医療向けeラーニングシステムで何が学べる？メリット・デメリットも解説

医療向けeラーニングシステムは、医療従事者の研修やスキルアップを効率的に行うための重要なツールです。医療現場は多忙であり、従来の集合研修では日程調整やコストが課題となっていましたが、eラーニングシステムを活用することで、個々のペースで学習が可能となり、質の高い教育を提供できます。

本記事では、医療向けeラーニングシステムの概要や導入のメリット、さらに比較の際に注目すべきポイントを詳しく解説します。効率的な人材育成を目指す医療機関にとって、導入すべきシステムの選定が重要ですのでぜひ本記事を最後までご覧ください。

 

目次

 

 

医療向けeラーニングシステムとは？

一般企業でも導入されているeラーニングシステムですが、医療分野においても重要なシステムとして注目されています。どのようなシステムなのかをはじめ、医療分野で重要視される理由や研修の必要性について解説します。

 

●どのようなシステムか

eラーニングとは、パソコンやスマートフォンなどインターネットに接続できるデバイスを使用して学習するシステムのことです。医療や介護従事者向けのeラーニングも登場しており、導入が進んでいます。

医療や介護現場では高いスキルと知識が求められることから、医療安全研修や看護師向けの特定行為研修などが定期的に実施されています。研修の重要性が高い分野である一方で、医療や介護従事者は夜勤や休日出勤など勤務形態がバラバラかつ多忙なため、集合研修を行うのが難しいという課題を抱えていました。

その課題を解決する方法として注目されているのが、eラーニングシステムです。eラーニングシステムを利用すれば、それぞれの都合のいい時間と場所で受講できるため、集合研修を行うための日程調整に手間取る必要はありません。また、研修後の復習や知識・スキルの補完としても利用できます。

 

●なぜ研修が必要なのか

医療・介護従事者が業務に必要な知識と技術を向上させるための手段として研修は重要です。研修を通じて最新の診療ガイドラインや医療技術などを学ぶことで、医療サービスの質の向上や患者の安全性の確保につなげられます。また、法的規制やガイドラインに関する知識の習得によって、法的リスクやコンプライアンス違反を回避することも可能です。医療・介護サービスの質や信頼性を高めるためにも、研修の実施は必須です。

 

医療向けeラーニングシステムで学べること

医療向けeラーニングシステムには、経営者や管理職向けのものをはじめ、病棟看護師や訪問看護師、介護スタッフ、薬剤師向けのものまで幅広い種類があります。それぞれの職務や専門性などに応じた内容になっているため、必要な知識やスキルなどを習得するのに役立てられます。

 

●医療機関の経営・マネジメント向けのノウハウ

医療機関の経営者や管理職向けに、経営効率化、スタッフ管理、患者満足度向上といった経営やマネジメントのスキルを学べるeラーニングシステムも利用可能です。具体的な事例をもとに作成されたカリキュラムが多いので、経営課題の解決に役立つノウハウを習得できます。医療規制や法令遵守についての知識も学べ、経営者や管理職として知っておくべき知識を押さえられます。eラーニングシステムならスキマ時間を使って学べるので、忙しい経営者や管理職に適しています。

 

●看護師向けの研修

病棟で働く看護師向けの研修では、患者の日常的なケアや急変時の対応方法、基本的な医療処置など業務に必要となる実践的な技術を学べます。eラーニングシステムを利用することでさまざまなニーズに応じたカリキュラムを受講できるほか、多様な研修コンテンツを通して看護師の専門性や興味に応じた内容も学習できます。テキストでは伝わりづらい内容でも動画教材なら臨床技術や病棟での対応手順を効率良く学べ、新人看護師の育成にも役立つでしょう。また、経験豊かな看護師に対しても個々のキャリアパスや専門性にあわせた研修を提供できるため、看護師1人ひとりの能力や職務満足度の向上を図る手段としても有効です。

 

●訪問看護向けの研修

訪問看護向けのeラーニングでは、在宅で行う看護の基本技術をはじめ、医療処置をする際の機器の使用方法や患者・家族とのコミュニケーション方法などを学べます。これから訪問看護師になりたい、もしくは訪問看護師になったばかりで基礎を勉強したい方向けです。また、eラーニングなら都合の良いタイミングで学習を進められるので、子育てや介護で看護師を離職しており、次は訪問看護師として復職したいという方にも適しています。

そのほかにも、訪問看護ステーションの運営に必要な知識を学べる施設管理者向けのものや訪問看護の第一線で活躍している看護師向けのものなど、現場のニーズに応じた幅広いテーマのコースを提供しているシステムもあるのが特徴です。

 

●介護スタッフ向け研修

介護スタッフ向けのeラーニングでは、基本的な介護技術をはじめ、介護スタッフとして知っておくべき最新の認知症介護の基礎知識や考え方などを学べます。研修を通じて認知症の利用者への対応方法や心理的支援の技術も学べ、1人ひとりに合った介護計画の作成や実行するための具体的な方法の習得が可能です。認知症の利用者の行動特性についての理解を深められるほか、緊急時の適切な対応方法なども身につけられるので、介護現場で直面する課題に対応しやすくなります。

 

●薬剤師向け生涯研修

薬剤師向けのeラーニングでは、最新の医療知識をはじめ、医療現場での薬剤管理や処方の基礎、患者とのコミュニケーション方法などを学べる内容となっています。eラーニングを活用することで頻繁に変化する医薬品の情報を効率的に取り入れられるほか、薬剤師としての専門知識を深めることが可能です。また、実際のケーススタディから患者に対する服薬指導の方法や薬剤師としての判断も学べます。

 

医療向けeラーニングシステムを導入するメリット・デメリット

医療向けeラーニングシステムを効果的に運用するには、メリットだけでなくデメリットも把握しておくことが重要です。

 

●メリット

医療向けeラーニングシステムを導入するメリットには、どのようなものがあるのか紹介します。

 

人材育成のコスト削減

従来の集合研修だと会場代や外部講師への依頼料、交通費、テキストの印刷費用などが必要となり、さらにスケジュールの調整や出欠管理など運営するための人的コストも発生していました。eラーニングシステムも導入にあたってコストは発生しますが、何度でも繰り返し利用できるので長期的に見た場合に研修や運営にかかっていたコストの大幅な削減を期待できます。

 

幅広い知識を学べる

多くのeラーニングシステムでは多彩な内容のコンテンツを提供しており、幅広い知識を学ぶツールとして活用できます。集合研修と違って必要なスキルや知識のみに絞って学べるほか、システムやサービスによっては分野が異なる業界の講座の受講も可能。受講者の受講履歴管理や学習管理といった機能が備わったシステムも多いため、管理者が各受講者の未履修科目や理解が十分でない箇所を把握するのに役立ち、最適な講座の提案やスキルに応じたアドバイスを行いやすくなります。

 

自院・自社向けの研修にカスタマイズできる

eラーニングシステムやサービスによっては、自院・自社のニーズに応じたカリキュラムにカスタマイズできます。特定の専門分野や技能に特化した研修プログラムを設計できるため、課題の解決につながる教育を提供することが可能。必要な知識やスキルを重点的に学べるので、研修の質を高められます。

 

何度でも復習できる

理解できるまで何度も繰り返し学習できるのも、eラーニングならではのメリットです。一度では理解できなかった科目や分野を反復学習することで、知識の定着率を高められます。

 

システムによっては場所を選ばずに受講できる

医療現場は勤務形態が人によって違うため、集合研修の日程を調整するのにも手間がかかります。クラウド型のeラーニングシステムならインターネットの通信環境さえあれば場所を選ばずに受講できるので、効率的な研修の実施が可能です。複数拠点のある医療機関でも知識の標準化を図りやすく、教育の質を均一に保てます。

 

●デメリット

eラーニングシステムを導入するうえで注意すべきデメリットを解説します。

 

導入に費用や時間が必要

eラーニングシステムを導入する際には、配信や管理を行うためのシステムと受講用デバイスの準備などが必要です。独自の教材を作成する場合は、その分の手間やコストも発生します。必要な予算が確保できないと導入は難しいほか、システムの導入が完了するまでに時間がかかることも考慮しないといけません。さらに、システムを適切に管理できる人材がいない場合はスキルや知識を身につけるための教育も必要となり、システムを使いこなすまでに時間がかかることも注意したいポイントです。

 

学習進捗の管理が必要

eラーニングは自主学習が基本のため、受講者によって進捗に差が出やすいというデメリットがあります。誰がどこまで研修を受講しているのかの把握が煩雑になりやすいので、学習内容や進捗状況を管理できる機能が必要です。コンテンツの利用履歴などから学習進捗の管理を行い、学習意欲の低い受講者に対してどのように受講を促すかもeラーニングを導入するうえで検討すべき課題です。

 

医療向けeラーニングシステムの導入方法と注意点

医療向けeラーニングシステムをスムーズに導入するためにも、導入前の準備や導入の手順、注意点について把握しておきましょう。

 

●導入前の準備

eラーニングシステムの導入にあたり、何のためにeラーニングを導入したいのか利用目的を明確にしておく必要があります。「人材育成を効率化したい」「指導できる人手が不足している」「知識やスキルを標準化したい」など自院の抱えている課題やニーズを洗い出しましょう。要件を整理しておくことで必要な機能やコンテンツが明確になり、適切なシステムの選定にも役立ちます。また、システムの導入や維持にかかる予算の確保も必要です。

 

●導入の手順

導入前の準備で決めた要件をもとに、条件に合うベンダー（開発会社やシステム提供会社）を複数社ピックアップします。選定したベンダーから相見積もりを取ったり打ち合わせを行ったりしながら、導入するシステムを確定しましょう。導入するシステムを選定したら、導入準備を進めます。導入準備では社内システムとの連携やアカウントの設定、社内告知、eラーニングシステムの勉強会の開催、マニュアルの用意などを行います。

 

●注意点

eラーニングシステムを導入する際に注意したいのが、多機能なシステムやサービスが必ずしも良いとは限らないことです。eラーニングシステムの導入目的にマッチしていない機能が搭載されていると、費用が無駄にかかってしまいます。そうならないようにするためにも、自院のニーズや課題を明確にして必要な機能を絞り込むことが重要です。

また、eラーニングシステムは対面での研修と違って質疑応答への対応が難しく、受講者の理解度を把握しづらいというデメリットもあります。ほかの受講者との情報交換やアドバイスをし合う機会もほとんどないため、コミュニケーション機能を使った質疑応答やモチベーションを維持するためのサポートが必要です。

 

医療向けeラーニングシステムの比較ポイント

医療向けeラーニングシステムを比較する際にどこに注目したらいいのか、指標となるポイントを解説します。

 

●学習管理機能（LMS）の比較

学習管理機能とは、eラーニングの実施に必要な学習教材の配信や成績などを管理するシステムです。各受講者の進捗管理や理解度の把握に役立ち、学習の進捗が遅れていたり、理解が十分でなかったりする受講生に対して適切なフォローを行えます。勤務形態が複雑で多忙な医療従事者は学習の進捗に差が出やすいため、学習管理の機能が充実しているかは重要な比較ポイントです。

 

●コンテンツの質と種類の比較

医療向けをうたっていても、eラーニングシステムによって提供しているコンテンツの内容や習得できるスキル・知識が異なります。現場のニーズや職員のスキルによって必要なコンテンツが変わってくるため、実際の医療現場を想定した内容や最新の医療知識などを反映した実用性の高いコンテンツが提供されているかを確認しましょう。システムによってはオリジナルコンテンツの作成を支援する機能を搭載したものもあり、より専門性の高い内容を学習したい場合に適しています。

 

●導入のしやすさの比較

eラーニングシステムは「クラウド・ASPサービス型」と「オンプレミス型」の2種類に分かれます。

クラウド・ASPサービス型はインターネットを通じてサービスが配信される形式で、短期間で導入できます。利用人数やプランに応じた月額料金を支払うのが一般的で、初期投資を抑えることが可能です。導入後の運用もサービス提供会社が管理するため、運用のための人員の確保や配置が必要ありません。

オンプレミス型はサーバを院内に設置して、自院で運用するのが特徴です。ソフトを購入して自社環境に構築するケースが多く、初期費用が発生します。クラウド・ASPサービス型に比べてシステム設計に時間がかかるものの、カスタマイズ性が高いので自院のニーズに合った学習内容やシステムを作成できるのが強みです。自院にとってどちらの方が費用対効果が高いか、導入メリットが多いかで選びましょう。

 

●費用の比較

eラーニングシステムには気軽に導入できる低価格なものから、多機能で高度な管理機能を備えたものまであります。低価格システムは月額料金が安価で、一部のシステムだと月々39,800円から提供されているものもあり、予算を多く確保できない小規模な施設におすすめです。

ただ、安さだけで選んでしまうと、eラーニングの導入目的に合った機能やコンテンツが利用できない可能性があります。不要な機能ばかりが揃っていても無駄にコストがかかってしまうだけなので、必要な機能を洗い出したうえで費用対効果の高いシステムを選定しましょう。

 

●導入実績とサポート体制の比較

eラーニングシステムは導入がゴールではないため、効果的な運用を実現するためのサポート体制が重要になってきます。導入後のトラブルに迅速に対応してもらえるか、操作方法のレクチャーなど十分なサポート体制が整っているかを確認しましょう。

また、医療機関での導入実績が豊富なeラーニングシステムは信頼性が高く、医療現場で直面しやすい課題を解決するためのノウハウも蓄積している可能性があります。そのため、導入実績や利用者からの評価も比較する際の重要な指標の一つです。

 

●医療機関向けeラーニングシステムを選ぶポイント

学習管理機能（LMS）	・学習教材の配信や成績などを管理するシステム ・受講者の進捗管理や理解度を客観的に把握できる ・学習の進捗や理解度に差が出ないように、学習管理の機能が充実しているかを確認する
コンテンツの質と種類	・システムによって提供しているコンテンツの内容や質が異なる ・現場で使える実用性の高いコンテンツが揃っているかを確認する ・独自性の高いオリジナルコンテンツの作成支援機能を搭載したものもあり
導入のしやすさ	・「クラウド・ASPサービス型」と「オンプレミス型」に分かれる ・初期投資の安さや導入までの期間はクラウド・ASPサービス型に優位性あり ・カスタマイズ性はオンプレミス型が高く、自院のニーズや課題に合ったシステムを作成できる
費用	・低価格なシステムから高機能なシステムまであり ・単純な費用の安さや機能の豊富さではなく、費用対効果が重要
導入実績とサポート体制	・スムーズに運用するための十分なサポート体制が整っているかを確認する ・医療機関での導入実績が豊富なシステムは信頼性が高い

 

状況にあわせた医療機関向けeラーニングシステムの導入が成功の近道

医療向けeラーニングシステムにはさまざまなメリットがあるため、人材育成のコスト削減や職員の知識・スキルアップに取り組みたい医療機関におすすめです。ただし、eラーニングシステムの導入メリットを十分に得るには、システムやサービスの比較検討が重要となります。

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