受発注システムは、建設業界における業務効率化や資材管理の最適化を実現するための重要なツールです。従来の手作業による受注・発注業務では、ミスや時間のロスが多く発生しがちですが、デジタル化された受発注システムを導入することで、業務フローの自動化と正確なデータ管理が可能になります。本記事では、受発注システムの基本概要や建設業における業務課題、導入のメリットとデメリット、さらに導入ステップやシステム選定時のポイントについて詳しく解説します。
目次
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受発注システムの概要について
まずは、受発注システムがどのようなものか、その基本機能とともに見ていきましょう。
●受発注システムとは何か?
受発注システムとは、受注・発注に関する一連の業務をデジタル化するツールです。
従来、ビジネスにおける受注と発注のやり取りは、電話やFAX、電子メールなどが使われてきました。例えば、ある会社が商品を注文する場合、まず見積もりを依頼し、その後正式な注文書を送付します。商品を提供する側は、この情報をもとに製造や出荷の指示を出し、最終的に代金の受け取りと領収書の発行を行うといった流れです。
しかし、これらの方法には人為的なミスや非効率性といった問題がありました。手書きの注文書の読み間違いや、重要な情報の見落としなどが起こりやすく、また紙の書類の管理は煩雑になりやすいのが課題でした。
そこで登場したのが受発注システムです。受発注システムでは、注文から支払いまでのフローや情報がデジタルで管理されるため、入力ミスが減少し、データの検索や確認がスムーズになります。建設業においては、資材の受注・発注の状況や仕入れ先の管理、在庫管理など広範囲に活用できるシステムです。
●受発注システムの基本機能
受発注システムの主な機能には、受注管理、発注管理、在庫管理、顧客管理、届先管理、入出荷管理、配送管理などがあります。
機能名 | 概要 |
---|---|
受注管理 | 複数の取引先からの注文を管理できる |
発注管理 | 発注したい資材や部品の数や種類、納期などの発注処理をシステム上で行える |
在庫管理 | 入庫と出庫のデータから現在の資材数を把握できる |
顧客管理 | 顧客情報を管理できる |
届先管理 | 製品の届け先の情報を管理できる |
入出荷管理 | 資材や部品の入荷・出荷の情報を管理できる |
配送管理 | 製品の配送状況を管理できる |
これらの機能を活用することで、建設業における受発注業務の効率化はもちろん、正確な予算管理や適切な資材管理につながります。
建設業における業務の課題について
ここでは、建設業で見られる課題点を4つ紹介します。以下の課題について、詳しく見ていきましょう。
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プロジェクトの複雑化と規模の増大
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プロジェクトの進行管理
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情報共有のリアルタイム化
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効率的な資材や資源の管理
●プロジェクトの複雑化と規模の増大
プロジェクトというものは、大規模なプロジェクトであればあるほど複雑化するものです。建設業においても同様で、プロジェクトの規模が拡大するに応じて、資材や資源の管理、取引先とのやりとり、スケジュール調整、請求・支払いの処理など、多岐にわたる業務が煩雑化します。従来のExcelや紙ベースといったアナログなやり方では対応しきれず、担当者の負担増大や発注ミス、在庫不足、支払い漏れなどのリスクが高まります。
●プロジェクトの進行管理
プロジェクトの進捗管理の難しさも無視できません。建設プロジェクトでは図面やスケジュールの変更が頻繁に発生するため、現場と本社が状況を共有し、必要な資源や資材を確保しなくてはいけません。しかし、アナログな管理手法では、現場と本社間で進捗状況の認識にずれが生じやすく、プロジェクトの円滑な遂行が困難になる恐れがあります。
●情報共有のリアルタイム化
リアルタイムでの情報共有の難しさも課題点です。建設プロジェクトを円滑に進めるためには、現場従業員、監督者、社内スタッフ、協力会社間の緊密な連携が不可欠です。しかし、手動での管理では、図面や工程の変更に伴う資材・資源の調達において、現場と本社間のコミュニケーションに時間差が生じ、納期の遅延や工期全体の後ろ倒しにつながるリスクがあります。
●効率的な資材や資源の管理
建設現場で必要な資材や資源は多数あります。現場の進捗によって変動することもあるため、紙やExcelなどでの管理では正確に把握することは困難です。大量に資材を備えておくと過剰発注となりコストの無駄や廃棄ロスを生み、在庫不足はプロジェクトの進行に支障をきたします。資材の数や使用状況が正確にわかるようなシステム化が必要です。
建築業で受発注システムを導入するメリットとは?
受発注システムの導入は、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、効率的な業務処理、資材管理の最適化、そして顧客満足度の向上という3つについて説明します。
●効率的な業務処理ができる
受発注システムを導入することで、これまで手作業で行っていた業務プロセスが自動化されます。その結果、受発注処理が迅速かつ正確に行えるようになります。例えば、注文書の作成や送信、確認作業などが自動化されることで、作業時間が大幅に短縮されるでしょう。
また、システムを活用することでヒューマンエラーのリスクも低減できます。手入力による間違いや見落としが減るため、情報の精度が上がるという点がメリットです。
●資材管理の最適化
受発注システムの導入は、資材管理の面でも大きなメリットをもたらします。まず、現在の在庫状況をシステム上で即時に確認できるようになる点です。また、複数の現場や倉庫の在庫を一元管理できるため、全体の在庫状況を把握しやすくなります。
さらに、過去のデータや進行中のプロジェクトの情報をもとに、資材の需要に見通しを立てることも可能です。適切な発注タイミングと数量も把握できるため、効率よく在庫管理が行えます。
ほかにも、設定した在庫水準を下回った際に自動発注したり、定期発注を管理したりする機能も備わっているシステムもあります。
●顧客満足度の向上
受発注システムの導入により業務プロセスが効率化されると、その分のリソースを別の業務に割くことができます。例えば、顧客へのヒアリング・商談といった直接的なコミュニケーションに多くの時間を割いたり、社内体制の改善に注力したりといったことができるでしょう。顧客からの信頼・満足度が高まり、リピート受注や新規顧客の獲得につながる可能性があります。
建築業で受発注システムを導入するデメリットとは?
受発注システムを導入するなら、デメリットも事前に把握しておきましょう。ここでは、コストやトラブルの可能性について説明します。
●コストがかかる
受発注システムの導入には、まずシステム自体の導入費用が必要になります。さらに、導入後の運用費用も継続的にかかります。加えて、自社の業務に合わせてシステムをカスタマイズしたり、新しい機能を追加したりする場合には、さらに追加のコストがかかります。システムにもよりますが、コストがかかること自体が会社にとって負担になる可能性があります。
また、システム導入の費用対効果が出るまでには時間がかかるケースがあります。システムの運用が軌道に乗るまでは、費用対効果が見えにくく、一時的に収支がマイナスになることもあるでしょう。
ただし、自社の状況に合ったシステムを導入できれば、業務効率化によって過剰発注や業務時間の削減などのコストをカットできる可能性があります。結果として、長期的には費用対効果を高めることが期待できます。
●システム直後はトラブルが起きやすい
新しい受発注システムを導入すると、そのシステムに慣れていない社員が操作を間違えて、予期せぬ問題を引き起こす恐れがあります。特に、ITシステムに不慣れな社員が多い会社では懸念点になるかもしれません。
例えば、注文データの入力ミスや、システムの使い方がわからずに作業が滞るといったことが起こりやすくなります。また、実際の運用環境で、開発時に想定していなかった使い方や負荷がかかることで、不具合が出てくる場合もあります。
これらの問題に対処するためには、操作しやすい受発注システムや自社の環境に適したものを選ぶことが大切です。また、導入前に従業員向けの研修やトレーニングをしっかり行うなど、準備を徹底することで、多くの問題を防ぐことができます。
受発注システムの導入ステップ
受発注システムを導入するには、いくつかの重要なステップがあります。ここでは、目的の明確化から実際の使用開始まで、4つの主要なステップについて説明します。
●1.受発注システムを導入する目的を明確化する
まず最初に行うべきは、受発注システム導入の目的を明確にすることです。担当者にヒアリングを行い、現在の受発注業務にどんな課題があるのかを洗い出します。例えば、「手作業による入力ミスを減らしたい」や「在庫管理を効率化したい」といった具体的な課題を挙げてもらいます。
この作業が大切なのは、目的が定まっていないとシステム導入の成功の可否がわからないからです。「なんとなく便利そうだから」といった曖昧な理由では、後々問題が起きる可能性が高くなります。目的をはっきりさせてから、システム導入の計画を立てるようにしましょう。
●2.システム化する受発注業務の範囲を決める
次に、どの業務をシステム化するかを決めます。現在の業務をベースに考えると、必要な機能が見えてきやすいでしょう。例えば、「発注書の作成」「在庫管理」「納品書の発行」など、具体的な業務を列挙していきます。そして、それぞれの業務に優先順位をつけます。全ての業務を一度にシステム化するのは難しいので、重要度の高いものから順に導入していくのがいいでしょう。
●3.検証を行う
システムの設定が終わったら、次は動作検証です。ここでは、機能が正しく動くかどうかをチェックします。数値の設定や金額の入力など、実際の業務を想定しながら検証を進めると、本番での混乱を防げます。
また、この段階でマニュアルの整備も始めましょう。システムの使い方を誰もが理解できるように、わかりやすいマニュアルを作ることが大切です。操作画面のスクリーンショットを使うなど、視覚的な説明を心掛けると良いでしょう。
●4.実際に受発注システムを使用して業務を進める
最後は、実際にシステムを使い始める段階です。ここで大切なのは、システム導入の効果を把握することです。例えば、作業時間がどれくらい短縮されたか、ミスがどれくらい減ったかなど、具体的な数字で効果を測れるようにしておきましょう。
また、システム導入により業務の流れが大きく変わる可能性があります。特に取引先とのやりとりに影響がある場合は、事前に説明し、同意を得ておくことが重要です。突然の変更は取引先との関係を損なう可能性があるので、丁寧な対応を心掛けましょう。
建設業向けで受発注システムを選ぶ際のポイント
建設業で受発注システムを導入する際、どのような点に注目すべきでしょうか。ポイントを4つ紹介します。
●現場管理機能が備わっているか
受発注システムを選ぶ際、現場管理機能の有無は重要な判断基準です。基幹システムと現場管理システムが別々になっていると、データをそれぞれにシステムに手入力しなくてはならず、入力ミスが発生しやすくなり、業務効率の低下につながる可能性があります。
一方、現場管理機能が統合された受発注システムを導入すれば、データが自動で収集されるためミスが起こりにくく、リアルタイムでも情報共有ができます。結果、社内外での連携がスムーズになり、プロジェクト全体の進行管理がしやすくなるでしょう。現場の状況を即座に把握し、必要な対応を素早く取ることができるようになるのです。
●誰でも使用しやすいUI・UXか
建設業界では、ITに詳しくない社員も多いかもしれません。そのため、システムの使いやすさ、つまりUI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザーエクスペリエンス)の質は、非常に重要です。
UIとは、ユーザーがシステムを操作する際に目にする画面やアイコンの配置、色使いなどを指します。例えば、直感的に操作できる画面設計や、見やすい表示になっているかどうかをチェックしましょう。
一方でUXとは、ユーザーがシステムを使用する際に感じる総合的な体験を意味する言葉です。具体的には、システムが使いやすいだけでなく、効率的に業務を進められるか、ストレスなく操作できるかといった要素が含まれます。
使いやすいシステムであれば社員への浸透もスムーズに進み、導入効果を最大限に引き出せるため、システム選定の際にはUIとUXの両方を考慮して選びましょう。
●詳細な権限設定が可能か
システム化は便利な反面、得意先の情報を取り扱うためセキュリティも気にかけなければいけません。情報の公開範囲や編集権限などを設定できるシステムを選びましょう。また、社員の役職や担当に応じて適切な権限を付与することで、内部統制の強化にもつながります。業務の透明性が高まり、ミスやトラブルのリスクも軽減できるでしょう。
●サポート体制が充実しているか
どんなに優れたシステムでも、導入後に予期せぬトラブルが発生する可能性があります。そのため、充実したサポート体制があるかどうかも、重要な選択基準となります。
電話やメールによる迅速なサポート対応、運用ルールの策定支援、定期的なアップデートなど、さまざまな面でのサポート体制を確認しましょう。手厚いサポートがあれば、システム導入後にトラブルがあっても対応してもらえます。また、ユーザー向けのマニュアルや研修プログラムの提供有無も確認すると良いでしょう。
受発注システムの効果的な活用で業務効率化を
建設業における受発注システムの導入には、業務効率化や資材管理の最適化など、多くのメリットがあります。一方で、導入コストや初期のトラブルなど、課題もあることを忘れてはいけません。
受発注システムの導入を成功させるには、自社の課題を明確にし、具体的な目標を設定するなど、十分な準備が重要です。また、システムを選ぶ際には、機能面やサポート体制などを慎重に検討し、自社の業務に最適なものを選択することが大切です。
適切な受発注システムを導入し、効果的に活用することで、業務プロセスの改善や顧客満足度の向上など、さまざまな面から企業価値を高められます。しかし、最適な受発注システムの選定には時間と労力がかかることも事実です。そこで、ITの専門スタッフが在籍する発注ナビをぜひご活用ください。
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