
自社のビジネスをシステム化するには、まず開発会社に自社ビジネスを深く理解してもらう必要があります。新たに生まれた領域のビジネスでは、その理解自体が大きなハードルとなることも少なくありません。
アンドパブリック株式会社は、ビジネスや行政サービスが社会に与える影響、いわゆる「社会的インパクト」を可視化し、その向上を支援するコンサルティングという、新しい領域を切り開くスタートアップ企業です。
このまったく新しいビジネスをシステム化するにあたり、どこよりも心強い開発パートナーとして株式会社Border Zと出会うことができたといいます。
開発を担当した株式会社Border Z 代表取締役CEOの石岡淳氏と、発注側であるアンドパブリック株式会社 共同創業者/代表取締役CHRO(Chief Human Resource Officer:最高人事責任者)の長友まさ美氏に、お話を伺いました。
「社会的インパクト」の可視化・最大化という新しい分野でビジネスにチャレンジするスタートアップ企業アンドパブリック株式会社とは?
―― アンドパブリック様は、どのような事業を展開されているのですか。
アンドパブリック株式会社
長友まさ美氏
アンドパブリック長友氏: 当社は民間事業や行政政策における「社会的インパクト」の可視化・最大化に関するコンサルティングおよびワークショップの企画開催をしています。また、インパクトマネジメントツールの開発やインパクト指標の研究などを行なっています。
―― 「社会的インパクト」というのは、どのようなものですか。
長友氏: その事業が社会や環境に与える影響を指します。どのような良い影響がどれほどうまれたのか、それを可視化することで目指す世界と現在地を確認したり成果の検証などを行い、社会全体の課題の解決力を底上げすることに繋げます。
たとえば、気候変動や貧困問題など地球規模の課題が深刻化する中、投資の判断基準として事業の社会的インパクトを重視する「インパクト投資」が世界で急拡大しています。民間企業では、自社の事業が社会にどのような成果をもたらしたかを可視化し、最大化していくことが求められています。また、地方自治体は少子高齢化に伴う社会保障費の増加などで財政的な懸念を抱え、限られた財源で最大の効果を発揮する施策を打ち出していく必要があり、現在では官民両セクターで社会的インパクトをマネジメントするニーズが高まっています。こうした行政サービスにおいても社会的インパクトを可視化することで、効果を測ることができます。
―― 社会にどのような効果をどれほどもたらしたのかを、どうやって測るのですか。
長友氏: 様々な測り方がありますが、よくある手法としてはアンケートなどで意識の変容や行動の変容を測っていきます。これを効果的に行うために、インパクト指標を置き、誰にどのような設問でアンケートを行えば良いのか、エビデンスのある設問と現場でつかえるバランスを鑑みて設計します。データを集め測定するなかで、俯瞰して見たときに、それぞれの成果のつながりが見えてくるということがあります。調査した結果、新たに見えてくる仮説も少なくありません。そうして可視化した社会的インパクトを事業力に変えていく支援までを行なっています。
本格的なシステム開発に向けた新たなパートナー探しで出会ったBorder Zは、ユーザー目線で一緒になってビジネスを考えてくれる頼れる会社だった。
―― 今回、新たにシステムを開発する必要があったということですか。
長友氏: 当社は設立当初から社会的インパクトを可視化するためのシステムを開発してきました。これまでは比較的ゆっくりとしたペースで開発を進めていたのですが、国内外での社会的インパクト領域の盛り上がりを受け、開発を加速する必要があると判断しました。この分野は現在、各社が試行錯誤する段階にあり、望ましいデジタルツール像も日々変化しています。そのため短いサイクルで仮説検証と実装を繰り返し、議論に伴走できる新たな開発パートナーが必要でした。
―― それまでは、どのような開発体制だったのですか。
長友氏: フリーランスのエンジニアさん1名に開発をお願いしていました。社内では現場における学びや気づきの機会がたくさんあるのですが、そうした知見を、あまりタイムラグを置かずにシステムに反映するためには、開発体制を強化する必要がありました。
当初、最近よく耳にするノーコードで開発してもらってはどうかという意見もありました。将来は社内のメンバーが業務における知見をすぐにシステムに反映し、社内に知見を蓄積していくような仕組みが作りたいと考えていました。
―― 今回、Border Z様に発注しましたが、決め手はどこにあったのですか。
長友氏: システム開発に詳しくなかったため、恥ずかしながらオフショア開発やアジャイル開発という言葉も、今回、初めて耳にしました。細部まで決まったものをドンとお願いして作ってもらうのではなく、作りながら少しずつ細部を詰めていったり改善したりしていくという「アジャイル開発」について知った時に、これが良さそうだと判断しました。そして「オフショア×アジャイル」で発注先を探し、見つかったのがBorder Zさんでした。
―― Border Z様の印象はどうでしたか。
長友氏: 当社代表の桑原も、最初の打合せの後で「めちゃくちゃ良かった」と絶賛していました。他の開発会社数社とも打合せをしたのですが、他社さんは私たちの具体的な要望を聞いてくださるところが多くありました。我々が具体的に描けているものを形にしてくださりそうだな、と感じました。 一方で、Border Zさんは「こういう事がやりたい(けれど、まだどうすればいいかわからない)」という言語化されていない部分まで、どうカタチにするかを一緒に考えてくださる会社でした。そして「これは使いづらい」「これはやらないほうがよい」と、ネガティブなことも、きちんと理由を示しながら助言してくれたのはBorder Zさんだけでした。技術視点や運用開始後の視点は、なかなか持つことができません。こうしたアドバイスはとても助かりました。
―― Border Z様では、なぜこうした助言ができるのですか。
Border Z石岡氏: 当社は少人数で開発を行っていますが、いずれのメンバーも前職時代は、自社で何らかのITプロダクトを運用している会社で経験を積んできました。そのため、対象となるサービスやビジネスを運営する側の視点に立って開発することに慣れています。そのため、お客様のシステムを開発する際にも、無駄なものや使いづらいものを作って稼ごうという気持ちが一切ありません。あくまでもお客様側の立場に立ってシステムを設計・開発していきます。
ビジネスサイドと開発サイドのバランスを持ち、常に「エンドユーザーがどう思うだろうか」という視点を忘れずに開発することを心がけています。

●ユーザーストーリーマッピング
自社ビジネスを深く理解してくれるBorder Z。アジャイル開発で毎週打合せるのが楽しみになった!
―― 実際にBorder Z様に発注されていかがでしたか。
長友氏: 一番感激したのは、私たちの仕事の領域をとてもよく理解してくださったことです。「社会的インパクトを測る」という新しい分野にもかかわらず、何回か打合せをするうちに、言葉の前提を話さなくても通じるようになっていました。分からないところは素直に聞いてくださいますし、きっと打合せ以外の時間のなかでも相当に勉強してくださったのだと思います。
株式会社Border Z
石岡淳氏
―― Border Z様は、そうしたビジネスの理解に苦心されましたか。
石岡氏: 正直言って最初はよくわかりませんでした(苦笑)。概念を理解するのが大変でしたね。最初にいただいた資料からわかることもありましたが、お話をするうちに理解が進んでいきました。
―― ビジネスを深く理解するからこそ、システムについても他社にはない運用目線の提案が生まれるのですね。
石岡氏: 当社が提案する際は、機能や画面の単位で考えないようにしています。そこに固執してしまうと、一番大切なところが見過ごされがちになってしまいます。当社の開発管理では、ユーザーストーリーを大切にしています。誰が何をするために使うのかをしっかりとイメージし、使いやすさや必要な機能はどうあるべきなのかを導き出します。当社ではオフショア開発を行っていますが、ベトナム側の開発拠点にも、このシステムは何のために使い、どういう目的を達成したのかをしっかりと伝え、理解してもらうようにしています。
―― 開発手法はアジャイル型ですか。
石岡氏: はい。1週間単位で開発する内容を決めて開発し、その成果を実際に使って課題を洗い出していただき、それを修正していくということを繰り返していきました。
長友氏: このアジャイル開発がとても良かったですね。システムの操作感も、自分で実際に操作してみてわかることも多く、毎週の打合せが楽しみで、待ち遠しくなりました(笑)。
―― ノーコードツールによる開発は選ばなかったのですね。
長友氏: はい。石岡さんから「当社で新たな社内エンジニアを見つけるのは難しく、また、できたとしてもすぐには見つからないのではないか」というご指摘があり、確かにその通りだと思い、当面はBorder Zさんにアジャイル開発というカタチでお願いすることにしました。そして、これも石岡さんに相談しているのですが、いずれ良い人材が見つかったときに、社内に引き継いでいきやすくするために書類で残しておくことをお願いしています。そういう将来の展開についても相談させてもらえるのは、とてもありがたいですね。
石岡氏: 私たちも、プロダクトの将来とかビジネスの成功のためには、お客様が自社内にエンジニアを置いたほうが良いと考えています。方法としては移管するのもありですし、私たちと一緒にやっていくのもありだと考えています。そうした考えから、私たちは自分たちにしかわからないようなシステムを作るつもりはありません。内部もわかりやすくしておかなければ移管もできませんし、時流の変化に対応する改修もできません。後から誰かが中身を見たときに、手を入れやすい、わかりやすい設計を心がけています。
―― そのほかに、開発を進める中で良かったことはありますか。
長友氏: 「作る、作らないは置いておいて、まずは、やりたいことを全部言ってください」と言ってくださったことが大変ありがたかったです。おかげで将来も含めた展望が大きく広がりました。すべてを洗い出してから「ここを作ろう。ここはまだ必要ない」というように、相談しながら決めていきましたが、この段階で私たち自身の考えも整理できたのは良かったと思っています。
「こういうことがやりたい」という明確なビジョンがある企業にお勧めの開発会社。
―― Border Z様としては、どのようなお客様からの発注に期待されていますか。
石岡氏: 明確なビジョンがあって「これをやりたい」ということがハッキリとしているお客様は、ぜひ当社にご相談ください。ユーザーストーリーを考えた使いやすさ、お客様のビジネスの内容や今後の成長に合わせたご提案などをご用意しています。また、当社はベトナムの開発拠点を活用する「オフショア開発」を行っています。コスト面を気にされるお客様にも十分お応えできるものと思います。
―― アンドパブリック様から何か付け加えることはありますか。
長友氏: よく「海外でのオフショア開発は不安」という話を耳にしますが、今回Border Zさんにお願いしてみた結果、不安はまったくありませんでした。Border Zさんの海外チームは、間に入るブリッジエンジニアの方がとても細やかにサポートしてくださり、不明な点をチャットで確認する際も、とても丁寧に対応してくださいました。結果として、Border Zさんを選んで本当に良かったと思っています。ツールが完成した暁には、Border Zさんと一緒にお披露目イベントを開催したいです!

●Border Zのチームメンバー