ASPは、インターネットを介したサービスやその提供業者です。
手軽に新しいサービスを導入できるASPは、インターネット環境の発展により、マーケティング業界やIT業界だけでなく一般にも普及しました。
常にインターネットへの接続が当たり前となった現在は、インストール型の提供方法に比べて専門的な知識やメンテナンスが不要など多くのメリットがあり、さらなる利用が進んでいます。
今回は、ASPの基礎知識や特徴、ほかのサービスとの違い、そして実際の導入前に注意するべきことについてご紹介します。
目次
ASPの基礎知識と特徴
ASPは「Application Service Provider」の略で、インターネット上でアプリケーションを利用するサービスやそのサービス提供者を指します。
ASPは、どこにいても利用できることが大きな特徴です。ネットワーク上で複数人による同時アクセスや操作が可能で、インターネット環境があればPCやスマートフォンからでもすぐに利用することができます。顧客管理や営業・販売促進、社内の財務管理や給与計算などさまざまなサービスが提供されています。
従来のアプリケーションやサービスは、PCに直接ソフトウェアをインストールして利用する方法がとられていました。そのため、社内で利用する場合は社員全員のPCそれぞれにアプリケーションのインストールが必要となります。PCのリプレース時や、故障により新しくしたときなどには、再度ソフトウェアをインストールしなければなりませんでした。
しかし、ASPであれば個別のPCにソフトウェアをインストールする必要がなく、PCを起動してネットワークに接続するだけでサービスを利用することができます。
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ASP・ISP・SaaS・クラウドの違いとは?
ASPと合わせてよく聞く言葉に「ISP」や「SaaS」、また「クラウド」があります。混同されがちなASP・ISP・SaaS・クラウドそれぞれの意味と違いについて見ていきたいと思います。それぞれの違いを簡単に表すと、図の通りになります。
名称 | 言葉の意味 |
---|---|
ASP | インターネット上で利用するサービス、またはサービス提供者 |
ISP | インターネット接続を可能にするサービス提供業者 |
SaaS | インターネット上で利用するアプリケーション |
クラウド | ASPやSaaSを提供する技術や仕組みそのもの |
●ISPとは?
ISPは「Internet Service Provider」の略で、インターネット接続を可能にするサービス提供業者を指します。具体例を挙げるとYahoo! BBやOCN、BIGLOBEなどのプロバイダがISPです。もし、引っ越しの際に光ファイバーやADSLなどのインターネット接続工事を手配する場合は、ISPに連絡をします。
●SaaSとは?
SaaSは、ASPやISPよりも比較的新しく利用され始めた用語です。「Software as a Service」の略で、日本ではSaaSもASPもほぼ同じ意味で扱われています。しかし、実際にはASPがサービス提供者やサービス自体を指すのに対して、SaaSはアプリケーションそのものを指すという違いがあります。
具体的なサービス内容としては、ASPはシングルテナント、SaaSはマルチテナントという違いがあります。シングルテナントでは、1人の利用者に対してその利用者用に1つの環境を構築しますが、マルチテナントの場合は複数の利用者を1つの環境の中で管理します。
●クラウドとは
クラウドとは、「雲」や「大群」を意味する英単語ですが、IT業界におけるクラウドは、「インターネットを介してアプリケーションやソフトウェアを使用する仕組み」を指す言葉として使われています。先に挙げた「ASPやSaaSを提供する技術や仕組みそのもの」をクラウドと呼ぶのです。この仕組みを利用したサービスのことを「クラウドサービス」と呼びます。ファイルの共有ソフトとして人気の高い「Dropbox」や、フリーメールサービスとして馴染み深い「Gmail」など、世界的に有名なクラウドサービスも少なくありません。
クラウドは、ASPやSaaSよりも後に使われ始めた言葉ですが、包括的な意味を表す使いやすい単語で、ITやシステム開発の分野においては広く普及しています。プロバイダを表すISPを除いて、いずれも似た意味を持つASP、SaaS、クラウドに関しては、同じ意味合いで言葉が使われるケースもしばしばです。
ASPのメリット
従来のインストール型などほかのサービス形態と比較して、ASPを利用するとどのようなメリットがあるのでしょうか。3つの点からASPのメリットをご紹介します。
●コスト削減
ASPを導入すると、大きなコスト削減が期待できます。例えば、企業の特徴や業務フローに合った自社システムを利用する場合、市販のソフトウェアを導入してカスタマイズしたり、新たに開発したりするには膨大な初期費用が必要です。しかし、すでに完成したサービスを導入して利用するASPの場合は、自社でシステムを開発する際にかかる初期費用を大きく削減できます。
また、自社での保守管理や定期的なメンテナンスも必要ないため、サービスを継続利用するためのランニングコストはシステム利用料のみとなり、導入後にかかるコストも削減が可能です。
●利用方法が簡単
多くのASPサービスは、ユーザーに利用してもらうことで利益を挙げていくビジネスモデルになっています。そのため、ユーザーインターフェースなどが洗練されており、使いやすいのも特徴です。わかりやすい設定になっているので、サービス導入時に操作方法を覚える時間がかからず、コストも安く済みます。
また、ASPはリースのサービスなどと異なり、サービスが必要なときだけ利用できるという点が大きなメリットです。ASPのシステム利用は、1カ月ごとなど短い期間での契約が可能です。事業者によっては最初の数日間は無料で利用できる場合もあるため、自社に合うASPがどれなのか、複数のサービスを試して比較してみるのも良いでしょう。
●管理システムを用意する必要がない
ASPのサービスであれば、独自に管理システムを用意する必要がありません。自社で独自のシステムを開発した場合には、サーバー上にデータを保持するため、セキュリティ対策やハードディスクの増強など定期的なメンテンナスが不可欠となり、ランニングコストが増大するおそれがあります。
一方、ASPはサービスに利用するデータや情報をASP上に保持するため、セキュリティ対策を自社で行う必要がなく、サーバー管理などの専門的な知識やメンテナンスも不要です。
●場所を問わず使用できる
社内のPCにインストールしたアプリケーションは、基本的に社内でしか扱えません。反対に、ASPのサービスはインターネット上でアプリケーションの操作やデータの管理を行うため、ネット環境さえ整っていれば、場所を選ばずに利用可能です。例えば、スマートフォンを通じて在宅勤務を行う社員の勤務管理をしたり、タブレット端末を用いて移動中に顧客と打ち合わせをしたりすることも、ASPなら容易に行えます。
現代の日本国内においては、様々な働き方が選べる社会を目指す「働き方改革」が政府から提唱されています。場所を選ばず利用できるASPは、この働き方改革とも相性の良いサービスといえるでしょう。自社でASPのサービスを導入することで、在宅勤務やテレワークができるフレキシブルな労働環境も作りやすくなります。
ASP導入前に知っておくべき注意点
ASPであれば、どのサービスでもメリットが等しくあるというわけではありません。実際にASPを導入する前に、知っておくべき注意点についてご説明します。
●インターネット環境は必須
基本的にASPは、インターネットに接続された状態で、ブラウザ上や専用のクライアントソフトで起動します。中には、インターネット接続がないローカル環境でも作動し、インターネット接続時に変更データをサーバーにアップロードする仕組みを持つASPもありますが、ほとんどのASPはインターネット環境がなければ利用できません。導入する予定の場所で、インターネット環境があるかどうかを調べておく必要があります。
●機能や規格の確認
ASPを利用する場合には、本当に使いたい機能が提供されているのかを事前に確認しましょう。ASPサービスは、ある程度のカスタマイズは可能ですが、自社で開発したシステムとは違って、決められたシステムに自社の業務を合わせていくことになります。実際に使い始めてから「求めていた機能や規格がない」と後悔しないためにも、ASPを導入して達成したい目的と利用したい機能について、詳細にチェックしておきましょう。
●ASPのセキュリティ対策
ASPは、インターネット上でデータ管理をするうえ、サービスを提供する企業がセキュリティ管理を担っています。管理をすべて任せる以上、自社で管理するよりも情報流出のリスクが高いという欠点があります。そのため、ASPのセキュリティ対策が万全かどうか事前に確認して信頼できるサービスを選択するのはもちろん、自社でも定期的に情報のバックアップを行うことが大切です。
ASPで手軽に新しいサービスを導入しよう!
これまでのインストール型のソフトウェアに比べて、ASPは手間が少なく簡単にサービスを利用することができます。
インターネット環境が整った現代においては、利用開始のハードルが低いサービスともいえるでしょう。
また、スマートフォンがあれば、ASPは外出先からも利用できます。
ASPは自社や個人で使いたい機能を正しく見極めて利用することで、コスト削減や作業時間の減少などのメリットが期待できます。
今回ご紹介した注意点を導入前にしっかりと確認し、ASPを活用していきましょう。
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