顔認証システムは生体認証の一種です。
監視カメラで撮影した画像から顔の部分を抜き出してデータベースと照合することで、本人を特定して認証を行うシステムです。
近年は、カメラやシステムの制度が向上し、テロ対策や金融システムのセキュリティ、スマホアプリの利用まで、さまざまな分野で活用されています。
今回は、顔認証システムの仕組みや従来のセキュリティと比べた顔認証のメリットなどをご紹介します。
目次
精度向上で活用の幅が広がる顔認証システム
顔認証システムは「顔認識システム」ともいわれ、人間の顔を利用して本人確認に使う生体認証システムです。コンサートチケットの転売防止や、2017年に発売されたiPhone Xに搭載されるなど身近な場所で活用されたことで注目されるようになりました。
ネットやスマホの普及により、本人認証が必要な場面は急激に増加しています。PCやスマホから行うシステムへのログイン、商品購入後のクレジットカード決済、会社やマンションへの入退出など、さまざまなサービスを利用するたびに本人認証が行われています。しかし、これまで一般的に使われてきたIDとパスワードの組み合わせだけでは、流出や不正アクセスなどの事件が多く発生しています。
そこで、より堅固なセキュリティを実現する認証方法として、本人にしか持つことができず、偽造が難しい生体認証が注目されているというわけです。顔認証の技術自体は以前からありますが、近年は技術が向上してカメラの性能や照合精度が向上したことで利用の幅が広がりました。非接触型で認証速度が速くなったことも、普及が拡大した大きな要因です。
技術力が向上したことで、カメラの前に立ち止まる必要がなく、歩いている人の顔をそのまま認識して照合できる「ウォークスルー認証」という新機能が登場しました。これは、イベント会場やテーマパーク、コンサート会場など、多くの人が集まる場所の警備や監視カメラで多く使用されています。立ち止まる必要がないので、個人の認証を行いながらスムーズに入場でき、人の流れを妨げません。
さらに、一台のカメラで複数人の本人認証を同時に行うことが可能です。混雑したイベント会場や交通機関などで、大勢の人の中から特定の人物を抜き出して表示することもできます。
顔認証システムの仕組み
顔認証システムでは、まず画像の中から顔と思われる部分を抽出する「顔検出」を行います。顔検出はデジタルカメラで顔の部分を検出し、ピントを合わせるのと同じ方法です。次に顔の特徴を用いてデータベースと照合する「顔照合」を行います。
顔照合段階で認証を行う方法には、2D顔認証と3D顔認証があります。
●2D顔認証
2D顔認証システムでは、人の顔を平面のイメージとして捉え、目・鼻・口端・顎の形など顔の中から特徴のあるパーツの位置や大きさを抜き出して記録します。それらの特徴の一致する部分で顔を照合します。
●3D顔認証
3D顔認証では、赤外線を使った3Dセンサーで顔の凹凸をデータ化し、立体的な情報を作成します。画像では見えない部分も含めて人の顔を3Dイメージで捉えられるのが特徴です。3D顔認証は2D顔認証よりも認識精度が高く、メイクやヒゲの違いには影響されず、写真を用いたなりすましはできません。
iPhone Xに搭載された顔認証システムは「Face ID」と呼ばれる3D顔認証です。これまでの指紋認証システム(Touch ID)に代わり導入された認証方式で、初期設定時にオーナーの顔を登録すると、次回ログインからはiPhone
Xの画面を見るだけでロックが解除できます。
Face IDはディスプレイ側の「True
Depthカメラ」によりオーナーの顔を3Dイメージでとらえます。メイクや髪型を変えただけでは影響がなく、双子であっても見分けられるといわれています。Appleによると、オーナー以外の顔で誤作動をしてロックが解除できる確率は100万分の1です。Face
IDでのロック解除を試すことができるのは5回までに設定されていて、Apple Payの支払いなどにも端末のロック解除が必要になるため、高いセキュリティで守られています。
従来のセキュリティと比較した顔認証のメリット
顔認証が広く使われるようになったのは、従来の認証方法よりも精度が高く、偽造されにくいというメリットがあるからです。これまでのセキュリティと比べながら、顔認証のメリットをご紹介します。
●生体認証の必要性
これまで一般的だった本人認証は、自分で設定したIDとパスワードを組み合わせたり、認証用のデータを保存したICカードを作成したりして行われていました。しかし、IDとパスワードの組み合わせでは、本人がIDとパスワードを忘れて認証できなくなったり、データベースからの情報漏えいが起こったりする危険性があります。また、ICカードはカードそのものを紛失したり、偽造されたりするリスクもあります。そのため、紛失や偽造の心配が少ない生体認証の必要性が高まっています。
●生体認証の種類
生体認証にもさまざまな方法があり、どの方法を使用するかによって使いやすさやコストが異なります。2018年1月現在、広く使われている生体認証には、顔認証方式のほかに指紋認証や虹彩認証、静脈認証、声紋認証などがあります。
<指紋認証>
指紋認証は、PCのログインやスマホのロック解除などにも使われている方式です。データのサイズが小さく、デバイスも小型化されているため、コストが比較的低いのが特徴です。しかし、指紋認証方式はセンサーに指を直接接触させる必要があり、認証のためのデータ照合に時間がかかります。
<虹彩認証>
虹彩認証は、目の内側にある虹彩という筋肉のパターンで本人認証を行います。非接触型で古くからある精度の高い方式ですが、大きな装置が必要なためあまり普及していません。
<静脈認証>
静脈認証は、指や手のひらの静脈パターンで本人認証を行う方式です。金融機関のATMで広く導入されています。偽造されにくく紛失することがないので、金融機関など長く使用する認証方法に向いています。
<声紋認証>
声紋認証は、声の周波数成分で本人認証を行います。体調によって認証できないことがありますが、緊急事態を知らせるキーワードを作成するなど、ほかの認証方法にはない機能があります。
●顔認証のメリット
顔認証方式に必要なのは一般的なデジタルカメラだけです。指紋や静脈、虹彩、声紋などは読み取りに特殊な装置が必要ですが、顔認証方式は既存のカメラを利用できるのでコストがかかりません。カメラで撮影できる範囲内なら、多少離れていても認証が可能です。
非接触型の認証方法なので、読み取り装置に触れたり、覗き込んだりするなどの動作は不要で、ユーザーにとっても使いやすい認証方法です。監視カメラなどから不特定多数を認証でき、入室時に両手がふさがっていてもカメラの前に立つだけで認証できます。
顔認証システムの活用事例
顔認証システムは、すでに広く普及しています。ここではさまざまな活用事例をご紹介します。
●企業の渉外担当者のモバイル端末
外勤が多く、機密情報を持ち歩く社員がいる会社では、渉外担当者に支給するスマートフォンやタブレット端末のロック解除に顔認証を採用しています。万が一、端末本体が盗難に遭ってもデータ漏えいの心配がなく、外訪先でも高いセキュリティを確保できます。
●店舗の顧客管理
店舗でも顔認証システムを取り入れるところが増えてきています。顔認証システムにより、得意客や会員の来店を素早く把握し、その情報をスタッフ間で共有することで、顧客満足度をアップさせるというサービスです。お客様に「顔パス」で通用するVIPの気分を味わってもらうことができます。
●テーマパークの入場
大手テーマパークでは、年間パスポートに顔認証システムを導入し、年間パスポート契約者向けの入場ゲートを設置しています。これまでは、IDカードとスタッフの目視で本人確認を行っていましたが、顔認証システムの導入によって、入場ゲートのカメラに顔を向けると約1秒で年間パスポートのデータと照合して入場できるようになりました。入場ゲートでの混雑緩和と人件費の削減に効果的です。
活用が広がる顔認証システムの可能性
2020年に東京で開催される大型スポーツイベントでは、入場口付近の混雑緩和やテロ対策を視野に入れた監視システム強化のために、顔認証システムの導入が検討されています。
顔認証システムは、今後もさらに活用の幅が広がるといわれています。
セキュリティ対策だけでなく、顧客満足度の向上や人件費削減など、業務改善に効果的な活用方法を検討してみてはいかがでしょうか。
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