電子カルテは、病院やクリニックの診療情報を電子データとして一元管理できるシステムで、業務効率化や安全性の向上に大きく寄与します。本記事では、電子カルテの基本的な定義や役割、種類について詳しく解説し、オンプレミス型、クラウド型、ハイブリッド型それぞれの特徴を紹介します。また、電子カルテを導入するメリットや選ぶ際のポイントについても解説し、最適なシステムを見つけるためのヒントをご提供します。ぜひ最後までご覧ください。
目次
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電子カルテとは?
電子カルテの導入を検討する前に、まずはどういったシステムなのか、定義や主な役割について把握しておきましょう。
●電子カルテの定義
電子カルテは、従来の紙カルテで扱っていた問診内容や検査結果、処方薬、会計などの様々な診療記録を電子情報として一括で記録・管理するシステムです。病院向けのものとクリニック・診療所向けのものがあり、それぞれで入院機能や部門機能、医事会計システム(レセコン)の有無などが異なります。
●電子カルテの役割と特徴
電子カルテの主な役割として、「情報の一元化」が挙げられます。これまで別々のシステムで記録・管理していた情報を一元管理することで、情報の散逸を防いで医療の安全性を向上。検索機能を使って必要な情報にすぐアクセスできるのも、従来の紙カルテにはない電子カルテならではの特徴です。膨大な診療データの集計・分析を容易に行えるのも電子カルテの強みで、治療の効果分析や予防医療の推進、新たな医療サービスの開発などに役立てられます。
電子カルテの種類
電子カルテの種類は、主に「オンプレミス型」「クラウド型」「ハイブリッド型」の3つです。それぞれの特徴について解説します。
●オンプレミス型
オンプレミス型は院内にサーバを設置して、データの保存・管理を行うタイプの電子カルテです。独自のシステムをつくれるカスタマイズ性の高さがポイントで、さらに院内ネットワークを使用するので外部への情報漏洩を防ぎやすい特徴があります。患者の医療情報は重要な個人情報のため、強固なセキュリティ対策を施せるのは大きなメリットです。
一方でサーバを設置するのに高額な初期費用が必要になるほか、更新費や保守費用もかなりかかるのが難点です。膨大なコストがかかるので小規模なクリニックや診療所では導入が難しく、十分な予算を確保できる大規模な病院向けのシステムといえます。
また、オンプレミス型は院内にサーバがあるのでメンテナンスやシステムのバージョンアップを自院で対応するか、ベンダーに依頼して来てもらわないといけません。故障やトラブルがあった場合も、ベンダーが来るのを待たなければならないので、自院で対応できないとクリニックの運営や業務に支障をきたしかねません。サーバの故障や不具合でデータを失う恐れがあるため、定期的なバックアップ作業も必須となります。
●クラウド型
クラウド型電子カルテは、インターネット経由で外部サーバにアクセスし、データを保存するのが特徴です。自院にサーバを設置する必要がないので、オンプレミス型に比べて導入・運用コストを比較的安く抑えることが可能です。また、外部サーバにデータを保存するため、クリニックが地震や火事などの災害にあったとしても、データ消失のリスクを避けられるメリットがあります。データのバックアップや更新作業などのメンテナンスも、ベンダー側が対応してくれます。インターネットに接続できる環境なら外出先からでもデータの閲覧・書き込みができるため、在宅診療も行っているクリニックにも適しています。
一方で、インターネット接続が必須となるため、通信障害が起こった場合は電子カルテを利用できません。バックアップ回線やモバイルルータの準備といった対策が必要です。また、外部サーバにアクセスするため、情報漏洩を防ぐための十分なセキュリティ管理も求められます。電子カルテのカスタマイズ性がオンプレミス型に比べて低く、関連システムとの連携に制限があることが多いのも、クラウド型のデメリットです。
●ハイブリッド型
ハイブリッド型電子カルテは、オンプレミス型とクラウド型の両方のメリットを取り入れたシステムです。院内サーバと外部サーバの両方を利用できるのが特徴で、通常時は院内サーバを利用し、在宅診療や非常時には外部サーバを利用するといった使い分けができます。院内サーバを利用する場合はインターネット回線の速度やブラウザの影響を受けずに利用できます。そのうえ、院内サーバを利用している間も最新のデータがクラウド上にリアルタイムで同期されるので、状況に応じて外部サーバに切り替えられるほか、非常時のデータ消失のリスクを分散できるのも魅力でしょう。オンプレミス型のカスタマイズ性に加え、クラウド型のインターネット環境さえあれば端末や場所を選ばないという利便性がある程度担保されているのも、ハイブリッド型ならではのメリットです。
ただし、オンプレミス型にクラウド型をオプションで追加して運用するため、費用が高額になりやすいというデメリットもあります。
電子カルテ導入のメリット
電子カルテを導入するメリットとしては、業務効率化や正確な情報管理、セキュリティ対策、コスト削減、スタッフや患者の満足度の向上に取り組めることが挙げられます。それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
●業務効率化
電子カルテは必要な情報をすぐに検索・照会できるため、紙カルテを探す手間がなくなり、業務の効率化を図れます。処方箋や紹介状などを作成するのに使えるテンプレートや補助機能が多く用意されているので、診療情報の入力や処方箋の発行を迅速に行え、患者の待ち時間を軽減することが可能です。また、Web予約やWeb問診、精算機などのシステムと連携することで、医師や看護師、事務スタッフの業務負担を軽減できるメリットもあります。クリニック全体の業務効率を向上させるうえで、電子カルテは有効なツールです。
●正確な情報管理
電子カルテの導入によって、患者のアレルギー情報や既往歴などの情報をすぐに引き出せるようになることで、適切な医療の提供につながります。
また、手書きで記載する紙カルテだと文字が読みにくかったり、記録の誤りや抜けが生じやすかったりといった問題があり、医療ミスのリスクに注意が必要です。電子カルテなら書き手の癖によって文字が判別できないということがほぼなく、さらに患者情報を正確に入力する機能や誤った処方を防止するアラート機能なども備わっています。
これらの機能を活用することで正確な指示や情報管理ができるようになり、診療の質の向上や医療事故の減少に取り組めます。
●法令遵守とセキュリティ
医療機関では患者の個人情報や医療データを取り扱うため、電子カルテを導入する際は高度なセキュリティ対策が必須です。
電子カルテの中には経済産業省と厚生労働省、総務省の3省が定めた情報の安全管理に関する2つのガイドラインに準拠したものもあり、セキュリティの高さから情報漏洩のリスクを軽減することが可能です。また、個人情報の保護・管理規格であるISMS認証やJIS Q 15001を満たしているかも確認しましょう。
外部サーバにデータを保存するクラウド型電子カルテでは、データは外部から判読できないように暗号化され、情報漏洩やデータの改ざんを防ぐ基本的なセキュリティ対策が実施されています。これに加えて、二重認証(2FA)やゼロトラストセキュリティモデルの導入により、さらに強度の高い保護となります。また、データ損失防止(DLP)システムや、定期的なセキュリティ監査を通じて、クリニックのデータ保護体制を保つことが大切です。これらの多層的なセキュリティ対策により、クラウド環境における医療データの安全性が確保されます。
●コスト削減
電子カルテを導入することでペーパーレス化を実現でき、紙やインクの購入コストを削減できます。また、紙カルテと違って物理的な保管場所を必要としないため、保管場所を確保するためのコストも大幅に削減することが可能です。物理的な保管場所が必要なくなることで、空いたスペースを有効活用できます。
●スタッフと患者の満足度向上
電子カルテの導入によって業務を効率化できれば、スタッフの業務負担が軽減され、満足度向上につながります。また、カルテ出しの時間や診察時の書類作成の時間などが大幅に削減され、効率的な診療を実現することが可能です。患者の待ち時間の短縮にもつながるため、スタッフだけでなく患者の満足度向上にも取り組めるのが電子カルテのメリットです。
電子カルテを選ぶポイント
電子カルテを選ぶ際に、どういったところに注目すればいいのかについて解説します。
●サーバの設置場所
電子カルテは、サーバの設置場所により「オンプレミス型」と「クラウド型」の2つに分類されます。 オンプレミス型は、サーバを院内の専用スペースに設置するタイプです。サーバルームやセキュリティの高い場所が設置に適しており、これによりデータが院内で管理されます。また、外部からのアクセスが制限されるため、セキュリティが強化される利点があります。一方で、サーバの設置や保守には初期費用や運用コストがかかるため、導入時にはその点も考慮する必要があります。
クラウド型では、サーバは外部プロバイダーが管理し、院内に設置する必要がありません。これにより、設置場所にかかる費用や管理負担が軽減され、院内スペースの有効活用が可能です。特に中小規模のクリニックにおいては、コストとスペースの効率的な利用が可能です。
●機能・スペック
電子カルテによって、特定の診療科目に特化した機能を備えていたり、無床または有床医療機関向けの機能が充実していたりと、強みが異なります。診療科目によっては機能の有無によって診療に支障が出ることもあるため、導入する施設の規模や診療科目、業務スタイルに合ったシステムかどうかを確認するようにしましょう。また、その電子カルテシステムに十分な導入実績があるのか、どのような医療機関で導入されているのかなども確認しておくと、クリニックのニーズに合った電子カルテを選びやすくなります。
●操作性
電子カルテは日々の業務で使用するものなので、操作性は業務効率を左右する重要なポイントです。医師は患者の診察を行いながら操作するため、入力や選択がしやすいか、レスポンスが速いか、画面が見やすいかなどを確認しながら、操作性を評価します。ベンダーによってはデモンストレーションを無料で体験できるものもあるので、電子カルテを操作する医師や看護師、事務スタッフなどで実際の操作性を確認し、クリニック全体で使いやすいシステムを選ぶと良いでしょう。
●サポート体制
電子カルテを選ぶ際、費用や機能のほかに、十分なサポート体制が整っているかも重要な判断材料の1つです。導入前に電子カルテのセットアップや利用方法のトレーニングなどのサポートを受けられるか、導入後にトラブルが発生した際の対応の仕方やサポートの範囲などを確認しましょう。サポート体制を比較する際に確認しておきたいのは、有償・無償でのサポート範囲やトラブル発生時の対応、対応時間、診療報酬改定やバージョンアップ時の対応など。しっかりと確認しておかないとトラブルが発生した際に必要なサポートを受けられず、業務に支障をきたす可能性があります。
●コスト
電子カルテを比較検討する際に、費用面を重視する方もいるでしょう。各ベンダーの電子カルテを比較する時は、初期費用だけでなく、月額費用や更新費用などの継続的に発生する費用も考慮することが大切です。例えばクラウド型はオンプレミス型に比べて初期費用は比較的安いものの、月額費用が発生する点に注意が必要です。そのほかにもオプションや連携費用、既存のシステムに入れ替える場合のデータ移行費用などを含めたトータルコストを確認し、予算に見合ったシステムを検討しましょう。
●システム間の連携
受付・会計関連のシステムや検査機器などのシステムと連携できるかどうかで、電子カルテの利便性や業務効率が大きく変わってきます。診療予約システムやWeb問診システム、画像ファイリングシステム、自動精算機など業務効率化にかかわるシステムと連携できるかどうかがポイントです。システムによっては同じベンダーの製品としか連携できないものもあります。
自分のクリニックに合うシステムが見つからないなら開発会社に依頼
複数の電子カルテシステムを比較検討したものの、必要な機能が搭載されていない、既存システムとの連携ができないなど、クリニックに合う製品が見つからない場合があります。そういった時は、開発会社にカスタマイズや新規開発の依頼を検討しましょう。
開発会社によって、開発経験のあるシステムや得意とする分野が異なります。電子カルテシステムの開発実績が豊富か、医療分野のシステム開発を得意としているかを確認しましょう。また、開発後の運用・保守も一貫してサポートしてくれる会社に依頼したほうが、システムに対する理解が深いので安心です。
システムを開発するには数ヶ月~1年以上かかることもあるため、担当者との相性も重要です。自院のニーズを十分にくみ取ってくれて、適切な意見やアドバイスをしてくれるかどうかを確認しましょう。
ただ、多くの開発会社の中から自院に合いそうな会社を複数社ピックアップし、比較検討するのはかなりの労力と時間がかかります。また、システム開発に関する専門知識も必要になるため、どの開発会社を選べばいいのかアドバイスがほしいというご担当者様は発注ナビにぜひご相談ください。
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