受託開発とは、企業や組織が求めているシステムの開発を外部に依頼し、それに沿ったシステムやソフトウェアを開発することを意味します。IT業界においては頻繁に用いられる受託開発ですが、目的に見合ったシステムやソフトウェア開発ができるよう、受託開発の発注方法や、発注側に発生するメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
目次
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そもそも受託開発って何?
冒頭で述べた通り、受託開発は企業が求めるシステムやソフトウェアの概要をまとめ、外部の企業に開発を依頼する方法です。端的に言えば、システム開発会社に対して「このようなシステムを作ってくれませんか?」と依頼をし、その要望に沿ったシステムを作り上げてもらうことを指します。
新しいシステムやソフトウェアを必要とする際、一般販売されているパッケージソフトを利用する手もあります。とはいえ、パッケージソフトでは必要な機能が備わっていなかったり、業務形態と仕様が合わなかったりする可能性も少なくありません。受託開発なら、これらの懸念点を解消できます。
いわば「オーダーメイド開発」なので、導入目的に合った機能や仕様のシステムやソフトウェアを開発できるのです。
受託開発のメリット
受託開発 | |
---|---|
メリット | デメリット |
開発に伴う工数負担を抑えられる | 自社エンジニアが成長しにくい |
予算計画を立てやすい | セキュリティリスクが生じやすい |
開発費用を抑えやすい | 成果物の仕様変更がしにくい |
受託開発は「求めるシステムやソフトウェアが作りやすい」という点以外にも、以下の3つのメリットがあります。
●開発に伴う工数負担を抑えられる
企業内で新しいシステムを開発するとなると、人員確保や育成、企画や開発に伴う手間や工数負担が大きくなりがちです。受託開発で進めると、開発に伴うこれらの工数負担を抑えられます。発注先の開発会社が代わってほとんどの作業を行ってくれるので、開発における負担を軽減できるのです。
●予算計画を立てやすい
報酬額や支払い時期が明確なため、予算計画を立てやすいのも受託開発の魅力です。後の項で詳しく紹介しますが、受託開発は請負契約のため、契約で決まった報酬以外に費用を支払うことがありません。また、支払いは検収後と時期も決まっているので明確な予算計画を立てやすいのです。これは発注側だけではなく、受注側にも発生するメリットでもあります。
●開発費用を抑えやすい
受託開発は、外注先によって金額を抑えられる可能性があります。受託開発には大体の相場こそあっても定価はないため、金額設定の融通が利きます。したがって、発注先の開発会社とのすり合わせや交渉次第では、開発費用を削減することも可能です。
システムやソフトウェア開発を担う企業の中には、外部の開発企業へ受託開発を依頼し「自社は運営管理や保守に専念する」といった経営を行うケースも珍しくありません。ただし、外部に開発を依頼するという特性上、受託開発の発注にはいくつかのデメリットも生じます。
受託開発のデメリット
例えば、受託開発だけに依存した結果、自社のエンジニアが育ちにくい「内製でシステム開発を行えない」という事態を引き起こしやすくなります。これは、システムやソフトウェア開発を外部に一任する形になると、エンジニアのスキルやノウハウも外部の企業に蓄積されるためです。エンジニアの成長などを考慮する場合は、「必要な部分だけを受託開発で賄う」といった工夫が必要となります。
このほか外部の企業内で開発が進む分、受託開発には「仕様の変更がしにくい」、「セキュリティリスクが生じやすい」などのデメリットがあります。実際に受託開発を依頼する際は、メリットだけに着目をせずに、付随するデメリットについても考慮しておく必要があるでしょう。受託開発を上手に活用すれば、システムやソフトウェア開発を経済的かつスムーズに進めやすくなります。
受託開発の契約形態と責任について
受託開発の契約形態は「請負契約」に該当します。請負契約には主に以下のような特徴があります。
-
請負人は成果物を完成させる義務がある
-
発注者は検収後に一括で報酬を支払う
-
請負人は契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)がある
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発注者は請負人に対して指揮や命令ができない
報酬は、目標や目的が満たされて初めて支払われるものです。発注先の開発会社(請負人)がシステム開発にどれだけ時間をかけたとしても、目標や目的を満たす成果物を納品されない限り、発注者に報酬支払いの義務は生じません。反対に、仕様通りの成果物が納品された場合は、発注者に報酬の支払い義務が生じる仕組みです。
開発会社から成果物を受け取る。
発注者が成果物に対して報酬を支払う。
という仕組みだけを見れば、請負契約は「お店で商品を購入する行為」にも似た契約とも言えるでしょう。請負契約以外にも、契約形態には準委任契約や派遣契約などの種類が存在しますが、以下の項で詳しく紹介します。
請負契約とその他の契約の違い
システムやソフトウェア開発における契約形態は、以下の通りです(2021年1月時点)。
請負契約 | 準委任契約(SES) | 労働者派遣契約 | |
---|---|---|---|
完成責任 | 有り | 無し | 無し |
契約不適合責任 (旧:瑕疵担保責任) |
有り | 無し | 無し |
指揮命令権 | 受注側 | 受注側 | 発注側 |
支払い方法 | 一括 | 一定期間ごと | 一定期間ごと |
●完成責任について
準委任契約や労働者派遣契約に完成責任がないのに対して、請負契約には完成責任があります。前者は万が一システムの完成が契約期間内で間に合わなくても一定期間ごとに報酬を支払わなければなりませんが、請負契約はシステムが未完成なら報酬の支払い義務がありません。また、準委任契約や労働者派遣契約だと発注先常駐対応が基本ですが、完成を前提とする請負契約は作業場所を問わないケースもあります。
●契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)について
請負契約のみ、発注先の開発会社(請負人)には契約不適合責任が課せられます。契約不適合責任とは、契約内容を逸脱することがあれば損害賠償を請求できるものです。2020年4月の民法改正以前は、納品から1年以上経過していた場合、納品物に不備があっても損害賠償の請求は不可能でした。しかし、現在は発注者が「契約に即していない事実」を知ってから1年以内に通知をすれば、発注先の開発会社(請負人)に修理の無償対応や報酬の減額を求められます。
●指揮命令権について
請負契約と準委任契約は、外部の会社にシステム開発を依頼する契約形態。作業の指揮命令権は依頼先の開発会社にあります。そのため、発注者は直接的な指示・命令を出せません。業務の遂行方法や残業、休日出勤、労働時間など、発注側による指示は禁止されています。
●支払い方法
請負契約は完成品に対して報酬を支払う契約のため、完成品を受理した後に一括で報酬を支払う必要があります。対して、準委任契約(SES)と労働者派遣契約は期間契約なので、完成品の有無にかかわらず一定期間ごとに報酬を支払います。
契約形態は何を基準に選ぶべき?
契約形態は「開発を依頼する依頼する目的」に合わせて選ぶことが大切です。
-
「準委任契約(SES)」は、システム開発に必要な労働力を確保したい企業向け。
-
「労働者派遣契約」は、社内に労働力を確保して開発業務を綿密に進めたい企業向け。
-
「請負契約(受託開発)」は、システムの完成や成果物の納品を優先する企業向け。
端的にまとめれば、システム開発における契約の使い分けは上記のようになるでしょう。
例えば、システム開発に必要な労働力や知識のカバーが目的なら、一部の開発業務をエンジニアに依頼できる準委任契約(SES)が良いでしょう。社内で指示を出しながら綿密に開発を進めたいなら、外部へ依頼するのではなく労働者派遣契約を選ぶのがおすすめです。求めるシステムやソフトウェアが明確な場合は、成果物に対して報酬を支払う請負契約(受託開発)が適しています。
発注者が覚えておくべき受託開発の流れ
受託開発の流れ |
---|
1.開発会社への仕事の依頼 |
2.SEやプログラマーとの打ち合わせ |
3.費用がどうなるか見積もりをもらう |
4.予算の決定・システム開発の開始 |
5.SEやプログラマー中心で設計・実装を行う |
6.開発中も担当者と打ち合わせを実施 |
7.システムの完成 |
以下では、実際に受託開発を依頼したい企業担当者の方に向けて、おおまかな受託開発の流れを紹介します。
1.開発会社への仕事の依頼
まずは、開発会社へ依頼するところから始まります。そのためには、インターネットなどを利用して開発会社を探しましょう。もし発注先が未定なら、発注ナビをご利用してみてはいかがでしょうか。発注ナビでは、貴社のシステム開発のパートナー選定をサポートいたします。詳しくは「即戦力のシステム開発会社を探すなら【発注ナビ】」をご覧ください。
2.SEやプログラマーとの打ち合わせ
依頼ができたら開発を行う担当者と、求めているシステムに関する打ち合わせに移ります。予め必要な機能や仕様は何か、予算がどの程度かなど決定しておくのがベストです。口頭で伝えるだけだと話の食い違いが起こる場合もあります。そうならないために資料を準備しておくとよいでしょう。
3.費用がどうなるか見積もりをもらう
打ち合わせで開発を依頼するシステムの詳細が決まったら、見積書を作成してもらいましょう。見積書の項目には機能や基板、検査方法、開発環境、動作環境、動作保証範囲、保証期間、開発スケジュールなどがあり、詳細の把握が可能です。
ちなみに、システム開発の費用の算出によく使用されるのが「人月単価」。これは、エンジニアやプログラマー1人が1か月作業した場合の料金を意味していて、「1人月○万円」と表記されます。1人月の価格は会社や発注時期、作業を担当する人の能力などで異なるので、しっかり確認しておきましょう。見積もり時にチェックしておくとよいポイントに関しては、「システム開発における見積もりって何をチェックすればいい?」をご覧ください。
4.予算の決定・システム開発の開始
開発会社からもらった見積書の確認が終わったら、その内容で開発を進めてもらいます。もし見積書の金額が予算を超えている場合は、機能の優先度を考慮して妥協できる部分を見つけ、予算内におさまるよう上手く調整しましょう。
5.SEやプログラマー中心で設計・実装を行う
SEが機能を設計し、その設計をもとにプログラマーが開発・実装する流れです。一般的に設計・実装の過程ではドキュメントが残されているので、納品時に受け取りを忘れないようにしましょう。
6.開発中も担当者と打ち合わせを実施
求める仕様通りの完成物を手にするためには、開発中の打ち合わせも非常に大切です。定期的に発注先の開発会社と打ち合わせをして進捗状況などを把握しておけば、求めているものと大きくズレた仕様になる事態や納期遅れを防げるでしょう。進捗や打ち合わせの内容次第では、納期や開発内容を変更することもあります。
7.システムの完成
開発中の打ち合わせ内容に応じて必要があれば修正をし、システムが完成します。万が一納品されたシステムに不備やバグなどが起きた際は、開発会社に修正対応を依頼しましょう。
受託開発をする前に知っておくべきこと
最後に、受託開発をする際の注意点についても触れておきましょう。
受託開発の請負契約は、法律によって成果物の完成義務や契約不適合責任などが定められています。請負人(発注先の開発会社)が違反した場合の罰則もあるため、基本的には完成品をきちんと受け取れます。ただし、口頭で契約を結ぶなどした場合は完成義務や契約不適合責任が発生しないため、必ず契約内容を書面にて作成しておくことが大切です。
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