働き方改革の動きが進められていく中で、勤怠管理システムの導入が進められています。勤怠管理システムを導入する際には、いくつか押さえておいたほうが良いポイントがあり、そのポイントを知らないまま導入しようとすると失敗することもしばしばです。そこで今回は、勤怠管理システムの導入についてアドバイスが欲しい方に向けて、勤怠管理システム導入のメリットやデメリット、勤怠管理システムの選び方、勤怠管理システム導入前に行う準備などを中心に解説していきます。
目次
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勤怠管理システムとは
勤怠管理システムは、社員が法令や就業規則にのっとって労働しているかを雇用者側が正しく把握するために必要なシステムです。
今までは紙の勤怠カードを機械に通して打刻する方法が使われていました。しかしこの方法だと労働時間が見えづらく、法令や就業規則に反した労働を社員に強いる例が相次ぎました。また社員が不正をする可能性もあります。そういった状況を改善するために、勤怠管理システムの導入が必要とされています。勤怠管理システムに搭載されているのは以下のような機能です。
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日次勤怠
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申請・承認機能
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勤怠データ分析・集計機能
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通知機能
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データ変換機能
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給与計算機能
日次勤怠で1日の社員の勤怠状況がわかり、申請・承認機能で残業や休日出勤の申請などが行えます。勤怠データ分析・集計機能などで、社員ごとの働き方の傾向がわかり、問題のある社員に対してどこをどう改善するか指摘しやすいです。給与計算機能と紐づけることで、給与計算が容易になるだけでなく、給与計算のミスも減らせます。ほかにも、通知機能で勤務超過しそうな際にアラートが出せるように設定でき、データ変換機能で会社ごとに扱いやすいファイルで勤怠管理のデータを保管できます。
勤怠管理の重要性
会社の社員の勤怠管理は、会社の義務です。労働基準法第32条にて、1日8時間の法定労働時間が規定されています。この規定を超えて働く場合は、労働組合と36協定を結んだ上で、労働基準監督署への届け出が必要です。いくつかの過労死についての問題が報道されるようになってから、ブラック企業と呼ばれる企業は世間に会社名が公表されるようになってきています。既定の労働時間を守らないだけで会社の評判の低下につながるようになってきているため、勤務時間はしっかりマネジメントしていきましょう。
正確な勤怠管理が難しい理由
正確な勤怠管理は、以下のような理由で難しいとされています。
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雇用形態の違い
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勤務形態の違い
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社員の打刻忘れ
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働き方の多様化
●雇用形態の違い
1つの会社内に正社員や契約社員、アルバイトなどの働き方があって、人によって雇用形態が異なります。正社員だと法定労働時間が基準となっていますが、アルバイトだとそういった決まりはありません。そして給与計算も月給や時給、歩合給と雇用形態によって異なるため、勤怠管理が複雑になりやすいのです。
●勤務形態の違い
雇用形態だけでなく、同じ正社員でも休暇の取得やフレックスタイム制などで勤務日数や出退勤時間が異なります。シフト制で土日も働き手が必要なところだと、土日の勤務状況の管理も必要です。人によって働き方がバラバラになるため、社員が多い会社ほど1人でも労働基準法に違反しないようにマネジメントしていくことが難しくなってしまいます。
●社員の打刻忘れ
タイムカードによる打刻だと、打刻忘れや記入漏れ、不正申告のリスクがあります。それだけでなく出張や直行直帰の場合、間違った時間を記入してしまう可能性があり、正しい勤務時間が記録しづらくなってしまいます。正しく打刻するために、場所を問わずリアルタイムで打刻したり、打刻ミスを修正したりする仕組みが必要です。
●働き方の多様化
フレックスタイムだけでなく社会情勢の変化によってリモートワークなどが当たり前になり、自分の裁量で働く時間を調整できるようになりました。それによって正しい勤務時間を管理するのが難しくなってきています。
勤怠管理システム導入のメリット
勤怠管理システム導入のメリットとして、以下のものが挙げられます。
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業務効率化
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正確な人件費の把握
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勤怠データの活用
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トラブルの回避
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社員の健康維持と生産性の向上
●業務効率化
勤怠管理システムの導入によって、勤怠データの集計・分析にかかる作業時間を削減できます。勤怠管理システムと給与計算システムを同期させれば、管理と給与計算を同時に行うことも可能です。そのため、勤怠管理や給与計算に割いていた人材の一部をコア業務に割り当てられます。社員側としても、タイムカードの打刻のためだけに出社する手間が省けるため、時間を有効活用できます。
●正確な人件費の把握
勤怠管理システムがあると、正しい人件費を把握しやすくなります。リアルタイムで社員の勤怠状況が把握できるため、社員の打刻漏れや打刻時間のミスをすぐに指摘しやすいです。タイムカードだと月末にならないと人事が勤怠状況を把握できないので、打刻修正が正しく行われない可能性もあります。勤怠管理システムを導入すれば早い段階で打刻修正ができるので、正しい人件費を算出しやすくなります。
●勤怠データの活用
勤怠管理システムには社員の勤怠状況を把握するだけでなく、そこから正しい人員配置ができているか分析する機能も搭載されています。タイムカードだと分析は自力で行うしかありませんでしたが、勤怠管理システムならその分析を簡単に行うことも可能です。正しい業務配分や人員配置ができると業務効率化や労働環境をより良くしやすいです。
●トラブルの回避
勤怠管理システムを使った正しい勤怠状況の把握は、業務効率化などのプラス効果を生み出すだけでなく、リスクヘッジにも役立ちます。労働基準法に違反していれば会社名が公表され、企業の信頼性にも影響を与えやすくなります。勤怠管理システムで正しい勤怠管理ができていれば、会社と社員間でトラブルも少なくなるでしょう。
●社員の健康維持と生産性の向上
勤怠管理が正確に行われて労働環境が良くなると、社員の心身の健康維持や生産性の向上が実現できます。コンディションが悪い状態でいつまでも作業するよりも、コンディションの良い状態で決められた時間働く方が高いパフォーマンスを出しやすいです。会社によっては繁忙期や閑散期があるため、そのあたりも踏まえて勤務時間のマネジメントを行っていきましょう。
勤怠システムの種類
勤怠管理システムにはいくつかの種類が存在します。自社に合った勤怠管理システムの種類がどれかを知っておくとパッケージを選ぶ際やシステム開発企業に依頼する際に、どういったシステムにするか決めやすいです。
勤怠管理システムは大きく分けて以下の3つのタイプに分けられます。
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タイムレコーダー型
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オンプレミス型
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クラウド型
●タイムレコーダー型
タイムレコーダー型は、出退勤時間のみを記録できる勤怠管理システムです。システムとしてはタイムカードに似ている部分があります。タイムカードやICカードをかざして打刻するため、簡単かつシステムの導入時にかかるコストも抑えられるのがメリットです。しかし、ほかの機能が使えない点では利便性に劣り、会社の規模が大きくなると不正打刻のリスクが高くなります。中小規模の会社では有効なシステムですが、規模が大きい会社になったらオンプレミス型やクラウド型に変えるのがおすすめです。
●オンプレミス型
オンプレミス型は、自社内だけで取り扱う勤怠管理システムです。自社サーバー内に構築されたシステムを使って、勤怠管理をしていきます。システム開発会社に依頼して作ってもらう場合にこのタイプが多く、自社のルールに合わせて機能をカスタマイズしやすいです。
また自社のネットワーク上で管理できるため、インターネット環境のない場所でも打刻が可能です。これにより、情報漏洩のリスクが低くなる利点が得られます。ただ、システムにかかる費用が高くなるのはもちろん、システム導入後にサーバーの運用管理ができる人材が必要です。自社でシステムの運用管理ができる人材を用意したり、システムの運用管理まで対応してくれる会社に開発を依頼したりして準備を整えておきましょう。
●クラウド型
クラウド型はインターネットを経由し、他社のサーバーを利用する勤怠管理システムです。自社にシステムを導入することはなく、勤怠管理システムを運用する会社のサーバーに入力したデータが記録されます。導入にコストや時間がかからないため、導入に手間のかからない方法としておすすめです。しかし、オンプレミス型のように自由な機能のカスタマイズがしにくく、インターネットを介する分情報漏洩のリスクも上がります。その点を理解した上で導入を検討してみてください。
業務形態に合わせた打刻手段
会社によって勤務状況や業務形態が異なるため、さまざまな打刻手段が使用されています。打刻手段として主に以下のものが挙げられます。
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タイムカード
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生体認証
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携帯・スマートフォン
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ICカード認証
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iPadのカメラ認証
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PCでのログイン認証
かつては、タイムカードをタイムレコーダーに差し込んで打刻する方法が採用されていました。現在ではPCでのログイン認証や携帯・スマートフォンの打刻だけでなく、生体認証やICカード、iPadのカメラ認証による打刻も登場しています。身体の一部を映して認証すれば打刻ができるのは手間がかからず便利で、セキュリティ対策にもなります。今後は、物やパスワードを介さない打刻手段が多くなるでしょう。
勤怠管理システムの選び方
勤怠管理システムを選ぶ際には、以下の点を意識するのが理想です。
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システムの導入にかかる期間
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搭載されている機能
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システムの運用管理にかかるコスト
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セキュリティ対策やサポート体制
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アップデートのしやすさ
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誰でも使いやすいシステムかどうか
勤怠管理システムはオンプレミス型とクラウド型を比較すると、それぞれ対極な特徴を持っているといえます。そのため、上記の項目のすべてが良い条件となっている勤怠管理システムの導入ルートはほぼありません。どこかは、大なり小なり妥協する必要が出てきます。しかし、せっかく導入した勤怠管理システムがアップデートできずにそのうち使い物にならなくなったり、誰も操作できなかったりすると導入効果は薄くなってしまいます。また、最近ではテレワークや時短勤務の動きも増えてきていて、働き方の変化に対応できるかどうかも重要です。それらを踏まえて、なるべく希望する条件に100%近づけられるような勤怠管理システムを選びましょう。
導入前にデメリットにも目を向けよう
勤怠管理システムをはじめとする業務システムは、必要最低限の機能しか搭載されていない、または自社で必要な機能が別料金というケースも少なくありません。求める機能が使えなくては、システムを導入しても業務が改善されないこともあります。特に、パッケージ版の勤怠管理システムだと使わない機能があることも珍しくないでしょう。
どの勤怠管理システムを導入するとしても、メリットばかりではなく、どこかでデメリットが生じます。失敗することがないように、そのデメリットがどのくらい大きな問題なのかをあらかじめ考えた上で、導入する勤怠管理システムを選択するのがおすすめです。
「システム開発会社」に依頼するのもおすすめ
一番失敗することなく勤怠管理システムを導入しようと思ったら、システム開発会社に依頼する方法を推奨します。コストが発生するものの、希望通りのシステムを備えた自社に合うシステムを開発してもらえます。また、システムを使っていてイマイチだと感じた部分があれば、システムの拡張やカスタマイズを依頼すれば解決することも可能です。以下のページでは、ほかにもアウトソーシングするメリットについてまとめています。開発を検討する企業担当者の方は、ぜひご参照ください。
Webシステムは内製か外注か?メリット・デメリットを理解し比較検討しよう!
システム開発会社に依頼する前にしておきたいこと
システム開発会社に勤怠管理システムの開発を依頼する前に、相手にすべて丸投げするのではなく、依頼する側も前もって準備しておきたいことがいくつかあります。その準備項目として以下のものが挙げられます。
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「要件定義」を明確にして依頼内容を固める
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予算をあらかじめ決めておく
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依頼候補の会社から「見積書」の作成を依頼する
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開発会社ごとの得意分野・開発言語を調査・把握しておく
ここでいう要件定義とは、開発するシステムの中身のことです。まずはどういった内容のシステムで、何を目的としたものかを明らかにしましょう。それに加えて、システム開発にかけられる予算を設定することも大事です。この時、現実的ではない要件定義や予算を決めないように注意してください。それから、いきなりシステム開発会社に依頼するのではなく、少しでも良い条件で依頼するために、依頼候補の会社に見積もりを出します。その中から良いと感じたところに正式に依頼を出しましょう。
依頼候補の会社を選ぶ際には、その会社の得意分野や得意とする開発言語を調べておくと良いです。実績の有無は安心して使いやすいシステムを開発してもらうために必要となります。自社と同じ分野で実績を持つ会社を依頼候補に入れておきましょう。要件定義や見積書、おすすめのシステム開発会社については、それぞれ以下のページでまとめられています。気になる方はチェックしてみてください。
▷システム開発の成功を左右する『要件定義』とは?必要な進め方のコツ
また、開発会社がなかなか絞り込めないという方に向けて、おすすめの開発会社を以下のページで紹介しています。勤怠管理システムの開発を検討する企業担当者の方は、ぜひご参照ください。
勤怠管理システムを活用して健全な労働環境の構築を
法定労働時間を大きく超えた労働をさせて過労死するについての問題が見られていますが、コンディションの悪い状態で働かせても生産性は上がりません。勤怠管理システムは業務効率化や生産性の向上を実現するために、会社の社員の心身状態を維持していくのに欠かすことのできないシステムです。また、会社全体として社員と雇用者側の労働についてのトラブルの防止もできます。
働き方が多様化した現代社会でも、社員の勤務状況を正しくマネジメントしていくために、勤怠管理システムをまだ導入できていない方は導入を検討しましょう。相応のコストは必要ですが、自社に合ったシステムが手に入りやすいシステム開発会社のアウトソーシングでの依頼がおすすめです。
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