SAP社のERP製品「SAP ERP」や「SAP S/4HANA」は、世界中で利用される代表的なERPシステムです。そのため、一般的にはSAPといえばERP製品を指すことが多くなっています。ERPとは、企業内の業務を一元管理するシステムであり、ITの技術を活用して複数の部署でデータ共有をリアルタイムで行うことで、効率的な作業進行を可能にします。これにより、人事評価や経営判断も迅速かつ正確に行えるようになり、管理コストの削減にも寄与します。
本記事では、世界中で導入が進むSAPの基本情報や導入メリット、最新の動向についてわかりやすく解説します。
目次
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1.SAP(エスエーピー)とは何か?基本概念とその役割
SAPとは、ドイツ中西部のワルドルフに本社を置く、ヨーロッパ最大級のソフトウェア開発会社のことです。ドイツ語のSystemanalyse Programmentwicklungという社名(英語:System Analysis Program Development)から頭文字を取って、SAPと呼ばれています。SAP社が開発し、提供するERPパッケージ製品「SAP ERP」や「SAP S/4HANA」がERP製品の代表格として世界中の企業で利用されています。そのため、一般的にはSAPといったらERP製品を指すことが多くなっています。以降は、SAP社のERPを指してSAPと表記します。SAPを知るためにも、まずはERPを説明します。
●ERPとは?
ERPとは「Enterprise Resource Planning」の略で、日本語では「統合基幹業務システム」と呼ばれます。会社内のすべての業務を一元管理するためのシステムです。以前は部署ごとに異なるシステムを使用していましたが、これにより会社全体でのデータ統合が難しく、非効率的でした。
ERPはこの問題を解決するために開発され、経営資源を一元管理し、全体の効率化を目指します。主なシステムには、下記などがあります。
- 管理会計
- 販売管理
- 在庫購買管理
- 生産管理
- 人事給与管理
各部署の実務の効率を上げることはできていても、会社全体で見ると効率が悪いというジレンマを解決するためにはERPが最適です。このERP製品の代表格がSAPです。
●SAPとERPの違い
SAPとERPはしばしば混同されますが、上述のように実際には異なる概念です。ERPは企業の資源を一元管理するためのシステム全般を指し、多くのベンダーがERPソリューションを提供しています。一方、SAPはその中でも特に有名なERPソフトウェアを提供する企業の名前です。SAPのERPシステムは、企業のさまざまな業務プロセスを統合し、効率的に管理することを可能にします。
また、SAPのERPシステムは、モジュールごとに特化した標準機能を搭載し、企業のニーズに応じてカスタマイズが可能です。これにより、SAPは単なるERPアプリケーションの提供にとどまらず、企業の業務プロセス全体を最適化するための強力なツールとなっています。
2.SAPが注目される3つの理由
企業が競争力を維持し、業務効率を高めるためには、最新のテクノロジーを活用することが不可欠です。その中で、SAPは多くの企業にとって重要な選択肢となっています。SAPが注目される理由は、社内業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進んでいること、導入のしやすさ、そして世界的にスタンダードになりつつあることにあります。それぞれの理由について詳しく見ていきましょう。
●社内業務のDX推進のため
システムを統合することで部署間の実務だけでなく、会社全体としてのDXの促進となるため、世界中で導入の動きが進んでいます。これまでは、部署別や実務別で社内システムを導入するケースが主流でした。各部署に適したシステムを導入することで、部署単位での実務の効率化につなげられていたからです。
一方で、会社全体で見た時にはデメリットになる面もありました。デメリットをなくすための方法として、SAPをはじめとするERPが注目され始めたという経緯があります。
●導入しやすいため
SAPには、企業のニーズに合わせたさまざまな製品があります。その中でも主要な製品の一部をご紹介します。
- SAP ERP(※2027年保守サポート終了)
- SAP S/4HANA
- SAP S/4HANA Cloud
- SAP Business One
- SAP Business ByDesign
これらのうち、SAP ERPはSAPの中で人気のある製品の1つです。しかし、近年SAP ERPのサポートが終了することが発表されており、これにより新しいソリューションへの移行が求められています。
現在では、SAP S/4HANAなどの次世代製品が注目されており、これらは最新の技術を活用してさらなる効率化と柔軟性を提供しています。25の業種、37の言語、47のローカライズが利用できることから、世界中の業界や会社で引き続き利用されています。
●世界的にスタンダードになりつつあるため
SAP社のERPはとても人気のある製品であり、世界中の会社で導入されています。業界ではトップ5に入る売上高を誇っており、全世界に48万社以上もの顧客会社を抱えているグローバル会社です(2025年3月現在)。また、他社との提携にも積極的で、Microsoft、IBMなどの世界の有力会社や団体と提携しています。
日本国内でも、グローバルに展開する大会社から中小会社まで、幅広く導入されています。業種も製造業や商社などさまざまです。SAP社は世界的にスタンダードになりつつあるといえるでしょう。
3.SAPを導入する3つのメリット
SAPを導入することで、さまざまなメリットを得られます。
- 無駄な管理コストを削減できる
- 信頼性が高い
- 社内情報を一括で管理できる
以下にそれぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
●無駄な管理コストを削減できる
SAPを導入する大きなメリットの1つが、管理コストを削減できることです。会社全体で1つのシステムを導入するだけで済むため、管理コストを集約できます。また、部署間のデータのやり取りがリアルタイムで行われることで、従業員の実務を減らすことも可能です。
導入コストに関しては、会社の規模や業種、必要な機能によって異なります。導入コストを知りたい場合は、SAPジャパン株式会社が提供する「オンライン・ソリューション・コンフィギュレーター」と呼ばれるツールで、無償で見積もりを取れます。見積もり方法は簡単で、業種の選択、従業員数の入力、必要な機能の選択の3ステップで完了します。
●信頼性が高い
SAPは世界中の企業で導入されていることから、信頼性の高さが伺えます。SAP公式サイトによれば、全世界のトップ企業100社の内、99社が導入しています。
また、SAPの会計システムは国際会計基準にも対応しているため、海外でビジネスを行う会社でも安心して導入可能です。合理的かつ生産的な実務が期待できます。
●社内情報を一括で管理できる
従来はデータ連携を行う際にタイムラグが生じたり、データの不整合が発生したりなどしていました。しかし、SAPを活用すればリアルタイムでデータを処理できるため、部署間で発生する実務を迅速に遂行できます。社内の情報も瞬時に取得できるようになるため、人事評価や人事異動、経営判断なども正しくかつ迅速に行えるようになります。
4.SAPの主要モジュール5選
SAPには、合計10以上ものモジュールが用意されています。モジュールとは、実務にかかわる機能のことです。ここでは、会社でよく利用されている5つのモジュールを詳しく紹介します。
- 生産計画/管理:SAP PPモジュール
- 販売管理:SAP SDモジュール
- 購買管理/在庫管理:SAP MMモジュール
- 人事管理:SAP HRモジュール
- 財務会計:SAP FIモジュール
●生産計画/管理:SAP PPモジュール
SAP PPモジュールとは、生産計画と管理のプロセスを効率化するために設計されたモジュールです。このモジュールは、生産スケジュールの最適化、資源の有効活用、製品の品質管理を支援します。製造業においては、需要に応じた生産計画を迅速に立てることが求められますが、PPモジュールを利用することで、これが可能になります。
さらに、PPモジュールは製造プロセスのリアルタイム監視を可能にし、問題が発生した際には即座に対応できるようにします。これにより、製造コストの削減と製品の納期遵守が実現されます。企業はPPモジュールを活用することで、競争力を高めることができるでしょう。
●販売管理:SAP SDモジュール
SAP SDモジュールとは、販売管理業務を効率的に行うためのツールです。受注から出荷、請求までの一連のプロセスを統合し、顧客満足度の向上を支援します。このモジュールを活用することで、企業は販売プロセス全体の透明性を確保し、迅速な対応が可能になります。
また、SDモジュールは顧客データの管理を強化し、マーケティング活動や販売戦略の策定に役立ちます。これにより、顧客ニーズに即したサービスを提供でき、リピーターの獲得にもつながります。企業はSDモジュールを導入することで、販売活動の効率化と売上の向上を図ることができます。
●購買管理/在庫管理:SAP MMモジュール
SAP MMモジュールとは、購買と在庫管理を効率的に行うためのシステムです。購買プロセスの自動化を通じて、コスト削減と在庫の最適化を実現します。このモジュールを使用することで、企業はサプライヤーとの関係を強化し、調達コストを抑えることができます。
さらに、MMモジュールは在庫のリアルタイム管理を可能にし、過剰在庫や欠品を防ぎます。これにより、資金の有効活用が促進され、企業の財務状況が改善されます。MMモジュールを導入することで、企業は購買と在庫管理の効率を大幅に向上させることができます。
●人事管理:SAP HRモジュール
SAP HRモジュールとは、人事管理業務を包括的にサポートするシステムです。従業員のデータ管理、給与計算、勤怠管理などのプロセスを一元化し、業務の効率化を図ります。これにより、人事部門の負担が軽減され、戦略的な人材管理が可能になります。
また、HRモジュールは従業員のスキルやキャリア開発をサポートし、組織全体のパフォーマンス向上に寄与します。企業はこのモジュールを活用することで、優れた人材を育成し、組織の競争力を高めることができます。HRモジュールは、企業の成長に欠かせない人事戦略の基盤となるでしょう。
●財務会計:SAP FIモジュール
SAP FIモジュールとは、財務会計業務を効率的に行うためのシステムです。財務データの統合管理を通じて、正確な財務報告と分析を可能にします。このモジュールを使用することで、企業は財務状況をリアルタイムで把握し、迅速な意思決定が行えます。
さらに、FIモジュールはコンプライアンスの強化を支援し、規制に対応した財務報告を実現します。これにより、企業はリスク管理を強化し、信頼性の高い財務基盤を構築することができます。FIモジュールを導入することで、企業は財務管理の効率化と経営の安定化を図ることができるでしょう。
5.SAPにはどんな製品があるの?
前述のとおり、SAPは企業の業務プロセスを最適化するために、多様な製品を提供しています。ここでは、その中でも特に主要な製品をいくつかご紹介します。
●SAP ERP
SAP ERPは、企業の業務プロセスを統合管理するためのソフトウェアです。財務、物流、人事などの機能を一元化し、効率的な運営をサポートします。企業はこれにより、データの一貫性を保ちながら、迅速な意思決定を行うことが可能となります。
しかし、多くの業界で採用され、ビジネスの成長を支援してきたSAP ERPですが、2027年での保守サポート終了が発表されています。導入を検討されている企業は、次世代ソリューションのSAP S/4HANAやSAP Business Oneなど企業のニーズに合わせたそのほかの製品を検討すると良いでしょう。
●SAP S/4HANA
SAP S/4HANAは、次世代のERPソリューションとして多くの企業で採用されているシステムです。特徴として、データ処理が非常に高速であり、リアルタイムでのデータ分析が可能です。これにより、企業は迅速な意思決定を行うことができます。また、企業の業務プロセスに合わせた独自のカスタマイズが可能で、特定のニーズに応じた柔軟なシステム構築が実現します。
●SAP S/4HANA Cloud
SAP S/4HANA Cloudは、SAP S/4HANAのクラウド限定版であり、クラウド環境での利用を前提としています。SAP S/4HANA Cloudには、SAP S/4HANAと異なる機能的な特徴があります。例えば、SAP S/4HANA Cloudは初期導入コストを抑えることができ、スケーラビリティに優れていますが、カスタマイズの自由度がSAP S/4HANAに比べて制限されることがあります。自社の特性や業務ニーズに応じて、どちらのバージョンが適しているかを慎重に検討することが重要です。
●SAP Business One
SAP Business Oneは、中小企業向けに設計された統合型ERPソリューションです。財務管理、販売、顧客管理、在庫管理など、企業の主要なビジネスプロセスを一元化し、効率的な運営をサポートします。
このシステムは、使いやすいインターフェースと柔軟なカスタマイズ機能を備えており、企業の成長に応じたスケーラビリティを提供します。導入により、業務の透明性が向上し、意思決定の迅速化が可能になります。
●SAP Business ByDesign
SAP Business ByDesignは、中小企業向けに設計されたクラウドベースのERPソリューションです。企業の財務管理、プロジェクト管理、人事管理、サプライチェーン管理など、さまざまな業務プロセスを統合し、効率化を図ります。
このシステムは、リアルタイムでのデータ分析が可能で、経営判断を迅速に行うことを支援します。また、スケーラブルな設計により、企業の成長に応じて柔軟に対応できる点も大きな特徴です。
SAPでは、これらのほかにもさまざまなビジネスニーズに対応するモジュールやソリューションを提供しています。
6.SAP ERP以外の3つのSAPシステム
SAP社で最も知られているERPについて詳しく解説してきました。次に、ERP以外のSAPシステムについても紹介します。
- SAP CRM
- SAP BW
- SAP APO
以下に概要をまとめました。それぞれ特徴や機能が異なるため、事前に押さえておきましょう。
●SAP CRM
SAP CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客情報の管理に特化したシステムです。顧客情報をはじめ、取引の実績、営業担当の意見、商談内容だけに留まらず、市場のニーズや競合他社情報などのデータが登録できます。
それらのデータを可視化・分析して、営業ニーズに応える仕組みです。SAP ERPでは、会計データと連携される実務の受注、商品出荷、請求のみ管理されます。
●SAP BW
SAP BW(Business Warehouse)とは、社内データを溜め込み、分析するデータウェアハウスのことです。SAP ERPでも簡易的な分析レポートを出すことは可能ですが、高度な分析には不向きなシステムといえます。
SAP ERPの整合性の取れたデータを、SAP BWに連携して分析することで、高度な多次元分析を行えます。昨今では、ビッグデータを利用した高度な分析と迅速な経営判断が不可欠であるため、SAP BWを分析ツールとして利用するなら重宝します。
●SAP APO
SAP APO(Advanced Planning and Optimization)とは、SCM(サプライチェーンマネジメント)に特化したシステムです。
商品が仕入、生産、販売とチェーンのように流れていくことから、このように呼ばれています。納期管理を確実にして、かつ高度な計画を立てられるため、製造業において必須のシステムといえるでしょう。
7.SAPシステムの種類と選び方
SAPシステムは、企業の業務効率化を支える重要なツールですが、その選択には慎重さが求められます。企業の規模や業種、ニーズに応じて最適なシステムを選ぶことが、成功への鍵となります。SAPシステムには主にオンプレミス型とクラウド型があり、それぞれに特徴があります。また、中小企業向けのソリューションや業界特化型の選択肢も存在します。これらの選択肢を理解し、自社に最適なSAPシステムを見つけるためのポイントを解説します。
●オンプレミス型とクラウド型の違い
オンプレミス型とクラウド型は、SAPシステムの導入形態として代表的な二つの選択肢です。企業のニーズやITインフラの状況に応じて、どちらの形態が適しているかを判断することが重要です。セキュリティやデータの保護に対する要件が厳しい場合は、オンプレミス型が好まれることが多いですが、コスト効率を重視する場合はクラウド型が選ばれます。特徴やメリット・デメリットを下記の表にまとめましたので、参考にしてください。
特徴 | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|
オンプレミス型 | 企業のサーバーに直接インストール | ・データの管理やカスタマイズが容易 ・より高レベルのセキュリティ対策が可能 |
初期導入コストが高い |
クラウド型 | インターネット経由で利用 | ・初期コストが低い ・スケーラビリティに優れている |
インターネットへの接続が必要 |
●中小企業向けSAPソリューション
中小企業にとって、SAPシステムは高価な投資と見られることがありますが、適切なソリューションを選ぶことで、その価値を最大限に引き出すことが可能です。SAPは、中小企業向けに特化したソリューションを提供しており、これにより、企業規模に応じた柔軟な導入が可能です。例えば、SAP Business Oneは、中小企業向けに設計されており、コスト効率が良く、導入が比較的容易です。
このようなソリューションを活用することで、中小企業も大企業と同様に業務プロセスの最適化を図ることができます。特に、業務の効率化や顧客管理の改善を目指す企業にとって、SAP Business Oneは強力なツールとなります。
●業界特化型SAPシステムの選択方法
SAPシステムは、業界ごとの特性に応じたカスタマイズが可能です。製造業、金融業、小売業など、各業界に特化したSAPソリューションが存在し、業界固有の課題を解決するための機能が充実しています。業界特化型システムを選ぶ際には、自社の業務プロセスにどれだけ適合するかを慎重に評価することが重要です。
また、業界のトレンドや将来の展望を考慮し、長期的な視点でシステムを選択することが求められます。これにより、導入後の柔軟な対応が可能となり、競争力を維持することができます。専門的なコンサルタントの意見を取り入れることも、最適な選択をするための一助となるでしょう。
8.各業界におけるSAP活用例
日本の企業において、SAPはビジネスプロセスの効率化やデータ管理の改善に広く利用されています。特に、製造業、金融業、小売業といった多様な業界での導入が進んでおり、それぞれの業界特有の課題に対処するためのソリューションとして注目を集めています。本章では、各業界における具体的なSAPの活用例を紹介します。
●製造業におけるSAPの活用例
製造業では、SAPは生産管理や在庫管理の効率化に大きく貢献しています。SAPの生産計画・管理モジュール(SAP PP)は、製造プロセスの計画から実行までを一元管理できるため、リソースの最適化や生産性の向上に役立ちます。さらに、リアルタイムでのデータ分析が可能なため、需要変動にも柔軟に対応でき、製品の品質向上や納期の短縮にも寄与しています。
また、SAPはサプライチェーン全体の可視化を実現し、部品調達から製品出荷までのプロセスを最適化します。これにより、在庫の過不足を防ぎ、コスト削減を図ることができます。製造業におけるSAPの活用は、業務効率を高め、競争力を強化する重要な要素となっています。
●金融業界におけるSAPの活用例
金融業界において、SAPはリスク管理やコンプライアンスの強化において重要な役割を果たしています。SAPの財務会計モジュール(SAP FI)は、金融取引の透明性を高め、正確な財務報告を可能にします。これにより、企業は法規制に迅速に対応し、リスクを最小限に抑えることができます。
さらに、SAPは顧客データの統合管理を支援し、個々の顧客に対するサービスの質を向上させます。リアルタイムでのデータ分析により、顧客のニーズを的確に把握し、パーソナライズされたサービスを提供することが可能です。金融業界におけるSAPの役割は、業務の効率化と顧客満足度の向上に直結しています。
●小売業界におけるSAPの活用事例
小売業界では、SAPは販売管理や顧客関係管理の改善に広く利用されています。SAPの販売管理モジュール(SAP SD)は、販売プロセスの効率化を実現し、在庫の最適化や配送の迅速化を支援します。これにより、顧客へのサービス向上とコスト削減を同時に達成することができます。
また、顧客データの分析を通じて、マーケティング戦略の最適化を可能にします。消費者の購買行動を詳細に分析し、ターゲットを絞ったプロモーションを展開することで、売上の増加を図ることができます。小売業界でのSAPの適用は、競争力を高め、顧客満足度を向上させるための重要なツールとなっています。
9.各企業のSAP導入事例
本章では、各企業がSAPをどのように活用し、業務改善や経営課題の解決につなげたのかを具体的な導入事例とともに紹介します。成功のポイントや導入の課題、得られた効果などを詳しく解説しますので、自社のDX推進のヒントとしてご活用ください。
●1. 日立ハイテク株式会社(精密機器・システムソリューション)
日立ハイテク株式会社は、国内外拠点におけるERPシステムの刷新に際し、SAP S/4HANA Cloudをプライベートクラウドとパブリッククラウドの2層型で導入しました。さらに、PaaS開発基盤であるSAP Business Technology Platform(SAP BTP)を活用し、アドオン開発をERP本体の外部で行う「Side-by-Side開発」を推進。これにより、従来のERPシステムで9,000を超えていたアドオンを約600以下にまで削減し、ERP本体をクリーンに保つことに成功しました。この取り組みにより、バージョンアップの期間とコストを大幅に削減し、常に最新機能を活用できる体制を整備しています。
●2. Pfizer社(製薬・ヘルスケア)
Pfizer社は、決算処理の複雑さを解消するため、SAP S/4HANA Cloudを活用した拡張決算処理ソリューションを導入しました。これにより、400以上の支社の決算処理を一元管理し、DXを推進。従来の手作業によるスプレッドシート管理から脱却し、タスクの標準化と透明性を向上させました。SAP MaxAttentionプログラムとIBMコンサルティングの支援を受け、迅速なグローバル展開を実現し、財務報告の精度と業務効率を大幅に向上させました。
●3.TOPPANホールディングス株式会社(印刷・情報コミュニケーション)
TOPPANホールディングスは、SAP S/4HANAおよびSAP Business Technology Platform(SAP BTP)を導入し、システム基盤のモダナイゼーションを実現しました。これにより、経営とシステムの一体化を推進し、意思決定の迅速化や業務生産性の向上を達成。特に、SAP BTPを活用したワークフロー改善により、業務効率が2倍以上向上しました。また、ホールディングス制への移行を進め、ガバナンス強化やDX推進のための経営基盤を強化しています。
●4.株式会社スクウェア・エニックス(ゲーム開発・販売)
「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」シリーズで知られるスクウェア・エニックスは、グローバル経営の可視化を目的にSAP S/4HANAを導入し、日本と海外の基幹システムを統合。印税管理の効率化を図るため、SAP Billing and Revenue Innovation Managementを採用し、複雑化する契約や収益計算を標準化しました。また、証憑管理のデジタル化に向けてSAP Extended Enterprise Content Managementを活用し、電子帳簿保存法に対応。2023年5月に国内で稼働開始し、2025年度までに海外展開を予定しています。
●5.アサヒグループホールディングス株式会社(飲料・食品)
アサヒグループは、サプライチェーンの効率化と経営の透明性向上を目的として、SAP Aribaを導入しました。国内グループ企業における間接材の調達改革を進め、購買プロセスの標準化とコスト削減を実現。これにより、コンプライアンスの強化や業務の効率化が進み、調達業務の透明性が向上しました。さらに、SAP Aribaのクラウドベースの機能を活用することで、グローバルなサプライヤーネットワークとの連携が強化され、調達戦略の最適化に貢献しています。
10.SAP導入にかかるコストと時間
SAPシステムを導入する際には、企業はコストと時間の両方を慎重に考慮する必要があります。導入プロジェクトは複雑で、多くの要素が関与するため、適切な計画と管理が不可欠です。ここでは、SAP導入に関連する主要なコスト要素と時間的な側面について、詳しく説明します。
●ライセンス費用とメンテナンスコスト
SAPシステムの導入において、最も大きなコスト要素の一つがライセンス費用です。企業は自社の規模や業務内容に応じて、必要なモジュールを選択し、そのライセンスを取得する必要があります。ライセンス費用は、導入するモジュールの種類や数によって大きく変動します。
また、SAPシステムの運用には継続的なメンテナンスが必要です。定期的なアップデートやサポートサービスを受けるためのメンテナンス契約も長期的な視点で考慮する必要があります。これらの費用は、システムの安定運用を確保するために不可欠なものです。
●導入期間とプロジェクト管理
SAP導入プロジェクトの期間は、企業の規模や業務の複雑さに応じて異なります。一般的には数ヶ月から1年以上かかることが多く、導入期間を短縮するためには、効率的なプロジェクト管理が重要です。
プロジェクト管理には、適切なリソースの配置と進捗管理が含まれます。プロジェクトの各フェーズでのタスクを明確にし、担当者を決定することで、スムーズな導入を目指します。また、予期せぬ問題が発生した際には、迅速に対応するための体制も整えておく必要があります。
11.SAPの導入ステップと注意点
SAPの導入は、企業の業務プロセスを大幅に改善し、DXを推進するための重要なステップです。しかし、その導入には細心の注意と計画が必要です。各ステップと注意点を踏まえることで、SAPの導入効果を最大限に引き出すことができます。
●1. 導入前の準備
- 自社の業務プロセスを分析し、ニーズを明確にする。
- 目的に合ったSAPシステムを選定する。
- 導入計画を策定し、関係者の合意を得る。
●2. 実装プロセス
- 段階的なアプローチでスムーズな移行を進める。
- マニュアルの作成やユーザー教育を実施し、社内の理解を深める。
- テスト運用を行い、問題点を事前に解決する。
●3. 導入後の運用
- システムの安定稼働をサポートする体制を整備する。
- 定期的なメンテナンスと最適化を行う。
- ユーザーからのフィードバックを活用し、継続的に改善する。
12.今後のSAPについて
近年、SAPに関する動きは活発になってきています。
SAPを導入する会社が増加したことも理由の1つですが、SAPシステムエンジニアの不足の問題、世界中でシェア率が高いSAP ERPの保守サービスの終了が迫っているのもその理由として挙げられます。ここではSAPに関する世間の動きについてさらに詳しく解説します。
●SAPシステムエンジニアの需要が高まっている
世界的にSAPを導入する会社が増加傾向です。世界でも約40万社以上、国内では2,000社以上が導入しており、現在もシェア率は伸び続けています。
一方で、SAPシステムエンジニアは不足しているのが現状です。SAPエンジニアには、機能や設定の複雑さに加え、それぞれの部門の専門知識と経験が必要になるため、育成するのは簡単ではありません。SAPシステムエンジニアの需要は高まっており、これからも伸び続けることが予想されます。
●SAP ERPの保守サービス終了に伴う移行
SAP ERPは、2027年に保守のサポートが終了します。当初は2025年に終了が予定されていましたが、2027年まで終了が延長されることになりました。
サポートが終了しても、セキュリティプログラムは更新されるため利用自体は継続できますが、システムバグなどには対応してもらえません。多くの会社は、次世代のS/4HANAへの移行を検討しています。ただし、移行には数カ月から1年以上掛かるともいわれています。
SAP社が提供しているERPについて詳しく解説してきました。ERPは、会社内のすべての実務を一元管理するシステムです。以前は各部署で異なるシステムを導入するのが主流でしたが、その方法だと会社全体で連携が取りにくいというデメリットがありました。ERPを導入することで、部署間の連携がリアルタイムで可能になります。会社全体で実務の効率を上げられるため、今後も導入する企業は増えていくでしょう。特にSAP社は世界的に注目されている企業です。世界中の会社がSAP社のERPを利用しています。
しかし、SAP ERPはサポート終了が間近です。システムの変更には数カ月から1年以上掛かると予想されているため、導入している会社は、すでに移行の検討に入っています。ERPの導入や移行を検討している場合、SAPシステムエンジニアを抱えている会社を探さなければなりませんが、SAPシステムエンジニアは不足している状況にあるため、探すのは簡単なことではありません。また、時間や手間も掛かってしまうでしょう。
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