
食品ロス削減のために、スーパーの食品売り場を“ライブ中継”し、割引などの情報を利用者に配信し、購入へとつなぐ ―― 岡山大学学術研究院 環境生命自然科学学域 准教授 松井康弘氏の取り組みだ。2024年度は農林水産省の補助事業に採用されている。
この実現にあたって鍵となるのが、AI-OCRによる画像解析である。かつてはAI-OCRの読み取り精度が課題となり活用を断念していたが、試行錯誤する中で、最新の技術ならば実現可能ではないかと改めて可能性を模索することとなった。そのためには技術力のある企業との連携が欠かせないが、発注ナビを活用したことで、スピーディに必要な技術を持つ会社と出会い、開発まで進められたという。その経緯について詳しく伺った。
食品ロスを減らすために、値下げ品などの情報を配信するキャンペーンを企画

岡山大学学術研究院
環境生命自然科学学域 准教授
松井康弘氏
―― 松井様の研究内容について教えてください。
岡山大学学術研究院 松井康弘氏:廃棄物の3Rやエシカル消費をテーマに教育・研究を行っており、近年大きな社会問題となっている食品ロスの削減に焦点を当て、具体的にどのような取り組みが効果的かを研究しています。食品ロスは大きく生活系と事業系に分けられますが、市民と事業者双方にアプローチできる食品スーパーでの施策を検討していました。
食品ロス削減の方法としては、需要予測の精度向上による売れ残り防止などもありますが、さまざまな原因によって変動する売上を完全に予測して食品ロスをなくすことは困難です。また、売れ残った食品を社会福祉施設などと連携して提供することも考えましたが、こうした施設では栄養管理の観点で事前に提供メニューを決めて計画的に食材を調達しているため、日々発生する余剰食品の種類に合わせてメニュー変更することは不可能です。実際に食品スーパーで発生するさまざまな余剰食品を福祉施設のメニューに合わせて提供する場合のマッチング率を試算したところ、発生量全体の2割に満たず、削減効果が限定的と考えられました。
一方、店舗周辺に居住する個人であれば食材の受け入れ範囲が広いため、食品スーパーの余剰食品を個人にマッチングする施策が有効と考えました。なお、個人に対して余剰食品の情報を提供するアプリはこれまでにもリリースされていますが、出品するためには一品ごとにデータやイメージ画像を入力する必要があり、食品スーパーで発生する多種多様な余剰食品の情報を逐一入力する方式では、手間がかかり過ぎて運用が難しいと考えられます。そこで、食品売り場をライブ中継し、値下げ品などの割引情報をスマホアプリに配信することで購入につなげる仕組みを考え、これまで2022~2024年度にわたり3回実施し、今年度は2026年1月から3月まで『のこり福キャンペーン2026』として実施することになりました。
―― 今回ご相談いただいたのは『のこり福キャンペーン2026』に関する開発ですが、どのような課題がありましたか。
松井氏:売り場の中継自体は以前から実施していましたが、アプリ利用者により分かりやすく割引情報を伝えて活用してもらうためには、映像だけでなく商品名や定価、割引などの情報をデータとして配信した方が良いと考えていました。そのためには、画像をAI-OCRで読み取り、データ化する必要があります。実は最初にキャンペーンを実施した3年前にAI-OCRを試したことがあったのですが、読み取りの精度が悪く、実用には至りませんでした。今年度は、当初AI-OCR以外のデータ配信の方法を検討していたのですが、協力をお願いした食品スーパーとの調整が難航し、他の解決策を模索する中で「AI技術が進化した今ならAI-OCRによる文字読み取りが実用レベルで適用できるのではないか?」と改めて検討することにしました。
展示会で偶然知った発注ナビに相談。紹介企業との初回打ち合わせ中に得られた手応え
―― 発注ナビを利用した経緯を教えてください。
松井氏:これまでにシステム開発が必要だった際は、知り合い経由で探したり、大学内のシステム開発経験者に相談したりしていたのですが、AI-OCRに詳しい人は身近にはいませんでした。そこで、まずはAI-OCRの最新動向を把握するために、AI関連の展示会に足を運びました。現地ではAI-OCRの取り扱い企業もありましたが、多くは手書き帳票の読み取りに焦点を当てたシステムでした。私が必要なシステムは、AI-OCRによって画像から文字を読み取りデータ化する仕組みであり、その開発に取り組もうとする意欲のある企業はわずかでした。
ちょうどその展示会には発注ナビが出展しており、ブースに立ち寄ってお話を伺ったのがきっかけです。当方が必要とするAI-OCRによる文字読み取りシステムの概要をお伝えして相談したところ、対応可能な企業を紹介いただけるとお聞きし、依頼しました。
―― 発注ナビから紹介された企業はいかがでしたか。
松井氏:展示会の翌々営業日には複数の企業を紹介いただきました。まず、AI-OCRによる画像解析の実績がある2社を先行してオンラインで要件を伝え、開発期間や予算を相談しました。当方の求めるシステムが開発できそうな感触はあったのですが、具体的な要件・開発期間・金額・使用機材の決定にはある程度の時間がかかる状況でした。そこで、ご紹介いただいた全ての企業のお話も念のため聞いてみようと考え、もう1社オンラインで面談しました。実は、その企業はAI-OCRの開発実績はなく、画像解析による人流分析などを手がけていたのですが、初回のオンライン打ち合わせで売場のサンプル画像をお渡したところ、その打ち合わせ中にAI-OCRで試験的に解析いただき、ある程度の精度で文字が読み取れることが分かりました。他の会社では、依頼してシステム開発した後でないと解析結果が分からず不確実性がありますが、初回のオンライン会議中に一定の解析の成果が見えたのはインパクトがあり、このスピード感には驚きました。その後も、メールや電話での連絡に対するレスポンスも迅速で正確であり、また当方が要望する開発期間や予算に沿った形で対応可能との回答をいただき、短期間で発注を決断しました。
相談から紹介まで、とにかくスピーディ。タイトなスケジュールでも無事にリリース
―― 開発はスムーズに進みましたか。
松井氏:11月初めに依頼し、1月上旬からキャンペーン開始と、かなりタイトなスケジュールでしたが、無事にAI-OCRの文字読み取りシステムが機能し、中継アプリと連携してデータを表示できる状態を整えることができました。開発期間や予算に限りがある中で、使用機材の設定、リリース直後のシステムの調整、管理者用のインターフェース整備に至るまで、誠実に対応いただき感謝しております。
一方、実際に運用を始めた後に課題も見えてきました。システムよりもカメラ側に起因する問題が大きいのですが、『画像の文字の大きさ・ピント調整』、『売場のスポットライトの反射・照度の低さ』などが判別精度に影響を与えることも分かりました。今回の取り組みで、こういった課題が明確になったのも一つの収穫で、来年度以降に改善を検討する予定です。
―― 発注ナビを利用した感想を教えてください。
松井氏:「とにかく企業の紹介と依頼先の決定までが早い」という印象です。展示会で要件のヒアリングを受けた翌々営業日には紹介企業の情報が届き、展示会で発注ナビを知ってから1週間も経たないうちに今回の発注先企業とつながることができました。とにかく時間がない中で、このスピード感にはかなり助けられたと思います。
技術的な課題の解消など、開発会社とも連携しながら、継続的な取り組みを目指す
―― 今後の予定を教えてください。
松井氏:今回の『のこり福キャンペーン2026』は2026年3月で終了しますが、来年度も農林水産省の補助事業として申請し、採択を目指します。また、別の企業による類似事業も最近スタートしたと聞いており、そちらとの連携の可能性も検討したいですね。
あとは、技術的な課題の解決も大きなテーマです。収集したデータの活用まで考えると、データの精度が重要になるため、カメラやAI-OCRの改善で、95%以上の読み取り精度を目指します。あわせて顧客への割引情報のプッシュ通知やジオマーケティングなど、さらなる誘客につながる仕組みも開発要素です。
また、中継アプリ以外にも、需要予測の高度化や製造事業者との情報共有など、別のフェーズでの食品ロス削減の施策についても並行して研究を進めています。これらはすでに連携するパートナーがありますが、今後の開発に向けて今回依頼した開発会社や発注ナビに適宜相談したいと思います。
―― ありがとうございました。
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