生成AIがビジネスの現場で当たり前に使われるようになった今、AIにどう指示を出すかが成果を大きく左右しています。「ただお願いする」のではなく、AIの力を最大限引き出すためには、目的や状況を具体的に伝える“プロンプト設計”が欠かせません。
本記事では、生成AIプロンプトの基本構造やすぐ使える書き方、ビジネス向けテンプレート例、注意すべきリスクなど、AI初心者の方でも実践しやすい内容をまとめました。まずは今日から、あなたの業務で使えるプロンプト設計をはじめてみませんか。
目次
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生成AIの出力は「プロンプトの質」で決まる
生成AIを業務に導入するときは、AIへの指示をどのように書くかが、アウトプットの内容や精度を大きく左右します。これは、従来のパソコンソフトと生成AIでは使い方の原理がまったく異なるためです。たとえば、これまでのソフトは決められたボタンやメニューを操作するだけでしたが、生成AIは自然な言葉で指示や質問をやりとりするのが大きな特徴となっています。
この変化により、AIに期待する結果を引き出すためには「曖昧なお願い」ではなく、より具体的で質の高いプロンプト(指示文)を使うことが重要になりました。
プロンプトはただの質問文ではありません。AIの知識や能力を、使う目的に向けて正確に誘導するための“設計図”であり、まさに新しい時代のユーザーインターフェースとも言えます。
ビジネスの現場では、プロンプトの質が業務効率や成果物のクオリティに直結するため、プロンプト設計のスキルが求められるようになっています。具体的なプロンプトを活用すれば、AIからの回答の精度が上がり、作業の手戻りも減ります。逆に、曖昧な指示を出してしまうと、求めていたものとは違うアウトプットや不正確な内容が増え、ビジネスリスクにもつながりかねません。
●プロンプトとは何か?
プロンプトとは、生成AIに「何をどうしてほしいか」を伝えるためのテキスト入力です。
AIとやりとりをするうえでの、ユーザー側の発言すべてがプロンプトにあたります。たとえば、「会議の議事録を要約してください」や「ビジネスメールの返信例を考えてください」などが典型例です。
プロンプトにはいくつかの基本パターンがあり、AIに実行してほしいタスクをはっきり示す「命令」、文章の続きを自動生成させる「補完」、いくつかの具体例を示してパターンを学習させる「実演」などがあります。これらの型を理解しながら指示を出すことで、AIの活用効果をより高めることができるでしょう。
●プロンプト設計が重要な理由
プロンプトの設計は、AIから得られるアウトプットの質を左右します。同じAIを使っても、曖昧な指示だとAIは意図をうまくくみ取れず、一般的な回答や的外れな結果になりやすいです。たとえば、「マーケティングについて教えて」とだけ入力すると、範囲が広すぎて、具体的な答えは返ってきません。しかし、「BtoB向けSaaS商品のリリースにあたって、CTOに響くマーケティング案を3つ提案してください」と書くことで、AIはより実践的な回答をしてくれるようになります。
ビジネスの現場では、アウトプットの品質や一貫性も重視されます。プロンプトのテンプレートを標準化して共有すれば、誰がAIを使っても安定した品質を保つことができ、組織全体の生産性向上にもつながります。
また、良いプロンプト設計は、AIの持つ能力を最大限に引き出すカギでもあります。たとえば、特定の専門家になりきった応答や、複雑な問題を分かりやすく段階的に考えることもできるようになります。
このように、プロンプトの設計に工夫を加えることで、業務の効率化やリスク管理、アウトプットの品質向上まで、多くのメリットが生まれます。
生成AIプロンプトの基本構造と考え方
AIに正確に意図を伝えるには、プロンプトの内容をある程度フォーマット化するのが有効です。業務でよく使われるプロンプトの設計例を参考に、AIにどのように伝えれば良いかを見ていきましょう。
●目的・タスクを明確に伝える
プロンプトの核となる部分は、AIに「何をしてほしいか」を明確に伝えることです。
「会議の議事録を要約してください」「プレゼン資料の構成を作ってほしい」など、最初に具体的な行動をはっきり示すと、AIはタスク全体を理解しやすくなります。
曖昧な表現を避けて、ストレートで分かりやすい言葉を選ぶことがポイントです。
●背景や条件・制約を具体的に加える
プロンプトの中で「誰向けなのか」「どんな状況なのか」「守ってほしい条件はあるか」を詳しく伝えると、AIの回答はより目的に合ったものになります。
たとえば、「小学生でもわかるように」「専門用語を使わずに」「400文字以内で」など、制約条件を加えることでアウトプットの精度が格段に上がります。
AIは自分で状況を推測することができないため、前提となる情報も省略せずに書くのがコツです。
●出力形式や文体も指示する
アウトプットの形式を最初に指定しておくと、結果をそのまま使いやすくなります。 たとえば「箇条書き」「表形式」「要点リスト」「HTML」など、希望する形で伝えれば、後で修正する手間が減ります。
また、「丁寧語で」「親しみやすいトーンで」など文体やトーンの指示も加えることで、ターゲットやシーンに合わせたアウトプットが得られます。
基本構造の一例
構成要素 | 内容例 |
---|---|
目的・タスク | 会議の議事録を要約してほしい、商品説明文を作成してほしい |
背景・条件 | 小学生向け、専門用語禁止、400文字以内 |
出力形式・文体 | 箇条書き、表形式、HTML、丁寧語、親しみやすいトーン |
プロンプト作成の5つのコツ
「AIにお願いしても思った通りの結果が出てこない」と感じたことはありませんか? ここでは、すぐに使える5つのプロンプト作成のコツをご紹介します。
●1. できるだけ具体的に書く
AIは人間のように文脈や雰囲気を読み取ることが苦手です。そのため、抽象的な表現ではなく、できるだけ具体的な内容を伝えましょう。
たとえば「営業に役立つAIの使い方」では漠然としていますが、「中小企業の営業担当者が新規顧客への初回メールを効率化するための活用法を3つ教えてください」と書くことで、ピンポイントな回答が得やすくなります。
●2. 背景やターゲットを明記する
AIは、どんな状況で誰のためにその情報が必要なのかを知りません。「あなたはプロのマーケターです」と役割を指定したり、「技術が苦手な営業チーム向け」など、ターゲットを明記することで、より目的に合った回答が得られます。
●3. 出力形式・ボリューム指定を加える
回答をそのまま使いたいときは、どんな形でアウトプットがほしいかを最初から伝えておきましょう。
「200文字以内」「表形式」「箇条書き」「小学生でも分かるように」など、具体的な条件を入れることで、回答のブレを防げます。
●4. 参考例やテンプレートを示す
求めているアウトプットのイメージを、手本となる例やテンプレートで示すのも有効です。たとえば「この商品説明文を参考にして同じトーンで」や「以下の見出し例と同じ形式で作ってください」と書くことで、AIはスタイルを理解しやすくなります。
●5. 試行錯誤とフィードバックを繰り返す
一度のやりとりですべてが完璧になるとは限りません。「ここをもう少し具体的にして」「この部分を修正して」とフィードバックしながら、AIの回答を調整していく意識が大切です。こうした対話を重ねることで、理想に近いアウトプットに仕上がっていきます。
プロンプト作成5つのコツ
- 具体的な指示を出す
- 背景やターゲットも伝える
- 出力形式や文字数を指定する
- 参考例やテンプレートを示す
- 何度かやりとりして調整する
ビジネスで使える!生成AIプロンプト例・テンプレート集
ここからは、現場ですぐ使えるプロンプトのテンプレート例を紹介します。
業務効率化や教育の場面でもそのまま応用できますので、まずは一つ試してみるのがおすすめです。
●議事録の要約プロンプト例
# 命令 あなたはプロの書記担当者です。以下の議事録のテキストを、指定された形式で要約してください。 # 議事録テキスト """ [ここに議事録の全文を貼り付け] """ # 出力形式 - **会議名:** - **日時:** - **出席者:** - **要約 (300字以内):** [会議の目的と全体的な結論を簡潔に記述] - **主要な決定事項:** [決定事項を箇条書きでリストアップ] - **今後のアクションアイテム:** [「誰が」「何を」「いつまでに」を明確にした表形式でリストアップ] - **懸念事項・未解決の課題:** [議論されたが結論が出なかった点をリストアップ]
●ビジネスメール作成プロンプト例
# 命令 あなたは経験豊富なカスタマーサポートの責任者です。以下の状況に基づき、顧客への謝罪と対応を伝える、丁寧かつ誠実なビジネスメールを作成してください。 # 状況 - **顧客:** 株式会社〇〇 様 - **背景:** 弊社が納品した製品Xに不具合があり、顧客の業務に支障が出ている。 - **こちらの対応:** 本日中に代替品を発送し、明日午前中に到着予定。原因は現在調査中。 - **メールの目的:** 丁寧な謝罪、具体的な対応策の提示、再発防止の約束。 # 制約条件 - 件名は「【株式会社△△】製品Xの不具合に関するお詫びとご報告」とする。 - 丁寧語を使用し、相手の不快感を和らげるトーンで作成する。 - 全体で400字程度にまとめる。
●商品説明文のプロンプト例
# 命令 あなたはプロのECサイトライターです。以下の商品情報に基づき、ターゲット顧客の購買意欲を高める商品説明文を作成してください。 # 商品情報 - **商品名:** 天然由来アロマディフューザー「森のしずく」 - **特徴:** - 100%天然精油のみ使用(合成香料不使用) - 国産のヒノキ材を本体に使用 - 超音波式で熱を使わないため、香りが劣化しない - 静音設計で、寝室での利用に最適 - **ターゲット顧客:** 30代~40代の女性。健康や自然志向が強く、日々のストレスを癒したいと考えている。 - **含めたいキーワード:** 「リラックス」「癒し」「天然素材」「上質な睡眠」 # 出力形式 - **キャッチコピー:** 20文字以内で1案 - **商品説明文:** 200文字程度。ターゲット顧客の悩みに寄り添い、商品の使用シーンが目に浮かぶような、感情に訴えかける文章。 - **特徴リスト:** 3つの主要な特徴を箇条書きで簡潔にまとめる。
●マーケティング企画のアイデア出しプロンプト例
# 命令 あなたは革新的なアイデアを出すのが得意なマーケティング戦略家です。以下の新商品のプロモーション企画について、アイデアを5つ提案してください。 # 新商品 - **商品名:** スマート栄養管理アプリ「Nutri-Pal」 - **概要:** 食事の写真を撮るだけでAIがカロリーと栄養素を自動分析し、健康アドバイスを行うアプリ。 - **ターゲット:** 20代~30代の健康意識は高いが、忙しくて自炊が難しい男女。 - **目的:** リリース後3ヶ月でアクティブユーザー10万人獲得。 # 制約条件 - SNS(特にInstagramとTikTok)で拡散しやすい、参加型のアイデアを中心に提案してください。 - 各アイデアについて、「企画概要」「ターゲットへの訴求ポイント」「期待される効果」の3点を含めてください。 - 斬新で、他社がまだやっていないようなアイデアを重視してください。
●コード生成プロンプト例(IT部門向け)
# 命令 あなたは経験豊富なPythonエンジニアです。以下の要件を満たすPythonコードを生成してください。 # 要件 Pythonのリスト(list)内に存在する重複した要素をすべて削除し、元の順序を保持した新しいリストを返す関数を作成してください。 # 制約条件 - 関数名は `remove_duplicates` としてください。 - Python 3.7以降で動作する標準ライブラリのみを使用してください。外部ライブラリは使用しないでください。 - コードの後に、そのコードがどのように動作するのか、初心者にもわかるように簡単な解説を加えてください。 - 具体的な使用例として、`['a', 'b', 'a', 'c', 'c']`というリストを関数に渡した場合の実行結果も示してください。
プロンプトエンジニアリングの標準手法を使いこなす
AIとの対話をもっと効率的にしたいなら、設計手法を知っておくと応用範囲が広がります。ここでは代表的な4つの手法を押さえておきましょう。
●Zero-shot(ゼロショット)
Zero-shotは、具体例を示さずに単発の指示だけでAIに回答を求める方法です。
たとえば「次の文章を要約してください」など、比較的シンプルな内容の指示で使うことが多いです。手軽に使える反面、複雑なタスクには向きません。
●Few-shot(フューショット)
Few-shotは、いくつかの例やフォーマットをAIに見せることで、期待するパターンやニュアンスを学ばせる方法です。
たとえば、「この商品説明の例を参考に、同じように他の商品も説明してください」というように使います。
細かなルールや独自のスタイルが必要な場面で特に効果を発揮します。
●Chain-of-Thought(段階思考)
Chain-of-Thoughtは、AIに「理由や考え方をステップごとに説明して」と伝える手法です。
たとえば「この商品の選び方を3つの理由とともに説明してください」といった指示が該当します。論理的な過程が明示されるので、複雑な判断や計算にも向いています。
●ロール指定・役割付与
ロール指定は、「あなたはプロのマーケターです」「あなたは校正者です」など、AIに専門的な役割を与えることで、より安定したトーンや専門性を持った回答が得やすくなる手法です。
ビジネスの幅広い場面で活用しやすい方法です。
プロンプト設計標準手法まとめ(ポイント)
- Zero-shot:単発の指示だけで回答
- Few-shot:手本やフォーマットを複数提示
- Chain-of-Thought:思考の過程を明示
- ロール指定:役割を冒頭で明記
もしプロンプト設計で行き詰まったときには、発注ナビが厳選した生成AI活用に長けた企業をまとめた記事もおすすめです。こちらからチェックしてみてください
プロンプト設計と運用で注意したいポイント
生成AIは業務効率化の強い味方ですが、安全に使うためには注意が必要です。
ここでは、プロンプト設計やAI活用時に意識したいポイントを整理します。
●個人情報や機密情報の取り扱いに注意
AIサービスの多くは、入力したデータがどのように扱われるか分からない場合があります。
個人情報や未発表の社内データ、機密情報などは、プロンプトにそのまま書き込まないようにしましょう。
必要な場合は情報を匿名化する工夫も大切です。
●著作権・知的財産権にも配慮
AIが生成した文章や画像には、著作権や知的財産権に関するリスクもあります。
既存の著作物を無断でプロンプトに貼り付けたり、生成された内容をそのまま商用利用したりしないよう注意しましょう。
生成物は下書きや参考案として活用し、公開前には人が必ず目視でチェックする仕組みを作っておくと安心です。
●AIの回答は必ず目視チェックを
AIは時に、実際には存在しない情報やもっともらしい嘘(ハルシネーション)を出すことがあります。
たとえば、実在しない統計や根拠のない情報が混じることもあるため、回答をそのまま使わず、必ず人の目で確認・修正する体制が必要です。
AI活用時のリスクと対策
リスク例 | 主な対策 | 担当部署 |
---|---|---|
情報漏洩 | セキュアな環境での利用・入力禁止事項の明確化 | IT・法務部門 |
著作権侵害 | 生成物は下書き・加筆修正前提、ガイドライン整備 | 法務・知財部門 |
事実誤認(ハルシネーション) | 人によるファクトチェック・ダブルチェック体制 | 全部門・広報部門 |
倫理的バイアス | 多様な視点でのレビュー・チェック体制 | 人事・ダイバーシティ推進室 |
プロンプト設計力を磨いて、AI活用を進める
生成AIをビジネスの強力なパートナーとして使いこなすには、「指示の出し方」、つまりプロンプト設計のスキルを日々磨くことが大切です。
まずは自分の業務の中で、メール作成や要約など身近なシーンからテンプレートや例文を試し、少しずつ応用範囲を広げていきましょう。うまくいったプロンプトは自分だけのライブラリとして蓄積し、必要に応じて修正・改善を重ねることで、さらに効果的にAIを活用できるようになります。
また、組織でAI活用を進める際は、個人任せにするのではなく、チームでノウハウを共有し、全社で活用レベルを上げていく仕組みづくりも欠かせません。共通のガイドラインや研修を実施し、効果的なプロンプト例や成功事例をリポジトリ化するなど、ナレッジを組織全体でシェアしていきましょう。失敗を恐れず、フィードバックを活かして改善していく文化も重要です。
プロンプト設計は、決して難しい専門技術ではありません。目的を明確にし、分かりやすく伝えるというビジネスコミュニケーションの基本にも通じます。今日から小さな実践を積み重ねて、AIとともに一歩ずつ業務の質を高めてみませんか。
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