医療現場の業務効率化を図るために医療DXを推進したいとお考えの医療関係者の方に向けて、医療DX推進の流れや注意点などについて紹介します。自院の医療DXに合ったシステム開発会社を選ぶポイントもまとめているため、医療DXに取り組む際はお役立てください。
目次
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医療DXとは?基本概要と重要性
そもそも医療DXとはどういったものなのかをはじめ、政府が進めている医療DX令和ビジョン2030の概要や主な取り組みなどについて解説します。
●医療DXとは?
医療DXとは、病院や薬局、介護などの医療現場においてデジタル技術を活用し、医療の効率化や質の向上を図る取り組みのことです。医療DXの代表的な取り組みとしては、カルテや問診票などのペーパーレス化をはじめ、オンラインでの問診や診療、ビッグデータの活用などが挙げられます。
例えばカルテや問診票のデジタル化によって、紙のカルテと比較して、患者情報の正確かつ迅速な共有が行えるのが特徴。また、オンライン診療では遠隔地の自宅からでも医師の診察を受けられるようになり、地域間の医療格差の是正につながる効果が期待されています。
そのほかにも、医療機関の保有する診療記録や検査結果、処方情報などの医療情報をビッグデータとして分析・活用することにより、新薬の開発や疾患の早期発見、治療方針の個別化、健康管理のサポートなどに役立てられます。
●医療DX令和ビジョン2030の概要
医療DX令和ビジョン2030は、2022年5月に自由民主党政務調査会から提言された取り組みで、医療のDX化や効率化、医療情報の有効利用の推進を目的としています。
医療DX令和ビジョン2030の骨格となる取り組みは、「全国医療情報プラットフォームの創設」「電子カルテ情報の標準化」「診療報酬改定DX」の3つです。電子カルテ情報の標準化については医療機関同士の情報共有をスムーズにするためのもので、2030年までに電子カルテの普及率100%を目標としています。
一方で、厚生労働省の発表によると2020年時点での電子カルテの普及率は一般病院が57.2%、一般診療所は49.9%に留まっています。病床規模で見ると400床以上の大規模な病院では91.2%と高いものの、200床以下の小規模な病院や一般診療所では48.8~49.9%と普及率がまだまだ低いのが現状です。
電子カルテの導入を促進する取り組みが求められており、政府は小規模の医療機関向けに標準規格に準拠したクラウドベースの電子カルテの開発を検討しています。
医療DXの流れと導入事例
医療DXを推進するためのステップと導入事例を紹介します。
●医療DX推進のためのステップ
医療DXは、以下のステップで進めます。
ステップ | 説明 |
---|---|
1.現状分析と目標設定 | ・医療DXを推進するにあたり、まずは自院の現状分析と課題の洗い出しを行い、医療DXの導入で解決したい課題や達成したい目標を設定する ・目標の例として、ワークフローの自動化による業務の効率化や電子カルテのバックアップによるセキュリティの強化などがある |
2.システムの選定と事業計画の策定 | ・解決したい課題や達成したい目標を明確にしたら適切なシステムを選定し、導入に向けた具体的なスケジュールとタスクの計画を策定する ・システムを選定する際は、市場調査でほか製品との比較や購入金額の妥当性を判断することも重要 ・予算の確保や資金調達計画の立案も行う |
3.評価と運用の見直し | ・医療DXは業務の効率化や改善を図るための取り組みなので、導入後は定期的にデータ分析を行って医療DXの効果を評価することが大切 ・患者の待ち時間の短縮や診療プロセスの効率化など評価の指標を定めておくと、改善の方向性を把握でき、運用の見直しがしやすくなる |
●効果的なシステムの導入事例
医療DXの主な取り組みとしては、オンライン予約・問診システムや電子カルテの導入、オンライン診療の実施、医療データの活用などが挙げられます。そのうち、オンライン予約システムと電子カルテの導入事例をピックアップして紹介します。
オンライン予約システム
オンライン予約とは、医療機関のホームページやポータルサイト、LINEなどを通じて24時間いつでも予約できるシステムのことです。待ち時間の短縮が期待できるほか、窓口や電話での受付業務が軽減されるので業務効率化や人手不足の対策にもなります。
実際にオンライン予約システムを導入したクリニックでは混雑の緩和につながっており、さらにキャンセル率や空き状況が見える化されることで職員のモチベーションアップにもつながりました。
参考:メディカル革命「WEB・LINEからの予約が混雑緩和につながり、患者さんの満足度向上へ」
電子カルテ
電子カルテは、患者のデータを一元管理できる便利なシステムです。カルテをデータ化することで過去の診療履歴や検査結果にすぐアクセスでき、情報共有や医療研究・解析もスムーズに行えます。
また、文書作成や管理の手間がなくなるので業務効率化を図れるほか、印刷や保存ファイル、保管場所の維持にかかっていたコストを削減できるメリットもあります。
電子カルテを導入した歯科クリニックでは、膨大な紙カルテの保管場所に困っており、さらに必要なカルテを探すのにも時間がかかっていました。そこでデジタル管理できるシステムとして電子カルテを導入したところ、予約台帳からカルテにすぐアクセスできるようになり、カルテを探す手間を大幅に削減することに成功。紙カルテの作成がなくなったことで、保管場所の問題解決にもつながりました。
参考:Dentis「患者情報へのアクセスを効率化。サブカルテを利用したデジタル管理へ」
医療DX推進における注意点と成功のポイント
医療DXを推進するうえで知っておきたい、注意点や成功するためのポイントについて解説します。
●医療DX推進の注意点
医療DXの推進を図るには、ある程度のITリテラシーが必要です。ITリテラシーとは、IT技術を理解し活用する能力です。
ITリテラシーが不足していると医療DXを進めてもシステムや情報を適切に扱えず、期待していた効果を得られないおそれがあります。定期的にIT研修を実施してITリテラシーの向上に取り組むほか、スタッフや患者のITリテラシーに配慮したツールを導入するなどの工夫が必要です。
また、医療DXには情報をすぐに引き出せるというメリットがある一方で、ハッキングや情報漏えいなどのセキュリティリスクも発生します。患者のプライバシーにかかわる重大な情報を扱うため、医療DXを推進する際はサーバのセキュリティ強化や情報セキュリティの教育などの万全な対策が必須です。
●成功するためのポイント
医療DXの推進を図るうえで課題となるのが、DXに対応可能なIT人材が不足していることです。専門職の割合が多い医療機関ではIT機器の操作に慣れていない職員も多いため、導入前に研修を行ってデジタルツールへの理解とスキルを向上させる必要があります。
また、医療DXは導入することがゴールではないため、医療DXの導入による効果の評価や職員からのフィードバックの収集を定期的に行い、システムの継続的な改善に取り組むことも重要です。
医療DXのメリット
医療DXを検討するうえで気になる導入によるメリットと効果について解説します。
●医療DXによる業務効率化の事例
医療DXの導入によって患者データをデジタルで管理できるようになり、カルテの作成や情報の検索、書類の管理にかかっていた負担を軽減できます。例えば電子カルテを導入すれば、膨大な診療記録から必要な情報を迅速に探せ、検索時間を大幅に短縮することが可能です。
また、人手不足に悩んでいる現場において、人材を有効活用できるのも医療DXの導入による大きなメリットです。医療機関では本来の医療業務のほかに、事務作業や在庫管理、予約管理などの定型業務がありますが、医療DXの導入によってこれらの業務の自動化が可能です。その分、本来の業務に集中できるため、医療サービスの質の向上を目指せます。
●患者に提供する利便性の向上
オンライン予約システムや診療システムを導入すれば、いつでも簡単に予約できるほか、自宅にいながらでも診療を受けられます。待ち時間の短縮や通院の手間を省けるほか、地域間の医療格差を是正するのにも役立ちます。
また、健診や予防接種、診療、投薬などの情報を各機関で共有することで患者自身での説明や書類の提出が不要となり、患者にとっての利便性の高い医療サービスの提供に取り組めるでしょう。
自院の医療DXに合ったシステム開発会社の選び方
システム開発会社を選定するにあたり、医療業界が抱えている主な課題や選定の注意点を把握しておきましょう。
●医療関係者が直面する主な課題
高齢化によって医療需要が高まっている一方で、医師・看護師など医療従事者の人材が不足しており、医療現場における需給のバランスが崩壊しかけているのが現状です。また、働き方改革関連法によって長時間労働の改善も求められており、医療従事者の負担を軽減する業務効率化の必要性が高まっています。
経営難に苦しんでいる医療機関も増えているため、患者に提供する医療サービスの質や利便性の向上を通じて満足度をいかに高められるかも課題となっています。
●システム開発会社の選定ポイント
システム開発会社を選定する際は、医療業界での導入実績が豊富か、セキュリティ対策が万全かを確認しましょう。過去の実績や顧客の評価をもとに、信頼できるシステム開発会社かどうかを判断します。
また、費用対効果の高いシステムを導入するうえで、導入後のサポート体制が整っているかも重要なポイントです。自院のIT人材のレベルやシステムの利用頻度などを考慮しながら、サポートの内容や具体的な範囲などを確認し、導入後の保守やサポートに満足できるシステム開発会社を選定しましょう。
●医療DXにおける各種システム
医療DXには、電子カルテシステムをはじめ、オンライン予約システムやオンライン診療システム、ビッグデータ分析システムなどさまざまな種類があります。それぞれのシステムについて紹介しますので、システムを選ぶ際の参考にしてください。
1. 電子カルテシステム
電子カルテシステムとは、患者の診療記録を電子化し、一括で編集・管理できるシステムのことです。電子カルテシステムを活用することで膨大な診療記録の中から必要な情報の検索や共有などを迅速に行えるため、業務の効率化を図れます。ペーパーレス化によって保管場所の確保が必要なくなることも電子カルテシステムのメリットです。病院向けのものと診療所向けのものがあり、特に多くの患者の診療記録を扱う医療機関に向いています。
2. オンライン予約システム
患者自身がWeb上で診療の予約を行えるシステムのことです。診療時間を気にせずに24時間いつでも予約できるので患者の利便性を高められるほか、電話や窓口での予約対応の負担軽減や医師のスケジュール管理の最適化を図れるメリットもあります。予約のキャンセルや変更もWeb上で行えるので、無断キャンセルの減少にもつなげられるでしょう。予約管理が重要となる医療機関向きのシステムです。
3. オンライン診療システム
オンライン診療は、ビデオ通話やチャット、電話などを通じて遠隔診療を行うシステムです。自宅にいながら診察を受けられるので通院の手間を省け、対面診療の負担を軽減できるメリットがあります。新型コロナウイルス感染症の拡大によって急速に普及し、今後も普及が拡大していくことが見込まれます。遠方の患者に診療を行いたい医療機関や、高齢の利用者への影響を考慮して感染症リスクを軽減したい訪問看護ステーションなどに適したシステムです。
4. ビッグデータ分析システム
医療機関や介護事業者などが保管する膨大な医療データを分析し、新しい薬や治療法の開発に役立てるシステムです。各機関の情報が一元化されるので患者の健康課題が明確化され、病気の早期発見や最適な治療方針の作成、より良い医療や介護サービスの提供が可能になるメリットがあります。医療データを活用した研究や開発を行っている大学病院や研究機関、製薬会社などの施設に適しています。
5. RPA(Robotic Process Automation)
RPAとは、パソコン上で日常的に行っている定型業務を自動化できるソフトウェアロボット技術のことです。RPAを活用することで業務の効率化や生産性の向上を図れ、さらに迅速かつ正確な処理によって人的ミスの削減や人手不足の解消などにつなげられるメリットがあります。定型業務の負担が大きい大規模な病院やクリニックの事務部門に適しています。
医療DX成功には、マッチしたシステム選定を
医療DXは国も推進している取り組みで、デジタル技術の活用によって業務の効率化や医療サービスの質の向上を目的としています。医療DXを効果的に進めるには、自院の現状分析と課題の洗い出しを行ったうえで、適切なシステムを選定することが重要です。また、IT人材の育成や継続的なシステムの改善に取り組むことも医療DXを成功させるうえで必要となります。
そのほかにも、過去の実績や顧客の評価、サポートなどをもとに信頼できるシステム開発会社を選定することも医療DXの推進には欠かせません。
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