建設業向けERP(Enterprise Resource Planning)システムは、業界の特性に応じた課題を解決し、業務効率化や情報管理の一元化を可能にするツールです。プロジェクト進行や原価管理、法令対応など、建設業務に求められる様々な機能を備えており、多様なニーズに対応した柔軟な設計が特徴です。さらに、企業の規模や業務内容に応じてシステムを選択でき、長期的な運用を見据えた保守サポートも整備されています。
本記事では、建設業向けERPシステムについて紹介。システムの基本からおすすめのシステムまで、業務効率化につながる情報をお届けします。
目次
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建設業向けERPシステムの基本
建設業向けERPシステムは、建設業界の特性に対応した業務管理ソフトウェアです。ここでは、システムの概要や導入のメリットなどを紹介します。
●建設業向けERPシステムの概要
ERPは、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」などの経営資源を一元管理するシステムです。建設業向けERPでは、特に工事プロジェクトの原価管理や進捗管理に重点を置いています。この特化により、複数のプロジェクトを同時に運営する際の管理負担を大幅に軽減できます。
このシステムは工事進行基準を含む業界特有の会計基準や法令に対応しており、会計処理を正確に行えます。さらに、進捗データを活用することで売上計上が自動化され、会計基準に則した処理も効率的に進められるでしょう。
●建設業向けERPシステムを導入するメリット
建設業向けERPシステムを導入することで、業務全体の効率が向上します。部門ごとに重複していたデータ入力を統合することで、手作業や確認作業が削減され、重要な業務に集中できる環境を整えることが可能です。
経営層にとっては、必要なデータを迅速に取得し、プロジェクトごとの収益や進捗状況を簡単に把握できる点が大きなメリット。適切なリソース配分を行い、プロジェクトの全体的な進行を効率的に管理できます。
法令対応や会計処理の自動化にもメリットがあります。税制や会計基準の変更に柔軟に対応する仕組みが整い、作業負担が軽減できます。同時に、データの一元管理によってエラーや漏れを防ぎ、正確性の高い運営を行えるでしょう。
さらに、現場と経営層の情報共有がスムーズになる点もポイントです。リアルタイムで進捗状況やコスト情報を把握することで、リスクを早期に発見し、すぐに対処できるようになります。
●建設業向けERPが必要とされる背景
建設業界では、長期間にわたるプロジェクトや多くの協力会社との連携が必要となることが一般的です。その結果、情報が分断されやすく、管理が煩雑になるという課題が生じています。ERPシステムはこれらの課題に対応し、効率的な情報管理を行うためのものです。
プロジェクトの進捗や予算超過をリアルタイムで把握することも求められます。これが不十分な場合、意思決定の遅れがスケジュールやコストに悪影響を及ぼす可能性があるためです。ERPシステムを導入することで、こうしたリスクを軽減し、適切な判断が行いやすくなります。
工事進行基準など、業界特有の会計基準への対応も重要です。ERPシステムはこれらに適合した機能を備えており、手作業によるエラーや処理の遅延を防ぎながら、業務を効率化します。
近年の人手不足や法改正への対応も、建設業界全体の大きな課題です。ERPシステムはリソースの有効活用を促進し、法令順守を支援することで、安定した業務運営を可能にします。
建設業向けERPの主な機能
建設業向けERPは、建設業界に特化した様々な業務管理機能を備えています。以下に、主要な機能を解説します。
●原価管理機能
原価管理機能とは、プロジェクトごとの予算と実際の費用を比較して管理する機能です。労務費や資材費、外注費などの内訳を詳細に記録できるため、無駄なコストを発見しやすくなります。これにより、赤字になるリスクを早期に把握し、必要な対策を講じることができるでしょう。収支状況をリアルタイムで確認できるため、経営層やプロジェクト担当者がタイムリーに意思決定を行えます。
●工事進行基準対応
工事進行基準対応機能とは、工事の進捗に応じて売上を計上する機能です。工事進行基準や工事完成基準などの業界特有の会計基準に対応しており、進捗データを基に収益や費用を正確に計算できます。この機能により、長期プロジェクトの収支管理が容易になり、経理作業の効率化も進みます。さらに、会計処理が自動化されることで、経理部門の負担が軽減されるでしょう。
●在庫・調達管理
在庫・調達管理機能は、必要な資材を適切なタイミングで発注できる仕組みを備えています。現場ごとの在庫状況をリアルタイムで把握することで、過剰在庫や資材不足が防げます。購買履歴や納期を一元管理することで、事務作業が簡素化され、調達業務の効率が向上するでしょう。さらに、資材の使用状況を詳細に把握することで、適切なコスト管理を行うことが可能です。
●工事管理機能
工事管理機能では、各工事の進捗や予算をシステム上で一元管理できます。プロジェクトごとの収益性や完了時期が可視化されるため、計画の精度が向上します。タスクごとの進行状況を管理することでスケジュール遅延を防ぐことも可能です。
追加工事や設計変更が発生した場合も、システム内で迅速に対応できます。これにより、現場と管理部門の連携が強化され、プロジェクトの透明性が向上するでしょう。
●データの視覚化機能
データの視覚化機能では、グラフやチャートを活用して各プロジェクトの進捗や収支状況を簡単に把握できます。報告書の作成効率が向上するだけでなく、必要な情報を迅速に共有する仕組みも整います。過去のデータから予測やトレンド分析を行うことで、将来の計画策定にも活用できるでしょう。この機能により、経営層はデータ分析を基に的確な判断を行えます。
ERPの導入プロセスと費用感
ERPの導入には計画的なプロセスを踏むことが求められ、企業の規模や選択するプランにより費用が異なります。以下に具体的な手順と費用の目安を解説します。
●導入までの手順
ERPを導入する際には、現状の業務フローを把握します。
まず、現在の業務内容や課題を洗い出し、改善が必要な部分を整理します。そのうえで、ERPに求める機能を明確にし、優先順位を付けることで、導入時の方向性を定めましょう。
次に、システム提供会社(ベンダー)の選定を行います。候補となるベンダーの実績や評判を比較検討し、自社の要件に合ったベンダーを選びます。要件定義では、必要な機能や運用条件を具体化します。この段階では、標準機能を活用する方針を基に、カスタマイズの必要性を慎重に検討しましょう。不要なカスタマイズを避けることで、コスト削減や運用の安定性が期待できます。
システム設計・開発では、要件定義で確定した内容に基づいて設計を進めます。標準機能で補えない部分についてのみ、必要最小限のカスタマイズや設定を実施。試験運用の段階では、小規模なプロジェクトでシステムの動作確認を行い、運用上の問題を早期に修正しましょう。
最後に、運用開始前に社員へのトレーニングを実施します。システムの利用方法を関係者が十分に理解することで、スムーズな運用が可能です。
●導入にかかる費用の目安
ERPの導入費用は、選択するプランや企業規模に応じて異なります。
クラウド型ERPは初期費用が抑えられる傾向があり、中小企業向けのプランでは月額5万円程度から利用可能です。一方で、中堅企業向けのオンプレミス型ERPでは、初期費用が100万円以上、月額利用料は20万円程度になることがあります。
カスタマイズが必要な場合、その費用は内容や範囲によって数十万円から数百万円ほどです。さらに、システム運用時には保守やサポートの費用が必要です。クラウド型の場合、保守費用が月額料金に含まれるケースが多いですが、オンプレミス型では別途費用が発生することが一般的です。
クラウド型は初期費用を抑えやすい一方、月額料金が継続して発生します。対して、オンプレミス型は初期費用が高額ですが、長期的に見るとコストを抑えられる場合があるでしょう。どちらを選ぶかは、自社のIT環境や運用体制、将来的な費用対効果を考慮して判断します。
建設業向けERPシステム
建設業向けERPシステムは、業界特有の課題に対応し、業務全体の効率化や統合管理を支援するために開発されたシステムです。これらのシステムは、プロジェクト単位の管理や進捗追跡、会計基準への対応など、建設業界に必要な多機能性を備えています。以下では、主要なシステムの特徴を解説します。
●PROCES.S
PROCES.S(プロセス)は、建設業特有の基幹業務を包括的にサポートするERPシステムです。会計、原価管理、支払、請求入金管理、JV管理、給与労賃など、多岐にわたる業務を網羅し、データを一元管理。これにより、重複入力を排除し、業務効率化と迅速な経営判断を支援します。建設業経理士の資格を持つ専門スタッフが導入から保守までワンストップでサポート。電子帳簿保存法に対応した機能も備え、法令順守もカバーしています。
参考:https://process.uchida-it.co.jp/solution/
●建設WAO
「建設WAO」は、日本の建設業に特化した統合型ERPシステムです。営業管理や見積・積算管理、原価管理、工事管理といった基幹業務を幅広くカバーし、内部統制機能を備えています。独自のWeb通信インターフェース技術(特許取得済み)を採用しており、Webシステムでありながらクライアント/サーバ型と同等の高速レスポンスと操作性を有しています。
このシステムにより、情報の一元管理や業務効率化、リアルタイムでのデータ共有が可能です。さらに、経営判断の迅速化や現場との連携強化にも役立ちます。標準機能を活用し、カスタマイズを抑える設計が採用されており、コスト管理や運用の安定性をサポートしてくれるでしょう。
参考:https://kensetsu.chepro.co.jp/
●GRANDIT
「GRANDIT」は、日本の建設・工事業向けに設計された統合型ERPシステムです。見積、契約、手配、工事完了、会計までのデータを一貫して管理し、業務の効率化をサポート。プロジェクトや工事番号をキーとして、採算状況や進捗度をリアルタイムで把握できる機能も備えています。
工事進行基準に対応しており、原価比例法に基づく進行基準売上金額の計上も可能です。視認性の高いガントチャートを使用した工程管理により、作業進捗を一目で把握でき、遅延やコスト超過のリスクを抑えます。これらの機能により、複雑な業務プロセスを効率的に管理し、プロジェクトの円滑な運営を支援します。
●e2movE
「e2movE(イー・ツゥー・ムーヴ)」は、建設・工事業向けのERPパッケージで、販売管理、工事原価管理、建設会計を中心とした機能を提供します。「e2movE 工事管理」では、受注工事の実行予算や採算、進捗状況の把握、外注業者や資材業者への原価計上、支払管理を一元化。加えて、販売管理と工事管理を統合し、物販と工事の実績をまとめて把握することで、事務コストの削減や与信管理の強化にもつながります。
クラウド版の「e2movEクラウド」も選択でき、初期費用を抑えた導入や短期間での運用開始が可能です。これらの機能により、複雑な業務プロセスを効率化し、業務全体の最適化を支援しています。
参考:https://si.mitani-corp.co.jp/solution/e2move/
建設業向けERPは業務効率化に必要なツール
建設業向けERPシステムは、業界特有の課題に対応し、業務全体の効率化や情報管理の一元化を実現するためのツールです。建設業界では、プロジェクトごとの複雑な管理や法令対応、協力会社との連携が求められます。ERPシステムを活用することで、進捗や収支状況をリアルタイムで把握し、経営判断を迅速に行う環境を整えることができるでしょう。工事進行基準や業界特有の会計基準に対応した機能を備えるシステムが多く、法令順守や内部統制が強化できるのも特徴です。
一方で、導入時には自社の業務内容や課題を明確にし、必要な機能を慎重に選定しなくてはいけません。カスタマイズの範囲や運用コストも考慮し、長期的な運用を見据えたシステム選びが求められます。
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