SCM(サプライチェーンマネジメント)という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。現在、大手企業を中心にSCMの導入が進んでいます。本記事では、SCMの基本情報と注目される背景、活用事例などを紹介します。
目次
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SCM(サプライチェーンマネジメント)の基礎知識
SCM(サプライチェーンマネジメント)の「サプライチェーン(supply chain)」とは、製造業における、原材料の調達、生産管理、物流、販売までの一連のフローを指す名称です。
あらゆる商品が消費者の手に届くまでの間には、製造・物流・販売といった過程があります。製造業ではこのプロセスを複数の部門や外部企業が分担しており、顧客の消費動向に応じた柔軟な対応が困難になりがちです。
そうした問題を改善する方法として、SCMの活用が注目されています。
●SCM(サプライチェーンマネジメント)とは?
SCMは、「supply chain management」の略で、SCMと略されることが多い言葉です。SCMとは、商品が最終的に顧客の手元に届くまでの一連のプロセスを把握する上で必要な手法のひとつです。
SCMを企業に導入し適切に使うことで、製造から販売までの各工程の間の情報をリアルタイムで連携でき、過剰在庫や無駄な生産といった非効率を大幅に削減することが可能となります。
●SCMとERPの違い
SCMと混同されやすい用語に「ERP(Enterprise Resource Planning)」があります。このERPとは、「企業資源計画」とも呼ばれ、ヒト・モノ・カネ・情報といった社内リソースを一元管理し、経営資源を活用するための仕組みです。 ERPでは、生産・販売・会計・人事といった社内の基幹業務を統合することで、経営全体の最適化と可視化を実現します。業務効率の向上や部門間のデータ連携に優れた特長があります。
一方で、SCMの場合、社内にとどまらず、取引先や物流パートナーなどを含めた外部の連携情報も対象にし、製品販売における一連のプロセスを可視化・合理化する点に違いがあります。
つまり、ERPが「社内リソース最適化」の仕組みであるのに対し、SCMは「社内外の供給ネットワーク最適化」のための手法といえるでしょう。
SCMを導入する5つのメリット
SCMを導入することで得られる5つのメリットについて、詳しく解説していきます。
- 在庫の最適化
- 人材の有効活用
- リードタイムの短縮
- 顧客サービスの向上
- 経営判断の迅速化
●1.在庫の最適化
SCMを導入するメリットのひとつは、在庫の可視化と効率的な管理ができる点です。現在の販売データに基づき、適切な仕入れを行い生産することで、過剰な在庫の発生を防ぐことができます。全体の物流の流れを把握しやすくなるため、どの過程に無駄を省くための方法を見つけることができ、在庫の最適化が可能になります。
このようにSCMは在庫管理の効率化を図り、在庫の無駄があるかを早期に見つけることも可能です。在庫の最適化に成功することで、過剰在庫による赤字の発生リスクを抑えることができます。
●2.人材の有効活用
SCMによって市場分析と市場予測を行うことで、急激な需要変動にも対応できるようになります。
これにより、生産の増減に合わせて必要な人員配置を柔軟に変更できますし、多様な業務へと人材を有効に振り分けしやすくなります。ライフサイクルの短い製品を扱う企業にとって、こうした仕組みが不可欠となり、無駄な経費や人手を最小限にとどめることができます。
また、SCMを導入することで、どこに予算や人材を投入すれば最も効果的かを明確にできる点も大きな特長です。
●3.リードタイムの短縮
SCMの導入により、原材料の調達から生産、物流、納品までの各プロセスが円滑に連携するようになります。
その結果、受注から納品までの時間(リードタイム)を顧客や現場の要望に合わせて短縮することが可能です。遅延や無駄な待ち時間が減ることで、商品供給のスピードアップが実現できます。
●4.顧客サービスの向上
需要や在庫状況をリアルタイムで把握できるため、迅速な納品やタイムリーな商品供給が可能となります。
また、予期せぬトラブルや需要の変動にも柔軟に対応できるようになり、結果として顧客満足度を高めることにつながります。顧客ニーズを的確に捉えたサービスを提供しやすくなる点もメリットのひとつです。
●5.経営判断の迅速化
SCM導入によって、サプライチェーン全体の情報をタイムリーに分析できるようになります。これにより、市場変化やトラブルへの対応を迅速に行い、経営戦略の修正や改善をスピーディに判断できる体制が整うでしょう。
また、現場から経営層まで一貫した情報共有ができることで、企業全体の意思決定がより効果的になります。
SCM導入を成功させる5つのポイント
SCM(サプライチェーンマネジメント)の導入を効果的に進めるためには、事前に押さえておくべき重要なポイントがあります。
ここでは、大切な5つのポイントについて詳しく解説していきます。
- 自社の課題と目的を明確にする
- 社内外の連携体制を整える
- データ運用ルールの統一
- 小規模から段階的に導入する
- 費用対効果の徹底分析
●1.自社の課題と目的を明確にする
まず、自社が抱える課題やSCMの導入目的を具体的に洗い出すことが欠かせません。例えば、在庫過多によるコスト増や、納期の遅延、情報共有の遅れなど、現場で発生している問題点を把握しましょう。
問題点を把握した上で、SCM導入によってどのような改善を目指すのかを明確に設定する必要があります。
●2.社内外の連携体制を整える
SCMは複数の部門や取引先、サプライヤーと連携して業務を進める仕組みです。そのため、社内だけでなく、外部の関係者とも効果的にコミュニケーションを図る体制づくりが大切です。
関係部署同士で目標を共有し、情報をスムーズに流通させるためのルールや仕組みも検討しましょう。
●3.データ運用ルールの統一
各部署や関係企業ごとにデータ形式や管理の方法が異なると、情報のやり取りが非効率になってしまいます。データの粒度やフォーマット、管理ルールを事前に統一することで、正確かつ効率的な情報連携が実現可能となるでしょう。
全体を見据えたデータ管理体制の構築を心がけてください。
●4.小規模から段階的に導入する
SCMを一度に全社へ導入するのではなく、まずは特定部門や一部プロセスから段階的に始める方法がおすすめです。小さな成功事例を積み重ねることで、リスクを抑えつつ運用ノウハウも蓄積できるのは大きなメリットとなっています。
●5.費用対効果の徹底分析
導入時には初期投資や運用コストが必要となるため、事前に費用対効果をしっかりと分析しておくことが重要です。
目標とする成果がどの程度期待できるか、ROI(投資対効果)を見積もりながら、無理のない計画を立てましょう。計画をしっかり立てることで、導入にあたって経営層や現場の納得感を高める材料としても効果を発揮します。
SCMが再注目されている理由
SCMが提唱されたのは最近のことではありません。SCMは、アメリカのコンサルティング会社「Booz Allen Hamilton lnc.(ブーズ・アレン・ハミルトン)」のK.R.オリバー氏とM.D.ウェバーによってはじめて活用された経営管理手法です。かつては業界全体に大きな改革をもたらした画期的な経営戦略として高く評価されてきました。
そのSCMが再注目されている背景には「経済や企業のグローバル化」、「テクノロジーの進化」、「労働人口の変化」など、環境変化への対応がより重要になっているためです。
●経済や企業のグローバル化
インターネット技術の発展とともに、イノベーションの加速が経済のグローバル化を進展させています。
その結果、調達、生産、販売の世界規模のネットワークが構築され、国際競争力が増しており、企業にはサプライチェーン全体の効率化・最適化を図る需要が広がってきているのです。
サプライチェーン全体で「モノ」、「カネ」、「情報」の流れを一貫して管理する必要性が高まっていることが、SCMが再度注目される理由のひとつとなっています。
●労働人口の変化
日本では労働人口の変化にともない、さまざまな業界で人手不足が深刻化しています。例えば、宅配の利用増加による人手不足があり、日本では少子高齢化による働き手の減少が深刻で、トラックドライバーが不足しているためモノを運んで届けること自体が難しくなってきているのです。そのため、物流の在り方を根本的に見直さなければならない状態になっています。
このように労働環境が変化している状況で、サプライチェーンマネジメントによって無駄な物流を省き、配達の最適な数量を正確なタイミングで供給できるようになり、卸売業者や小売店への配送を効率化するなど、新しい働き方や仕組み作りにも役立てられます。
●テクノロジーの進化
日々、インターネットやSNSなどテクノロジー全体で進化が進んでいます。そんな中で特にAIやビッグデータの活用の広がりが近年増えてきており、膨大なデータから顧客のニーズや価値観を抽出してビジネスに活かすことが可能となりました。
その結果、過去のSCMのやり方を見直すきっかけとなり、さらなる効率化と最適化を図る動きが加速したと言えます。また、SCMでは日本でも変化が激しい市場や顧客の需要を正確に予測して、事業リスク管理やビジネスの効率化も目指せます。
SCMの活用事例
販売と物流を一体化させるようなサービスを実現するために、SCMを導入している企業が増えてきています。ここでは、代表的な日本の企業におけるSCM導入事例を紹介します。
●花王株式会社
花王株式会社は、洗剤やトイレタリー用品を扱う大手メーカーです。同社では、受注に対して在庫切れを起こさないよう、原材料の調達から製品の製造、物流、販売システムまでをトータルで管理する独自の仕組みを導入しています。
特に注目されるのは、卸店を介さずに60ブランド(1,500に及ぶ製品)を、受注してから24時間以内に納品できる体制を構築している点です。これを支えているのが高度な需要予測技術で、顧客のニーズや市場の動向を高精度で分析することで、過剰在庫や欠品を防ぎ、安定した商品供給を実現しています。
花王のようにSCMを活用することで、在庫を最小限に抑えつつ、生産から販売までのリードタイムの短縮に成功しています。
●トヨタ自動車
トヨタ自動車は、「ジャスト・イン・タイム(JIT)」方式やカンバン方式など独自の生産管理をSCMに活かすことで、調達から生産、物流、納品に至るまでの各プロセスを高度に連携しています。部品が必要な時に必要な量だけ届く仕組みを構築することで、在庫を最小化しつつ安定した生産体制を維持しているのが特長です。
また、サプライヤーとも密な情報共有を行うことで、需要の変動や市場の変化に迅速に対応できる体制を整えています。JITを活かしたサプライチェーンはグローバル展開にも適応しており、高品質なモノづくりと効率的な物流を両立させています。
●アサヒビール
アサヒビールではAIやビッグデータを用いた需要予測を積極的に取り入れています。販売動向や市場の変化をリアルタイムで分析し、生産計画や物流スケジュールに活用する仕組みを構築しているのが特長です。
さらに、IoT技術で生産設備や在庫の状態を常時モニタリングできるようになったことで、欠品や余剰在庫によるリスクを減らし、無駄のない供給体制を実現しています。これらの取り組みにより、納期の精度向上や物流コストの削減、環境負荷の軽減にも成果を上げています。
●ファーストリテイリング
ファーストリテイリング(ユニクロ)は、商品の企画・生産・物流・販売までの全工程を一元管理するSPAモデルを導入しています。AIによる精密な需要予測や、RFIDタグを活用したリアルタイムの在庫管理で、常に適正な数量の商品を各店舗・ECで提供できる体制を築いているのが特長です。
また、生産から小売までのプロセスがシームレスにつながっているため、トレンドの変化や需要の波にも速やかに対応可能です。在庫ロスや欠品の防止も実現し、顧客満足度の向上と効率経営を両立しています。
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