営業活動、物件管理、売上管理、顧客対応などのさまざまな業務を抱えているにもかかわらず、なかなかアナログから脱却できない不動産業界。不動産業界のDXが進まない理由には、どのような背景があるのでしょうか。
本記事では、DXの基本を振り返りながら、不動産業界におけるDXの重要性や課題、DX推進の具体的な手法と流れをわかりやすくまとめました。今すぐ取り組めるDXや進める際の注意点についても解説していますので、DX化の必要性を感じている不動産経営者や担当者様は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
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DXの基礎知識
不動産業のDXについて考える前に、まずはDXとは何か、言葉の概念から理解しておきましょう。
●DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
DXは「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略称で、デジタル技術を利用して社会全体に変革をもたらし、人々の生活をより快適で利便性の高いものにすることを指します。
また、ビジネスに限った話ではなく、デジタル技術で「世の中の利便性を高める」といった広い意味で使われています。2018年に経済産業省が「産業界におけるデジタルトランスフォーメーションの推進」を発表して以降、日本ではビジネス用語としても浸透しています。
ビジネス領域におけるDXには、デジタル技術を活用した製品・サービス、ビジネスモデルといった「モノの価値を変革する」だけでなく、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土といった「企業組織や企業活動を変革する」という意味も併せ持っています。つまり、デジタル技術を取り入れて、企業価値を高めるための仕組みづくりを行うこともDXにあたります。
●DXを推進する理由と背景
デジタル技術の進化と普及により、顧客の消費行動やニーズは急速に変化しています。こうした変化に対応するためには、新しいサービスや価値観に基づくアプローチが必要です。
また、日本では少子高齢化が進み、労働者不足が深刻化しています。この状況下で企業が利益を上げ続けるためには、業務効率の向上とコスト削減が欠かせません。
DXを導入することで、業務プロセスや組織を変革し、業務効率化と顧客ニーズへの迅速な対応が可能になります。変化の激しい環境に適応し、生き残るためには競争力を維持し、企業価値を向上させ続けることが重要です。
不動産業界が直面しているDXの課題
デジタル技術の進歩による時代の変化に伴い、国を挙げてDXが推し進められている現代、不動産業界も例外ではなく、早急なDX化が求められています。
その背景には、以下のような不動産業界特有の課題が挙げられます。
●情報管理が非効率
不動産業界では、多くの業務が依然として紙ベースで行われており、情報の一元管理を困難にしています。一部の業務でITを取り入れていても古いシステムのままだったり、帳票作成は手書きに頼っていたりと、古い商習慣が非効率性を生んでいるのです。
デジタル化が進んでいないため、データのアクセスや更新が手間となり、従業員の業務負担を増大させています。過度な業務負担は作業遅延やミスの原因ともなっており、効率化を妨げています。
●顧客対応や管理の問題
非効率的な業務が常態化しているため、長時間労働による人手不足も深刻な課題です。慢性的な人手不足から顧客対応が遅れがちになり、顧客の満足度低下を招いてしまっています。顧客情報の管理不足やアナログなコミュニケーション手段への依存が原因であり、情報を一元的に管理する早急な対策が必要です。
不動産業界におけるDX推進の具体的な手法と流れ
DXがトレンドになっているからといって、「今のビジネスにはDXが必要」という理由だけで導入を進めてしまうと、失敗するリスクが高まります。DXに取り組みたいのであれば、まずは以下のような準備を整えることが大切です。
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現状の分析
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目標の設定
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必要なツールとサービスの選定
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導入と運用
ここからは、不動産業界でDXを進めるための具体的な手法と流れについて解説します。DXを成功させるためにも、ぜひ参考にしてみてください。
●現状の分析
自社の弱みや課題が解決されなければ、DX成功とはいえません。課題や改善点を見出すためにも、まずは現状を分析して自社の弱みや課題を明確にします。
現状を詳細に分析し、業務の停滞や生産性の低下を招いている業務やプロセスを特定しましょう。すでにITを取り入れている部分についても、インフラやデジタルツールの利用状況を確認し、改善点を洗い出します。
●目標の設定
何となくDXに着手しても、デジタルツールの導入自体が目的となってしまい、達成には結び付きません。DXで何を成し遂げたいのか、明確な目標と達成すべき成果を設定します。
業務効率化や顧客満足度の向上を目指すのであれば、効率化すべき箇所を具体的にし、達成すべき具体的な指標を定めましょう。例えば、顧客対応時間の短縮率や業務プロセスの自動化率などです。
目標が達成されたかを判断するために「KPI(重要業績評価指標)」を定めることをおすすめします。
●必要なツールとサービスの選定
現状を分析し、目標を定めたら、その目標を達成するのに必要なツールと自社に合ったサービスを選定します。
営業業務を効率化したいのであればSFA、適切な顧客管理と顧客との関係構築を目指すなら、CRMなどのツールが適しています。ほかにも、会社が持つ「ヒト・モノ・カネ」といった資源を一元管理するERPやマーケティングを最適化するMA、意思決定を支援するためのAI分析ツールなど、DXを進めるツールにはさまざまなものがあります。
導入したいツールが決まったら、そのツールを適切に運用するためにどんなサービスを利用するかを選びましょう。
クラウドベースのサービスを利用するなら、データの安全な管理と社外からでもアクセスが可能なソリューションがおすすめです。
そもそもどんなツールが向いているか、導入方法がわからない場合には、DX推進をサポートする外部の専門家やコンサルティングサービスに依頼するといった、外部パートナーとの協力を得る手もあります。
●導入と運用
選定したツールやシステムの導入手順を詳細に計画し、スケジュールを作成します。その後、計画に従って新システムの運用を開始して現場での適用を進めます。
スムーズな導入を図るためにも、ITやデジタルに関する専門知識や技術・ノウハウを有したリソースが必要です。人員を確保できないのであれば外部パートナーと提携し、運用までのサポートを受けましょう。
どんなに機能性に優れたツールやシステムを導入しても、それを使いこなせなければ本当の意味でのDXは浸透しません。新しいシステムの操作に関する社員教育やトレーニング研修など、サポートやフォローアップの体制も必要です。
万が一、ツールやシステムに問題やトラブルが発生した際に、迅速に解決するための体制も運用開始までに整えておきましょう。
●進捗管理とフィードバック
DX導入後は、定期的に進捗状況をレビューし、目標達成度を評価することが重要です。例えば、月次ミーティングでプロジェクトの進捗を確認し、KPIに基づいて成果を評価するといった方法があります。
進捗状況の監視に、簡単なチェックリストや表計算ソフトを活用してタスクの進行状況を把握すれば、問題が発生した際には迅速に対応できます。
フィードバックを収集するためには、定期的なアンケートやミーティングを実施しましょう。新たな課題や問題点を特定したら、具体的な改善策を迅速に実行し、DXの効果を最大化します。
不動産業界がすぐに取り組めるDX
DXを進めるにあたり、必ずしも大がかりなシステムやITツールを導入することが必須ではありません。身近なデジタル技術を上手く取り入れれば、これまでの作業や業務プロセスが効率化して組織のDXが進みます。以下のように、できることから少しずつでもDXを進めてみてはいかがでしょうか。
●ペーパーレス化
2022年の宅建業法改正・施行により、不動産取引においても契約の電子化が全面解禁されました。これまでの不動産取引では紙の契約書への直接署名・捺印が必要でしたが、今では電子契約システムによる契約と電子署名で代替できるようになっています。
従来の紙ベースの契約書を電子化してデジタル署名にすれば、契約手続きをオンラインで完結させることが可能です。
電子契約なら顧客が来店しなくても契約できるので、来客の日程調整や来客対応の必要がなく、担当者の業務負担が軽減されます。さらに、契約データを一元管理できれば情報への迅速なアクセスや共有も可能です。
紙代・郵送コストを削減できる効果や契約締結までの日数を短縮できる効果が、売上や利益の向上にもつながります。
●オンライン内見システムの導入
顧客が現地に赴かなくても物件を内見できる「VRシステム」を導入するのも不動産DXの一環です。VR(バーチャルリアリティ)技術を使わなくても、Web会議システムを利用して顧客がリモートで物件を見学できれば、オンライン内見を実施できます。
顧客が現場まで足を運ぶ必要がないので、来店の日程調整や物件への移動の時間・手間・コストがかかりません。簡単に物件情報を閲覧できるオンライン内見のような顧客体験の向上は、自社の競争力を高めることにもつながります。
DX化を進める際の注意点と対応策
ITツールやシステムを取り入れただけでDXが成功するとは限りません。注意点やリスクについて理解し、対応策を講じながら、DX化を進めていきましょう。
●コストと時間の管理方法
DXは、導入コストだけでなく、運用を維持するための管理費やメンテナンス、システムアップデートなどのコストも必要です。さらに、DXには時間もかかります。不動産向けのITツールには電子契約システムや賃貸管理システム、顧客管理システムなどさまざまなものがありますが、これら全てを導入しようとすると、導入完了までに数年の歳月を要する場合もあるでしょう。そこから成果を出すまでには、長期的な計画策定と運用管理が必要です。
コスト管理
新しいITシステムやツールの導入には初期費用がかかりますが、それを維持管理していくには運用コストがかかります。計画の段階から維持・運用コストも含めて予算を見積もりましょう。あらかじめ運用コストも考慮しておくことで、予算オーバーを防げます。
導入コストに見合うかについて、費用対効果を評価する作業も重要です。新しいツールやシステムがどのくらい業務を効率化し、経費や人件費をいくら削減できるのか、それによっていくら利益向上につながるかをシステムごとに事前に検証して、数値に見合ったシステムを検討しましょう。
費用対効果を高めるためにも、不動産業務向けのクラウドサービスやオープンソースソフトウェアの活用など、なるべく導入・運用コストを抑える方法を検討してみてください。
時間管理
費用対効果を高めるためには、DXを迅速に導入して効果を早く生み出すことも大切です。DX推進の全体スケジュールを詳細に計画し、各ステップの期限を設定して進捗を管理しましょう。
例えば、電子契約システムと賃貸管理システムを導入するのであれば、各システムの進行状況を定期的にチェックします。予定どおりに進んでいるかを確認しながら、遅れが生じた場合にはリカバリー対応をします。
あらかじめプロジェクトスケジュールを策定し、タイムラインを遵守することがスムーズな導入と運用につながります。
●中途半端で終わらせないための対策
DXが途中で止まってしまい、思ったような効果を得られないと、失敗に終わってしまう可能性があります。中途半端な状態で終わらせないためにも、長期的な視点を持ち、計画どおりに進行させるための対策を講じましょう。
長期的な視点を持つ
DXの目的は、単なる業務フローのIT化ではありません。業務や組織、プロセスはもちろん、企業文化や風土を変革して、競争上の優位性を確立するまでがDXです。
持続的に改善と成長を続けるためにも、ITツールの導入などによる短期的な成果だけでなく、数年先を見据えた中長期的な目標を設定しましょう。
一つのツールや仕組みを導入して終わりにするのではなく、継続的な評価と改善活動を行います。
状況の見直しには、社員からのフィードバックの積極的な収集が効果的です。現場で生じた課題や改善点があれば反映し、継続的に実施していきましょう。
常に最新技術を取り入れる姿勢を組織全体で意識し、新しい技術やトレンドを取り入れるための体制を整備しておくことが大切です。
計画の遂行
DXの具体的な目標や計画が明確になっていないと、ある程度業務が自動化され、業務負担が軽減された時点で「達成された」という誤った認識が社内に広まってしまいます。そうなると、DXは途中で止まってしまうでしょう。
中途半端にならないためにも、DX推進を一つのプロジェクトとし、完了までの進捗状況を可視化して、チーム全体で共有することが大切です。
プロジェクトマネジメントツールを利用する、定期的なミーティングを開催して進捗状況をレビューするなど、計画を遂行できるような取り組みを継続しましょう。
組織全体がDXの進捗状況を把握し、適切な見直しができると、DXによる目標達成に近付きます。
発注ナビで外注先の比較検討をしよう
デジタル化が進んでいるにもかかわらず、依然として多くの業務が紙ベースや古いシステムで行われている不動産業界。従業員の業務負担の大きさや長時間労働による人手不足から、顧客情報の管理不足も業務効率や顧客満足度の低下を招いています。
これらの課題を解消し、市場における競争力や企業価値を高めるためには、従来からの商習慣に変革を起こすことが重要です。不動産業務に適したシステムやツールの導入を検討して、全社的なDXに取り組んでいきましょう。
DXを成功させるには、現状の課題を洗い出し、目標を定めたうえで自社に合った開発会社や外注先を選ぶことが大切です。発注ナビでは、不動産向けのDXを推し進めるツールやシステムの開発会社を多数ご紹介しています。
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DXへの取り組みをご検討中の担当者様は、ぜひ一度発注ナビまでご相談ください。
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