企業のビジネス活動における業務効率化や業務改善をはじめ、新商品・新サービスの開発のためにAIテクノロジーを導入しようという動きが盛んになっています。
ただ、AI技術の導入には専門的な知識やスキルも必要なため、AIに特化した専門技術を持つ「AIベンダー」との協力のうえでプロジェクトを進めていくケースが一般的です。本記事は、AIベンダーに関する基礎知識や選ぶ際のポイントを解説しています。AIベンダーが提供できるシステムの一例もご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
AI開発会社選びはプロにお任せ完全無料で全国6000社以上からご提案
AIベンダーとは
AIベンダーは、AIシステムの設計から開発、実装、保守までの一連のプロセスを担い、企業のニーズに応じたソリューションを提供する業者です。一般的には、企業からAI開発案件を受注してAIモデルやAIシステムの開発を行っています。特定の業界や課題に特化したソリューションを提供できる、技術の実装だけでなく企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する役割も担えるAIベンダーも存在します。中には、技術提供・導入支援に留まらず保守や運用サポートを行っているところもあり、そのタイプや特徴は様々です。AIビジネス戦略のパートナーとなって長期的な視点で企業の成長をサポートできる存在として重宝されています。
AIベンダーの種類と特徴
AIベンダーには、対応する技術や得意分野、プロダクトの提供形態などによって違いがあります。AIベンダーの種類やその特性を理解し、企業のニーズに合ったベンダーを選定することが重要です。
●パッケージ型AIベンダー
自然言語処理や音声認識の技術を取り入れたSaaSなど、ある程度汎用化されたパッケージ製品や既存のAI製品を提供するAIベンダーです。製品の多くは、使用ライセンス数に応じて月額費用が決まります。パッケージAIベンダーの特徴は、すでに開発された製品を実装するため、低コストかつ導入時間も短縮される点です。
パッケージ型のAI製品は、その多くが一般的なビジネス課題に対応している、または業界標準にもとづいているため、広範なニーズに対応できます。ただし、特定の業務に特化している訳ではないため、自社の業務内容によっては使いこなせない場合もあるでしょう。
●受託開発AIベンダー
オーダーメイドでAIソリューションを開発するタイプのベンダーです。企業の特定のニーズに対応するために、プロジェクトごとに設計され、業務に最適化されたAIシステムを提供しています。開発プロセスには時間とコストがかかりますが、オーダーメイドのため完全に企業の要件に合わせたカスタム開発が可能です。柔軟性が高く、長期的には大きな成果を得られる可能性も期待できます。
受託開発AIベンダーとのAI開発では、プロジェクトの初期段階からベンダーと密に連携し、要件定義を詳細に行う点が特徴です。
●オーダーメイド型AIベンダー
受託開発AIベンダーに近い形ではありますが、さらに幅広い技術領域に対応し、複雑な業務や異なるデータソースを統合する能力に優れているAIベンダーをオーダーメイド型と呼びます。異なる業界や業務プロセスにまたがるソリューションを提供できるのが特徴で、最先端のAI技術を活用するプロジェクトに適しています。通常の受託開発よりもさらに高いカスタマイズ性を求める場合には、オーダーメイド型AIベンダーが選ばれる傾向にあります。
●AIコンサルティング
主に、AIの導入に向けた戦略策定や実装支援を行うのがAIコンサルティングです。技術的な開発は外部に委託することが多いため、「ベンダー」という定義からは少し離れるものの、プロジェクト全体の管理と戦略的なアドバイスができる立場として活躍します。
AIコンサルティングに依頼すると、自社にAI開発能力がない場合でも、外部パートナーとの連携を通じてAIを活用したビジネス改革が可能です。プロジェクトマネジメント能力が高く、複数のベンダーと連携するプロジェクトにも対応できるため、ビジネスの目標に合わせたAI戦略を立案したい際にも活用できます。
●業界特化型AIベンダー
小売、製造、金融など特定の業界や分野に特化したAIソリューションを提供するベンダーです。業界特有の規制やコンプライアンスに精通しているため、専門知識を生かしたAIソリューションを提案してくれます。
例えば、金融業界には不正検知AIシステム、小売業界向けには需要予測AIなど、特有のニーズや課題をAIソリューションで解決したい際に適しているベンダーです。
AIベンダーを選ぶ際のポイント
ここからは、AIベンダーを選ぶ際に知っておくべきポイントを解説します。自社の課題やニーズに対し最適なソリューションを提供できるパートナーを見つけるためにも、以下を考慮したうえで総合的に判断することが重要です。
●1. 専門性と実績
AIベンダーの選定では、専門性と実績が信頼性を測る基準です。導入を検討しているAI技術に対して、豊富な経験を持つベンダーを選ぶことが重要になります。
ベンダーが提供するサービスやプロジェクト事例を確認し、自社の抱える課題に類似するケースで成功を収めた実績があるかを確認しましょう。専門分野での特許取得や最新のAI技術を駆使したプロジェクトの成功事例を持つ企業は、より信頼できる選択肢となります。
●2. 提案力とコミュニケーション
ベンダーの提案力はプロジェクトの成否を左右します。そのため、顧客のニーズを正確に把握し、現実的な解決策を提示できるベンダーを選ぶことが重要です。
初期の提案が具体的であり、自社のビジネス目標を反映した内容かどうかを慎重に見極めましょう。特に、リスクや課題への対処が具体的に示されているかどうかがポイントです。特に、提案書や計画書には、わかりやすい説明と具体的なスケジュール、達成すべき目標が含まれているかをチェックしてください。
さらに、ベンダーとのコミュニケーションの質もプロジェクトの成功に密接に関連しています。進捗報告やミーティングが定期的に行われ、プロジェクトの透明性が保たれているか、自社の意見や要望に柔軟に対応できる姿勢があるかどうかを図りましょう。
●3. サポート体制
AIシステムは、導入後の運用や保守が非常に重要です。問題が発生した際に、迅速に対応できるサポート体制が整っているかを確認しましょう。24時間対応のサポートがあるベンダーやスピーディーなリカバリー体制を備えているベンダーであれば、システム障害が発生しても、業務への影響を最小限に抑えられる可能性が高まります。
導入後のトラブル対応やシステムのアップデートに対し、どの程度対応してくれるかをチェックしましょう。長期にわたってサポート契約ができるかどうかも重要な選定基準です。サポートの内容が明確に契約書に記載されているか、トラブル時の対応範囲や時間を確認することによって、ベンダーの姿勢を把握できます。
●4. コストとROI
導入コストだけでなく、長期的な投資収益率(ROI)も重要です。費用対効果を見極め、予算内で最大の成果を得られるベンダーを選びましょう。
契約前に、導入コストと運用コストや保守費用が明確に示されているかをチェックします。投資に対するリターンがどのくらいの期間で得られるかをベンダーに確認し、シミュレーションを行うことも大切です。コストを抑えるためのオプションや段階的な導入計画が提案されているかも、収益向上の具体的な見込みを把握するための基準となります。
●5. 知的財産権の取り扱い
AIシステムにかかわる知的財産権の取り扱いについて、契約時に明確にしておくべきポイントがあります。AIモデルやデータに関する権利が自社に帰属するのか、それともベンダー側に残るのかを契約書でしっかり確認してください。
ベンダーが開発したAIモデルやツールの再利用・再販について、契約書でどのように規定されているかもチェックポイントです。知的財産権の取り扱いが明確にされていないと、将来的なトラブルや追加費用が発生するリスクがあります。
●6. 契約内容とリスク管理
契約書に記載された内容を詳細に確認し、曖昧な部分がないかをチェックします。プロジェクトが遅延した場合や、目標を達成できなかった場合のリスク管理についても事前に合意しておきましょう。
ベンダーと綿密なリスク管理計画を立て、予期しないトラブルに対処できる体制を構築することが重要です。
AIベンダーが提供できるシステム例
AIベンダーが提供するシステムは、企業の業務効率化や戦略的な意思決定を支援します。以下は、AIベンダーが提供できる具体的なシステム例です。自社の課題やニーズに合ったAIシステムの検討にお役立てください。
●需要予測システム
需要予測システムは、AIの機械学習を利用して、販売履歴や市場動向といったデータをもとに、名前のとおり需要を予測するシステムです。売り切れや過剰在庫のリスクを軽減し、在庫管理を効率化できます。特に、小売業や製造業で導入されており、適切な在庫を保つことでコスト削減と供給の安定を図っています。
需要予測システムは、AIがデータから規則性を見つけ出し、リアルタイムな市場データを反映させる点が特徴です。これにより、人間の経験や勘と組み合わせた予測に加えて、データにもとづく根拠のある判断が可能です。例えば、過去の販売トレンドや季節的な需要の変化を考慮したうえで生産計画を立案し、迅速に実行できます。結果として、企業は無駄なコストを削減し、需要に合わせた柔軟な対応がでます。
●顧客行動分析システム
購買履歴やWebサイトの閲覧履歴からAIが顧客の行動パターンを分析し、マーケティング施策を最適化するシステムです。購入履歴やアンケート情報などの自社収集のデータに留まらず、人口統計学的なデータや気象データ、SNSなど、多角的に顧客の行動を分析することで、よりパーソナライズされたマーケティング戦略を立てられます。
新商品の提案やサービスの最適化を実現できるほか、解約予測や離脱予測を行って解約の抑止につなげる、見込み顧客の満足度を高めて優良顧客への育成につなげるといったことも可能です。
●チャットボットシステム
チャットボットシステムは、AIの自然言語処理(NLP)と機械学習技術を活用して、カスタマーサポートやFAQ対応を自動化するシステムです。また、機械学習により会話ログを学習し続けることで、やり取りの回数に比例して返答の正確さも向上します。
機械のため24時間いつでも返答が行えるだけでなく、システムによっては複数言語にも対応しているため、外国語を話せるオペレーターが少なくても、顧客対応が可能です。カスタマーサポートやFAQをチャットボットに任せることで、問い合わせへの対応時間を短縮して、コスト削減ができるほか、オペレーターはより複雑な問い合わせに集中できるようになり、全体的なサポートの質が向上します。
●異常検知システム
異常検知システムは、AIがリアルタイムでデータを監視し、異常なパターンを素早く検出するものです。異常検知システムは、製造ラインでの品質管理や金融取引での不正検知に広く利用されています。
例えば、製造業では機器の動作状態を監視し、通常の稼働データと比較して異常がないかをチェックします。異常検知システムが、異常の兆候や初期段階の不具合を早期に検出することで、問題が大きくなる前にメンテナンスを実施し、突発的な故障を未然に防ぐことが可能です。このように、AIは人間の経験や勘を補完し、迅速かつ精度の高い異常検知が行えます。
●画像解析システム
AIの機械学習による画像認識と画像分析の技術を活用したシステムです。目的の画像の自動抽出や基準以下の製品を区別して排除するといった方法で使われています。
医療分野では医療画像の解析による病気の早期発見や高精度な診断に活用されています。製造業の現場では、AI画像診断システムが外観検査を自動化し、製品の表面や構造の欠陥を早期に検出。製品の不良品率を低減させられます。
●音声認識システム
AIによる音声認識で、通話のテキスト化や音声コマンド操作を実現するシステムです。これまでにも音声認識技術はありましたが、従来のシステムだと曖昧な発音や不明瞭な表現に対する理解が難しい課題がありました。
AIの自然言語処理機能が組み込まれてからは方言や専門用語にも対応できるようになり、認識精度が向上しています。最近では、AIのディープラーニング(深層学習)によって複雑な情報も的確・効率的に学習できるようになっています。
コールセンターやカスタマーサポートなど、音声入力が求められる分野では問い合わせ対応の自動化、相手との通話内容をテキスト化・分析し、業務改善やサービス向上につなげる施策にも活用されています。
●レコメンドエンジン
レコメンドエンジンは、Eコマースや動画配信サービスにおいて、ユーザーの過去の行動データをもとに、個々のニーズに合った商品やコンテンツを推薦するシステムです。主な手法として、ユーザーの行動条件にもとづいて情報や製品を提供する「ルールベースレコメンド」と、アクセス履歴や行動履歴を分析しておすすめを提示する「協調フィルタリング」があります。
レコメンドエンジンを導入することで、ユーザーの購入履歴や閲覧履歴をもとにした提案が行えるため、購買促進や売上向上が期待できます。また、レコメンド内容がリアルタイムで更新されるため、最新のユーザー情報にもとづいた提案ができ、より効果的なマーケティングが可能です。
●自動翻訳システム
AIを活用してある言語(日本語や英語など)の文章・音声を別の言語に自動翻訳するシステムで、AI翻訳や機械翻訳とも呼ばれます。Webブラウザ上で、日本語の文章を入力するだけで即座にほかの言語に翻訳される「Google翻訳」などの身近なサービスにも自動翻訳システムが組み込まれています。
国際取引など、多言語対応が必要なビジネスでリアルタイムにコミュニケーションを取れるようになり、言語障壁が解消されるのが利点です。AIによる高精度な翻訳は日々進化しており、最近では専門用語やニュアンスも正確に翻訳できるようになってきています。チャットやメールなどのツールに統合すれば、グローバル業務の効率アップにも役立ちます。
●リアルタイムデータ分析システム
ビッグデータをリアルタイムで分析し、ビジネスの迅速な意思決定を支援するシステムです。経営指標や市場動向の瞬時な把握、戦略の最適化を求めるシーンで活用されています。
リアルタイムデータ分析システムでは、文字どおりリアルタイムで鮮度の高い情報活用が可能です。顧客ニーズへの素早い反応やトラブルの原因特定、対処法の決定など、様々な行動を迅速に起こせるようになります。
●人事評価システム
社員の業績やスキルをAIが分析し、公平かつ客観的な人事評価を実現するツールです。人間の主観や偏りのない公平な評価が行えるだけでなく、成長支援や適材適所の人材配置にも役立ちます。業績データをもとに個別評価を高速で自動化できるため、業務効率化や人事担当者への負担も軽減できるでしょう。
AIによる分析結果をもとに従業員の強みや弱み、潜在能力を把握して、適切な人材育成や配置ができるので、従業員のモチベーション向上や離職率の低下などの効果も期待できます。
●健康管理支援システム
AIが個人の健康データを分析し、病気リスクの予測や個人に合わせた予防策を提供するツールです。健康診断の結果や日常生活のデータを分析し、将来的な健康リスクを予測して適切なフィットネスプランを提案します。従業員の健康データを分析してリスクを早期発見できるため、企業の福利厚生としても活用可能です。
分析結果を客観的に提示することにより、従業員の健康意識も向上させられます。
AIベンダーを探すなら発注ナビに相談
AIベンダーとひと口にいっても、汎用的なプロダクトの実装を提供する業者から自社の業種・課題に特化したオーダーメイド開発ができる業者、コンサルティングや運用保守サービスまで担っている業者と様々な種類があるとわかりました。
専門領域や提供できるシステムにも違いがあるため、自社の課題やニーズに合致したAIサービスを提供できるベンダーを選ぶには、AIに関するある程度の知見も求められます。
AIベンダーを探すのは大変な作業ですが、発注ナビを利用すれば、理想のシステム開発会社を見つけることができます。全国6000社以上の開発会社データベースから、貴社のニーズに合ったベストなパートナーを最短1日でご紹介し、実績豊富な専門スタッフがサポートいたしますので、IT知識がなくても安心です。AIを使ったシステム開発会社を探すなら、まずは発注ナビをご利用ください。
AI開発会社選びはプロにお任せ完全無料で全国6000社以上からご提案