CDNとは、デジタルコンテンツを効率的かつスピーディーに配信するためのネットワークのことです。1990年代にAkamaiというアメリカの大手ネットワーク事業者が提唱し、CDNの仕組みが広がりました。
Webサイト制作や運営に関わる人であれば、「CDN」という言葉を聞く機会が度々あるかと思います。なんとなく聞いたことはあっても、意味まであまり気にしたことがないという人も多いのではないでしょうか。
この記事では、CDNの仕組みやメリット・デメリット、利用方法を解説します。
目次
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1.CDNとは?
CDNとは、「Content Delivery Network(コンテンツデリバリーネットワーク)の略で、大容量のデジタルコンテンツを効率的かつ迅速に、ユーザーに配信できるネットワークのことです。基盤となる技術や仕組みは、アメリカの大手ネットワーク事業者のAkamai Technologiesが1990年代に提唱しました。
従来、Webサイト上で、大容量のコンテンツ(動画、画像、音楽、ゲームなど)を公開している場合、訪問者が集中した際にWebサーバがダウンしてしまったり、ネットワークに負荷がかかり表示が遅くなったりする問題がありました。CDNでは、これらの問題を解決するために、CDNを使い大容量のデジタルコンテンツを大量配信、高速配信できるようになったのです。
2.CDNの需要が高まる背景
1990年代以降インターネットが普及するにつれ、テキストベースの簡素で小容量なWebサイトのコンテンツから、画像・動画・音楽などを含んだ大容量なものへと変化しました。すでに多くの企業で採用されており、日経平均株価に採用されている企業のコーポレートサイトの半数以上が利用しているといわれています。
例えば、ECサイトにおいては、より商品の魅力がユーザーに届くように、画像や動画を使うことが増えています。さらに、セールや人気商品の発売日などでは、アクセス数が多くなるタイミングもあり、サーバダウンが発生することもよくあるのです。こうした、アクセス集中によるユーザーの混雑を回避する仕組みとして、CDNの導入が重要視されており需要が高まっています。
また、地方自治体のサーバに高度なセキュリティ対策を施すため、総務省は「次期自治体情報セキュリティクラウド」の構築を推進しています。この構築の必須要件の一つにCDNが指定されており、CDNへの注目が高まっているといえます。
ちなみに近年は、ネットワークの仕組みとしてだけでなく、大量配信を通して収益を上げるための課金や認証システムなども含めて、CDNと呼ぶようになっています。
3.CDNの仕組み
CDNの仕組みは非常にシンプルです。通常、デジタルコンテンツを配信する場合には、リクエストを送信してユーザーに必要な情報をサーバからピックアップし、レスポンスを返します。しかしCDNを利用すると、リクエストを行った際に以前までの配信内容をキャッシュ(アクセスしたWebサイトやアプリなどのデータを一時的に保存しておく技術のこと)として保管するため、本来サーバまで確認するべきフローを短縮できます。これにより、Webサイトの表示を早められるようになったのです。
また、CDNは世界中にネットワークを構築しているため、ユーザーがリクエストを行うとオリジナルコンテンツが保管されているオリジンサーバではなく、近い拠点にあるキャッシュサーバからのレスポンスを返すようになっています。
4.CDNを使うメリット
CDNを使うメリットはさまざまなものがありますが、特に大規模なWebサイトで効果を発揮しやすくなります。
●ページの表示遅延を軽減できる
CDNを利用するメリットとして、表示速度が改善されるメリットがあります。
ページの表示速度は、ブラウザの同時接続数が影響します。実は、ブラウザによって同時接続できるドメインが定められており、既定の同時接続を上回る場合は接続ができず、待ち時間が発生してしまうのです。基本的なブラウザでは、同時接続数は6に設定されていることがほとんどです。そのため、HTMLやCSS、画像ファイルなどを同時に7つ以上ダウンロードすると、待ち時間が発生してしまいます。
しかしCDNを利用すると、画像や動画ファイルなどをキャッシュサーバに保管しておくので、オリジンサーバとは異なるドメインからダウンロードできるようになります。つまり、同時接続数が6を上回るダウンロードも一度に行えるようになり、結果的にページ速度の表示遅延を軽減できるようになるのです。
●サーバの負荷を軽減でき、可用性の向上につながる
CDNを使うことで、サーバの負荷を軽減できるようになります。
ページ速度が遅くなる原因として、サーバへの過負荷が考えられます。オリジンサーバに接続が集中して負荷がかかると、ページが表示されなかったり、エラーがでたりしてユーザーにストレスを与えてしまいます。そこで、CDNを利用することで、ユーザーに近いキャッシュサーバが代わりに応答することになるので、オリジンサーバの負荷を軽減できるのです。
また、サーバダウンのリスクが減少するため、可用性が向上します。可用性とは、多くの利用者が同時にコンテンツにアクセスしたり、一部でサーバが停止したりしても、視聴・閲覧可能な状態が維持されることを指します。コンテンツの視聴・閲覧ができなくなると、顧客体験の質の低下につながってしまうため、可用性の向上は重要です。
●サーバ費用を抑えられる
サーバの費用を抑えるためにCDNを使うのも一つの手です。
レンタルサーバを使っている場合、月間や1日の転送容量が決まっていることが一般的です。高画質な画像や動画といったコンテンツを多く使用しているWebサイトにおいては、転送容量がボトルネックとなり、費用を上げてサーバをレンタルする場合も多くなります。
そこでCDNを利用することで、オリジンサーバ側の対応を減らすことができるため、サーバ費用を抑えられるようになるのです。CDNを利用することに関しても費用が必要になりますが、オリジンサーバの運用コストと比べると比較的安くなる場合が多くなっています。
●DoS/DDoS攻撃への対策になる
DoS攻撃やDDoS攻撃とは、Webサイトに大量のデータなどを送りつけてサーバに付加を掛けてダウンさせようとするサイバー攻撃です。近年では攻撃の解除に金銭を要求するケースもあります。CDNを利用していれば、大量のデータはキャッシュサーバが受け止めるため、オリジンサーバがダウンするリスクを軽減できます。
●SEOやCV率向上につながる
コンテンツの表示速度はSEOに影響があり、速度が速くなるほどGoogleの検索で上位表示されやすくなります。
また、表示速度が速くなることでユーザーのストレスは軽減されるため、顧客体験の向上につながります。結果として、離脱率の低減、CV率の向上につながり、ECサイトの場合は売上の向上も期待できます。
5.CDNを使うデメリット
CDNを使った場合のデメリットも確認しておきましょう。
●キャッシュによって更新情報が反映されない
CDNはキャッシュを利用するため、オリジンサーバのファイルを更新しても、すぐに修正が反映されない場合があります。
例えば、ECサイトでCDNを利用していた場合、商品の金額を誤って登録してしまい、それに気づいてオリジンサーバのファイルを更新しました。しかし、キャッシュの設定時間を3,600秒にしていた場合、更新してキャッシュしてから1時間は修正内容が反映されなくなってしまいます。
誤って金額を大幅に安く設定した場合、せっかく売れても損にしかなりません。また、反対に高い設定にしてしまった場合、ユーザーに不利益を与えてしまいます。そのため、必要な場合にはキャッシュ時間を調整して、すぐに反映されるようにする必要があるのです。
また、ニュースサイトなど頻繁な更新が必要な場合は、更新の遅延は大きな問題となるため、キャッシュの寿命や更新タイミングを適切に管理しておきましょう。
●キャッシュ事故が起きる可能性がある
キャッシュ対象とするコンテンツやファイルの選定を誤ると、個人情報や機密事項などの情報漏洩といった重大な事故につながる可能性があります。
例えば、会員登録が必要なWebサイトの場合、個人情報が掲載されるページをキャッシュ対象としてしまうと、まったくの他人に配信してしまう可能性があります。このことを「キャッシュ事故」といいます。CDNを使い、高速表示を実現できるものの、情報漏洩となってはいけませんので、必ずキャッシュを設定する場合には、個人情報や重要事項となるページには設定しないようにしましょう。
特に重要な公人情報を取り扱う金融・医療関連のWebサイトは注意が必要です。キャッシュの削除プロセスを厳格に運用し、セキュリティ対策と定期的な監査を行いましょう。
●アクセスログが取れないことがある
通常、Webサイトにユーザーがアクセスした場合、ログとしてオリジンサーバにアクセス元情報が記録されます。しかし、CDNを使うことで、キャッシュサーバ側だけにアクセス元の情報が残るので、アクセス元を特定できないということがあるのです。最近は、アクセスログを残せるCDNサービスもいくつかあります。Webサイトの運営上、アクセスログが必要な場合には、アクセスログが取得できるCDNサービスを使うことをおすすめします。
なお、GoogleAnalyticsなどのタグ埋め込み型(Webビーコン型)のアクセス解析については、CDNを導入しても影響はありません。
6.CDNの利用がおすすめのケース
CDNを使ったほうが良いと考えられるケースについて、具体的にご紹介します。
●Webサイトの表示速度が遅い場合
Webサイトの表示速度を遅いままにしておくことは、SEO上好ましくありません。Googleの検索アルゴリズムではネガティブに評価されてしまうため、差異と構成やファイルサイズなど改善策に取り組みましょう。CDNの利用は、手軽に表示速度を向上できる改善策の一つです。
●広告などによる集客でアクセス集中が起こり得る場合
広告配信などでアクセスが急増した場合、サーバには大きな負荷がかかるため、場合によってはユーザーがアクセスできなくなることがあります。せっかく広告を打っても、販売機会を損失してしまっては意味がないため、CDNを利用してサーバ負荷が急増してもサイトにアクセスできるよう、対策を取っておきましょう。
●動画など大容量のコンテンツを配信する場合
動画ファイルやゲームアプリ用ファイル、ソフトウェアの更新データなど容量の大きいコンテンツやデータを配信する場合、サーバには大きな負担がかかります。CDNはこうした大容量ファイルの負担軽減に有用です。
●WordPressを利用したWebサイトを運営している場合
Webサイトを構築するCMSとして利用者の多い「WordPress」は、サーバへの負荷が大きいといわれます。なぜなら、ユーザーがアクセスするたびにWebページ表示用のHTMLファイルを生成する動的コンテンツだからです。CDNを利用して負荷を軽減しておくと良いでしょう。
●ライブラリーを多用したWebサイトを運営している場合
JavaScriptを簡単に既述できるライブラリーを多用したサイトもサーバに負荷がかかりやすいため、CDNの利用が推奨されます。なお、近年ではライブラリーをキャッシュサーバに最初から保存しているCDNサービスもあるため、そのような会社を選ぶのも良いでしょう。
●ECサイトを運営している場合
ECサイトにアクセスしづらい状況が続いてしまうと、販売機会の損失につながります。売上に直接かかわるECサイトを運営する場合はCDNの利用がおすすめです。
●事業をグローバルに展開している場合
事業をグローバル展開している場合、国内だけでなく海外からのアクセスも見込めるため、サーバの負荷軽減のためにもCDNの利用がおすすめです。越境ECを運営する場合は機会損失の防止にもつながります。
●社会インフラを提供する事業者の場合
何らかの天災が起こった場合、地方自治体などの公的機関だけでなく、電気・水道・交通・携帯電話など、社会インフラを提供する事業者へのアクセスが急増します。CDNを利用して、急なアクセス増加に平時から備えておくと安心です。
7.CDNの料金体系
CDNサービスの料金体系は、サービスを提供する会社によって異なります。ここでは代表的な料金体系についてご説明します。
●従量型
データの転送量やリクエスト数に応じて課金される料金体系です。利用した分だけの支払いで済むためわかりやすい料金体系ですが、事前に予算を立てにくい傾向にあります。アクセス数やデータ量が多くなると高額になるため、状況に応じて料金体系を適宜見直すようにしましょう。
●定額制
データ量にかかわらず、毎月一定の金額を支払う料金体系で予算を立てやすいのが特徴です。一方で、アクセス数やデータ量が少ない状況が続けばほかの料金体系よりもコストパフォーマンスは悪くなるため注意が必要です。
●コミット型
一定のデータ量までは定額制で、超過分を従量課金で支払うタイプの料金体系です。従量型の料金よりもデータ量あたりの単価は安くなる傾向にありますが、一定以上のアクセス数・データ量がなければ相対的にコストパフォーマンスは下がります。また、個別見積もりとなることも多くあります。
●オプション料金
通常、CDNサービスを提供する会社は、有償で個別サポートを行うオプションメニューを用意しています。安心して利用するためにも検討してみても良いでしょう。
8.CDNを選ぶポイント
CDNサービスを提供する会社を選ぶポイントについてご紹介します。
●配信拠点と規模
CDNの配信拠点や規模はサービス提供会社によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。管理上の都合で海外の配信拠点にコンテンツをキャッシュさせたくない場合は、配信拠点をあえて日本国内に限定しているCDNを選ぶのも良いでしょう。
●海外企業と日本企業の違い
コンテンツやデータの配信先を国内に特化したい場合は、国内の企業がおすすめです。日本人によるサポートを受けることができ、料金も日本円で購入できます。海外企業の場合は、世界規模での配信に向いていますが、料金がドル建てだったり、サポートの問い合わせに本国法人の確認が必要だったりと、利便性が低くなる場合があります。
●料金体系
利用できる料金体系はCDNサービス提供会社により異なります。自社の状況に応じた料金体系を持つ会社を選ぶようにしましょう。
●サポート体制の充実度
CDNは導入や運用において一定の知識が必要になることがあります。サポート内容もサービス提供会社によって異なり、同じサービスでも無償で受けられたり有償だったりすることもあります。あらかじめ把握しておくようにしましょう。
9.CDNサービスを提供する主な会社
CDNを利用するには「CDNサービス事業から決める方法」と「レンタルサーバ業者から決める方法」の2パターンがあります。
ここでは2つの業者の種類に分けて、代表的な会社をご紹介します。
●CDNサービス事業者
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Akamai
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Amazon CloudFront(AWS)
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Cloudflare
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CDNetworks
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Fastly
Akamai
Akamaiは、アメリカの大手ネットワーク事業者で、CDNの洗掘者でもある企業です。全世界のインターネット上のトラフィック30%をAkamaiのCDNで処理しているといわれています。世界130ヶ国、24万台以上のサーバがあり、世界各国からアクセスがあるような大規模サイトに特におすすめです。
Amazon CloudFront(AWS)
Amazon CloudFrontは、クラウドサービスの大手AWSが提供するCDNです。近年、さまざまな企業で利用される注目のCDNの一つとなっています。日本でも、AWSを利用する企業が多くあり、インターネットのインフラ整備において欠かせないものになりつつあります。
AWSを利用していれば、Amazon CloudFrontは機能の一部でもあるため、別途で契約する必要がない上に、ほかのAWSサービスとも連携しやすいというメリットがあるのです。
Cloudflare
Cloudflareは、アメリカの企業でCDNやセキュリティサービスを提供しています。企業向けだけではなく、フリープランや個人向けのCDNサービスも提供しています。また、Cloudflareは世界80ヶ国、180カ所以上のデータセンターが稼働しています。無料でCDNを導入できるため、試してみたい人にもおすすめです。
CDNetworks
CDNetworksは、アジアを中心に配信拠点を構えるCDNサービスです。2000年に韓国で創設したネットワーク関連企業で、アジア進出をしています。アジア最大級のCDNサービスと謳っている通り、中国やロシアなどのWebサイトの配信環境が良いというわけではない国でもしっかりと対応できています。また、CDNサービスだけではなく、セキュリティ対策まで一貫して行えるのが特徴です。
Fastly
Fastlyは、アメリカで2011年に創設したクラウド・コンピューティング・サービス・プロバイダーです。Fastlyでは、高性能HTTPアクセラレータの「Varnish」とWebサーバの「H2O」をペーストしてCDNを配信しています。そのため、カスタマイズ性が高かったり、高速レスポンス、高速キャッシュクリアが可能になったりするなどの特徴があります。従来のCDNではなかなか難しかった動的コンテンツのキャッシュも簡単にでき、リアルタイムな分析や障害把握も可能です。
●レンタルサーバ業者
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さくらのレンタルサーバ
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エックスサーバ
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SEEDS Hosting Service
さくらのレンタルサーバ
さくらインターネット株式会社が提供するCDNサービスで、「コンテンツブースト」という機能を提供しています。価格は、月間の転送容量によって「ライトプラン」、「スタンダードプラン」があります。いずれも、月間の転送容量が100GBまでで1,100円(税込)です。さくらインターネットが提供するコンテンツブースト機能なら、簡単操作で利用できるため、スキルや知識がない人でも手軽に活用できます。
エックスサーバ
エックスサーバ株式会社が提供するCDNサービス「Xアクセラレータ」はWebサイトを高速・安定化させるための機能です。エックスサーバの対象サービスを利用している人であれば、標準機能としてあるため無料で使用可能です。
以下のバージョンが用意されていますので、運用しているWebサイトのジャンル、規模などに応じて必要なバージョンを選んでください。
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Xアクセラレータ Ver.1:静的ファイルの高速化
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Xアクセラレータ Ver.1:静的ファイルの高速化+PHPプログラムの高速化
「Xアクセラレータ」は、Xサーバをご利用の方でCDNを使ってみたい方におすすめです。
SEEDS Hosting Service
シーズホスティングサービスという法人向けのホスティングサービス企業が提供するCDNサービスです。
国内外に配信拠点があり、状況に応じて適切な配信が可能です。価格は、配信地域や従量によって異なります。例えば、配信地域が日本で100TBまでなら、1GBにつき9円というように従量課金されます。それに加えて管理費として月5,000円が必要です。
10.CDNの活用によるWebサイト改善が重要
インターネットが普及し、さまざまなデバイスから簡単にWebコンテンツを楽しめる時代になりました。そんな中で、Webサイトの表示速度が遅くなることで、売上や成約率に大きな影響を与えることがあります。そのため、CDNやキャッシュを活用して表示速度を改善することが大切になっています。
今後、5Gがより普及するにつれて新たなコンテンツの配信方法も考えられますが、現状では訪問者が快適にWebサイトを閲覧できるように運用者は最善の方法を尽くすべきでしょう。さまざまなCDNサービスが提供されていますので、自社サイトに適したサービスを選び活用してください。
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