「発注ナビ」にご登録いただいている開発会社の皆様が発注ナビの導入に至った経緯、その使用感、そして導入後のビジネスの変化は、どのようなものだろうか。ニュートラル株式会社の高橋氏にお話を伺った。
社名 | ニュートラル株式会社 |
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所在地 | 愛知県名古屋市中区錦2-9-29 ORE名古屋伏見ビル11F |
従業員数 | 301 – 500名 |
事業内容 | システム開発、データエンジニアリング、 スマート工場ソリューション、研修事業 |
- 導入前の課題
大手IT系グループ企業の一員として、独自に新規の取引先を増やし、得意分野を拡大したいという課題があった。SESを増やすという方法もあるが、利益率を高めたいと考え、受託開発の受注を増やす方法を模索した。
- 導入後の効果
受託案件の獲得に成功したほか、案件の谷間を埋めることで経営面やエンジニアの精神面でも大きな効果があった。そのほかにも、業務分野や技術領域の拡大、エンジニアの成長、ビジネスエリアの拡大など、数多くの効果を得られた。
大手IT企業グループ内で新たな領域にビジネスを展開する
ニュートラル株式会社は2000年に設立されたソフトウェア開発会社だ。本社を名古屋に置き、静岡、大阪、金沢に拠点を展開しながら、主に製造業の顧客を中心に、生産管理や在庫管理をはじめとする業務システムの開発を中心に行っている。
「名古屋は自動車メーカー、大阪は流通業、静岡は各種製造業、金沢は医療機関やヘルスケア業を主なお客様として、それぞれの拠点がビジネスを伸ばしています」(高橋氏)
同社が得意としているのが、生産管理やスマート工場ソリューションや倉庫ロケーション管理ソリューションだ。具体的には、高度なデータ分析・データ連携やIoTを駆使し、RFIDの利用やパトライト(表示灯)などを導入し、工場の生産性を大幅に向上させたり、倉庫の状況をリアルタイムで可視化し、無駄な在庫の削減・スペースの有効利用・作業効率を向上させたりしている。
そうしたシステムを開発する過程で蓄積された豊富なノウハウを基に、自社で開発した製造業向けパッケージソリューション『Quickシリーズ』も展開している。こうしたパッケージソリューションなども採り入れながら、かゆいところに手が届くきめ細かなソリューションの提供が同社の大きな強みだ。
「自社パッケージであるQuickシリーズだけでなく、グループ会社であるオープンストリーム社のBizブラウザなども扱っています。実際に当社のQuickシリーズとBizブラウザを組み合わせ、ハンディターミナルを利用した倉庫ロケーション管理ソリューションなども開発しています」(高橋氏)
現在は、株式会社豆蔵K2TOPホールディングスグループの一員となっている同社。豆蔵K2TOPホールディングスグループは傘下に13社(うち3社は持ち株会社)を擁する一大IT企業グループで、ニュートラル株式会社は株式会社オープンストリームホールディングスの傘下に収まり、持前の強みを活かしながら、グループ内において独自性を発揮している。
グループ内で新たな分野を開拓していく営業ツールとして発注ナビを導入
同社の取引は、長年続く大手メーカーや大手SIerからの受注が中心だという。
「当社が手掛けている案件のおおよそ6割はお客様との直接取引で、これには専任の営業チームが動いています。それとは別に、SIerから受注するための営業チームもあります」(高橋氏)
そのような中、同社がビジネスを拡大していくためには「新たな直接取引のお客様を増やしていく」必要があった。手っ取り早く売上を伸ばしていくのであれば、SES(システムエンジニアリングサービス)の案件を増やしていくという方法もある。SESはシステム開発案件単位で受注して開発成果物を納品するのではなく、定められた期間エンジニアをアサインし、開発力をサービスとして提供するものだ。
利益率を高めるためにも開発案件を直接エンドユーザーから受注したいという思いがあったという。
ソフトウェア開発の世界では、三次請け、四次請けといったケースも珍しくない。下請に出す際は、元請け側が中間マージンを取るのが一般的なため、商流の下流にいくほど利益率は低下する。したがって、利益率を最大化するには、エンドユーザー企業から直接受注するのが理想的だと言える。
一方で、グループ内各社にはそれぞれ得意分野があるため、新たな分野を開拓していくにしても、その範囲は自ずと限られてくる。
こうした諸課題を解決したのが発注ナビだった。同社が発注ナビを導入したのは2018年からのことだ。
「現在こそ、発注ナビの利用は主に私が中心になって行っていますが、発注ナビの導入自体は私の前任の担当者が行ったため、なぜ、発注ナビを選んだのかといった詳細な経緯までは引き継いでおらず分かりかねますが、以来ずっと発注ナビを使い続けています」(高橋氏)
エンジニアの稼働率を安定化させ、機会損失を防ぐ
高橋氏によれば、発注ナビの良さはいくつかあるが、同社にとって大きな効果があったのは、案件ごとの谷間を埋め、エンジニアの稼働率の安定化に繋がった点だという。
システム開発の作業は一般に、要件定義、基本設計、詳細設計、製造(開発)、単体テスト、結合テスト、システムテスト、納品(後に運用)と時系列にいくつかのフェーズに分かれており、プロジェクトに参加するエンジニアの人数もフェーズごとに増減する。プロジェクトの規模や性質にもよるが、詳細設計や製造のフェーズが最も人員を必要とし、その前後のフェーズはより少ない人員で行うのが一般的で、いくつかの案件を順に手掛けていくと、各案件の間にエンジニア需要の谷間が出来てしまう。
案件の谷間が出来ると、エンジニアの待機時間が生じてしまい、企業としての損失はもちろんだが、何よりもエンジニアの不安や戸惑い、あるいはモチベーションの低下が増大しかねない。こうした谷間にSESを活用することで埋めている企業もあるが、受託開発を中心に据える同社では、これをよしとはしていない。そこで、中小規模の案件を発注ナビ経由で受注し、谷間を埋めていったという。
「年度の始めなどは案件の谷間ができやすいのですが、タイミングを考えて案件を取りにいくことで、以前に比べると、各段に案件の谷間を減らすことができました」(高橋氏)
また、エンジニアにとって、システム提案の機会が増えることもメリットだという。
「作成した提案がお客様に響かず、受注に至らなかった場合も無駄になるわけではありません。同じ提案が別のお客様で受注につながったという例もありますし、成功や失敗を繰り返すことで、エンジニアの提案力が磨かれていきます」(高橋氏)
発注ナビの導入は、同社に在籍するエンジニアにとってもプラスの効果があったということがよく分かる。
得意分野の以外の案件を獲得することで、自社の可能性を広げることに成功
発注ナビではどのような案件にエントリーしているのだろうか。
「製造業、流通業向けの案件は得意分野ということもあり、積極的にエントリーするようにしています」(高橋氏)
こうした同社の得意分野では、フルスクラッチによる開発のほか、自社製あるいは他社製のパッケージシステムを適宜導入しながら開発を進めることで、コスト面や納期面を工夫したシステム提案が行えるという強みもある。これらはひとえに、これまで同社が手掛けてきた同分野のシステム開発における実績と多大な経験に裏打ちされたものと言えるだろう。
開発分野は徐々に広がっている。
「最近では製造業のみならず、他業種にも手を広げています。たとえば建設業界の案件なども手掛けさせていただいています。また、キャッシュレス決済関連のお客様から受注した案件ではスマートフォンアプリの開発も手掛けました。技術面で学ぶことも多かったのですが、とても良い経験になっています」(高橋氏)
こうして、新たな業務分野においても知見を広げ、ノウハウを蓄積していっている。
技術面でも新たな領域にチャレンジ。ビジネスエリアも拡大した
また、発注ナビを利用することで「新たな技術領域にもチャレンジしています」と高橋氏は語る。
特に同社ではAI関連の先端技術に大きな関心を寄せている。これまで数々のデータ分析・データ連携による生産・流通の最適化を進めてきた同社にとって、その延長上に見据えているのがAIの活用だ。もちろん、そのための準備も着々と進めているという。
たとえば近年重用されるデータ分析のスペシャリストであるデータサイエンティストについては、その育成講座を社内外に提供しているほどだ。
「データサイエンティストだけでなく、すでにAI関連技術のエンジニアも社内に控えています。開発体制は整っていますので、良い案件があればどんどんエントリーしていきたいと考えています」(高橋氏)
一方で、同社には「まだ多くのケースで、システムソフトウェアの開発しかできていない」という悩みもある。
同社としてはシステムインフラの構築、システムソフトウェアの開発、サイバーセキュリティの構築などをトータルに手掛けるシステムインテグレーターとして、ビジネスを確立していきたいという思いもある。
「昨年度からシステムインフラ関連のチームを組織し、実際にいくつかのプロジェクトも手掛け始めています。また、サイバーセキュリティ関連についてもグループ企業やパートナー企業との協業体制が出来上がっていますので、これからは高度なシステムインテグレーションが求められるような案件にも手を広げていきたいと考えています」(高橋氏)
発注ナビでは「案件が選べる」ということで、若いエンジニアが興味のある案件に触れる機会が増えており、中堅エンジニアにとっては、システム提案の機会が増え、営業スタッフ共々、コンサル的な部分が磨かかれていっているという。
営業エリアも広がった。高橋氏が在籍している名古屋本社では、これまでメインの受注先が関西・中部エリアに集中していた。しかし、発注ナビでは全国の案件にエントリーできるため、現在は、栃木や九州などの顧客からも受注している。
このように、同社における発注ナビの導入は、案件の谷間の解消、新たな業務分野や技術領域の開拓、エンジニアの成長、ビジネスエリアの拡大など、さまざまな面で大きな効果を発揮している。
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