発注ナビTOP>インタビュー>どこを選べば良い? 発注先選びに迷うあなたに、Web制作会社がこっそり教える「押さえておくべき大事なポイント」――ワードロジー株式会社

どこを選べば良い? 発注先選びに迷うあなたに、Web制作会社がこっそり教える「押さえておくべき大事なポイント」――ワードロジー株式会社

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ワードロジー株式会社の扉

企業サイトや採用特設サイト、商品紹介サイトなど、世の中にはたくさんのWebサイトがあります。「こんなWebサイトがほしい!」と思っても、どのように発注先を選べば良いか迷ってしまうもの。やっと制作がスタートしても、イメージした制作物があがってこなかったり、進め方に不安を感じてしまったり……。どうしたらうまく進められるのかと、悩んだことのある方は多いと思います。
そこで今回は、発注者側の目線から、発注先の選び方から打ち合わせの進め方まで、ポイントを制作会社が紹介。ブランディングを軸にWebサイト制作など各種サービスを提供するワードロジー株式会社の代表取締役社長 大串 匠太郎氏に、発注から発注後における各段階において、選定において見るべき点やコミュニケーションの取り方について伺いました。

 

 

1.発注前:発注先選定のポイント―見るべきは見積もりの安さ? 企業規模? 制作実績? 見極めポイントを押さえよう!

―― 多くの発注企業が発注先選びに迷っています。

ワードロジー 大串氏: Webサイトを頻繁に制作する企業であれば、自前の指針やWebに関する知見をお持ちだと思いますが、普通の企業であれば、企業サイトや採用特設サイト、また商品サイトの制作等はそう頻繁に行わないもの。担当者自身が初めて発注先を選定するケースも多く、迷ってしまうのも当然かと思います。

一番わかりやすいのは、見積書の金額で判断するケース。金額が低い方を選びたいと思うのは当然ですし、社内の賛同も得られやすいと思います。

ただし気を付けなければいけないのは、「安かろう悪かろう」になってしまっては意味がないということ。これまでも「安いから」だけで発注を決めた結果、求めていたクオリティに至らない、担当者のレスポンスが遅い、納期が遅延するばかりか裏側のコードが正しく記述されていないため公開後はGoogle等検索エンジンから評価されない……というケースを見てきました。発注者側も「次のリニューアルの時は良い会社を見つけよう」と思うのですが、その機会は数年後ですし、なぜそうなってしまったかを分析しきるのは困難なので、反省を活かすことができないのです。

ポイントは、見積もり金額の背景をきちんと理解すること。見積もりには理由があります。出てきた金額だけを見るのではなく、「なぜこの金額なのか」を聞くことが大切で、納得のいく答えが返ってくるなら、発注先として検討する余地は大いにあるでしょう。

 

―― 会社の規模で選ぶのはいかがでしょうか。

代表取締役 大串 匠太郎氏

大串氏: 規模で判断するのも注意が必要です。発注者としては規模が大きい、また知名度のある会社は安心できそうですが、頼もしいパートナーになるかと言えば、必ずしもそうとは言えないと私は思います。

その理由は、担当者によって知識や経験、対応にムラがあること。当たり前といえば当たり前ですが、規模が大きくなるにつれて、担当者の能力に幅がでてきます。

大きな会社はクライアントの規模も大きく、年間のWebサイト運用において数千万円、場合によっては億単位のフィーをもらっているケースも少なくない。優秀なスタッフはそこにアサインされて、数十万〜数百万円規模の案件は、経験の浅いスタッフがアサインされる場合がある。やっとの思いで発注しても、肝心の担当者が制作を熟知しているとは限らないのです

担当の営業やディレクターの経験が浅いと、知識や提案力が備わっておらず、制作サイドにメッセージを伝えるだけの伝書鳩になってしまうことがあります。反対に小規模の場合は、社長が直接やりとりしてくれたり、ベテランスタッフがフロントに出てきて、その場であれこれと提案してくれたりするケースも多い。

会社規模も重要ですが、発注者の目線に立つと、大切なのは親身に対応をしてくれるかどうか。そして、知識や経験があるかどうかだと私は思います。発注前に打ち合わせをする機会があれば、様々な疑問をぶつけて、対応をきちんと見ておきましょう。
「誠実に向き合ってくれている」「Webのことは安心して聞けそうだ」という印象があれば、ひとまずは安心だと思います。

 

―― 過去の実績を見るのはどうでしょうか。

大串氏: 実績はもちろん重要です。ポイントとしては、ただ実績を見るのではなく、「案件について上流工程から関わっているか」も、可能であれば確認してください。
大きな規模の案件を手掛けていたとしても、企画や提案は代理店が行い、制作会社は指示の通り組み立てるだけ、というケースもあります。
役割分担があるのでそれ自体は良いのですが、知っておきたいのは、提案力・課題解決力と作る力は、別だということ。「実績はすごいけど良い提案がもらえない」といった悩みを聞くことがありますが、期待値のズレの原因はここにあるかもしれません。
反対に、中小企業の制作実績が多くとも、上流工程から手掛けている場合は、真正面から課題を受け止め、提案力も作る力も養われているケースが多い。ぜひそういった点も、気にして見てください。

 

2.発注前:打ち合わせの進め方―たくさん質問してくる会社は良い会社。提案内容については、背景を尋ねてみるのもお勧め!

―― 打ち合わせを進める段階で気にかけておくべきことはありますか?

大串氏: 打ち合わせで、たくさん質問をする会社は良い制作会社だと思います。質問内容によっては「そんなことが重要なのか」と思うこともあるかもしれませんが、お客様のことを少しでも深く、正しく理解してくれようとしている証拠です。

質問は多いくらいでちょうど良いと私は思います。発注者側も何か聞かれたら、面倒と思わず一つひとつ丁寧に答えていくことが、良い結果につながると思います。

 

―― 打ち合わせ後に各社から提案が上がってきます。どう判断すれば良いでしょうか。

大串氏: まずは、打ち合わせで伝えた課題を解決しようとしているかを見てください。それでも甲乙つけがたい場合は、なぜ自社にとってこのような提案が良いのか、いわば提案にまつわるストーリーや背景をより詳細に尋ねてみるのが良いでしょう。

その提案に、明確な意志と目的があれば、情熱を持って説明をしてくれるはず。そこが曖昧だったり、「この場合はこう対応してきた」「制作がこう言っていたから」といった答えが返ってきたりするようであれば、要注意。惰性で提案をしているかもしれません。
企業の持つ課題は似通っているようで、細部は違うもの。その点を理解していれば、提案は芯が一本通ったものになると思います。

 

3.発注後:要望の伝え方―発注者はHowではなくWhatとWhyを伝えよう!

―― 発注先が決まりいざ制作となっても、発注者側の要望と制作物にズレが生じる場合があります。このズレを防ぐためには、発注者側は何に気をつければ良いでしょうか。

大串氏: まず前提として、丸投げはよくないということ。どんなに腕のある制作会社だとしても、丸投げでは良いものが出来上がりません。以下に関しては、発注者側も常に意識しておくと良いでしょう。

  • 解決したい不満と課題
  • 得たい成果

当たり前のことのように聞こえますが、具体的な情報を伝え忘れていたり、時間が経つと発注者側も目的を見失っていたりするケースは多いのです。 新規の制作においても既存サイトのリニューアルにおいても、何かしら不満や課題があるから発注をしたはず。Webサイトを新しく作ることで何を解決したいのか、何を得たいのか。まずはこれを言語化し、チームで共有しておくと、後々のブレが少なくなるでしょう。

 

―― 課題と目的を明確にしても、制作途中で意図しないデザインが上がってくるケースも少なくないと思います。そんなときは、どのように制作会社に要望を伝えれば良いのでしょうか。

大串氏: ポイントは、方向性さえズレていなければ、できるだけ具体的な指示はしないこと。感じたことをそのまま伝えるのが、実は効果的です

どういうことかというと、例えば出てきたデザインを見て、「会社のロゴマークをもっと印象づけたい」と感じたとします。その場合、発注者側は「ロゴをもっと大きくしよう」と、具体的な施策も一緒に頭に浮かびますが、そこはあえて言わずに、「ロゴマークをもっと印象づけたい」とだけ伝えてみてください。

デザイナーは、課題を解決するために様々な手法を持っています。
印象付ける方法は、ロゴを大きくするだけではありません。「もっと印象付けたい」と要望を伝えれば、(ロゴの大きさ調整も含めて)印象付ける最適な方法を色々と考えてくれるはずなのです。

デザイナーは課題をデザインで解決します。方法を指定するのではなく、アイデアを引っ張り出した方が、より良いものが出来上がります。

 

―― 仕上がってきたデザインを見ると、どうしても具体的な要望を伝えてしまいたくなります。

大串氏: 物事を考える順番として、Why(なぜ)- What(なにを)- How(どうする)を意識すると、物事の解像度がグッと高くなり、何を伝えるべきかが整理されると思います。 先ほどのロゴマークを例に考えてみましょう。

 

 

デザイナーが長けているのは、Howの引き出しと実装力。
「どのように実現するか」をデザイナーは知っていますが、WhyとWhatについては、実は発注者しかわからないのです。

ありがちなのが、WhyとWhatを飛ばして、いきなりHowを伝えてしまうこと
例えば「ロゴマークをもっと大きくしてほしい」と伝えるケースです。そうするとデザイナーはロゴマークを大きくしてくれると思いますが、実はもっと良い方法があるかもしれない。

そこで、WhyとWhatを、発注者側は伝えてみてください。
「商品名を知ってほしいから、ロゴマークとブランド名を印象付けたい」とだけ伝えれば、それを実現する方法をデザイナーは考えてくれるはず。もしかしたら、発注者が思いもしなかったHowが出てくるかもしれません。

制作会社やクリエイターは何のプロかというと、Howのプロなんです
手法はプロに任せて、要望だけを伝えたほうが、可能性が大きく広がります。

 

4.公開後:公開後のブランディングと反響獲得の両立―ブランディングと反響獲得の両立は実現できる。今後はブランドを育てることが反響獲得につながる!

―― Howはプロに任せるというのは確かに大切ですね。ところで御社は「ブランディングと反響獲得の両立」を掲げています。そもそもブランディングと反響獲得との両立というのは難しいものなのでしょうか?

大串氏: 広告というのは大きく2つに分かれています。1つはブランドを醸成する広告で、こちらは企業や商品・サービスのイメージを打ち出し印象づけるのが目的です。もう1つは反響獲得型広告で、こちらは商品やサービスのメリットを具体的に打ち出すものが多く、ユーザーが思わずクリックしたくなるような広告です。

例えば、スーパーマーケットの広告の場合。
ブランディング広告ならば「誠実・実直」とか「地域への貢献」などを謳い、企業姿勢を印象づけるケースが多いと思います。一方で反響獲得型広告ならば「チラシを持参した方にはノベルティ贈呈」とか「18:00から全てのお惣菜タイムセール開催」などをキャッチに顧客の購買意欲を掻き立てます。

従来、この2つの広告は別物として考えられてきました。反響獲得型を得意としている制作会社の中には「ブランディングは意味がないですよ」とバッサリ切り捨ててしまうところもあるほどです。そう言われてしまうと、発注者側側は「そういうものなのかな」と思ってしまうでしょう。

しかし、特にWebの世界では、どちらかに偏るのではなく、この2つを統合していくことが今後は重要だと私は考えています。

 

―― どういうことでしょうか。

大串氏: 特に企業サイト、採用特設サイトにおいては、ブランディングと反響獲得を両立させるための意識が重要です。

反響を獲得するための手法の多くは「安さ、もしくは機能を打ち出す」ことに収斂されます。 これらは確かに一定の効果はあるのですが、各メーカーがしのぎを削り新しい商品やサービスを作り出している現在、単に機能が良い、デザインが良い、価格が安い、は当たり前になりつつあります。
同じクオリティでリーズナブルな価格の商品やサービスがたくさんあるなど、消費者の選択肢は多岐にわたっています。

だからといって、さらなる価格競争に走ってしまうと、やがてビジネスは疲弊し、いずれ破綻をきたしてしまうでしょう。そうなると、どこで差別化していくのかが重要になります。

事実、消費者は値段だけでも機能だけでもない、複合的な要素で商品やサービスの価値を判断しています。そこで育てていきたいのが、「ブランド価値」なのです。

先ほどのスーパーマーケットの例で言うと、最近では食材の売り場に、生産者の顔やプロフィール、生産方法や流通経路などを掲出しているケースがあります。

これは、値段や味だけで比べるのではなく、誰がどのような思いをもって作ったか、どういう流通で手元に届いているのか、どのような肥料や農薬を使用しているかなどを明示することで、「誰から買うか」という新しい価値観で比べてもらおうという試みです。

現代において問われているのは、会社やサービスの思想です。「会社が大切にしている考え方」「消費者との向き合い方」とも言えるかもしれません

実際に、消費者と真摯に向き合っている会社の商品ほど、価格が高くとも売れています。何を考え、何を大切にしているのかがブランドメッセージの起点になっており、結果的に自社の求める顧客から反響を獲得できているのです。

Webサイトでは、ブランドメッセージと反響獲得のための情報をつなげやすく、両面から顧客にアプローチできる仕組みを持っています。結果として、ブランドを育てることが反響獲得にもつながるので、両者を別々に考えるのではなく、ブランドを大切にし、ブランドの範囲の中でどのように反響を獲得していくかを考えることが、私は大切だと思います。

 

―― ブランディングというと難しく感じますが、Webサイトで思いや思想を表現する際に、発注者が注意しておくべきことはありますか?

大串氏: まず、何をいうか。次にどう言うかです。自分たちのメッセージをきちんと発信することは当然ですが、「どう言うか」には、デザインも含まれます。
良いデザインとは「きれい」「かっこいい」だけではありません。「自分たちの世界観を表現できているか」、すなわちブランドイメージを、言葉と風景で伝えられているかということです。

伝えるべきことを取捨選択し、言葉と風景でしっかりと伝えることで、自分たちのイメージや立ち位置をはっきりさせる。
設計部分で動線やコーディングを丁寧に考えることで、Google等検索エンジンにも評価されるようにし、反響を獲得しやすくする。

Webサイトの根本は、設計・デザイン・言葉です。ここをきちんと練ることで、ブランディングと反響の両立を目指すことができると考えています。

 

―― なるほど。そういう意味では、先ほどのお話の通り、たくさん質問をしてくれる制作会社のほうが、ブランドイメージの世界を理解してくれそうですし、ビジュアルデザインも、制作会社のアイデアに任せた方が良い結果になりそうです。

大串氏: 発注先に迷ったら、自分たちの言いたいことをきちんと言語化してくれる会社、自社のスタンスと顧客層の傾向を正しく理解してくれる会社に発注することをお勧めします。この記事が発注者様にとって、何か一つでも参考になることがあれば、嬉しく思います。

 

―― 大串さん、ありがとうございました。

 

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