患者の病名や主な症状、治療方法などの記録に使われる「カルテ」は、病院や歯科医院を営むうえで役立つ存在です。そんなカルテを有効に記録・管理できるツールが電子カルテです。電子カルテの導入を検討する医療関係者、または電子カルテについて詳しく知りたい企業担当者に向けて、電子カルテの基本情報やメリット、開発方法などをわかりやすく解説します。
目次
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電子カルテとは?
電子カルテとは、患者の症状や治療法などの記録を電子化して管理するシステムのことです。患者の病名や症状、治療方法などが記録されている点は従来のカルテと変わりませんが、データで保存ができるため、パソコンやタブレット端末からアクセスができます。カルテの内容を編集したり、医療チーム内で共有したりするのも、パソコンやタブレット端末を通じて行う仕組みです。
電子カルテのメリット
省スペースの実現や情報共有の迅速化など、電子カルテを導入することで得られるメリットは様々です。具体的なメリットの例を、以下でピックアップしました。
●省スペースにつながる
医療カルテは、電子カルテ・紙カルテともに対象となる診療が完了した日から5年間保存することが義務付けられています。紙カルテの場合、院内のバックヤードや倉庫などにファイリングして物理的に保存する必要がありますが、電子カルテであればその必要はありません。電子カルテのデータはサーバやクラウド上に保管されます。カルテの数が増えてもかさばらず、収納スペースが圧迫されることがありません。「紙カルテが増えすぎて管理するのが大変」と考えている方であれば、省スペースの実現に電子カルテが役立ちます。
●カルテの検索がしやすくなる
紙媒体のカルテは、患者の情報を確認する際に「カルテを探す手間」が発生します。対する電子カルテには検索機能が搭載されているため、必要な情報を入力するだけで瞬時に該当するカルテを呼び出せるのが魅力です。また、パソコンやタブレットなどの端末とインターネット環境があれば、場所を問わずカルテを呼び出し、表示できます。カルテの保管場所まで足を運んで探す必要もありません。
●カルテの文字が読みやすくなる
デジタルで文字を入力する電子カルテは、誰にとっても文字が読みやすいカルテを作れます。紙媒体は手書きで文字を書く分「字が汚くて読みづらい」「書いた方にしか読めない」という事態に陥りやすいという問題がありました。カルテの文字を読み間違う心配が少なくなれば、カルテを入力した本人でなくても正確に患者の症状を把握でき、医療ミスの防止にもつながります。
●医師・看護師それぞれの業務効率化につながる
電子カルテを導入することで、医師と看護師それぞれの業務効率化が実現します。例えば、「頻繁に入力する項目のテンプレートを作成する」「診察頻度の高い症状や体の部位などの情報を患者ごとに登録する」といったことが可能です。必要な情報がすべてデジタル化されるため、看護師間のカルテの受け渡し作業や、口頭確認の時間も省略可能になります。
●ほかの機関との情報共有がスムーズになる
電子カルテを導入することで、医療機関やセカンドオピニオンとの情報共有がしやすくなります。これにより、患者を多角的な視点で診療できるようになるのです。紙カルテを搬送・保管したりする手間も省けるため、これらのコスト削減も期待できます。
●患者の待ち時間が減る
電子カルテによって院内の業務が効率化されれば、患者の待ち時間が短縮されます。待ち時間に対するストレスを軽減したり、時間に余裕をもって診察がしやすくなったりといった効果が見込めるのです。くわえて、クリニックの回転率が上がって利益率の向上も期待できます。
電子カルテのデメリット
電子カルテを導入するにあたり重要なのが、メリットだけでなくデメリットも把握しておくことです。電子カルテのデメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
●紙のカルテからの移行時に工数がかかる
医療機関で電子カルテを導入する際は、今まで管理していた紙媒体のカルテを電子化させなくてはなりません。新規に医療機関を立ち上げる場合は別ですが、扱っている紙媒体のカルテが多いと、電子カルテへ移行するのに相応の手間が発生します。移行に伴う作業の負担を軽減するため、電子カルテの導入支援を行っている企業もあります。こうした導入支援や移行支援サービスを活用するのも手です。
●情報漏洩につながることもある
カルテには患者の氏名や生年月日のほか、病名・主な症状・治療方法などの個人情報が多く記録されています。デジタルで管理を行う分、電子カルテは紙媒体よりも情報漏洩のリスクがあることに注意しましょう。ファイアウォールや認証システムによる基本的なセキュリティ対策はもちろん、院内の情報セキュリティに関する教育を徹底することも重要です。情報漏洩は外部からの攻撃や不正アクセスだけでなく、使用者側の不注意によって引き起こされることも少なくありません。例えば、電子カルテのデータが保管されているデバイスを紛失したり、USBメモリやハードディスクなどにデータを保存して無断で持ち出したりといった行為が情報漏洩へつながるのです。
電子カルテにはどんな種類がある?
電子カルテの種類は、大きく「オンプレミス型」「クラウド型」「ハイブリッド型」という3つのタイプに分けられます。それぞれの特徴としては、以下のとおりです。
●オンプレミス型
クリニック内に構築したサーバとローカルネットワークを使って運用するタイプの電子カルテです。物理サーバやパソコンの中に、患者のデータを保存する仕組みとなります。クリニック内でデータを管理する分情報漏洩の心配が少ないうえ、必要に応じてシステムのカスタマイズも可能です。反面、管理コストの発生や、機器が大掛かりになりやすい分、初期費用が発生しやすいという欠点があります。
●クラウド型
インターネット上(クラウド上)にデータを保管するタイプのシステムです。クラウド上のサーバをそのまま使うため、クリニック内に物理的なサーバを構築する必要がありません。「初期費用を抑えやすい」「さらなる省スペースを実現しやすい」といった利点があります。また、インターネット環境と端末があれば、どこからでもカルテの情報へアクセスでき、医師・看護師間のデータの共有も簡単です。ただし、クラウド型はネットに個人情報を記録する分、オンプレミス型よりも情報漏洩のリスクが高くなります。
●ハイブリッド型
オンプレミス型サーバと、クラウドサーバの特徴を兼ね備えたタイプの電子カルテです。通常時はオンプレミス型電子カルテとして使用し、災害時や非常時にはクラウド型の電子カルテへ切り替えて使用するなど、シーンに合わせた使い分けが可能。万が一の備えとして、ハイブリッド型を導入するという手もあります。
電子カルテの機能例
電子カルテの機能は、製品やカスタマイズの内容によってやや異なります。以下でご紹介するのは、電子カルテの基本機能の一例です。
●カルテ入力
カルテを作成できる機能です。患者の基本情報をはじめ、主な症状や病歴、アレルギー、検査および入院後の経過などの基本項目を記入できます。事前にカルテを作成できる機能もあるので、診療時のカルテ作業を簡潔化することも可能です。
●過去カルテの検索や閲覧
過去カルテを検索し、患者の基本情報や診療履歴、受付ステータスなどをチェックできる機能です。禁忌となる事項・治療やアレルギー情報など、治療を進めるにあたって必要な情報もひと目で確認できます。検査結果や治療経過などのデータを、時系列に並べて経過観察に役立てることも可能です。
●受付状況の照会
当日の患者の受付状況をリアルタイムで確認できる機能です。患者の氏名や性別、カルテナンバー、担当医師名などもチェックできます。また、システムによっては初診の患者情報を登録したり、受付ステータスによって患者情報を絞り込んだりといった機能を搭載しているものもみられます。
●テンプレート文面の入力
定型文やよく使う表現、同じ病状などを事前登録し、テンプレートとして入力できる機能です。入力作業を簡潔にできるほか、再診患者情報の入力や対応時にも役立ちます。
●手書き入力・音声入力
タッチペンを使って紙カルテに近い感覚でカルテを作成できる機能や、音声をそのまま文字に変換する音声入力機能が備わっている電子カルテもあります。患者との会話や医師からの指示、看護師同士のやり取りをその場ですぐに記録したい時に役立つ機能です。やり取りの簡易的な議事録やログとしても活用できます。
●他社システムとの連携
クリニック内の各種システムと連携させ、電子カルテの機能をさらに拡張することも可能です。電子カルテと連携させられるシステムとしては、以下のものが挙げられます。
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問診予約システム
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レセプトシステム
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検査システム
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医療用画像管理システム
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リハビリ機能
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薬剤管理システム
電子カルテの導入を検討するうえでの注意点
電子カルテを導入する際は、厚生労働省によって定められている「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」を遵守することが大切です。このガイドラインでは、「電子保存の三原則」として真正性・見読性・保存性を守ることが定められています。
●真正性を遵守
電子カルテにおける真正性とは、「記録された情報が正確であること」「第三者からみてカルテ作成の責任の所在が明確であること」などを指します。また、「過失や故意によるカルテの虚偽入力や改ざん、消去などの心配がなく適切な記録が残されている」という点も真正性で求められる要素です。
●見読性を遵守
見読性とは、必要に応じて肉眼で見て読む、確認できることです。作成した電子カルテは、誰が読んでも内容を理解できるものにする必要があります。また、監査をはじめ日々の診療や患者への説明、監査などの際に、電子カルテの情報をすぐに提供できるような体制も整えなくてはなりません。
保存性を遵守
保存性とは、「記録データを安全に保存できているか」を指します。記録データが、法令に則って一定期間中適切に保存されていなくてはなりません。定められた期間中にデータが残存していることがもちろんですが、真正性と見読性を保っていることも求められます。記録データを守るためにも、機器やソフトウェアの障害や、外部からの不正アクセスなどに対する対策が必要です。
●使いやすさを左右する操作性に注目
優れた機能を搭載していても、「操作画面が見づらい」「使いにくい」という電子カルテでは院内に定着しません。操作画面がわかりやすく、直感的に操作できる電子カルテを選定しましょう。無料トライアルが用意されているのであれば、そちらを使用して操作性をチェックすることをおすすめします。
操作方法を習得するための研修時間も確保しておく
電子カルテを院内に定着させるためには、まとまった研修時間や操作のレクチャー時間を確保することも大切です。医師や看護師、受付などスタッフ全員が操作に慣れれば、ストレスなく電子カルテを使いこなせるようになり、さらなる業務効率化につながります。
電子カルテの活用事例
電子カルテの活用事例をご紹介します。
●共立美容外科の事例
マーケティング担当者や経営陣の提案に留まっており、現場の意見を反映した電子カルテのシステムや予約カルテシステムの導入ができていなかったという共立美容外科。現場が使いこなしやすく、現場の声が反映されたシステムの構築を目指して試行錯誤し、電子カルテとそれに伴う医療システムを刷新・構築しました。導入により、医院全体のキャパシティ増加を実現しています。
●AILE Clinicの事例
AILE Clinicでは、紙カルテから電子カルテへの情報転記、予約情報との照合に課題がありました。そこで、電子カルテやWeb問診票などが一体化している医療システムを導入することで、転記作業や照合作業、確認作業のロスの減少を実現しました。ほかのシステムと連携できる電子カルテを導入することで、スタッフの業務効率化につながった事例だといえます。
●オーロラクリニックの事例
オーロラクリニックの課題となっていたのは、予約管理です。カルテ情報や問診票、予約サイトなど様々な媒体から患者の予約情報が集まってくるため、度々ヒューマンエラーが起こっていました。そこで、電子カルテシステム・予約システム・Web問診票が一体となった医療システムを導入。ミスの防止につながったほか、患者の待ち時間の軽減やカルテ管理の利便性向上にもつながりました。
●ミニマムスキンクリニック銀座
ミニマムスキンクリニック銀座は元々、紙を使用したカルテ管理をしていました。具体的には、「問診票を患者に記入してもらい、その問診票をもとに医師や看護師がカルテを作成する」という方法です。電子カルテを導入することで、患者へ事前にWeb問診票を配布が可能になりました。あわせてカルテの自動生成ができるようになったため、カルテ作成作業そのものが大きく簡略化し、患者の待ち時間短縮にもつながりました。
電子カルテを導入する方法は?
クラウド型とオンプレミス型のどちらにおいても、パッケージ販売されている電子カルテは数多く存在します。製品のオフィシャルサイトでは、電子カルテを導入したい医療施設に向けて、資料請求のフォームを設けているほか、製品の体験会などを開催しているケースもあります。これらを通じて、電子カルテの機能や使い勝手、コストなどを比較検討したうえで導入しましょう。
電子カルテの開発を外注する際のポイント
既存の電子カルテを導入するほか、オリジナルの電子カルテを開発することも可能です。電子カルテの開発を外部のシステム開発会社へ依頼する際は、以下のポイントに注目しましょう。
●電子カルテの開発実績はあるか
電子カルテの開発実績をチェックしましょう。企業の公式サイト内で、開発実績や対応実績を公開しているシステム開発会社を中心に選定します。実績内容が確認できれば、実際に開発してもらえそうな電子カルテのイメージを具体的に持てます。また、実績を確認することで「イメージしていたものと違う」というミスマッチの防止にもつながります。
●対応範囲は明確か
開発作業をどこまで依頼できるのか、対応範囲をしっかりと確認しましょう。「上流工程を中心に対応」「開発や運用・保守を中心に対応」など、対応範囲を明確に棲み分けている開発会社も少なくありません。
●開発後のサポート体制が整備されているか
電子カルテのゴールは、開発・導入することではありません。開発・導入後に運用するために、どの程度のサポートを得られるかも重要なポイントです。長期的・定期的な運用や保守を依頼できるか、不具合があった際に迅速に対応してもらえるかもチェックしましょう。導入後のことを視野に入れていないと、後になって思わぬ追加費用が必要となる可能性もあります。
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