日本国内では近年、企業間取引（BtoB）の電子化が急速に進んでいます。その中でも特に受発注システムは業務効率化やコスト削減を目的に導入企業が増加し、市場規模も拡大を続けています。本記事では受発注システムの最新の市場動向をはじめ、業種ごとの導入傾向、企業が導入するメリットや選定ポイントについて詳しく解説します。自社に合ったシステムを選び、業務改善に役立てましょう。
目次
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受発注システムの市場規模の推移
近年、日本国内の企業間電子商取引（BtoB-EC）の拡大に伴い、受発注システムへの需要が高まっています。BtoB-EC市場は以前からBtoC（企業と消費者間）のECよりも規模が大きく、2019年時点でもBtoB-EC市場規模は約352兆9,620億円、EC化率は31.7％に達していました。その後、非対面で取引を進めたいという企業ニーズやDX（デジタルトランスフォーメーション）推進の後押しなどを背景に、2023年にはBtoB-EC市場規模がおよそ465兆2,372億円にまで拡大し、EC化率も40.0％まで上昇しています。
一方、BtoC-EC市場規模は2019年時点で約19兆3,609億円でしたが、消費者のネットショッピング利用拡大やスマートフォンの普及などを追い風として、2023年には24兆8,435億円にまで拡大しました。BtoB、BtoCともにEC化が進んでいる流れは、より多くの企業が受発注管理をオンライン上で完結できるサービスを求める理由の一つとなっています。
従来、電話やFAX、メールなどでアナログ的に行われていた受発注業務は、人手による作業負荷が大きく、入力ミスなどのリスクも多いものでした。しかし、クラウド型をはじめとしたさまざまな形態の受発注システムが普及したことで、業務効率やコストを改善したい企業にとっては導入のハードルが下がり、結果として市場が継続的に拡大してきたという背景があります。
●具体的な数値の例
2019年のBtoB-EC市場規模は約352兆9,620億円、EC化率は31.7％でした。これは同年のBtoC-EC市場規模約19兆3,609億円に比べるとおよそ18倍もの大きさです。その後、2023年にはBtoB-ECが465兆円を超え、EC化率も40.0％まで上昇しました。BtoC-ECにおいても、2023年には24兆8,435億円規模に達しており、オンライン取引はBtoB・BtoCともに成長基調が続いています。
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、対面取引を避ける動きが広がったことも、受発注システムの導入を促す一因となりました。電話やFAXでのやりとりを減らし、オンラインで完結させる仕組みづくりを急いだ結果、2020年から2022年にかけてBtoB-EC市場は約85兆円以上拡大しており、今後もこの流れは継続すると考えられます。
●主要な導入業種
受発注システムは、製造業や小売業、卸売業、飲食・食品業界など、多くの業種で導入が進んでいます。製造業では、部品や原材料、工業用品などの調達を管理する必要があり、正確かつスピーディに在庫を把握することが求められます。小売・卸では、多くの取引先とのやりとりを一元管理し、在庫の動きをタイムリーにチェックすることが重要になります。飲食・食品業界では、包材や食材などを頻繁に発注するため、紙ベースでの管理よりもシステム化することで店舗数が増えてもスムーズに運営できるメリットがあります。
企業の業種によって、求められる機能には違いがあるため、受発注システムを提供するベンダー側も、特定の業界向けに特化した機能を搭載するケースが増えてきました。たとえば食品製造業では賞味期限管理やロット管理が重視される場合もあり、飲食チェーンであれば複数店舗への一括発注や店舗別の仕入れを同時に管理できるシステムが注目されるなど、業界ならではのニーズに応えることが選定時の大きなポイントとなります。
参照：「令和５年度電子商取引に関する市場調査」（経済産業省）
受発注システムの導入が進む背景
企業が受発注システムを導入する背景には、業務効率化や人的ミスの削減によってコストを減らしたいという目的が強く存在します。さらに、新しい働き方やリモートワークが普及したことで、外出先や在宅勤務でも発注・受注が行えるようにしたいという声が増えました。また、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応を視野に入れる企業が増えたことも、導入を後押しする要因となっています。
●DX推進によるデジタル化の加速
多くの産業で、従来は電話やFAXといったアナログ手段に頼っていた取引をオンラインに切り替え、デジタル化を推進する動きが一段と加速しています。デジタル化によって、受発注状況や在庫数がリアルタイムに共有されるため、リードタイムが短縮され、経営判断のスピードアップも期待できます。特に食品や消費財など、サプライチェーンが複雑化する業界では、DXの進展が企業同士の取引をスムーズにする鍵とみなされるようになりました。
●クラウド型サービスの普及
クラウド型の受発注システムは、自社サーバーを立ち上げる必要がなく、インターネット経由でシステムを利用できるという利便性から、多くの企業に支持されています。初期導入コストを大幅に抑えられることに加え、メンテナンスや機能アップデートをベンダー側が行うため、自社のITリソースを大きく割かずに導入しやすいのが魅力です。中小企業でも比較的導入しやすい料金プランを用意しているベンダーも多く、今後もクラウド型を中心に市場が伸びていくと予測されています。
受発注システムの主な機能
受発注システムには、受注から発注、在庫管理、データ分析に至るまで、幅広い機能が搭載されています。企業の業務形態や業種、取引先の状況によって必要な機能は異なりますが、代表的なものとしては以下のような機能が挙げられます。
●受注管理
受注管理では、顧客情報や注文内容を即座に可視化し、在庫状況や納期、価格などが一元的に確認できる仕組みを提供します。取引先ごとに設定されている価格や条件を自動で反映させることで、受注担当者が都度手入力する手間を省き、ミス発生率を下げられるメリットがあります。過去の受注履歴を検索し、再注文などを効率化する機能も多くのシステムに標準搭載されるようになっています。
●発注管理
発注管理の役割としては、仕入れ先や部材のリードタイム管理、発注タイミングの自動通知などが挙げられます。特に、在庫不足が起きそうなときにシステムが警告を出してくれる機能は重要です。企業規模が大きい場合や、複数の仕入れ先を扱う場合には、こうした機能を使って無駄な在庫を抱えないよう、常に最適な水準を維持することが可能になります。
●データ分析とレポート機能
売上推移や在庫推移、顧客別・商品別の販売比率などを自動で集計し、グラフや表でわかりやすく提示してくれるのも、受発注システムが備える重要な機能です。例えば月次や四半期ごとの売上データを細かく分析し、商品ごとの在庫量や出荷のタイミングを調整することで、全体のコストを削減しつつ売上を最大化できます。これまでアナログ管理だった企業でも、数字に基づいた経営戦略を打ち立てやすくなるのは大きなメリットでしょう。
受発注システムの導入メリット
受発注システムを導入することで、業務効率化やコスト削減、ヒューマンエラーの防止、ペーパーレス化など、さまざまな効果が期待できます。ここでは代表的なメリットをピックアップして紹介します。
●業務の効率化とコスト削減
システムにより定型業務の多くが自動化されるため、担当者は付加価値の高い業務に注力できるようになります。承認フローや請求書発行などにかかる時間も短縮され、全体的なコスト削減につながります。リアルタイムで在庫照会ができる場合は、過剰在庫を防ぎやすくなると同時に欠品リスクを抑えられ、スムーズな販売活動をサポートします。
●人的ミスの防止
紙伝票への手書きやExcelへの転記作業は、どうしてもヒューマンエラーを起こしやすい手法です。受発注システムを導入すれば、多重入力や誤入力が減少し、情報が自動で連携されるため、重複発注や数量違いといったトラブルのリスクが大幅に軽減されます。システムによっては、通常を大きく上回る発注が行われた際に警告を出す仕組みもあるため、担当者がミスに気づきやすくなります。
●ペーパーレス化の推進
受発注関連の帳票を電子化することで、印刷費用や紙の保管コストを削減できるほか、物理的なスペースを有効に使えるようになります。電子データ化が進むと、セキュリティ面でもパスワード保護やアクセス権限管理などを導入しやすくなり、法令対応や内部統制の強化にも好影響をもたらします。
受発注システムの選び方
自社に最適なシステムを導入するためには、導入の目的や運用体制に合わせてしっかりと選定する必要があります。ここからはシステム選びの際に注目したいポイントを順に見ていきます。
●業界や業務に適した機能があるか
製造、小売、飲食など、それぞれの業界ならではの商習慣や取引プロセスが存在します。製造業であれば工程管理やロット管理の連携を重視する場合もありますし、飲食・食品では多店舗展開や賞味期限管理の重要度が高くなることもあります。このような背景から、業界や業務にフィットした機能を持つシステムであるかどうかを事前に確認することが重要です。
●取引先との連携がスムーズにできるか
取引先の規模や導入状況によっては、システムに慣れていないケースも考えられます。システムの操作が複雑すぎると、相手先に負担がかかり、導入が進まない可能性があります。FAXやメールでの取引しかしていない発注先でも使えるように工夫されているシステムだと、より導入障壁が低いでしょう。また、既存の販売管理システムや会計システムとの連携が簡単に行えるか、API接続が用意されているかも大切な検討材料です。
●コストとサポート体制
初期導入費用や月額費用、取引数に応じた従量課金の有無など、料金プランはベンダーによってさまざまです。長期的な運用コストを試算するうえでも、ライセンス料やオプション機能、カスタマイズ費用などを含めた総合的な見積もりが必要になります。また、導入後の問い合わせ対応や定期的なアップデート、カスタマイズ要望に応じてくれるかなど、サポート体制が充実しているかどうかも重要です。特に、受発注業務は企業の利益に直結しやすい部分だけに、トラブル時のサポートがしっかりしているベンダーを選ぶことで安心して運用できます。
自社に合った受発注システムを選ぼう
受発注システムを導入することで、業務効率化やコスト削減、ヒューマンエラーの減少、ペーパーレス化など多様なメリットが得られます。特に近年では、クラウド型のシステムが台頭し、中小企業でも導入しやすいプランが増えているため、業種や企業規模を問わず検討しやすい環境が整いつつあります。
一方、企業ごとに抱える課題や商習慣は異なります。たとえば、取引先が多数存在する卸売業なのか、それとも特定のサプライヤーと長期的に取引している製造業なのかによって、使いたい機能や優先順位は変わるでしょう。無料トライアルやデモの利用などでシステムの実際の使用感を確かめ、自社の要件に合致するかどうかをしっかりと見極めることが大切です。
また、政府によるIT導入補助金などの支援制度を活用できる場合もあり、これをきっかけにシステムの導入を加速させる企業も少なくありません。インボイス制度への対応や電子帳簿保存法の遵守を視野に入れる場合も、システム側で必要な条件を満たしているか確認しておくと、のちの業務負担を大きく減らせます。
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