DX推進をしなければ「2025年の崖」を越えられないと言われて久しい中、いまだにDX推進に着手できていない企業は少なくありません。その理由は「社内にDXを推進するようなITに明るい人材がいない」「既存システムの中身を知る人物が退職してしまい手が付けらない」「既存システムを開発したベンダーと連絡が取れない」などさまざま。
そんなブラックボックス化したシステムを目の前に、DX推進に頭を悩ませている企業を助けてくれるのが、プロベクタ株式会社と株式会社クラウズが提供する、その名も「ブラックボックスレスキュー」というサービスです。
一体どのようなサービスなのか。プロベクタ株式会社の代表取締役であり、株式会社クラウズの社外取締役でもある鈴木久康氏と、株式会社クラウズの広報担当である片山陽加氏に、2社の協業によって生まれた新サービス「ブラックボックスレスキュー」について詳しく伺いました。
まずは古くなったシステムの中身を明らかにするところから始めませんか? もしかすると長年蓄積されてきた業務ノウハウや、他社に対する競争力がそこに詰まっているかもしれません。
―― すでに2025年を迎えていますが「2025年の崖」とはどのようなリスクを指していたのですか。

プロベクタ株式
代表取締役社長 鈴木 久康氏
プロベクタ鈴木氏: 多くの企業がDX、いわゆるデジタルトランスフォーメーションを推進していますが、いまだに踏み切れていない企業も少なくありません。経済産業省では、古くなったITシステムが企業のDXの障害となり、毎年最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると警告し、これを「2025年の崖」と表現しています。この2025年の崖を乗り越えられるかどうかが、今後の企業の生き残りを左右すると考えられています。
―― なぜ、古くなったITシステムがDXの障害となるのでしょうか。
鈴木氏: システムの構築から長い年月を経て、システムの詳細を把握している社内人材がいなくなっているためだと考えられます。長年使い込んできたシステムは、そもそも古い技術が使われており、かつ機能拡張や各種の改修などを繰り返してきたことで内部が複雑化しています。どのシステムが業務のどの部分をどう処理しているのか、どの部分がどことつながっているのかも分からない、いわゆる「ブラックボックス」の状態になってしまっていると、システムの拡張や刷新をしたくても、どこから手をつければよいのかの判断がつきません。DXでは業務プロセスの改革も一体となって語られることが多いだけに、自社のビジネスプロセスを担うシステムを俯瞰的、網羅的に見ることができなければ、なかなか踏み込むことができないのです。
このブラックボックスの中身を明らかにするのが当社のご提供する「ブラックボックスレスキュー」というサービスです。ブラックボックスレスキューは、プロベクタ株式会社と株式会社クラウズが連携し、それぞれの強みを活かしながら、お客様がお持ちの既存システムの内部にあるブラックボックスの中身を解析し、DX推進の第一歩を踏み出すお手伝いをします。
―― ブラックボックスの中身を知ることは大切なのですね。
鈴木氏: 新たなビジネスやサービスを立ち上げて既存のビジネスとデータ連携をさせようと思っても、目的のデータをどこから取り出せばよいのか、そもそも都合良くまとまったデータがシステム内にあるのかどうかも分かりません。
また、DX推進で、古いシステムを新しいものに置き換える際に、SaaS(Software as a Service)形式のシステム、いわゆる既成のクラウドサービスを導入することで導入や運用のコスト削減を検討されるケースも多いでしょう。
SaaS型のシステムでは、どの企業でも必要とされる一般的な機能があらかじめ実装されています。既成のシステムなので、イチから開発するのに比べれば導入コストも破格に抑えることができるでしょう。さらに幅広い業務プロセスに対応できるように、ユーザーの要望に応じてカスタマイズできる余地を残しているものもあります。ただし、このカスタマイズには注意が必要です。新規の開発や、その開発部分の運用・保守で余計に費用がかかります。あまりカスタマイズ要素が多いとSaaS型システムのメリットであるコストメリットが失われてしまうこともあります。したがって、当社でSaaS型システム導入のお手伝いをする際には、できるだけ標準機能での導入をお勧めしています。そのために現場の業務を見直して、システム側に合わせることをご提案することも少なくありません。
一方で、他社と異なる業務プロセスが、そのまま他社に対する優位性につながっているという場合もあります。これを安易に標準プロセスに戻してしまうと、競争力を失いかねません。ですからブラックボックスの蓋を開けて、きちんと中身を見分する必要があるのです。
―― なるほど。ブラックボックスの中身を解析することで、その会社のビジネスプロセスが他社と同じなのか、独自のものなのかも分かるということですね。
鈴木氏: その通りです。もしかするとブラックボックスの中には、長年積み上げてきたその会社のノウハウがぎっしりと詰まっているかもしれず、それを確認もせずに手放してしまうのはもったいない。一方で、標準プロセスだということが分かれば、心置きなくSaaS型システムにも移行できます。
ですから、まずはブラックボックスレスキューで既存システムの中身を明らかにするところから始めませんか?というのが当社、プロベクタからのご提案です。
ブラックボックス化したシステムの刷新と再発防止を3ステップで! プロベクタとクラウズがそれぞれの得意分野を活かしながらお客様の課題を解決していきます。
―― ブラックボックスレスキューは具体的にどのようなサービスですか。
鈴木氏: はい。以下の3ステップを実施することで、企業のDX化推進と競争力の強化を行います。
【1】システムの『棚卸し』
必要な部分からシステムの中身を見える化し、現在の業務で本当に必要かどうか判断できる状態にします。具体的には、既存ソースコードの解析(AI&エンジニアにより実施)し、プログラム間の呼び出しやデータの流れを文書化していきます。これにより、システムおよびプログラムの全体像が把握できるほか、複雑性の原因となっている部分の明確化を行い、モダナイゼーションの戦略立案に繋げることができます。
【2】段階的な『モダナイゼーション』
リスクを最小限にしながら、優先度の高い部分よりシステム刷新を行います。このとき、システム全体の刷新を一気に行おうとはせず、リスクを最小限にして段階的なアプローチを取ります。具体的には、Rehost(オンプレ環境をクラウド環境へ移行し、運用コストの最適化を図る)とFit to Standard(各種クラウドサービスへの移行を念頭に標準機能に業務フローを合わせ導入する)という2つの手法が考えられます。これらは段階的なDXとなり、リスクを最小限に抑えつつ、クラウドベンダーのベストプラクティスを活用することにより、より効率的な業務プロセスを構築できます。
【3】知識の『形式知化』と『人材育成』
ベンダー企業と一体となってシステム刷新を行うことにより、ノウハウの蓄積と組織構築を行います。システム関連の知識を属人化させず、組織全体で継続的に情報の共有・継承ができるようになります。具体的には、定期的な業務プロセスの評価と改善を行い、ナレッジマネジメントの徹底を図ります。これにより、ベンダーと対等な知識を持って継続的なDXの推進ができ、また、事業部門とIT部門が協調し、事業推進が可能となります。
以上の3つのステップを、当社と株式会社クラウズとの間で役割を分担して進めていきます。
―― この中で、株式会社クラウズ様はどのような役割を担っているのですか。

株式会社クラウズ
広報担当 片山 陽加氏
クラウズ片山氏: 株式会社クラウズでは普段より、IoTやAIなど新しい技術領域でのシステムインテグレーション(SI)に積極的に取り組んでいます。また、各種カードリーダーデバイスであるPitTouchの組み込みコンテンツの開発や、コネクテッドカー関連の開発などにも携わる中で、新しいハードウェアや周辺ソフトウェアとの連携やシステムへの取り込みを行う過程で、そうしたソフトやハードの動作を検証しながら進めることが少なくありません。
たとえば、上記の「システムの棚卸し」では、そうしたクラウズの得意分野が活かせるものと考えております。また、その先のモダナイゼーションについても、クラウズの持つ組織的なシステム開発力が発揮できるでしょう。
鈴木氏: クラウズでは、海外メーカーのハードウェアを活用したシステムの開発も行っています。お客様から「外部I/Fがありそうなんだけど、解析してカスタマイズしてもらうことはできる?」と、既存システムの中身の見える化を依頼されるケースが多く、そうした声にお応えするサービスが求められていました。
モダナイゼーションでは、SaaS型システムの導入や中小規模の開発であればプロベクタが主体となって実施し、大規模なSI開発であればクラウズがお手伝いすることになります。
ただし、いずれにしてもお客様を煩わせることなく、窓口は一本化し、ワンチームで対応しますのでご安心ください。
―― 知識の『形式知化』と『人材育成』材育成までサポートされるのはなぜですか。
鈴木氏: そもそもシステムがブラックボックス化してしまったのも、結局は社内に人材がいないことが原因でした。したがって、今後もそういうことが起きないようにしておくことは大切です。ブラックボックスレスキューは、既存システムのモダナイズだけでなく、その後、同じことが起きないようにする対策についてもお手伝いをしていきます。
場合によっては情報システム部門のアドバイザーとして、弊社が関与させていただきます。
古いシステムもOK! 予算もやり方次第で抑えることが可能。小さなご相談から喜んで承ります。
―― ブラックボックスレスキューを申し込むと、プロジェクトは具体的にどのように進行していくのですか。
鈴木氏: まず、お客様がお持ちの既存システムが解析可能かどうかを確認します。システムの規模を調べ、さらに、どのような技術が使われているのかを確認するところから取り掛かります。そして「これなら調べられる」と確認ができたら本格的に解析を進めていきます。この最初の確認フェーズは、システムの規模にもよりますが、小規模ならば無償から承りますので、お気軽にお声をおかけください。
本格的に解析を進める過程で「処理がこうなっていますが、これはどういう意味か分かりますか?」という、プログラムと業務プロセスのすり合わせや確認は、お客様と一緒にやっていきます。そうした中で、先輩社員が導き出した業務ノウハウや、自社の組織や業態に合わせた業務プロセスなど、意外な宝物が発見できるかもしれません。そうして判明した内容を報告にまとめ、モダナイゼーションの計画を立案していきます。
このとき、Fit to Standardを念頭に進めます。業務を標準に合わせるということです。SaaSのベストソリューションに、お客様の業務プロセスをできるだけ合わせていきます。そして解析で発見された「どうしても」という譲れない部分だけをカスタマイズすることで、総予算を抑えることができます。
多くの場合、SaaSベンダーの方々とも密に会話し、様々な視点から総合的にメリットがある導入方法を検討します。
その後、ノウハウの蓄積や人材育成に取り組みます。企業によっては、情報システム部門があっても、社内の御用聞きで終わってしまい、IT戦略を考える部門でないことも少なくありません。ベンダーに丸投げするのでは、ベンダーの言いなりになってしまい、理解が及ばず、結局またブラックボックスになりかねません。そうではなく、ベンダーと同等の立場で進めていけるような人材を育成していくことが重要です。
―― 既存システムといっても、どれぐらい古いものまでお願いできるものなのですか。企業によっては、20年以上にわたり使い続けているようなシステムも珍しくありません。AS/400等の古いオフコンをいまだに使っているケースなども耳にします。
鈴木氏: プロベクタでもAS/400の置き換えに携わったことがあります。ある化学材料メーカーのお客様では、化学材料を製造・販売しているのですが、そのうちの一部は食料品として扱われていました。消費税の軽減税率が導入される際に、システム内で品目に応じて税率を変えるための改修をしようとベンダーに依頼したところ、改修費用に300万円かかると言われ、AS/400捨てようと決意したそうです。また、AS/400のハードウェアは何年も前に販売が終了しており、機能としては問題がなくともハードウェアの保守が難しいという実情があります。
AS/400のソフトウェアはRPGというプログラミング言語で記述されていることが多いのですが、これを比較的新しいプログラミング言語であるJavaに移植し、現在流通しているハードウェア上でも動かせるようにすること、また、ハードウェアの保守の手間を無くすためにクラウド上で運用することなどをご提案し、実施しました。
―― 予算面で悩んでいるお客様もいらっしゃいます。
鈴木氏: これまでは、ブラックボックスの解析もエンジニアが貼りついて行う必要がありましたが、現在は一部をAIに実施させることが実用的になってきました。エンジニアがAIを活用しながら解析することでよりスピーディーな対応ができ、結果的にコストも圧縮できるようになっています。また、プロベクタでは、普段からフリーランスの優秀なエンジニアに活躍してもらっています。フリーランスなので、プロジェクトごとにダイナミックにヒューマンリソースを調達することができますから、たとえば「フルタイムで貼りついてもらう必要はないが、週1日程度のペースで十分」という声にも柔軟にお応え可能です。こうすることでさらに予算を圧縮することもできます。
片山氏: もちろん「何人月」という形で対応することも可能です。その場合には、クラウズの持つ組織力で強力にバックアップしていきます。
―― かなり前から「2025年の崖」と言われていたのに、なぜ今、このブラックボックスレスキューというサービスを提供し始めたのですか。
鈴木氏: 早くから「やらなきゃ」と取り組んでいた企業は、2025年を迎える前にDX推進を完遂しています。当社もこれまでに何社ものお客様のDX推進をお手伝いしてきました。一方で、現在も、まったく手が付けられていない企業もあります。すでに同じ業界内でもDX推進を行った企業とそうでない企業の間で格差が生じ、勝ち組と負け組が生まれ始めています。いまだ着手できていない企業は、何がハードルになっているのかを調べた結果、既存システムのブラックボックス化に問題があると分かりました。ここが解決できれば、今からでも決して遅くはありません。巻き返しのチャンスをご提供していければと考えています。
―― 最後にお客様に向けてメッセージがあればお聞かせください。
鈴木氏: 現状を打破したいとは思うものの「そんなに一気に変えることはできない」という切実な声もあります。しかし、一気に全部を置き換えなければならないわけではありません。ブラックボックスレスキューは、既存のシステムを使いながら「この部分のデータを取り出して新しいことに使えないか?」といった小さなご相談から喜んで承ります。すぐにすべてを置き換えるのではなく、今後のDX推進の青写真を作るきっかけになれば良いのではないでしょうか。ぜひお気軽にご相談ください。