取引先と一対一で通信方法やコード体系を取り決める方式です。柔軟に構築できる一方、取引先が増えるほど個別対応が増え、管理が煩雑になりやすい方式といえます。少数の重要取引先に絞る場合に適しています。
●標準EDI
標準EDIは、共通規格に基づき複数企業で利用できる方式です。同じ規格同士であれば追加接続が容易で、取引先が多い企業に向いています。流通業界で普及している「流通BMS」や、ITに不慣れな中小企業でも受発注のIT化を進めやすい「中小企業共通EDI」が代表例として挙げられます。個別対応の積み重ねを避け、多対多のネットワーク効果を得やすい点が魅力です。
●業界VAN
業界VANは、特定業界向けに共通化されたEDIネットワークサービスです。VAN事業者がデータ変換・蓄積・セキュリティ対策を一元提供するため、自社で複雑な仕組みを抱え込まずにすみます。食品業界、医療機器業界、日用品・化粧品業界などで活用が進み、業界共通の商品コードや取引先コードを前提に、同業界内の取引を円滑にします。
●Web-EDI・インターネットEDI
どちらもインターネット回線でデータを交換する方式です。Web-EDIはブラウザ操作を通じてファイルのアップロードや入力を行うため導入コストは低めですが、手動作業が残りやすい面があります。インターネットEDIはシステム間の自動連携が前提で、Web-EDIの手動部分を置き換えやすく、運用負荷の軽減が見込めます。
EDIのメリット
EDIの効果はコストやスピードだけではありません。正確性、統制、データ活用まで含めて、業務と経営の両面で効率を高めます。
●コスト削減ができる
発注書や請求書を電子データで交換するため、用紙・印刷・封筒・郵送・FAX通信といった物理コストを削れます。サーバ台数を12台から4台へ縮小し、約100台のモデム管理を不要にした結果、EDI関連の作業時間の半分をコア業務に振り向けられた事例があります。別の事例では、EDI連携で月あたり約100時間の工数を削減し、導入費もオンプレミス型の3分の1以下に抑えられています。
●業務効率化ができる
受発注から請求までのプロセスを自動化し、入力・確認・送付といった手作業を減らせます。一度取り込んだデータは納品書や請求書の作成などに自動で流用でき、二重入力を避けられます。結果として、注文から納品までの時間短縮が期待できます。
●内部統制を強化できる
取引データが電子的に記録され履歴を追跡しやすくなります。フォーマットが統一されているため、監査や内部検証での突合も進めやすく、ガバナンスの向上に寄与します。
●取引の信頼性を高められる
統一フォーマットによって、金額や数量のミス、読み違いを減らせます。正確で迅速なデータ交換は、取引先との信頼関係を強める土台になります。
●在庫・需要予測に活用できる
取引情報の共有により在庫状況を正確に把握し、欠品や過剰在庫のリスクを抑制できます。蓄積データの分析を通じて需要変動に合わせた生産・発注計画を立てやすくなり、サプライチェーン全体の最適化に近づきます。
EDIと類似システムの違い
EDIはしばしばAPIやBtoB-ECと比較されますが、目的と適したシーンが異なります。違いを理解すると、自社に合う組み合わせを選びやすくなります。
●EDIとAPIの違い
EDIは企業間取引の定型データを標準規格で交換する仕組みで、大量・定期の商取引に力を発揮します。API(Application Programming Interface)は機能の呼び出しやリアルタイム連携に幅広く使われる汎用の仕組みで、データ形式の自由度が高い点が特徴です。近年は、定型交換をEDIで、リアルタイム性をAPIで補うハイブリッド活用も進んでいます。
●EDIとBtoB-ECの違い
EDIは既存取引先との定期的な受発注を自動化・効率化する目的で利用します。一方、BtoB-ECはECサイトを通じて新規取引先の開拓や見積もり対応などを広げる仕組みです。定期・大口取引が多い場合はEDI、スポット・新規が多い場合はBtoB-EC、といった使い分けが現実的です。状況によって両者の併用も有効です。
EDIの最新動向
制度や通信環境の変化を背景に、EDIは見直しと移行の局面を迎えています。法対応と基盤刷新を同時に進めることで、より高い効果を得やすくなります。
●2024年問題
NTTのISDNデジタル通信モードが2024年1月に終了しました。従来の固定電話回線を前提にしたEDIはそのままでは使えなくなり、インターネットEDIへの移行が求められています。通信費の削減や大容量データの高速化に加え、運用管理の負担軽減という副次効果も期待できます。
●電子帳簿保存法への対応
EDIで授受したデータは「電子取引」に該当し、電子帳簿保存法に定める要件での保存が義務付けられます。2024年1月以降は紙保存が認められず、電子データ保存が必須です。真実性(タイムスタンプ付与、訂正・削除履歴の確保、事務処理規程など)と可視性(取引年月日・取引金額・取引先での検索機能など)を満たす必要があります。
●インボイス制度対応
2023年10月開始のインボイス制度(適格請求書等保存方式)に伴い、請求データには登録番号などの必須項目が追加されました。EDIで請求データを扱う場合、既存フォーマットの見直しや項目追加への対応が重要になります。電子インボイスの普及は、入金消込などの効率化にもつながります。
●費用対効果を見極める
オンプレミス型とクラウド型ではコスト構造や運用負担が異なります。自社の規模と体制に合わせて比較検討しましょう。
| 項目 | オンプレミス型 | クラウド型 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 高額(システム開発・サーバ構築など) | 比較的安価 |
| 運用負担 | 自社で運用管理が必要 | ベンダーに依存 |
| カスタマイズ性 | 高い | 制限がある場合が多い |
| 試算例(月額) | 約107,800円 | 約64,500円 |
※上記は一例であり、個別の要件によって異なります。
EDIを導入して業務効率化を進めよう
EDIは受発注や請求処理の効率化を支える基盤です。2024年問題や法制度対応をきっかけに、仕組みの見直しを進める好機といえます。導入を検討する際は、まず自社の業務フローと取引先の状況(取引量、相手先のシステム環境など)を整理してください。課題を明確にすれば、適した方式(個別/標準/VAN/Web・インターネット)や導入形態(オンプレミス/クラウド)が見えてきます。特に中小企業は初期投資と運用負担を抑えやすいクラウド型が現実的な選択肢になります。
法律対応で終わらせず、データの再利用とプロセスの自動化まで視野を広げましょう。発注データを在庫・会計へ連携する設計にすると、工数削減と正確性の両立に近づきます。いま取り組める一歩として、現行帳票の項目整理、標準フォーマットへのマッピング、優先度の高い1社との接続検証から始めてください。小さく始めて確かな効果を確認し、段階的に範囲を広げることで、業務の効率化とビジネスの成長を同時に進められます。
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