2024年4月に施行された「医師の働き方改革関連法」により、医療機関には新しい基準にあった勤怠管理が求められるようになりました。従来の紙やエクセルによる勤怠管理では、労働時間の正確な把握が難しく、過重労働や法令違反のリスクが高まります。そこで、多機能で精度の高い勤怠管理システムの導入が重要視されています。
本記事では、勤怠管理システムの概要から、特に医療機関における導入のメリットや具体的な選び方までを詳しく解説します。適切な勤怠管理は、医療の質の向上や職員の健康維持に直結する重要な要素です。本記事を元に、勤怠管理を見直してみてください。
目次
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勤怠管理システムとは?
勤怠管理システムとは、社員の出退勤時間を自動集計し、給与計算や労働管理の効率化を図るシステムのことです。勤怠管理システムには日次勤怠機能をはじめ、残業や各種休日休暇の申請・承認機能、勤怠データ分析・集計機能、通知機能、給与計算機能など、勤怠管理に役立つ機能が搭載されています。
従来の紙の勤怠カードだと社員の労働時間を正確に把握するのが難しく、手動での記録ミスや不正打刻の可能性もありました。特に病院は医師や看護師、事務職員などさまざまな職種のスタッフがいるほか、夜勤や当直など勤務形態や勤務時間にもバラつきがあるため、勤怠管理が煩雑になりがちです。通常のオフィス向けの勤怠管理システムでは対応が行き届かないため、医療機関での利用に特化した勤怠管理システムも販売されています。
病院向けの勤怠管理システムが必要とされる背景には、2024年4月から開始された「医師の働き方改革」も関係しています。医師の2024年問題ともいわれ、医師や一般職員の時間外労働の上限が定められたことから、勤務状況を正確かつリアルタイムに把握するための勤怠管理システムの必要性が高まっているのです。
勤怠管理システムの種類は大きく分けて「クラウド型」「オンプレミス型」「タイムレコーダー型」の3つで、主流なのはインターネットを経由して管理するクラウド型です。ただ、クラウド型は情報漏えいのリスクがあるため、セキュリティを重視する企業からは自社のサーバを利用してシステムを構築するオンプレミス型が選ばれています。 勤怠管理システムについては、以下記事も併せてご覧ください。
▷勤怠管理システムで業務効率化!選び方から導入前の準備まで詳しく解説!
医師の働き方改革とは?勤怠管理が必要な理由
医師の働き方改革を進めるためには、適切な勤怠管理が不可欠です。その理由と具体的な取り組みについて見ていきましょう。
●労働時間の短縮
日本の医療サービスは、これまで医師の長時間労働によって支えられてきました。高齢者の増加によって医療需要が高まっているほか、高度な医療技術の習得や患者へのきめ細やかな対応が求められていることも、医師の長時間労働に拍車をかけています。
しかし、長時間労働が続くと医療事故や医師の健康損失につながりかねません。医療の質や安全の確保、持続可能な医療サービスを提供できる体制を維持するには、医師が健康に働き続けられる環境の整備が必須なのです。
そこで医師の働き方改革では、医師の労働時間を短縮するための適切な勤怠管理が求められています。働き方改革に対応した勤怠管理システムを導入すれば効率的な労働時間の管理を実現でき、労働時間の適正化によって過重労働の防止につなげられます。
●勤務環境の改善
命を預かる医療機関の現場では医療の質の向上が求められており、そのためには生産性向上が不可欠です。さらに生産性を高めるには医師のモチベーションの維持・向上も重要で、働きやすい職場にするための勤務環境の改善が必要となります。
厚生労働省が2021年12月24日~2022年1月13日にかけて行った勤務医に対するアンケート調査によると、「現在、1ヶ月のうち、24時間連続して休息を取れる日は、おおむねどの程度か」という問いに対し、約76%の勤務医が月4回以下と回答。さらに「現在、勤務医として働いている労働時間を今後どのようにしたいと思うか」という問いに対しては、約80%の勤務医が「もっと減らしたい」「少し減らしたい」と回答しています。
適切な勤怠管理で勤務環境を整えることは、医師のワークライフバランスの確保につながるほか、定着率の向上も期待できます。また、医師の負担を軽減する取り組みとして、一部の業務をほかの医療スタッフに分担するタスク・シフト/シェアも注目されている施策の一つです。タスク・シフト/シェアを実現するにはスタッフの協力が必要不可欠のため、コミュニケーションを増やすことも重要になってきます。
出典:厚生労働省 勤務医に対するアンケート調査の結果について
●時間外労働の上限規制
医師の働き方改革では、時間外労働について上限規制が設けられています。過剰な時間外労働の抑止を目的としたもので医師の臨床経験年数や医療機関の特性に応じて上限の設定が異なりますが、全ての勤務医に原則的に適用される時間外・休日労働時間の上限は年間960時間です。時間外労働の上限を超えた場合、労働基準法に違反したとして使用者に罰則が科せられます。
紙やExcelでの勤怠管理では月締め処理まで実際の労働状況を把握できず、過重労働を見過ごしかねません。また、煩雑な勤怠管理ではヒューマンエラーも発生しやすいため、法令遵守を強化するには医師の労働時間を正確に把握できる勤怠管理システムの導入がおすすめです。
●勤務間インターバルの確保
医師の健康を守るための新しいルールとして、長時間の勤務時に適切な休息時間を確保するための「勤務間インターバル」が設けられています。勤務間インターバルでは休息時間を細切れに取ることは認められておらず、原則として始業から24時間以内に9時間のインターバルを設けなければなりません。急変対応などで緊急の業務が発生した場合はインターバル中でも対応することは可能ですが、対応した時間に相当する分の代償休息を翌月末までに取らせる必要があります。
勤務間インターバルは医師の休息を確保し、健康的な労働環境や医療の質の維持を目的に設けられた措置です。シフトを作成する際にも勤務間インターバルを考慮しなくてはならないほか、代償休息が発生した場合も計画的に付与できるように勤務の調整が必要となるため、適切な勤怠管理が求められます。
●医師の健康管理と医療の質向上
時間外・休日労働が月100時間以上となることが見込まれる医師には、面接指導を行います。所定の講習を受けた面接指導実施医師が行い、医師の睡眠や疲労の状況を確認。そのうえで休息が必要と認められる場合は、労働時間の短縮や宿直の回数の減少など適切な措置を講じなければいけません。医療機関の管理者には医師の勤務状況(前月の休日・時間外労働時間)を含む情報の提供が求められるため、労働時間も正確に把握しておきましょう。
病院が勤怠管理システムを導入するメリット
勤怠管理システムの導入には、多くのメリットがあります。以下のポイントを詳しく説明します。
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正確な労働時間管理が可能
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シフト作成や労働時間の集計が自動化され、業務効率が向上
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人事担当者の負担を軽減し、業務効率が向上する
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コンプライアンス遵守(労働基準法や働き方改革関連法)
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過重労働の防止
●正確な労働時間管理が可能
勤務形態が複雑な医療現場では各職員の労働時間を正確に把握するのが難しく、さらにタイムカードや出勤簿での管理だと不正打刻が発生する恐れもありました。勤怠管理システムを導入すれば各職員の出退勤時間や休憩時間をリアルタイムで記録でき、労働時間を正確に把握することが可能です。打刻の改ざんも難しいため、不正打刻による過重労働の防止にもつなげられます。
●シフト作成や労働時間の集計が自動化され、業務効率が向上
勤怠管理システムを使えば勤怠状況を自動で集計・分析でき、給与計算や有休管理といったバックオフィス業務の効率化を図れます。タイムカードの回収作業も不要なので、複数拠点のある大規模な医療機関におすすめです。シフト作成・管理機能のあるシステムを選べば、医療機関ならではの複雑な勤務形態のシフト作成もスムーズに行うことが可能です。また、管理機能では病院内の人員配置状況をリアルタイムで把握でき、急なシフト変更や人員の過不足の確認、人員調整などの複雑なシフト管理業務もスムーズに行えます。
●コンプライアンス遵守(労働基準法や働き方改革関連法)
労働基準法や働き方改革関連法の遵守は病院運営において必須となり、適切な労務管理が求められます。勤怠管理システムを導入すれば労働時間を正確に把握でき、不正打刻や過重労働を防げます。最新の法令に対応したシステムなら法令に遵守した運営を行え、コンプライアンス強化を図るうえでも効果的です。
●労働時間のリアルタイム把握
勤怠管理システムの導入によって勤務状況をリアルタイムで正確に把握できるため、時間外労働の多い部署や職員に対して迅速な対応ができるようになります。長時間労働の是正や労働環境の整備に取り組めるので、職員の健康確保や満足度の向上にもつなげられます。結果、離職率が下がり、新しい人材の確保もしやすくなるのがメリットです。
●過重労働の防止
勤怠管理システム上で職員の労働時間や残業時間を随時確認できるので、過重労働の抑制に取り組めます。設定した労働時間を超過しそうな職員を通知するアラート機能を備えたシステムなら、過重労働の見落としを防ぐことも可能です。過重労働を未然に防げ、職員の健康リスクの軽減にもつなげられます。
病院向けの勤怠管理システムの選び方
医療機関に最適な勤怠管理システムを選ぶ際のポイントについて紹介します。
●長時間労働の防止
医師や看護師の長時間労働が問題視されているため、過重労働の見落としを防ぐアラート機能を備えたシステムを選びましょう。また、労働時間をリアルタイムで監視できるシステムなら残業時間の多い部署や職員の把握にも役立ち、労働環境の改善に取り組めます。
●多様な打刻方法
医療機関の勤怠管理では出退勤の記録が重要になるため、現場のニーズに応じた打刻方法が提供されているかを確認しましょう。スマートフォンやタブレット、ICカードを活用して打刻できるものもあれば、生体認証によって打刻間違いや不正打刻を防げるものもあります。訪問医療・看護を行っている医療機関なら、訪問先でもモバイル端末から手軽に打刻できるシステムや正確に労働時間を管理できるGPS打刻に対応したシステムが便利です。
●法令対応
医師の働き方改革によって医師の時間外労働や労働環境の改善が求められているため、労働時間の上限規制や健康管理などの法規制に対応できるシステムかを確認しましょう。法令を遵守した病院運営を行うには、36協定に基づいたシフト作成や休憩時間の確保、公平な勤務時間の配分支援など過重労働を防ぐための機能が搭載されているかの確認が必要です。
●シフト作成支援機能
医療機関は勤務形態が複雑で、さらに法令も遵守する必要があるため、シフト作成に多くの時間と労力がかかります。シフト作成業務を省力化したいのであれば、シフト作成機能が搭載されているかは重要なポイントです。シフト作成の柔軟性と自動化機能を比較し、シフト作成時間の大幅な削減を見込めるかを確認しましょう。
勤怠管理システムの導入方法と流れ
勤怠管理システムの導入は以下のステップで進めることが重要です。
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ニーズの確認
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ベンダーの選定
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トライアル導入
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正式導入と教育
●ニーズの確認
勤怠管理システムによって備わっている機能が異なるため、まずは勤怠管理のシステム化によって何を達成したいのか、導入目的を明確にすることが重要です。現在の勤怠管理の課題を洗い出し、必要となる機能に優先順位を付けながらリストアップしていきましょう。導入目的を明確にすることでシステムを選定する際の指標となり、選定から導入までがスムーズになります。
●ベンダーの選定
導入目的を明確にしたら、必要な機能を備えた複数のシステムをピックアップし、比較検討しましょう。勤怠管理システムによって強みやサポート体制などが異なるため、自院の勤怠管理に合っているか、職員が使いやすいか、サポートは充実しているかなどを確認します。そのうえで予算と機能のバランスを考慮しながら、導入するシステムを選定してください。また、医療機関での導入実績や評判もシステムの信頼性を図る指標となります。
●トライアル導入
システムを正式に導入する前に、無料トライアルや試運転を実施して使用感を確認します。実際の運用環境でテストすることで、既存システムとの適合性や問題なく利用可能かを評価できるためです。本格的な運用をスムーズに進めるためにも、トライアル導入で問題点を洗い出しておくことが重要です。
●正式導入と教育
システムの正式な導入が決まったら、導入後の混乱を最小限に抑えるために勤怠管理システムについての説明会や操作方法の研修を実施しましょう。職員がシステムの必要性を理解していなかったり、使いこなせなかったりすると、せっかくシステムを導入しても打刻漏れが起きる可能性があります。研修の実施のほかに、マニュアルを作成・配布するのも効果的です。
導入後も職員からのフィードバックを定期的に収集し、継続的に見直すことで、運用の最適化を図れます。
勤怠管理システムを導入して医師の働き方改革に対応を
医師の働き方改革関連法が施行され、医療機関には適切な勤怠管理が求められています。勤怠管理システムの導入によって長時間労働や過重労働の防止に取り組めるほか、バックオフィス業務やシフト作成などの効率化を図ることが可能です。本来の業務に集中できる時間を確保でき、医療サービスの質や患者の満足度向上にもつなげられます。
勤怠管理システムの導入にあたって複数のシステムの比較検討が重要となりますが、「自社に合った開発会社がわからない」「選定にできるだけ時間をかけずにスムーズに導入したい」とお考えのご担当者様はぜひ一度ご検討してみてはいかがでしょうか。
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