Javaはオープンソース言語であり、商用・非商用を問わず、アプリ開発に広く利用されています。アプリ開発に携わる担当者は、Java開発を外部に依頼する機会も多いのではないでしょうか。発注者としては、外注先とのコミュニケーションを円滑に進めるためにもJavaの基礎的な知識は理解しておくと便利です。
この記事では、Javaを使ったアプリ開発の外注を検討している方へ向けて、知っておくと便利なJavaの基礎知識についてご紹介します。Javaを用いたアプリ開発において、開発できるアプリの種類、開発手順、外注における成功ポイントまで詳しく解説します。
目次
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Javaはなぜアプリ開発に適しているの?
Javaはアプリケーション開発の適性が高いオブジェクト指向プログラミング言語として知られています。正確に動作し、将来的にも拡張しやすいアプリケーションを開発するうえでJavaが適しているといわれる理由は、主に以下の2つが挙げられます。
●大規模アプリ開発に向いている
Javaは大規模アプリ開発に向いている言語の1つといわれており、実際にTwitterやEvernoteのような大規模サービスでは、Javaが開発言語の1つとして採用されています。その理由は、Javaはオブジェクト指向プログラミング言語でコードの再利用性が高くモジュール化が簡単な特徴があり、大規模開発でも効率的なシステム開発がしやすい利点があるためです。加えて、実行速度が速いというメリットも、大規模なアプリ開発に向いている特徴のひとつです。
●OSに依存しない
JavaはOSに依存しない言語であり、Java仮想マシン(JVM)が入っていればどのOSでもアプリケーションが開発・動作が可能です。Windows、Linux、mac OSなど複数のOSで同じ言語を使えるため、OS別に個別に開発する必要がありません。そのため、動作確認や修正も楽になり、アプリの保守性も向上するというメリットがあります。
Javaで開発できるアプリの種類
様々なプラットフォームで動作するアプリ開発で使える汎用性の高いJavaですが、Javaを使って開発されているアプリは、主にWebアプリ、デスクトップアプリ、Androidアプリに分けられます。
●Webアプリ
Webアプリとは、インストール不要でパソコンやスマートフォンのブラウザ上で使用できるアプリのこと。Javaを使ったWebアプリの例として、オンラインショッピングサイト、ソーシャルメディアプラットフォーム、企業向けの業務管理システムなどが挙げられます。JavaでのWebアプリ開発では、Webサーバ上で動作するJavaサーブレットや、HTML内にJavaコードを埋め込んで動的にWebページを生成できるJSPなどの技術が利用されるのが一般的です。
WEBアプリをJavaで開発する手順やポイントについては、以下の記事をご確認ください。
●デスクトップアプリ
デスクトップアプリは、パソコンにインストールして使用するネイティブアプリの1つです。
JavaにはSwingやJavaFXなどのGUI開発フレームワークも揃っているため、パソコン向けのアプリ開発にもよく使われています。Javaで開発されたデスクトップアプリの例としては、テキストエディタ(Notepad++、Sublime Text)、画像編集ソフト(Adobe Photoshop、GIMP)、音楽プレーヤー(iTunes、Spotify)などが挙げられます。
●Android向けスマホアプリ
Androidアプリを構築する主要な言語はJavaとKotlin(Javaを改良して作られた言語)であるため、Android向けスマホアプリを作成する際にはJavaの知識が必要です。
Google推奨の統合開発環境(IDE)として「Android Studio」を使うケースがほとんどなので、JavaだけでなくAndroid Studioの知識も必要になります。Javaで開発されたAndroid向けスマホアプリの例として、ゲームアプリ、地図アプリ、ニュースアプリ、SNSアプリなどが挙げられます。作成したアプリは申請をとおしてGoogle Playストアで公開できます。
発注者のためのJava基礎知識
Javaのアプリ開発を外部に依頼する際には、発注者側がJavaの基本を知っておくと開発がスムーズに進みます。Javaの知識を使って要望を的確に伝えたり、進捗状況を正確に理解したりできるからです。ここでは、発注者が知っておきたいJavaの基本について解説します。
●Java基礎知識「基本文法」
Javaの基本的な文法を知っていると、開発者が納品するアプリの品質やコスト感覚を評価しやすくなります。基礎的な文法や概念を理解できれば、外注時や受け入れ時にも役立つでしょう。
変数・データ型
Javaでは、変数を使用してデータを格納します。変数とは、データを保持する箱のようなもの。変数は、値を代入したり取り出したりできます。
変数を宣言する時には、データ型(int、double、Stringなど)を指定します。データ型とは、変数に格納されるデータの種類のことで、Javaには「プリミティブ型」と「参照型」の2つのデータ型があります。プリミティブ型は、整数、実数、文字列などの基本的なデータ型です。一方で参照型は、オブジェクトなどの、より複雑なデータ型です。
制御構文
制御構文とは、プログラムの実行フローを制御するための構文です。ここでは、主な制御構文である「条件分岐」と「繰り返し」を紹介します。
条件分岐は、ある条件が満たされた場合に特定の処理を実行し、満たされない場合には別の処理を実行するための制御構文です。Javaでは、主にif-else文を使って条件分岐を行います。
if-else文 | if (条件式) { // 条件式がtrueの場合に実行される処理 } else { // 条件式がfalseの場合に実行される処理 } |
---|
繰り返しは、同じ処理を何度も実行するための制御構文です。Javaでは、for文、while文、do-while文を使って繰り返し処理をします。繰り返しの回数が決まっている場合はfor文、条件を満たす限り繰り返し処理をさせたい場合はwhile文やdo-while文を使います。
for文 | for (初期化式; 条件式; 増減式) { // 条件式がtrueの時に繰り返し処理 } |
---|---|
while文 | while (条件式) { // 条件式がtrueの時に繰り返し処理 } |
do-while文 | do { // 条件式がtrueの時に繰り返し処理 } while (条件式); |
●Java基礎知識「フレームワーク」
Javaのフレームワークとは、アプリケーション開発の土台となるソフトウェアです。フレームワークを使えばプログラムの設計や開発を効率化できるうえ、プログラムの品質や保守性・拡張性を高められます。
アプリを料理に見立てた場合、フレームワークはレシピや調理器具のように、アプリの基本的な構造や設計パターンなどの流れと枠組み、便利なツールを提供しています。レシピがあることで作り方の手順がわかり、調理器具のような必要なツールを使うことで効率よく作れます。開発者はフレームワークに従うことで、少ない労力でアプリを開発できます。
Javaには様々なフレームワークがありますが、企業向けに開発された代表的なフレームワークとしてはデファクトスタンダードとして知られている「Spring Framework」や、Java標準仕様の「Jakarta EE(旧Java EE)」などが挙げられます。
●Java基礎知識「ライブラリとAPI」
ライブラリとは、開発者がアプリケーションを構築する際に役立つ機能やコードの集まりです。「再利用可能な部品の集まり」と表現されることもあります。
アプリ開発を料理に見立てた場合、ライブラリは調味料です。自分で一から調味料を作る代わりに、既に用意された調味料(ライブラリ)を使うことで、料理(プログラム)の完成を早め、味(機能)を豊かにすることができます。
ライブラリはフレームワークと混同されがちですが、両者の目的は異なります。フレームワークは全体の骨組みを定めるもので、レシピに似ています。レシピでカレールウを推奨されるように、フレームワークがライブラリに似た機能を担うケースはあるものの、基本的に両者の役割は異なります。
ライブラリは多種多様ですが、代表的なものを3つ紹介します。
ライブラリ | 概要 |
---|---|
Java標準ライブラリ | Java標準で含まれているライブラリ。JDK(Java Development Kit)に同梱されています。java.langやjava.utilなどがあります。 |
Apache Commonsライブラリ | ファイル操作、文字列操作、日付処理などの基本的なタスクを簡単に実行できます。 |
Jackson | JavaオブジェクトとJSONの相互変換ができます。 |
API(Application Programming Interface)とは、ほかのシステムやサービスと連携し、機能を共有するためのインターフェイスです。つまり、他社が開発した機能を、自社のアプリに埋め込める仕組み。APIと連携することで、自社アプリの機能やサービスを拡張できます。
JavaにおけるAPIとは、特定の機能を持つコードをクラスとして定義し、そのクラスを複数まとめた「クラスライブラリ」のことです。Java APIを利用するとコード記述の手間が省けるうえに、記述量が減ってソースコードが読みやすくなるため、保守性を高めやすいというメリットもあります。
●Java基礎知識「オブジェクト指向」
Javaはオブジェクト指向プログラミング言語です。オブジェクト指向は複雑な概念ですが、ここではざっくりとイメージを掴んでもらうために、動物園に例えて解説します。簡単にいえば、以下のような概念を個別に扱い、それぞれを組み合わせやすくするという考え方のことをオブジェクト指向と呼びます。
主要な概念 | 概要 | 具体例 |
---|---|---|
クラス | 属性と動作を定義する。オブジェクトの設計図となる。 | 動物の種類や分類。「ゾウ」クラスの場合、その動物が持つ特性(色や大きさ、鼻を使って水を飲むなど)が定義されている。 |
オブジェクト | クラスを元に生成された具体的なデータ構造(インスタンス)。 | 具体的な動物個体。「ゾウ」クラスから生成されたゾウAとゾウBはそれぞれ異なるオブジェクトになる。 |
継承 | あるクラスの特性を別のクラスに引き継ぐ。 | 「ゾウ」クラスは「哺乳類」クラスを親クラスから継承されている。 |
カプセル化 | クラスの内部データや機能を隠し、外部から直接アクセスできるのは必要最低限の情報や操作にのみにする。 | 各動物が自分自身の生態を管理し、飼育員が必要とする行動だけを見せる状態。 |
ポリモーフィズム | 同じメソッド(処理)に対して、オブジェクトごとに異なる機能・動作をする。 | 動物園で「餌をあげる」という操作がある場合、それぞれの動物(オブジェクト)は同じ「餌をあげる」命令に対して、異なる食べ方(動作)をする。 |
Javaで作るアプリ開発の手順
プロジェクトの規模や目的によっては、開発手順の順序や内容が異なる場合がありますので、発注者としておおまかな流れを押さえておきましょう。Javaでアプリ開発するための一般的な手順は以下のとおりです。
●1.環境構築の準備
Javaでアプリ開発するためには、Java開発キット(JDK)と統合開発環境(IDE)をインストールする必要があります。
Java開発キット(JDK)のインストール
「Java開発キット(JDK/Java Development Kit)」をインストールします。JDKは、Javaでソフトウェア開発をするのに必要なJava仮想マシン、コンパイラ、デバッグツールなど、Javaのプログラム開発に必須のツールをまとめたパッケージです。JDKはOracleの公式サイトから無料でダウンロードできます。
統合開発環境(IDE)のインストール
Javaのプログラムを書くための統合開発環境(IDE)をインストールします。IDEは、コードの自動補完やデバッグ機能、ビルドやデプロイの自動化など、開発作業を効率化するための機能を提供しています。Java開発ではEclipse、NetBeans、IntelliJ IDEAといったIDEが使われています。
プログラムを開発するだけならJDKとエディタだけでも十分ですが、IDEにはプログラムの自動補完やコードの重複、コードを再構築する機能など、コーディングをサポートする便利な機能が用意されており、開発効率が向上します。
●2.要件定義
アプリに必要なもの、アプリで達成したい要件を定めて、クライアントと開発会社の間で認識をすり合わせることを要件定義といいます。要件定義では、アプリの目的や不可欠な機能、ターゲットユーザーを明確にします。要件定義が甘いと開発途中に多くのトラブルが発生しやすいため、アプリ開発のカギを握る重要な工程です。プロジェクトによって要件の内容は変わりますが、以下の2つは必ず行われます。
-
アプリの目的と機能を明確にする
-
アプリ開発におけるスケジュールや予算を決める
●3.設計
アプリの設計では、要件定義に基づいてアプリの構造や機能を具体化し、ライブラリの種類やデータベースの設計、画面設計やUIの設計などを詳細に決めていきます。設計書を作成するのは、開発チーム内でアプリの構造や機能についての認識を共有するためです。設計書をもとにテストを実行し、設計された内容が実装されているかどうかを検証することで、品質の高いアプリを作成できます。
設計書は大きく以下の4つに分けられます。
-
外部設計書
-
内部設計書
-
プログラム設計書
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テスト設計書
●4.実装・テスト
実装は、プログラム設計書に基づいてコーディングを行い、アプリを動かすのに必要な機能を開発したり組み込んだりする工程です。機能や性能を検証し、問題があればそれを修正するためにテストを行います。テストと一口にいっても機能テスト、システムテスト、性能テストなど多岐にわたります。テスト工程を通じてアプリの機能や性能に不具合が見つかった場合は、修正をして再度テストをします。実装とテストを繰り返し、アプリの品質を高めていきます。
●5.リリース・運用保守
テストが完了したら、アプリをリリースします。スマートフォン向けアプリの場合は、App Store(iOS)やGoogle Play(Android) などの公式プラットフォームをとおしてアプリをユーザーに公開します。アプリをリリースした後もバグの修正や機能追加などの保守作業が必要です。運用保守は、市場の変化やユーザーフィードバックに対応してアプリを改善・アップデートし、アプリを長く利用してもらうための重要なプロセスです。
アプリ開発における外注成功のポイント
アプリ開発において、外部への依頼を成功させるためには、適切な外注先を選び、プロジェクト進行中のコミュニケーションや品質管理にも気を配ることが大切です。ここからは、外注成功のポイントについて解説します。
●外注先選びのポイント
外注先の技術力の高さは、プロジェクトの成功に直結する重要な要素です。Javaに精通しているかどうかを確認するために、過去の実績やプロジェクトの成果物を見て判断しましょう。
また、アプリは完成後も保守・運用が必要です。サポート体制が整っている外注先を選べばアプリの運用についてのサポートを受けられますし、トラブル時にも迅速に対応してもらえます。外注先がサポート体制を整えているかどうかを確認し、長期的な関係を築けるかどうかを見極めましょう。
●コミュニケーションのポイント
複雑なアプリ開発を行う現場では、認識のズレやトラブルはアプリ開発につきものです。コミュニケーションですれ違いが起きやすいからこそ、外注先と円滑なコミュニケーションが取れるかどうかは重要です。開発途中でも定期的に進捗状況を確認し、必要に応じてフィードバックを行いましょう。こまめにコミュニケーションを取ることで、トラブルが発生した際にも迅速に対応でき、プロジェクトの遅れを防げます。
●品質管理におけるポイント
品質管理において重要なのは、要件定義や設計などの上流工程です。要件定義や設計をもとに実装が進むため、発注者がプロジェクトの序盤から積極的にかかわり、アプリの目的や機能、対象ユーザーなどを明確にしておきましょう。そうすれば外注先も「どの程度の品質が求められているのか」を理解しやすくなり、最初の段階でアプリの品質を担保しやすくなります。
上流工程で明確な要件定義をしても、実装してみたら思ったような動きにならなかったり不具合を起こしたりするのはよくあるトラブルです。そのため、アプリの品質はテスト計画にも大きく左右されます。テスト計画は概要・方針を発注者側がチェックして策定するため、発注者側が品質管理の知識を持っていれば、アプリの品質を担保しやすくなります。要件定義の際に、完成したシステムを発注側が受け取ってテストを行う「受け入れテスト(ユーザーテスト))を組み込むのも効果的です。
Javaの基本を押さえ、自社が作りたいアプリの開発ができる外注先を選ぶことが、Javaアプリ開発を成功へ導くポイントです。
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