かつて手書きで行われていた診療報酬の算定は、レセプトシステムに変わりました。
レセプトシステムは、病院・診療所・調剤薬局など医療機関には欠かせない存在です。レセプトシステム導入により、医療業務の効率は格段に上がりました。電子カルテと連動したレセプトシステムは、レセプト作成の負担軽減のほか、入力ミスの防止などさまざまなメリットがあります。この記事では、レセプトシステムの主な機能、レセプトシステムを導入するメリット・デメリット、レセプトシステムの選び方などについて解説します。
目次
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レセプトシステムとは
「レセプトシステム」とは、医療施設から健康保険組合など支払機関に対し、診療報酬を請求するために「レセプト(診療報酬明細書)」を作成するシステムのことです。「レセプト電算処理システム」とも呼ばれており、レセプト作成に特化したコンピューターをレセコン(レセプトコンピューター)と呼びます。レセプトシステムは、以下のように用途で種類が分かれており、医療機関により使用するレセプトシステムが異なります。
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医科
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歯科
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調剤
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DPC(包括医療費支払精度)
かつて診療報酬の算定は、医療事務のスタッフが計算と手書きで行っていました。レセプト業務には正確さとスピードが求められ、担当者の負担も大きくなりがちでした。複雑な医療業務を簡略化するレセプトシステムの導入は、レセプト作成だけでなく業務全体の効率化につながります。現在レセプトシステムは、多くの医療機関や薬局で導入されています。
レセプトシステムの主な機能
レセプトシステムには、下記のような機能があります。
●お薬手帳や薬剤情報発行や領収書の発行
調剤用のレセプトシステムでは、薬品情報や薬袋、お薬手帳、領収書、明細書などの帳票出力ができます。
●診療内容入力
会計する時、レセプトシステムに診療内容を入力できます。診療内容に応じたコード・品番を入力し、診療報酬点数を計算します。患者情報・傷病名・診療行為などの診療に関する情報の抽出も可能です。電子カルテと一体化しているレセプトシステムなら医師がカルテに入れた情報がそのまま反映され、レセプトを発行できます。
●窓口会計の計算
市販の用紙で領収書を発行でき、未収金は自動で精算されます。患者ごとの会計履歴と領収書発行履歴のリストを表示可能です。
●投薬使用量の管理
レセプトシステムでは、以下のように投薬使用料の管理を行います。
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前回の処方を確認しながらの入力
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複数診療科や保険の違う処方箋を入力
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異なる規格の薬品で複数処方の場合も対応可能
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特殊な調剤料計算も入力可能
●レセプト作成
入力された1ヶ月分の診療報酬の点検・確認後に、レセプトを作成します。診療報酬が自動集計されるため、効率良くレセプトが作成できるのです。ただし、データ入力に間違いがあると、レセプト作成もスムーズにできません。
●処方箋発行
カルテに入力した院外処方内容を、そのまま処方箋として発行できます。
●明細型領収書の発行
明細型領収書は、医療機関が投与した薬の種類や検査内容の点数と、項目ごとの金額の内訳が記入されているものです。レセプトシステムを導入している医療機関では、明細型領収書の無料発行が義務付けられています。
レセプトシステムを導入するメリット・デメリット
レセプトシステムを導入すると以下のメリット・デメリットがあります。
レセプトシステムを導入するメリット・デメリット | |
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メリット | 経費・レセプト作成時間の節約になる |
審査支払機関の請求受付時間が長い | |
返戻レセプト数が減り効率が上がる | |
診療データを今後の医療に活かせる | |
デメリット | 導入・運用にかかるコストが負担になる |
情報漏えいのリスクが伴う | |
システム利用に関する指導が必要になる |
●メリット
レセプトシステムを導入するメリットについてご紹介していきます。
〇経費・レセプト作成時間の節約になる
レセプトシステムでは、コンピューターが保険者ごとの自動集計をするため、レセプト作成時間の手間が省かれて人件費も削減できます。レセプトシステムによっては、算定回数のエラーチェックも可能です。
〇審査支払機関の請求受付時間が長い
これまで審査支払機関へのレセプト提出は、紙や電子媒体を締め切りまでに、持参または郵送する必要がありました。そのため、早めにレセプト作成を終わらせる必要があったのです。システム導入によりオンライン提出が可能となり、余裕をもってレセプトを作成できます。
〇返戻レセプト数が減り効率が上がる
「レセプトの払戻」とは、記載不備などの理由により提出したレセプトが差し戻しになることです。払戻になると、従来の紙レセプトは新たに修正して送らなくてはなりませんでした。2021年より運用が開始された「オンライン資格確認」により、提出されたレセプトのうち資格変更がわかったものについては自動振替・自動分割できます。ここでいう「オンライン資格確認」とはマイナンバーを利用して、医療機関や窓口で保険資格情報を確認する仕組みのことです。「オンライン資格確認」により払戻のレセプトが減少し、効率化が進んでいます。
〇診療データを今後の医療に活かすことができる
レセプトデータは、同一疾病で複数の医療機関を受診する場合、客観的に病気の実態を把握できます。レセプトデータは医療・医学のビッグデータとして個々の診療の改善、医療政策、医薬品の安全性評価について活用可能です。
●デメリット
レセプトシステムを導入するデメリットについてご紹介していきます。
〇導入・運用にかかるコストが負担になる
レセプトシステムは、導入費用や月額費用がかかります。また、メーカーによっては使用年数により買い替えが必要になり、導入費用と同等の費用がかかるのがデメリットです。レセプトシステムだけに限らず、業務で使用するシステムやアプリは、導入と運用にコストが発生します。
〇情報漏えいのリスクが伴う
レセプトシステムの導入により、サイバー攻撃やウィルス感染リスクにさらされるだけではなく、職員による患者の情報漏えいが発生する可能性があります。職員が患者情報の入ったUSBやパソコンを紛失することもあり、強固な情報漏えい対策が求められます、システムのセキュリティ対策や職員への教育と研修、運用管理の徹底など情報漏えいの対策方法はさまざまです。
〇システム利用に関する指導が必要になる
レセプトシステムの導入によるデメリットは、スタッフに操作方法の習得させるのが大変な点です。電子機器に慣れた方ならそこまで労力はかかりませんが、規模の小さなクリニックでは電子機器に不慣れな年配の医療事務スタッフも少なくありません。
レセプトシステムの選び方
レセプトシステムは、院内業務の効率化や患者の満足度の向上にもつながります。レセプトシステムを選ぶ場合のポイントは、以下のとおりです。
●電子カルテと連動できる
レセプトシステムを導入する場合、「電子カルテ」と連動できるものをおすすめします。電子カルテは、看護記録や検査画像など、これまで紙カルテで管理していた情報を管理するシステムです。電子データは、紹介状や診断書の作成もでき、医師や院内スタッフなどが入力します。電子カルテもレセプトシステムもそれぞれ単体で利用できますが、受付・診療・会計業務などのデータを一元管理可能です。電子カルテとの連動は、下記のようなメリットを得やすくなります。
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新たにカルテ情報を入力せずにレセプトを作成できる
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データの変更・追加が一度で済む
電子カルテと連動する場合、連動できるレセプトシステムが限定されているため、最初に電子カルテから決めましょう。レセプトシステムを先に決めてしまうと、医師が選びたい電子カルテと連動できないといったこともあります。レセプトシステムの乗り換えはそれほど大変ではありませんが、電子カルテの変更は手間がかかりがちです。
●サポート体制がしっかりしている
レセプトシステムは、システムを扱う会社のサポート体制がしっかりしているかどうかも重要なポイントです。レセプトシステムは医療現場では不可欠のシステムのため、トラブルが起こった場合サポートが必要になります。電話のみではなく、現地まで来てくれる会社を選ぶのがおすすめです。サポートに関しては、以下の項目をチェックするのが良いでしょう。
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対応できる時間
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サポートがつながりやすいかどうか
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遠隔サポートしてくれる
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FAQが充実している
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データのバックアップや無停電電源装置がある
●導入するシステムがどれだけ業務効率の改善につながるのか確認する
レセプトシステムを導入する場合、検討中のシステムがどれだけ業務効率の改善につながるのか、確認するのをおすすめします。システム導入で改善できるのは、以下のとおりです。
〇待ち時間の短縮
レセプトシステムの導入により、患者の満足度向上にもつながります。病院や診療所に対する不満の上位に待ち時間があります。電子カルテと連動したレセプトシステムの導入により、カルテを探す・カルテを運ぶといった作業がなくなり、待ち時間の削減につながります。
〇レセプト作成の効率化
レセプト請求業務が得意な事務員が、医師のカルテ入力の代行業務をすることで、点検作業を効率化できます。病院や診療所は、毎月レセプト点検と請求事務をしなくてはなりません。医師が電子カルテに記載した内容と、受付スタッフが入力したレセプトを合わせる点検作業は手間がかかります。
レセプトシステム導入の流れ
レセプトシステム導入の流れは、以下のとおりです。
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システムベンダーに見積もりの作成を依頼する
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見積もりをもとに導入を検討する
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導入を決めたら、労災用IDを取得する
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システムベンダーによる導入設定をしてもらう
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労災レセプトのオンライン化テストを実施する
ここでいう「労災レセプト」とは、労災診療費の請求内訳のことを指し、「労災保険指定医療機関」が「都道府県労働局」に労災診療費を請求する場合に使います。
●システムベンダーに見積もりの作成を依頼する
システムベンダー複数社に見積もりを依頼します。複数社で見積もりを出し、必ず無料トライアルを利用しましょう。こちらの希望に沿っているか、価格と内容のバランスが良いか、詳しい内容解説まで付けてくれるかといった点で見積書を確認して、比較・検討へつなげてください。
●見積もりをもとに導入を検討する
無料トライアルを利用すると時間はかかりますが、最適なシステムを選べます。大手のシステムベンダーは多数の導入事例があり、同じ規模の医院の事例を参考にすると良いでしょう。無料トライアルで操作性を試したら、見積もりから最適なシステムベンダーを選定します。
●導入を決めたら、労災用IDを取得する
導入を決めたら、システムベンダーと工事のスケジュールを調整しながら、管轄の「都道府県労働局」で「労災用ID」を取得します。「労災用ID」を取得するのは、「労災レセプト」を利用できるようにするためです。
●システムベンダーによる導入設定をしてもらう
労災用IDを取得できたら、システムベンダーによる導入設定をしてもらいます。導入支援金を申請する場合、契約書・納品書・領収書が必要になります。
●労災レセプトのオンライン化テストを実施する
導入設定完了後に、アクセス可能かどうか確認テストをします。
システム開発会社に開発を依頼するのもおすすめ
前述のように、システムベンダーからレセプトシステムを購入する方法もありますが、システム開発会社に依頼すると、独自のシステムを開発してもらえます。独自システムの例は、以下のとおりです。
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タブレットを活用した健康チェックシステム
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業務別の管理システム
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レセコンの開発など
導入支援やアフターサポート、システムのカスタマイズを行っている会社もありますが、依頼する時は、以下の条件を満たす開発会社を選ぶことをおすすめします。
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セキュリティ対策が万全
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医療の業務システム開発の実績がある
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医療業務に関する知識がある
医療システム開発を得意とする企業は、以下のページでも詳しく解説しているので、開発を検討する医療関係者の方はご参照ください。
レセプトシステムは医療現場に欠かせないシステム
レセプトシステムとは、レセプト(診療報酬明細書)を作成するシステムのことであり、レセコンとも呼ばれています。
これまで医療事務スタッフが計算と手書きでやっていた診療報酬の算定を自動化したもので、用途によって使用するレセプトシステムも異なります。レセプトシステムを選ぶ時は、電子カルテと連動できるタイプを選ぶのがおすすめです。電子カルテと連動することで受付・診療・会計業務などのデータを一元管理できるようになります。また、システムベンダーのサポート体制のチェックも重要です。レセプトシステム導入により、さらなる医療業務の効率化を目指してはいかがでしょうか。
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