IoTやデータ分析などデジタル技術を活用して新たなビジネスが生み出される中、株式会社ジャストワークは2018年に立ち上げた「共創ビジネスチーム」を、このほど「共創ビジネス事業部」へと「格上げ」し、お客様との「共創」により注力する体制を整えました。同社 共創ビジネス事業部の 満保 忠氏、三木 茂樹氏、田岡 弘毅氏に、事業部の取り組みについてお聞きしました。
アプリでもシステムでもなく、お客様と一緒に「ビジネス」を開発する
―― 共創ビジネスチームを立ち上げてから3年で、「共創ビジネス事業部」への格上げです。その背景、そして、共創ビジネス事業部としての取り組みについてお聞かせください。
ジャストワーク 満保氏 3年前に「共創ビジネスチーム」を立ち上げたときは、IoTを軸にしてお客様に新たな提案をしていく「営業的」な側面が強いチームでした。センサーとスマホアプリで「こんなことできますよ」とデモをお見せしたり、センサーとスマホアプリとCloudに繋いで「これがIoTです」と啓蒙したり、実開発に入る一歩手前の「提案」が中心でしたね。それがここにきて、デモのレベルでなく、実際にシステムとして「本番開発」し、それを活用して新規事業を立ち上げたい、新サービス開始したいというニーズが増えてきたのです。そこで、「共創ビジネス事業部」として、より本格的に共創に取り組む体制を整えました。
共創ビジネス事業部には、おもにアプリやシステムなどの開発を担当する「開発Div」と、お客様と相対してニーズをお聞きし、さまざまな提案をする「フロントDiv」があります。今やお客様は、テクノロジーを使って新しい事業を創ることや、既存の事業をITでより付加価値の高いものに生まれ変わらせることをお考えです。そう考えると、私たちが取り組むことも単なるアプリ開発でもシステム開発でもなく、お客様の「ビジネス開発」になると考えています。
ジャストワーク 三木氏 その意味では、フロントDivのBDM(ビジネス・デベロップメント・マネージャー)が果たさなくてはならない役割は大きいと感じています。BDMである私の仕事は、お客様に「やりたいことは何かに気づいていただく」ことだと考えています。例えば、お客様が「アプリでこんなことをやりたい」と、ちょっとでもヒントをくだされば、それをフロントDivのエンジニアである田岡さんに繋いで、次回一緒にお客様を訪問するときには、実際に動くものをお見せします。
お客様も漠然と頭で考えているだけより、実際に動くものを目にするとビジネスアイデアもより具体的に明確になるし、「本当にやりたいことは、こういうことだった」と気づくことも多い。こうした取り組みは、営業担当者だけではできません。田岡さんにフロントDivに入ってもらったことで、スピーディーにお客様に提案できる。それが強みですね。
今は「モノを売る」よりも、「モノを使うことによって実現される『コト』」が重視されます。つまり、「コトを売る」の時代なのです。ジャストワークのさまざまな技術や協力会社の技術を繋ぎ、お客様が「目指す『コト』」の実現を支援する取り組みを進めていきます。
ジャストワーク 田岡氏 共創ビジネス事業部では、エンジニアが直接お客様と話をして「このようにすればできます」とか「技術的にこうしたら、こういうことが可能になり、課題を解決できるのではないでしょうか」と、打ち合わせ中でレスポンス良く話せるのが強みです。
私たち、フロントDivのエンジニアは、技術目線でお客様がやりたいことを実現するには、どういう方法がいいのかを検討したり、サッとモックアップを作って動くものを見せてあげたりすることで、開発の初期段階のスピードアップを図り、お客様が早い段階でより具体的な完成イメージを持てるように支援するのが仕事だと考えています。
―― 確かに企業の中には、アイデアはあってもデジタル技術の活用を含めて、どう実現すればいいのかわからないところもあるかもしれませんね。そんな企業が、ちょっとでもヒントをくれれば、共創ビジネス事業部としてご支援をしていくのですね。
三木氏 とくに「自分たちでは、できない部分」で、お悩みを抱えていらっしゃるお客様へのご支援を考えています。例えば、スマホアプリを活用したビジネス展開を考えているが、自社に「スマホやアプリに詳しい人材を入れて対応することはできない」といったお客様には、「うちと一緒にやりませんか」とお声がけしています。お客様に「仕事をください」というよりは、「一緒に創り上げる」スタイルです。お客様も自分たちでできないこと、時間がかかること、お金がかかることを共創ビジネス事業部に頼めるので、お互いに新しいことにスムーズに取り組めるといったメリットがあります。
満保氏 私たちでは「非IT系ユーザー」という言い方もしています。具体的には、企業において「自社のITシステムをどうするか」を考えているIT担当者ではなく、企業としての「事業を考えている人」をターゲットにしています。私たちが売ろうとしているのは、ITというモノではなく、「コトの実現」なのです。「ITを使ったらこう実現できますよね」と提案し、それを実現し、さらにその先にある本当の目的をお客様と一緒に達成していきます。
田岡氏 お客様がITに詳しい場合には、ある程度、具体的なイメージを持たれていることがありますが、そうでないケースも多くあります。その中には、技術的なことは何もわからなくても、とにかく「こういうことをやりたいんだよね」という「強い思い」だけを持たれているお客様もいらっしゃるのです。そういうお客様、じつは大歓迎ですね(笑)。
そういったお客様のニーズに応えるには、パッケージシステムや既存のクラウドサービスではできません。だから、共創ビジネス事業部では、「本当にやりたいことは何だろう」という真意をくみ取って、ご提案をしながらデジタル技術で形にしていきます。それができるのが私たちの強みだと思っています。
ジャストワークだけの取り組みではなく、お客様、協力会社、海外企業とも共創したい
―― 共創ビジネス事業部の取り組みは、「デザイン思考」や「デジタルトランスフォーメーション(DX)」といった言葉でも表現されると感じます。ただ、そういった言葉を意識したのではなく、お客様のニーズに応える取り組みが結果的に時流にマッチしたという印象を持ちました。いかがでしょうか。
満保氏 たしかに3年前に共創ビジネスチームを立ち上げたときは、DXは今ほど声高に叫ばれてはいませんでしたね。お客様のニーズにお応えしようと取り組んできた結果です。それが、「時流にドンピシャ」だったとすれば、やってきたことは間違いなかったと自信にもなりますし、行動に後から言葉がついてくるというのは嬉しいですね。
三木氏 私がお客様と接する中で、追い求めているのはずっと「こんなことできない」とか「こんなこと考えているのだけど」といったワードです。そのワードをいただければ、「こんなイメージでしたっけ?」と提案でき、お客様に「気づき」を与えられて、具体的に事業の企画に落とし込むお手伝いもできます。だから、そういったワードが「大好物」です(笑)。それを求めて取り組んできたことが、「結果的にお客様のDXのご支援に結びついてきた」というのが正直なところですね。
満保氏 その感覚をさらに広げていくと、その先には、お客様も巻き込んだ共創があるのかもしれません。お客様が一人、メンバーに入って、その人が「こういうテーマなんだけど」と話し始めると、みんなが「おもしろいですね」と言い出して、どんどん展開していくようなイメージです。
今はビジネスにおいて「正解のない時代」でしょう。企業の中で何か新しいことをやろうとしても、正解がないから、なかなか踏み出すことも難しい。それを推進する人は、孤独で周囲に理解者がいないケースもあると考えています。そんな人には、ぜひ共創ビジネス事業部を使っていただきたい。頼っていただきたいし、一緒にやろうと思っていただきたいです。
―― 実際に手がけた事業で、お客様との共創がうまく進んでいる事例を教えていただけますか。
田岡氏 あるお客様で、もともと有線で高速伝送していた仕組みを無線でできないかというお話しをいただいたものがあります。リアルタイム性が極めて重視される仕組みで有線だったのですが、無線化したいとのご相談を持ちかけられ、3年がかりの実験を現在も進めています。
満保氏 この案件は、発注ナビ経由でいただいたものですが、最初から私は「やりたい」とピンと来て、すぐに田岡さんに「できますかね?」と聞いたら、「たぶん大丈夫です」と。その言葉だけを信じて、お客様に「ぜひ、やらせてください」とお話をしたのですが、あとから「大手SIerを含めて複数社から技術的にできるかどうかわからないことを請けることはできないと話を断られた」と聞きました。
現在まで当社はうまくできていますし、何より、3年目の実証実験が成功すれば、お客様も新たな事業として展開できるという青写真を描いていらっしゃいます。まさに、お客様との共創で新たなビジネスを生み出すことに取り組めていると実感しています。
三木氏 もうひとつは、非IT系のお客様の事例です。メーカーのお客様で、アナログの製品にデジタルを掛け合わせるとどんなことができるのかを提案しました。私が前職でRFIDを扱っていたので、「RFIDタグを使うことこんなことができます」、「さらにインターネットに繋ぐと遠隔操作も可能です」などと説明しました。これまではイメージをお伝えするだけだったのですが、共創ビジネス事業部では、すぐに実際に動くモノを作ってデモをお見せできます。
さらに、データを蓄積して分析するなど、IoTデバイスやセンサーなどのハードウェアも組み合わせたトータルな提案もできます。例えば、匂いのセンサーや心拍のセンサーなどのメーカーとも一緒に共創できることも、私たちジャストワーク 共創ビジネス事業部の強みです。
ジャストワークだけで完結しようとは、全然、考えていないのです。もっと柔軟な思考で、お客様の目指す事を実現するためにはどうすべきかを考えています。
田岡氏 もっと、発想を広げて世界にもパートナーを見つけて共創ビジネスを広げていきたいですね(笑)。私たちは本当に自分たちが持っている技術にすごく自信を持っています。それだけでなく、センサー技術に強い企業と一緒に取り組むとか、非IT系の企業のアイデアを取り入れるとか、今まであまり接点がなかったような企業の方々とも共創して、新しいビジネスを創り上げていきたいですね。
今後はお客様と一緒に「ビジネスの種を蒔く」ところから共創を
―― 今後の共創ビジネス事業部の取り組みの方向性として、皆様のお考えをお聞かせください。
満保氏 今、私たちがやっているのは決められたモノを作るシステム開発ではなく、「ビジネス開発の支援」です。その中で、私たちがこだわっている部分は「早く作る(実現させる)」ことです。実は、これは、工数ビジネスと相反します。将来的には工数をベースとした開発費用をいただくのではなく、開発したモノを使っていただいた分だけ対価をいただく従量課金や、成功報酬、ライセンス契約やレベニューシェアといった形で、共創したビジネスの成功に連動するような契約を行い、お客様、パートナー様と一緒にビジネスの成功を目指したいですね。ビジネス開発の支援からさらに一歩踏み込んだ、「ビジネス開発そのもの」を共創できる事業部にしたいと考えています。
ビジネスのライフサイクルが短くなっている今、常に新しいビジネスを生み出し続けられ、共創ビジネス事業部の中に、開発以外に複数の事業がある。そんな事業部になったら面白いと考えています。
三木氏 端的に言うと、より「魅力的な組織・会社になる」ということです。「いい人材」が入りたいという会社であり、魅力的な開発をやっている組織があることも広く知ってもらいたいですね。
田岡氏 私は、日本のエンジニアに対して、「ジャストワークという会社がエンジニアの地位を上げた」と言ってもらえるようになったら素晴らしいと考えています。共創ビジネス事業部の取り組みから、広い視野ではお客様と一緒にそんなことも実現できたらいいなと考えています。