レガシーシステムとは、「旧型のシステム」を指します。
レガシーシステムは、基幹システムなど企業の根幹に関わるものが多く、簡単には変更できません。
しかし、旧型のため新しい技術に対応しにくく、メンテナンスに費用や時間がかかります。
今回は、レガシーシステムの基礎知識や新システムに移行するマイグレーション、レガシーシステムのオープン化などについてご紹介します。
目次
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レガシーシステムとは?
レガシーシステムとは、古い技術や仕組みで構築され、複雑化・ブラックボックス化したシステムを指す用語です。
「レガシー(legacy)」とは、本来「資産」や「代々受け継いできたもの」という意味があります。もともとは悪い意味ではありませんが、情報システム用語で「レガシーシステム」と使う場合は「古くなった時代遅れのシステム」という否定的な意味になります。
レガシーシステムは導入や実用化から時間が経っているため、拡張性やメンテナンスがしにくく、新しい技術やビジネスモデルに対応できないという特徴があります。すでに、より先進的な技術が一般的になってしまっている場合もあるでしょう。このようなレガシーシステムは「技術的負債(Technical Debt)」とも呼ばれます。
基本的には古くなったシステムをレガシーシステムと言いますが、どのくらい過去のものから「レガシー」と呼ぶのかという明確な定義はありません。
また、状況に応じて指すものが異なり、たとえば新しくシステムを導入する時には既存のシステムを「レガシーシステム」と言い、USBなど新しい技術が出るとシリアル接続など旧型の技術を「レガシー」と言ったりもします。
システム開発でレガシーシステムと言う場合は、企業に導入されているメインフレーム(汎用コンピュータ)を使ったもので、企業の基幹システムのベースとなっているものを指します。「プロプライエタリ(独自仕様)」システムとも呼ばれ、旧式の技術をベースにしてベンダーが独自技術で開発したもので、企業ごとにオーダーメイドで構築されたシステムです。
日本では、基幹システムや各業務用のアプリケーション(ソフトウェア)、必要なハードウェアなどのレガシーシステムをベンダーが一括して提供しています。ベンダーがシステムのメンテナンスを行っており、長年改良されながら使われている安定したシステムです。
しかし、現在の企業状況には合わなかったり、経営活動が変化する度にツギハギで修正・変更されたりしているので、とても複雑なシステムになっています。
システムがレガシー化することの影響
「レガシーシステムでも、安定して動くのなら良いのではないか」と思われがちですが、実際にシステムがレガシー化すると、どのような影響があるのでしょうか。
●レガシー化の仕組み
IT技術は、ドッグイヤー(人間の7倍の速度で成長する)やマウスイヤー(人間の18倍の速度で成長する)と呼ばれるほど進歩が速く、現行の技術もすぐにレガシー化します。しかし、ユーザーの進歩は技術の進歩ほど速くないので、古いデバイスやシステムを使い続ける人が多くいます。そのため、古くなってもそのシステムが簡単になくなることはありません。これが「レガシー」の生まれる仕組みです。
●システムがレガシー化するとどうなる?
<システムの使い勝手が悪くなる>
レガシー化したシステムは古い技術を利用しているため、新しい技術やデバイスを導入できません。オーダーメイドで構築されたシステムは、長く使われているうちにさまざまな修正と変更を繰り返し、元の仕様書やドキュメントと実態が異なったブラックボックスのようになっている場合があります。そうなってしまうと、ほかのシステムとの連携がしにくくなり、システムの使い勝手が悪くなります。
<維持管理コストが高くなる>
レガシーシステムは、保守運用に関連した費用が高くなります。これにはいくつかの要因があり、一つはメーカーサポートが終了していることです。基幹システムはハードウェアとシステムを一括して導入するため、ハードウェアもレガシー化しています。ハードウェアが古いとファームウェアも古くなり、セキュリティの対応も遅くなります。メーカーサポートが終了していることで、修理の際に部品が手に入らないこともあります。
また、長年使っているうちに改良されたシステムは肥大化し、複雑になっています。その上、最初にシステムを構築したエンジニアが退職している場合は、全体像がわかるスタッフがいないため、ブラックボックス同然になり、修正が困難な硬直化したシステムとなって、管理に余計な時間がかかってしまいます。
<最新技術の活用が遅れる>
レガシーシステムは、クローズドなシステムが前提の古い技術を使っています。クラウドやOSS(Open-source software:オープンソースソフトウェア)などの新しい技術の導入は、想定していません。そのため、新しい技術に対応するためには大掛かりな修正が必要になります。
●レガシーフリーというやり方
このようなレガシーシステムの弱点を解決するために「レガシーフリー」という方法があります。レガシーフリーとは、「レガシーから解放されている」という意味で、Apple社のMacやiPhoneのように、ISAバスやイヤホンジャックなど、レガシーと見なされるシステムやデバイスを排除し、新しい技術だけで作ったシステムやコンピュータを指します。
新しい技術を使って高性能なシステムを構築できますが、ユーザーに新システムに対応するための手間と時間を負ってもらっているため、賛否両論のあるやり方でもあります。
「2025年の崖」とは?
レガシーシステムと関わりの深い「2025年の崖」とは、2018年に経済産業省が発表した、「DXが進まなければ2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性も高い」とDXレポートの中で指摘した内容のことです。ちなみに「DX」とは、「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略称です。DXには、デジタル技術を活用して企業がビジネスを生み出したり、消費者の生活が向上したりすることを意味しています。
具体的には、「2025年の崖」とは、既存システム(複雑化・老朽化・ブラックボックス化したレガシーシステム)が今後も残存した場合に想定される国際競争への遅れ、経済の停滞などを指す言葉です。また、2025年までに予想されるIT人材の引退やサポート終了などによって、より停滞を引き起こすのではないかと指摘しています。
これらの経済損失が発生することを「2025年の壁」と表現しています。
●「2025年の崖」と深い関係のレガシーシステム
「2025年の崖」とレガシーシステムには深い関わりがあります。DXレポート内では、自社の将来の成長や競争力強化のために新たなデジタル技術を活用し、ビジネス変革や新たなビジネスモデルを創出、柔軟に改変するためにDXが必要だということを企業は理解しているのを明らかにしています。しかし現実的には、大きなビジネス変革につながっていないという指摘をしています。
ビジネス改変につながっていない大きな要因の1つとして「レガシーシステム」の存在を挙げています。
前述している通り、レガシーシステムに多くのコストや人的リソースが費やされることで、新しいデジタル技術などにIT予算などの資源を投資できなくなり、企業のグローバル競争力を低下させていると危惧しています。
発表されたDXレポート内では、2025年には21年以上稼働しているレガシーシステムがシステム全体の6割を占めると予測しています。
今後、これらのシステムを刷新する必要があり、万が一、この刷新の波に乗り遅れた企業は多くの事業機会を失うことになると注意喚起を行っているのです。2025年の壁を克服するためには、レガシーシステムの問題をクリアにする必要がありますが、克服に時間がかかると指摘がされています。こうしたことから、レガシーシステムに対して企業は早急な対応が求められているのです。
レガシーシステムの対策(「マイグレーション」と「モダナイゼーション」)
レガシーマイグレーションとは、レガシー化した既存のシステムを新しいシステムに移行することです。「マイグレーション」とは「移転」「移住」という意味で、レガシー化した基幹システムを使用している多くの企業で重要な課題の1つです。
●レガシーマイグレーションのメリット
<時代に合わせたシステムの見直し>
マイグレーションでは、ベンダー独自のクローズドなシステムをオープン系のアプリケーションに乗り換えます。これまでのソフトウェア資産を引き継ぎながら、メンテナンスしやすいようにハードウェアを小型化していきます。
クローズドなレガシーシステムに対して、マイグレーションによってオープンな環境を構築するため、クラウド化にも対応可能です。特定のベンダーに依存しない自由度の高いシステムを構築できます。
<ノウハウなどの資産活用>
マイグレーションは、長年のノウハウをそのまま活かすことができるので、システムの導入に関連したユーザー教育のコストも減らせます。また、段階的な移行が可能なので、システムを停止させずに作業したり、マイグレーションの実行後すぐに新しいシステムを使用したりできます。
<TCOの削減>
レガシーマイグレーションにより、TCO(Total Cost of Ownership:コンピュータシステムの導入・維持管理の費用総額)を削減できます。既存のシステムを基にしているため、新規導入よりもイニシャルコストを抑えることができ、小型化することでハードウェアのランニングコストも抑えられます。
●さらに進化した「モダナイゼーション」
レガシーマイグレーションの発展型として、「モダナイゼーション」という方法もあります。モダナイゼーションとは、「modernize(現代的な)」という言葉を名詞にしたものです。
モダナイゼーションでは、システムの仕様や要件定義にあたる部分は変えずに、新しいIT技術を取り入れます。現行の仕様をそのまま使うことで、これまでのソフトウェア資産を活かしたまま、システムを新しいハードウェアにできます。モダナイゼーションによって、レガシーシステムの資産や安定性の維持と、新しい技術への対応が同時に実現可能です。
レガシーシステムをオープン化するメリット
オープン化とは、クローズド系のシステムをオープン系のシステムに変更することです。オリジナルなものではなく、一般的に技術的な仕様が公開されている普及型のOSやハードウェアを組み合わせて構築したシステムです。
しかし、日本ではセキュリティなどの理由でレガシーシステムのオープン化には抵抗のある企業がたくさんあります。
汎用コンピュータを使用したシステムは柔軟性が低く、リアルタイムのデータ分析にも向いていません。一方、オープン系のシステムは拡張性が高く、柔軟なシステム運用が可能です。IT技術の進歩とともにビジネスにもスピード感が重視される時代になり、オープン系のシステムは必要不可欠な存在となっています。
また、オープン系のシステムは、システムに対する修正や変更・追加が簡単に行えます。レガシーシステムはすべてがオーダーメイドの独自仕様なので、開発者以外がメンテナンスするのは大変でした。しかし、オープン系システムは容易に追加や修正、改良ができるため使いやすく、独自仕様ではないので使用できる選択肢が増えて機能の拡張性が高くなります。
レガシーシステム脱却のためのクラウド活用
マイグレーションとモダナイゼーションについてご説明しましたが、レガシーシステムからの脱却には「クラウドの活用」も必要不可欠です。
自社で保有するオンプレミス型のレガシーシステムでは、ハードウェア故障を前提とした運用が必要です。そのため、定期的にハードウェアのリプレイスコストが発生してしまい、こうした積み重ねが会社のIT予算を圧迫してしまうのです。多くのIT担当者は、こうしたハードウェアのライフサイクルの呪縛に頭を悩ませている人も多いでしょう。
また、レガシーシステムにおいては、システム構造がブラックボックス化するという大きなデメリットがあります。
自社による修正・機能拡張ができなくなった場合、システムとして使い物になりません。そして、運用を続けるために、新たな保守費用が増え続けてしまいますし、同時にノウハウが属人化しやすくなって引き継ぎが困難になります。さらに言えば、システム変更も困難になりやすくなるという、負のスパイラルに陥ってしまうのです。
上記のような問題を解決するのが、「クラウドの活用」です。クラウドを活用することで、定期的に発生していたハードウェアに関するコストが、外部サービスに支払うサービス利用料金のみになります。さらにハードウェアの保守にかかる工数を削減できるので、人材の稼働を保守ではなく別の業務において確保できるようになるのです。そうすることで生産性の高い業務にリソースを集中することが可能になり、課題の解決に近づくのです。
企業がクラウドを活用できれば、レガシーシステムの呪縛から解き放たれることにつながります。
古くて効率の悪いシステム運用から脱却するためにも、クラウドの活用を検討して早急に対応していきましょう。
レガシーシステムの継続的な新陳代謝を
長期にわたって使用されている基幹システムや業務システムの多くがレガシー化しているため、多くの企業が対策に乗り出しているか、すでに対策を完了させています。
しかし、技術はどんどん進歩するため、再度マイグレーションが必要な状態になるでしょう。
マイグレーションを行う時は、オープン化した標準的な仕様やアプリケーションを使用し、マイグレーション後も日々の運用でシステムを絶えず新陳代謝させるように心がけましょう。
それが、レガシーシステムをさらにレガシー化させないためのポイントです。
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