RPA(Robotic Process Automation)は、データ処理や情報収集といった定型業務の効率化に役立つ技術です。本記事では、RPAの概要やRPAでできること、導入のメリット・デメリットを解説いたします。また、RPAツールの導入事例や導入時に押さえておきたいポイント、導入までの流れもご紹介いたしますので、導入検討の参考にされてください。
目次
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RPA(Robotic Process Automation)とは
RPA(Robotic Process Automation=ロボティック・プロセス・オートメーション)とは、定型業務を自動で処理する技術のことです。RPAツールを導入すれば、手順があらかじめ決まっている単純作業を自動化できます。具体的な例を挙げると、データ処理やコピー&ペースト、請求書の処理といった作業の自動化が可能です。また、在庫数を管理し、必要に応じて仕入れ業者へ発注する業務もRPAによって自動化できます。
RPAツールは人間の代わりの労働力になることから、「デジタルレイバー(Digital Labor=仮想知的労働者) 」と呼ばれることもあります。しかし、RPAとは技術や仕組み、行為を指す言葉のため、厳密には該当しません。「デジタルレイバー」はRPAで使用するプログラムやソフトウェアロボットを指します。
RPAが注目されている背景
RPAツールが注目を集めている背景には、働き方改革の影響や労働人口の減少、2025年の崖など複数の要因があります。それぞれの要因がRPAとどのように関係しているのか、以下で解説いたします。
●働き方改革の影響
2019年4月に施行された働き方改革により、各業界で長時間労働の是正 や有給休暇取得の体制の見直し が行われています。したがって、限られた時間でいかに高い生産性を実現するかが企業の課題になるといえるでしょう。RPAの導入によって定型業務が自動化されれば、社員はよりコアな業務へ注力しやすくなり、生産性の向上が期待できると期待されています。
●労働人口の減少
総務省によると、2022年時点における15~64歳の労働力人口は5,975万人となり、前年と比較すると、約6万人の減少でした。今後も少子高齢化の影響で労働人口がさらに減少し、人材の確保が困難になることが予想されます。2040年頃には高齢者人口がピークに達し、幅広い業界が人材不足の問題に直面するという「2040年問題」も懸念されています。
そこで、RPAの導入によって定型業務の埋め合わせを行い、少ない労働者人口で生産性を高めようという動きが注目を集めているのです。
▷参照元:総務省統計局「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の概要 」
●2025年の崖
「2025年の崖」とは、IT人材の不在やITインフラの老朽化、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化の遅れなどによって生じる複数の問題を指します。2025年を境に多くの基幹システムが老朽化し、システムを運用・保守・改修できるIT人材も減少する見通しです。その結果、既存システムの運用・保守に追われて新しい技術の導入が遅れたり、既存システムの複雑化が進んでコスト増大の原因となったりという問題が発生しやすくなると予想されているのです。2025年の崖を乗り越えるためには、過去の技術で構築されているシステムから脱却し、DX化を進めなくてはなりません。RPAによる業務の自動化や効率化、生産性の向上は、DXを推進する1つの手段として注目されています。
RPAには自動化レベルが3段階ある
総務省は、RPAの自動化レベルに応じて1~3のクラスを設定しています。数字が大きくなるにつれて、自動化のレベルも高くなる仕組みです。
以下で、クラス1~3のRPAが対応できる業務範囲や利用技術などを簡潔にまとめました。
クラス名 | 自動化クラス1 | 自動化クラス2 | 自動化クラス3 |
---|---|---|---|
名称 | RPA | EPA | CA |
対応できる業務の範囲 | 定型業務の自動化 | 一部非定型業務の自動化 | 高度な自律化 |
自動化の
概要 |
人間の思考・判断を必要としない単純作業や定型作業を自動化する。狭義の「RPA」はクラス1のツールを指すことが多い。 | AIの機械学習を活用して、人間の思考判断が必要な一部業務プロセスの自動化を行う。 | AIの深層学習(ディープラーニング)を活用してデータの分析を行い、不足情報を補いながら改善策の考案意思決定を行う。 |
利用できるシーンの例 | コピー&ペーストや入力作業などの単純作業 データのダウンロードや体裁が決まっている各種書類の処理 |
自由記述式アンケートの集計の自動化 ビッグデータを元にした売上傾向の分析 商品発注メールから発注手続きを判断する |
企業戦略を立案する 在庫や天候に左右される仕入計画の実行 メールを読解し返信を送る |
広義のRPAはクラス1にあたるツールだけでなく、EPAやCAも含まれています。現在導入されているRPAの多くはクラス1とクラス2です。
RPAとAI・機械学習・ディープラーニングとの違い
RPAとよく混同されるツールや技術として、AI(人工知能)が挙げられます。
RPAとAI(人工知能)の違いは、自動化のアプローチと応用範囲にあります。RPAは、ルールに基づいた定型業務をロボティックに再現して自動化します。一方、AIは人間の知能を模倣し、認識・理解・学習・推論などの高度な能力を持つシステムを指します。RPAは特定の作業を自動化するのに対し、AIは未知のデータにも対応可能な汎用性を持ちます。AIは機械学習(マシンラーニング)や、深層学習(ディープラーニング)を含む幅広い技術を用いる一方、RPAは学習が不要で事前にルールを設定するため、比較的簡易な自動化に特化しています。
RPAはルールベースの自動化技術であり、AIは人間のような知能を持つシステムを指します。AIの一部である機械学習は、データから学習し予測や分類を行います。そして、深層学習は機械学習の一部で、特に多層のニューラルネットワークを使用して高度なパターン認識を行います。
RPAとVBA・Excelマクロとの違い
「定型業務の自動化」という点では、RPA・Excelマクロ・VBAも似通っている部分があります。三者の違いとしては、主に「ツールを横断できるか」「ツールなのか」「ツールを構成するマクロ用言語なのか」という点が挙げられます。
名称 | 特徴 |
---|---|
RPA | 定型業務を自動化する技術や仕組みを指します。 高度な専門知識がなくても操作しやすい反面、主体的な処理はできません。 |
Excelマクロ | 定型業務を自動化できるExcelの機能です。定型業務の自動化を得意としている点はRPAと同様ですが、Office製品以外では使用できません。ツールを横断することも不可です。 |
VBA | Visual Basicという言語を元にカスタマイズした「マクロ用言語」を指します。Excelマクロを動かすとVBAでコードが記録され、手動でコードを実行するとマクロ機能が作動します。 |
RPAのメリット
RPAを導入することで、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、RPAのメリットをご紹介します。
●ルーティンワークを代行できる
RPAシステムに定型業務を設定しておけば、単純作業を自動化できます。入力・転記作業といった手を動かすだけのルーティンワークをこなしてくれるので、社員はより創造的な業務に注力できるというメリットがあります。
●人件費をはじめとしたコストの削減
RPAを導入すれば、定型業務にかかっていた人件費や作業工数を大きく削減することで、コストの削減へつながります。浮いたコストはそのほかの重要な業務や人材教育など、重要度の高い費目へ充当可能です。特に、RPAが活躍する単純作業は、手作業でやると身体的・心理的な負担が大きくなることも少なくありません。その身体的・心理的な負担を軽減することで人材の離職率を下げ、人材確保のコストの削減にもつながります。
●生産性の向上
RPAシステムはあらかじめ設定しておいた業務を正確にこなしてくれるので、品質やスピードが安定します。単純労働を自動化することで、企画推進や業務改善に時間を充てることもでき、より創造的な業務に時間を割くことで、さらに生産性の向上が図れるでしょう。単にルーティンワークを自動化するだけに留まらず、ひいては企業全体の効率化・生産性向上へつなげられるのです。
●作業ミスの防止
人間の手作業によるケアレスミスを完全になくすことは難しいものです。ミスが発生すれば、業務の遅延やサービスの質の低下につながります。RPAであれば正確かつ迅速に作業を実行できるため、ヒューマンエラーやそれに伴う損失の発生も防止できます。貴重な作業時間をミスのリカバリーではなく、より重要度の高い業務へ充てることも可能です。
RPAのデメリット
RPAには、メリットだけでなくデメリットもあります。ここでご紹介するデメリットもしっかりと把握したうえで、RPAの導入を進めましょう。
●運用体制の構築が必要な場合がある
RPAの知識・運用の経験が少ない場合、一から運用体制を構築しなくてはなりません。運用の中心となる人材の教育はもちろんですが、属人化を避けるためにも多くの関係者へツールの操作方法を教育する必要があります。また、トラブル発生時の対処法を取り決めたり、提供企業からのサポートを受ける際の体制を構築したりといった作業も必要です。
●誤作動のリスクがある
設定ミスや連携させるシステムのアップデートなどにより、RPAが誤作動を起こしてしまう可能性はゼロではありません。誤作動に気づかず放置してしまうと、情報漏洩や受発注ミスなどのインシデントにつながる可能性もあります。定期的なメンテナンスの実施はもちろん、連携させているシステムのアップデートや仕様変更に合わせて、RPAツールの設定も見直すことも大切です。
●システム障害に弱い
RPAツールはITツールの一種であるため、システム障害が起こった際に動作を停止してしまう可能性があります。システム障害は外部からの悪意ある攻撃だけでなく、自然災害やハードウェア・ソフトウェアの故障、アクセスの集中などの原因によっても引き起こされます。RPAツールが停止すれば業務の一時中断を強いられるうえ、リカバリー作業の負担も大きくなってしまうでしょう。
RPAの導入事例
RPAツールは、どのような業種や場面で導入されているのでしょうか。ここでは、横浜銀行をはじめとする企業・行政のRPAの導入事例を3つご紹介いたします。
●工数削減に成功
横浜銀行は、2017年からRPAを本格導入しています。約900の業務を棚卸ししたうえで、住宅ローン業務や税務調査の回答書作成業務など複数の業務へRPAツールを導入。その結果、導入から半年で約4,000~5,000時間の工数削減に成功しています。例えば、税務調査の回答書類作成では、1日に届く約100~200件の書類を15人の社員が担当していたといいます。そこで、「顧客管理システム・取引履歴検索システムから情報を照会し、必要事項を書類へ印刷する」という一連の作業をRPAによって自動化。工数の大幅削減が実現しました。
●業務量削減に成功
アサヒグループでは、勤怠管理や給与計算などの人事管理業務にRPAを導入しています。同社の人事管理業務では、各グループ社から届く人事申請を受け取り、人事管理システム・勤怠管理システムへ手入力するという作業を行っていました。2018年、人事情報の自動入力に対応したRPAを導入。その結果、人事データの登録作業が簡略化され、年間約1,300時間の業務量削減に成功しました。書類の内容を確認した後は、RPAに人事管理・勤怠管理システムへ登録作業をすべて任せられるようになりました。手入力の手間が省け、煩雑な確認業務も削減できたと報告されています。
●業務の自動化に成功
茨城県つくば市は、市民税業務を中心とした定型業務を選定し、RPAツールによる自動化に成功しました。NTTデータグループとの共同研究や現場の協力を得つつ、RPAの効果を検証。導入後、対象業務における担当者の負荷が8割削減するという結果となりました。担当職員からは、「データ入力やリスト作成などの定型業務をRPAに任せられるため、窓口や電話対応などの業務に注力しやすくなった」という声が聞かれたといいます。
RPAツールの選び方
RPAツールを導入する際は、どのような点に注目すべきなのでしょうか。自動化したい業務や社内システムとの適合性など、RPA導入時に押さえておきたいポイントを、以下でご紹介します。
●自動化したい業務に合ったツールか
RPAツールにはそれぞれ得意な領域があり、搭載している機能も異なります。高機能なRPAツールであっても、自社にとって必要な自動化ができなくては意味がありません。あらかじめ自動化したい業務を洗い出したうえで、対象業務の自動化にはどのような機能が必要かを明確にしておく必要があります。
●社内システムと適合するツールか
社内システムと併用する場合は、RPAツールと社内システムの相性も確認しておきましょう。社内システムと適合していなくても導入そのものは可能ですが、設定に時間がかかってしまい、通常業務に支障が出てしまうおそれもあります。導入を検討する際には、RPAによる自動化でどのような課題を解決したいのかを明確にしておくことで、社内システムと相性の良いRPAツールを選定できるでしょう。
●コストは予算内に収まるか
RPAツールを購入するだけではRPAの導入は難しいため、別途サポート料金も加味して考える必要があるでしょう。載せる機能によって費用に差が生まれますし、汎用型は仕様変更時に、特化型は部署が増えるごとにコストがかかるものです。あらかじめ業務フローを見直し、RPAツールで解決したい問題を明確にしないことには、余計なコストがかさんでしまうかもしれません。予算との兼ね合いを見ながら、どのタイプのツールを導入するか、どんな機能を搭載するかじっくりと比較検討することをおすすめします。
●サポート内容は充実しているか
RPAの導入前・導入後に、どのようなサポートを受けられるかもチェックしておきましょう。サポート内容は製品によって差異がありますが、一般的に下記のようなサービスを実施しているケースが多くみられます。
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トライアル導入
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ヘルプデスク
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シナリオ(自動化したい業務の作業手順)の作成支援
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適応業務の簡易診断
●操作性は良いか
RPAツールを社内に浸透させるためには、操作性の良いものを選ぶことも大切です。「ドラッグ&ドロップで操作できる」「UI・UX設計が適しておりどこを操作すれば良いのかわかりやすい」といった特徴を備えているRPAツールであれば、幅広い層の社員が使いこなせるでしょう。できれば、トライアル導入で操作性をチェックすることをおすすめします。
●十分な拡張性を備えているか
RPAを導入して操作に慣れてくると、「ほかの作業も自動化したい」と検討する機会が増えてきます。また、「最初はちょっとした作業の自動化から始めて、ゆくゆくは全部署の定型業務を自動化したい」と計画しているケースもあるでしょう。その場合に備えて、柔軟な開発・拡張が可能なRPAツールを選ぶことが重要です。「順次必要な機能を追加できる」「幅広いシステムとの連携が可能」といったポイントに注目してみましょう。
RPAツールには2種類ある
RPAツールには、デスクトップ型RPAとサーバ型RPAの2種類があります。デスクトップ型はソフトウェアロボットの作業ルールを決定・実行させたりするもので、サーバ型はデスクトップで挙動するソフトウェアロボットの管理や監視を行います。両者を組み合わせて導入することもあれば、デスクトップ型だけを導入するケースもあります。例えば、有名なRPAツールには、下記のようなものがあります。
名称 | 特徴 |
---|---|
WinActor | NTTグループが提供するツール。 ITリテラシーが低くても簡単に自動化を設定できる。 |
BizRobo! | RPAテクノロジーズ株式会社が提供するツール。 規模感によって3つのプランから選べる。サーバを設置できるがクラウド利用も可能。 |
Blue Prism | イギリスのBlue Prism社が提供するツール。 高度なセキュリティ機能が特徴。フロー作成が容易で、ロボットの管理もしやすい。 |
UiPath | UiPath社が提供するツール。 多数のアプリ・ブラウザ・AIとの連携がしやすく、直感的なUIで使いやすく、サポートが充実している。 |
Automation Anywhere | アメリカのAutomation Anywhere社が提供するツール。 アメリカではトップクラスのシェアを誇り、機械学習で非定型処理も可能。 |
デスクトップだけで運用されているRPAを「RDA(Robotic Desktop Automation=ロボティック・デスクトップ・オートメーション)」とも呼びます。できることなら、会社全体の業務を効率化するために、デスクトップ型RPAとサーバ型RPAの両方を導入して体系的に改善するのが良いのですが、コストや導入の容易さからデスクトップ型RPA(RDA)だけを導入するケースもあります。ただ、そうした場合には、将来的にサーバ型RPAを導入する可能性も視野に入れ、データ移行のできるツールを選びましょう。
RPAツール導入の手順
RPAの運用を成功させるために押さえておきたい導入手順を、以下でご紹介します。同時に、各フローでチェックしておくべきポイントもまとめました。
●自動化業務の洗い出し
現場の声をヒアリングしながら、「自動化したい業務」「実際に自動化できる業務」を洗い出していきます。この時、業務のフローを文書化してまとめておくのがポイントです。業務フローを文書化しておくことでRPAツールのシナリオ作成作業を効率化できます。できる限り詳細に文書化し、シナリオ作成の時間も節約できるようにしておきましょう。
●ツールを選択して仮導入(トライアル)
自社の導入目的や業務内容・規模に合わせたRPAツールを比較・選択します。また、サポート内容の充実度や操作性の良さ、導入・ランニングコストなどの要素に注目することも忘れずに確認しましょう。RPAツールに目星がついたら、無料トライアル期間を利用して仮導入して機能や操作性、業務との相性をチェックします。ツールを使ったうえで効果検証を行い、本格的に導入するか否かを決めます。
●本格的に導入
RPAツールを本格的に導入し、運用を開始するフェーズです。導入後はエラーや異常停止時の対策、各部門間の連携について本格的に話し合うと同時に、実際の処理件数の実績や費用対効果、削減に成功したコストなどを数値化します。効果検証をおろそかにすると、RPAツールの導入によって得られた恩恵や解決すべき課題が曖昧になってしまいます。
RPAのゴールは導入することではなく、継続的に運用していくことにあります。そのためには、自社に合ったRPAツールを選択することが大切です。そこで、RPAツールの開発や運用を任せられるシステム開発会社を依頼するという手があります。
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