SaaS型ERPは、クラウド技術を活用した業務管理システムです。自社サーバにシステムを構築する形態であるオンプレミス型ERPと異なり、サーバの設置や複雑な設定を必要とせず、契約後すぐに利用を開始できる製品が一般的です。初期費用を抑えつつ、月額や年額の利用料金制でコスト管理がしやすい点も特徴です。
インターネット接続さえあればどこからでも利用可能で、リモートワークや海外拠点とのデータ共有にも適しています。特に、中小企業や成長段階にあるベンチャー企業、さらには海外展開を目指す企業にとって、利便性の高さは魅力でしょう。本記事では、SaaS型ERPの概要や導入メリット、導入に適した企業の特徴について詳しく解説します。
目次
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SaaS型ERPの概要
SaaS型ERPは、クラウド技術を活用して企業の業務を効率的に管理するシステムです。ここでは、SaaS型ERPについて解説します。
●SaaS型ERPとは?
ERPシステムとは企業の業務を統合管理するシステムです。SaaSとは、ソフトウェアをインターネット経由で提供するサービス形態のことです。つまり、SaaS型ERPはクラウド上で動作するERPシステムといえます。
従来のオンプレミス型ERPとは異なり、インターネット経由で提供されるため、企業側でサーバやハードウェアを準備する必要がありません。これにより、導入時の設備投資を抑えやすくなり、特に初期コストを抑えたい企業にとって適した選択肢となります。
●SaaS型ERPの特徴
SaaS型ERPの主な特徴は、システムやサーバの管理を提供元が行う点です。この仕組みにより、企業はサーバ管理の負担を軽減し、IT部門の作業を最小限に抑えられます。
また、インターネット環境さえ整っていれば、どこからでもアクセス可能で、リモートワークや出張先でも業務を進めることができます。
ただし、SaaS型ERPはインターネット接続に依存するため、接続環境が業務に影響を及ぼすリスクがあります。標準化されたシステムであるため、特殊な業務要件や既存システムとの連携が必要な場合は事前の検討が欠かせません。
従来のオンプレミス型ERPとの違い
SaaS型ERP とオンプレミス型ERPには、導入方法やコスト、機能面での違いがあります。それぞれの特徴を理解することで、自社に適した選択が可能です。以下では、具体的なポイントについて説明します。
●導入までのスピード
SaaS型ERPは、クラウド上にシステムがあらかじめ構築されているため、契約後すぐに利用を開始できる製品が多くあります。特別なインストールや複雑な設定が不要で、個別のカスタマイズ作業も少ないため、数週間から数か月の短期間で導入が完了します。このため、業務効率化を迅速に進める環境を整えることができます。標準化されたシステムを利用するため、トラブルが発生しにくいのも特徴です。企業担当者は、必要に応じて提供元と調整を行うだけでスムーズに運用を開始できます。
一方、オンプレミス型ERPは、自社用のサーバやネットワーク機器の準備が必要です。さらに、ソフトウェアのインストールやカスタマイズ作業を行うため、導入には数ヶ月かかることも少なくありません。個別対応が求められるケースが多いため、導入工程が複雑化しやすいという課題があります。
●初期費用の負担が少ない
SaaS型ERPは、専用サーバや関連機器を購入する必要がなく、初期費用を抑えられる点がメリットです。利用料は月額や年額で支払う仕組みのため、大きな初期投資を回避できます。この料金体系により、予算管理がしやすくなり、コスト負担を分散できる点が特徴です。ただし、後述するカスタマイズが過剰になると、運用費がかさんでしまうケースもあるため注意しましょう。
一方で、オンプレミス型ERPは、サーバやネットワーク機器の購入費用、設置費用、ライセンス料が必要です。さらに、カスタマイズにかかる費用が追加されるため、初期費用が高額になる傾向があります。また、導入後の保守やサポートには別途費用が発生する場合があり、これもSaaS型ERPかオンプレミス型ERPを選択する際の考慮ポイントとなります。
●機能のカスタマイズ
オンプレミス型ERPは、自社の業務プロセスに合わせて柔軟にカスタマイズできるため、特定の業務要件に適したシステムを構築することが可能です。ただし、設定変更や追加機能の開発には時間とコストがかかる場合があります。
これに対し、SaaS型ERPは、標準機能をベースに提供されており、カスタマイズの範囲が限定されています。ただし、多くの業務に対応可能な機能が標準搭載されているため、カスタマイズが不要なケースもあります。また、一部のサービスでは、必要な機能を組み合わせるオプションを提供しており、業務要件に合わせた利用が可能です。
SaaS型ERPのメリット
SaaS型ERPは、クラウドベースで提供されるシステムで、企業の規模や業種を問わず様々な利点があります。ここでは、SaaS型のメリットを説明します。
●コストの負担を軽減できる
SaaS型ERPは、サーバや関連機器の設置が不要 なため、初期費用を抑えられるのが特徴です。ハードウェアの購入や保守費用が発生しないため、導入時の資金的な負担を軽減できます。さらに、月額や年額の定期料金制が一般的であり、支出を計画的に管理しやすい点もメリットです。
また、オンプレミス型と比較すると少額からシステムの利用を開始できるため、中小企業や新規事業を展開する企業にとって特に適しています。一括で高額な初期投資を行わなくても良いため、柔軟な資金運用が可能です。
●短期間で導入と更新が可能
SaaS型ERPは、契約後すぐに利用を始められるケースが多く、導入までの期間が短いのが特徴です。クラウド上にすでに構築されたシステムを利用するため、システム構築や設定にかかる時間が最小限に抑えられます。
さらに、システムの更新やメンテナンスは提供元が担当するため、自社での対応が不要です。これにより、最新機能やセキュリティ対策が自動的に適用され、業務が中断するリスクが低減されます。
●場所や端末を問わず利用できる
SaaS型ERPは、インターネット接続があれば、場所を問わず利用できる点が魅力です。これにより、海外拠点やリモートワークの社員ともリアルタイムで業務を共有できるでしょう。パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレット端末からもアクセスできるため、業務の効率がさらに向上します。
移動中にも必要な情報にアクセスできるため、外出先でも在庫確認や注文処理が行えます。このように、どこでも働ける環境が整備されることで、企業全体の業務効率が高まるでしょう。
●セキュリティ面の安心感がある
各種データがクラウド上に保管されるため、自社にサーバを設置するのと比べて、デバイスの紛失や災害が発生した際にも情報を保護しやすいのがメリットです。さらに、提供元が高度なセキュリティ対策を導入していることが多いため、システムに慣れていない業種でも比較的安全に使用できます。
災害やシステムトラブルが発生した際の復旧もベンダーがすぐに対応するケースがほとんどのため、事業継続性も向上します。ただし、ミスやリテラシー不足による情報漏洩等には気を付けなくてはいけません。
●会社の規模に合わせた利用ができる
SaaS型ERPは、企業の規模や業務内容に応じて柔軟に対応できるのがメリット。提供されるプランの中から必要な機能の追加やユーザー数の調整が可能です。成長する企業では利用範囲を拡大し、必要なリソースを確保できます。
一方で、事業規模が縮小した場合には、システムの利用内容を見直して運用コストを調整することで、無駄な支出を抑えることができるでしょう。このような柔軟性は、変化の激しいビジネス環境において企業の負担を軽減します。
SaaS型ERPの課題と対策
SaaS型ERPには高い利便性がある一方で、いくつかの課題も存在します。ここでは、SaaS型ERPにおける主な課題とその解決策について説明します。
●カスタマイズの自由度が限られる
SaaS型ERPでは、提供される標準機能を利用するのが基本です。このため、自社特有の業務フローや特殊な要件への対応が難しい場合があります。これに対処する方法として、業界や業務に特化したSaaS型ERPを選ぶことが考えられるでしょう。このようなソリューションは、自社の要件に近い機能を提供する可能性が高いため、選定時の比較検討が重要です。
一部のベンダーはAPIやアドオンを提供しているため、それらを使って自社に必要な機能を追加できる製品もあります。
●インターネット接続に依存する
SaaS型ERPはインターネット接続を前提としているため、通信環境に依存します。接続環境が整っていない場所では利用が難しく、通信障害が発生した場合には業務が停止するリスクがあるでしょう。
この問題を軽減するには、予備のネット回線やモバイルWi-Fiを用意しておくとトラブル防止につながります。
安定したネットワーク環境を確保するためには、信頼性の高いプロバイダを選ぶのもポイントです。加えて、定期的に接続環境を点検し、通信速度や安定性を確認するようにしましょう。
●継続的な利用料金の負担
SaaS型ERPでは、月額や年額の利用料金が発生するため、継続的な費用負担が必要です。長期間の利用では、オンプレミス型ERPと総コストが同じくらいになるケースもあります。また、利用機能やユーザー数の増加に伴い追加料金がかかります。
使用状況を定期的に見直し、不要な機能や利用者を削減して、コストを適正化しましょう。さらに、一部のベンダーが提供する長期契約割引プランを活用することで、費用負担を軽減できる場合もあります。
●データ管理の主導権が限定される
SaaS型ERPでは、データがクラウド上に保管されるため、企業が直接管理することが難しい場合があります。その結果、提供元のトラブルや情報流出によるデータ損失といったインシデントにすぐに気づけない点がリスクでしょう。
そのため、契約内容を十分に確認し、提供元がどのようなセキュリティ対策を講じているかを把握したうえで契約を進めてください。
SaaS型ERPの導入に向いている企業
SaaS型ERPシステムは、どのような企業に向いているのでしょうか。ここでは、SaaS型ERPをおすすめしたい企業の特徴を紹介します。
●中小規模の企業
中小規模の企業では、限られた予算や人材の中で効率的に業務を進めることが求められます。SaaS型ERPは、初期費用を抑えた料金体系で提供されるため、導入コストのハードルが低いのが特徴です。
サーバの設置や専用設備の準備が不要で、月額や年額の費用で利用できるため、予算に合わせた柔軟な運用が可能です。
さらに、専任のIT担当者が少ない企業にも適した設計となっており、ベンダーが保守・運用を担当することで、システム管理の負担を軽減します。この仕組みは、管理に手間をかけられない中小規模の企業にとって、業務効率化の後押しとなります。
●成長中の企業
事業拡大の段階にある企業にとって、システムの柔軟性は大きなポイントです。SaaS型ERPは、利用人数や機能を必要に応じて拡張できる ため、急速に成長するベンチャー企業やスタートアップのニーズに応えてくれるでしょう。
短期間で導入を完了できる点も、スピードが求められる成長企業に適しています。特に、競争が激しい市場環境では、柔軟性のあるシステムが経営の重要な基盤となります。
●海外展開を視野に入れる企業
海外展開を検討している企業にとって、SaaS型ERPは大きな強みを持ちます。クラウドベースのシステムは、異なる拠点のデータを統合的に管理でき、リアルタイムで情報を共有できるためです。これにより、グローバルな業務の効率化が可能になります。
さらに、多言語対応や現地通貨対応の機能を備えたSaaS型ERPは、各国の法規制や商習慣に合わせた運用をサポート。インターネット接続環境があればどこからでもアクセスできるため、海外拠点とのスムーズな情報共有が可能です。
SaaS型ERPで業務の効率化を実現する方法
SaaS型ERPについて紹介しました。クラウドを介した製品のため、導入までの期間短縮やコスト管理がしやすい点が魅力です。しかし、ベンダーが提供している機能を利用するため、業種業態によっては追加オプションが必要になったり、業務をカバーしきれなかったりする点は、注意が必要です。
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