FORTRAN(フォートラン)は、1957年に科学技術計算のために開発され、数値解析やシミュレーションの分野で長年にわたり活用されているプログラミング言語です。その高い計算性能と安定性により、現在も気象予測やエンジニアリング、天文学や地球科学といった幅広い分野で欠かせない存在となっています。
特に、膨大なデータ処理や精密な数値計算が求められるシミュレーションではFORTRANの性能が大きな利点となり、数十年にわたって多くの研究者やエンジニアから信頼を集めています。本記事では、FORTRANの成り立ちやその計算分野での代表的な利用例、さらにPythonやC言語との違いを通して、その特徴と進化を詳しく紹介します。
目次
システム開発会社選びはプロにお任せ完全無料で全国6000社以上からご提案
FORTRAN(フォートラン)とは
FORTRANは、科学技術計算や数値解析のために1957年に開発されたプログラミング言語です。まずは、FORTRANの基本概要、開発背景、そして長く使われ続けている理由から見ていきましょう。
●FORTRANの基本概要
FORTRANは1957年にIBMによって科学技術計算用として開発されたプログラミング言語です。
FORTRANは、世界で初めて実用化された高級プログラミング言語としても知られ、開発当初から数値計算分野での精度や効率性を追求しており、科学者やエンジニアから長期にわたり信頼されつづけている言語です。現在に至るまで改良が加えられ、現代の計算需要にも対応できる拡張性を持っています。
●FORTRANの開発背景
FORTRANが開発された背景には、開発された当時1950年代の技術計算に対するニーズの高まりがありました。当時は、複雑な数値計算を行うにはアセンブリ言語が主流でしたが、アセンブリ言語は細かいコード記述が必要で、数式や複雑な計算の記述が煩雑でした。この状況を打開するために、数値計算を簡単に記述できる高水準の言語が求められていたのです。
FORTRANはこの需要に応える形で開発され、数式を扱いやすくし、計算を効率的に処理する構造を持っています。さらに、抽象度の高い記述が可能で、計算が重要な場面でも開発者が扱いやすいという利点がありました。これらの要素によって、FORTRANは画期的なプログラミング言語として科学技術分野での地位を築き、後の数多くの高級プログラミング言語の礎にもなりました。
●今も使われる理由
FORTRANが長きにわたって使用され続けている理由は、その計算性能の高さと互換性の維持にあります。
FORTRANは科学技術計算に特化しているため、数値処理やシミュレーションが求められる場面で非常に優れた効率を発揮します。また、過去のバージョンとの互換性がしっかりと保たれているため、以前に作成された膨大なコード資産をそのまま利用できるのも強みです。このため、レガシーシステムにも適応しやすく、長期的に使い続けられています。また、FORTRANは特定の分野において継続的に利用されているため、 膨大なコード資産やライブラリが蓄積されており、新たなプロジェクトでもすぐに活用できる環境が整っている点も、今日に至るまで支持され続けている理由の1つです。これらの理由により、開発から70年以上経過しても使用されつづけているのです。
FORTRANの主な用途と適用分野
FORTRANは、科学技術計算やシミュレーションにおいて膨大なデータを効率的に扱えるプログラミング言語です。ここでは、FORTRANの活用シーンとして、気象予測、エンジニアリング分野、さらには天文学や地球科学といった分野での応用について解説します。
●気象予測とシミュレーション
FORTRANは、気象予測の分野での長い使用実績があり、大規模なデータ解析に適した特性を持っています。気象予測には、多くの観測データを基に将来の気象条件を予測する数値モデルが用いられます。FORTRANは、こうした膨大なデータ処理を迅速かつ正確に行うため、気象シミュレーションにおいて欠かせない言語です。
■気象モデルの使用例
-
WRF(Weather Research and Forecasting Model):天気予報や気候シミュレーションに広く使用されるモデルで、FORTRANで実装されており、膨大な気象データを効率的に処理します
-
台風進路予測:台風の進路や強度予測にも使用され、FORTRANの処理速度が正確な結果を導きます
■FORTRANの利点
-
並列処理:同時に複数のデータセットを処理する能力があり、リアルタイムのデータ処理にも適しています
-
環境予測:温暖化の影響や異常気象の解析に役立ち、気候変動への対応にも応用されています
これにより、気象研究者はFORTRANを使って高精度なシミュレーションを実施し、災害予防や気候変動への対策を支援しています。
●エンジニアリングと物理シミュレーション
FORTRANはエンジニアリングや物理シミュレーションの分野でも、多くのプロジェクトで採用されています。
航空宇宙工学や流体力学など、高精度な数値解析が要求される場面で、その計算性能が生かされています。航空機や宇宙船の設計における流体解析は、FORTRANの効率的な数値計算によって精度の高いシミュレーションが可能です。
分野 | 主な用途と利点 |
---|---|
航空宇宙工学 | 気流や空力の解析。高速計算で複雑な流体シミュレーションが可能 |
橋梁設計・建築構造解析 | 大規模な建築物の構造解析。並列処理によりスーパーコンピュータでの大量計算に対応 |
エネルギー解析 | 発電設備の効率化や振動解析。計算精度が必要なシミュレーションで活用 |
■FORTRANの並列処理
スーパーコンピュータを活用した大規模な構造解析やエネルギー解析が実現可能で、現場における高精度シミュレーションに役立ちます。
こうした特徴により、FORTRANは複雑な構造計算やエネルギー解析が必要なエンジニアリング分野で欠かせない存在です。
●そのほかの活用分野
FORTRANは、天文学や地球科学など、基礎研究の分野でも広く利用されています。例えば、天文学においては、銀河や惑星の運動をモデル化し、その運動や構造の解明を行うシミュレーションなどです。FORTRANの高い計算性能が、以下のような精密な解析を支えています。
-
天文学:星や銀河の形成過程をシミュレーションし、宇宙の構造を解析
-
地球科学:地震波の伝播解析や地殻変動モデルの構築
-
材料工学・化学:新素材の特性解析や分子シミュレーション、化学反応のモデリング
-
エネルギー開発:複雑なエネルギー解析や発電システムのシミュレーションで利用され、再生可能エネルギーの開発にも貢献
これらの研究分野において、FORTRANは信頼できる解析ツールとして、基礎研究や応用研究に大きく貢献しています。
FORTRANのバージョンと進化
FORTRANは、1957年にIBMによって科学技術計算用に開発されたプログラミング言語です。長い歴史を通じて計算の効率化や新しい技術に対応するため、各バージョンで多くの改良が加えられてきました。以下では、FORTRANの主なバージョンの変遷と、追加された機能について解説します。
●初期バージョンから現在までの流れ
-
FORTRAN I(1957年):世界初の高級プログラミング言語。主に数値計算用に設計
-
FORTRAN 66(1966年):初の標準化を実現し、広く普及
-
FORTRAN 77(1978年):制御構造や文字列処理の機能を強化、実用性向上
-
Fortran 90(1991年):モジュールや動的メモリ割り当てを導入。配列処理が柔軟に
-
Fortran 2003(2004年):オブジェクト指向をサポート。C言語との相互運用性も向上
-
Fortran 2008(2010年):並列処理と配列操作が強化され、現代システムに対応
FORTRANの最初のバージョンである「FORTRAN I」は1957年に登場し、世界初の高級プログラミング言語とされています。当時は数値計算を主な目的として設計され、効率的な計算処理が可能になりました。その後、1966年には「FORTRAN 66」がリリースされ、初めて標準化が実現します。これにより、様々なコンピュータでFORTRANが広く普及しました。
1978年の「FORTRAN 77」では、制御構造や文字列処理の機能が強化され、より実用的なプログラミングが可能となりました。続いて1991年に登場した「Fortran 90」では、モジュールや動的メモリ割り当て、さらに配列処理の改善が加えられ、柔軟なプログラミングが可能になっています。
2003年の「Fortran 2003」では、オブジェクト指向プログラミングのサポートが追加され、C言語との相互運用性が強化されました。
さらに、2008年には「Fortran 2008」がリリースされ、並列処理や配列操作の機能が強化されるなど、現代のシステムに対応する仕様が整えられました。
こうしたバージョンの変遷を通して、FORTRANは高度な数値計算や科学技術計算において欠かせない存在として進化してきました。
●FORTRAN 2018と最新動向
FORTRANの最新バージョンである「Fortran 2018」は、さらなる並列処理の強化が特徴です。これにより、科学技術計算や大規模シミュレーションにおいて、複雑な計算を短時間で実行することが可能になりました。また、C言語との相互運用性も向上しており、ほかのプログラミング言語と組み合わせて利用しやすい点が評価されています。結果、既存システムとの連携もスムーズに行えるため、FORTRANの利用範囲が広がっています。
前述しましたが、Fortran 2018は従来のバージョンとの互換性も維持しており、旧バージョンで書かれたコードも引き続き使用可能です。FORTRANは新しい技術にも対応しながら、過去の資産を活用できます。
科学技術計算やシミュレーション分野では、今後もFORTRANの需要が続くと予想されており、長年にわたる信頼性と互換性を備えたFORTRANは、引き続き利用され続けるでしょう。
FORTRANとほかのプログラミング言語の違い
FORTRAN(フォートラン)は、科学技術計算や数値計算に特化した言語として、PythonやC言語と異なる特徴を持っています。ここでは、FORTRANがどのように他言語と異なり、それぞれの強みが活かされるシーンについて解説します。
●FORTRANとPythonの違い
Pythonは、柔軟性とユーザーフレンドリーな設計で初心者から専門家まで幅広いユーザーに利用されるプログラミング言語です。動的型付けを特徴とし、コードが簡潔に書けるため、迅速な開発やプロトタイピングに適しています。
また、Pythonはデータ解析や機械学習、Web開発など様々な分野で利用されており、数多くのライブラリ(Pandas、NumPy、TensorFlowなど)を備えています。これにより、PythonはAIやデータサイエンス、Webアプリケーション開発において欠かせない存在となっています。しかし、Pythonの計算速度はFORTRANと比較して遅いため、特に大規模な数値計算や精度が要求される物理シミュレーションなどの分野では適していません。
特徴 | Python | FORTRAN |
---|---|---|
型付け | 動的型付け | 静的型付け |
用途 | データ解析、機械学習、Web開発、AI | 科学技術計算、数値解析、物理シミュレーション |
計算速度 | 遅い(大規模な数値計算には不向き) | 高速(大規模な数値計算に適している) |
ライブラリ | 豊富(AI、データサイエンス、Web関連) | 専門的(数値計算やシミュレーション用のライブラリが充実) |
使い分けとして、Pythonは汎用的なタスクや、プロトタイピング、特にデータ解析や機械学習に向いています。一方、正確で高速な計算が求められる大規模なシミュレーションや科学技術計算にはFORTRANが適しています。FORTRANは計算の一貫性と速度が要求される分野に特化しており、長年にわたり科学技術分野で広く利用されているといった違いがあります。
●FORTRANとC言語の違い
C言語は、汎用性と高い性能を特徴とするプログラミング言語で、システム開発や組み込み開発において多く利用されています。C言語は低レベルのメモリ管理が可能で、コードの自由度が高い反面、管理が複雑であることも特徴です。OSやデバイスドライバなどシステムレベルでの操作が求められる開発に適していますが、FORTRANと比較すると科学技術計算や大規模な数値処理の効率では劣る場合もあります。
特に、FORTRANは配列処理や行列演算といった数値計算の最適化が行われているため、シミュレーションや解析といった面ではFORTRANが優れています。
特徴 | C言語 | FORTRAN |
---|---|---|
用途 | システム開発、組み込み開発、OSやドライバ | 科学技術計算、数値解析、物理シミュレーション |
メモリ管理 | 手動管理が必要 | 自動化された数値配列管理が可能 |
計算効率 | 配列操作がやや複雑で大規模な数値計算には不向き | 配列処理に最適化され、数値解析の効率が高い |
並列処理 | ライブラリを利用することで実装可能だが、計算向けに最適化されていない | 標準で並列処理が可能であり、科学計算分野での利用が進んでいる |
FORTRANとC言語の使い分けとしては、OSやデバイスドライバなど低レベルなシステム開発にはC言語、数値計算や行列演算が多く必要な科学技術計算にはFORTRANが適しているでしょう。プロジェクトによっては、併用されることもあります。
FORTRAN活用でプロジェクトの成功を支援
FORTRANは、科学技術計算や大規模シミュレーションに特化したプログラミング言語として、長年にわたり活用されてきました。特に、高速な数値処理が求められる場面や既存コードの再利用が重要なプロジェクトでは、FORTRANの強みが発揮されています。
また、豊富なライブラリやツール、並列処理への対応によって、複雑な数値解析や大規模シミュレーションも効率よく進められるため、FORTRANは研究開発やエンジニアリングの分野で欠かせない存在となっています。
発注ナビでは、企業のニーズに合わせたシステムを開発できるベンダーやメーカーを数多くご紹介しています。「自社に合った開発会社がわからない」「選定にできるだけ時間をかけずにスムーズに導入したい」とお考えのご担当者様は、ぜひ一度発注ナビの利用をご検討してみてはいかがでしょうか。
システム開発会社選びはプロにお任せ完全無料で全国6000社以上からご提案