
Webサイト運用やサーバ管理でよく耳にする「FTP」は、インターネットの黎明期から使われてきたファイル転送の基本技術です。一方で、現在のセキュリティ基準では注意点も少なくありません。この記事では、FTPの役割やサーバ/クライアントの関係、アップロード・ダウンロードの基本操作に加えて、アクティブ/パッシブの接続方式や転送モードの違いを整理します。さらに、暗号化されないことによる深刻なリスクと、FTPS・SFTPといった安全な代替手段、主要なクライアントソフトまで順に解説します。まずは「FTPの基本」から見ていきましょう。
目次
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FTPの基本
FTPは、インターネットの初期からファイル転送の土台を支えてきた仕組みです。まずは、名前の意味や役割、やり取りの流れを押さえておくと、その後の安全な使い方や代替手段の理解が進みます。
●FTPとは何か
FTPは「File Transfer Protocol(ファイル転送プロトコル)」の略称で、ネットワーク越しにコンピューター間でファイルを送受信するための通信ルールです。通信は「クライアント・サーバモデル」で成り立ち、ファイルを保管・提供する側がサーバ、操作する側がクライアントという役割に分かれます。1970年代から広く使われ、Webサイトの公開や更新、大容量ファイルのやり取りなどに長年活用されてきました。
このモデルは分かりやすさが大きな利点でしたが、相手が本当に信頼できるかを強く確かめる仕組みが弱く、現在の「ゼロトラスト」を前提とした環境では限界が目立ちます。仕組みの理解は、その弱点を見極める第一歩といえるでしょう。
●FTPサーバとFTPクライアント
FTPサーバは、Webサイトのデータなどを保管し、要求に応じてファイルの提供や保存を行います。対してFTPクライアントはユーザー側のコンピューターや専用ソフトのことで、サーバに接続し「ダウンロードしたい」「アップロードしたい」といった指示を送ります。
接続には、ホスト名(サーバアドレス)、ユーザー名、パスワード、そしてポート番号が必要です。通常のFTPではコントロール用に21番ポートが用いられますが、暗号化方式によって番号が異なる場合もあります。これらの基本情報が、作業の起点になります。
FTPでできること
FTPは、単にファイルを送るだけの道具ではありません。Webサイトの公開や更新、バックアップの取得、サーバ内の整理など、日々の運用に直結する操作を一通りカバーします。ここからは代表的な使い方を、次の詳細につなげながら説明します。
●ファイルのアップロード
ローカル環境で作成したHTML、CSS、画像などをサーバへ転送すると、Webサイトとして公開できます。多くのクライアントソフトは左右2画面の構成で、左が自分のPC、右がサーバの一覧です。指定フォルダ(例:httpdocs、public_html、www など)にドラッグ&ドロップするだけで、複数ファイルのまとめ転送も簡単に行えます。
●ファイルのダウンロード
サーバ側のファイルをローカルに保存することも可能です。更新前にコピーを手元へ落としておけば、編集やバックアップがしやすくなります。こちらも画面右(サーバ)から左(PC)へドラッグ&ドロップするだけで操作でき、難しいコマンドを覚える必要はありません。
●サーバ上での編集や更新
ファイルの入れ替えによるページ更新、不要ファイルの削除、ディレクトリの新規作成や名称変更、パーミッション(アクセス権)の設定といった管理作業にも対応します。FTPは、Web運用の“現場感”のある基本ツールとして、長く支持されてきました。
FTPの仕組み
FTPならではの技術的な特徴を知ると、なぜ接続がうまくいかないのか、なぜセキュリティ上の配慮が要るのかが腑に落ちます。ここでは、データの通り道と通信モード、転送モードの違いを順に押さえます。
●アクティブモードとパッシブモード
FTPは「コントロールコネクション(制御)」と「データコネクション(転送)」という2種類の経路を使い分けます。このときデータ側の接続方法として、アクティブモードとパッシブモードがあります。
アクティブモードは、クライアントが待ち受けるポートを伝え、サーバ側から接続してくる方式です。ところが、外部からの接続を厳しく制限するファイアウォールと相性が悪く、現代の環境では動作しづらい場面が多くなりました。
パッシブモードは、サーバが転送用ポートを知らせ、クライアント側から接続を開始する方式です。通信の開始点が常にクライアント側になるためファイアウォールと親和性が高く、現在の実質的な標準として使われています。
●転送モード(バイナリとアスキー)
転送するファイルの種類に応じて、モードの選択が変わります。バイナリモードは画像・動画・実行ファイルなどの非テキスト向けで、内容を一切変えずに送ります。アスキーモードはテキスト専用で、OSごとに異なる改行コードを自動調整します。
画像を誤ってアスキーモードで送ると破損の原因になりますが、現在の多くのクライアントには拡張子から自動判別する「自動モード」が備わっています。迷う場面でも適切なモードを選んでくれるのが安心材料です。
FTPのセキュリティ課題
最も重要なのが安全性の問題です。便利さの裏側で、素のFTPには見過ごせない弱点が残っています。ここでは具体的なリスクを整理します。
●情報が暗号化されない
素のFTPは通信が暗号化されず、ユーザー名やパスワード、ファイルの中身まで平文で流れます。公共のWi-Fiのような環境では、同じネットワーク上の第三者がパケットをのぞき見るだけで認証情報を盗める可能性があります。いったん漏えいすれば、サイト改ざんやマルウェア設置など深刻な被害につながりかねません。
暗号化がないため、中間者攻撃(Man-in-the-Middle)にも弱く、受け取ったファイルが改ざんされていても気づきにくいという問題があります。さらに、FTPポート(21番)が開いているだけでセキュリティ診断で指摘対象になるなど、現在の基準では“危ない入口”として扱われます。
●匿名アクセスの危険性
FTPは、性善説的な設計により通信相手の真正性を強く担保しないままやり取りできてしまう点が弱点です。暗号化も完全性チェックもないまま幅広い相手とやり取りすれば、盗聴や改ざんの余地が残ります。信頼できる相手だけに限定するつもりでも、現在の敵対的なインターネット環境では想定外のリスクが発生しやすいことを念頭に置くべきでしょう。
FTPの代替手段
では、何を使えば安全に転送できるのでしょうか。現在は、FTPSとSFTPという暗号化された方式が主流です。名前は似ていますが仕組みが異なるため、特徴を比べて選ぶと納得感が高まります。目的に応じたHTTPSの位置づけも合わせて確認します。
●FTPS
FTPSは「FTP over SSL/TLS」の略称で、従来のFTPにSSL/TLSの暗号化をかける方式です。HTTPSでも使われる実績のある暗号化技術により、コントロールとデータの両経路を保護します。操作感はFTPに近い一方で、制御用と転送用で複数ポートを扱う構造は変わらないため、ファイアウォール設定が複雑になる場合があります。
●SFTP
SFTPは「SSH File Transfer Protocol」で、SSH(Secure Shell)を土台に設計された別物のプロトコルです。コマンドとデータを単一ポート(通常22番)でやり取りでき、ファイアウォールの設定がシンプルです。ユーザー名とパスワードに加えて、より強固な公開鍵認証も使えるため、運用面の安心感が高い方式として推奨されています。
| 特徴 | FTPS(FTP over SSL/TLS) | SFTP(SSH File Transfer Protocol) |
|---|---|---|
| 基盤技術 | FTPをSSL/TLSで保護 | SSHのサブシステム |
| 使用ポート数 | 2つ(制御/転送) | 1つ(通常22番) |
| ファイアウォール | 複雑になりやすい | 設定が簡潔 |
| 認証方式 | ユーザー名/パスワード、証明書 | ユーザー名/パスワード、公開鍵認証 |
| 推奨度 | 安全 | より推奨 |
●HTTPS
HTTPSは安全なWeb閲覧のための仕組みで、主目的はページの表示です。ブラウザから単一ファイルをダウンロードする場面ではHTTPSが使われますが、サーバ上のファイル一覧表示や名称変更、効率的な複数アップロードといった管理機能は持ちません。Web閲覧や単発の取得はHTTPS、総合的なファイル管理はSFTPという切り分けが適切です。
FTPソフトの活用
安全な転送を実践するには、SFTPやFTPSに対応したクライアントを選ぶことが欠かせません。ここでは代表的なソフトを、対応OSや特徴とあわせて整理します。自分の環境と用途に合うものを見つけて、次のアクションへ進みましょう。
| ソフト | 対応OS | SFTP/FTPS対応 | 主な特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| FileZilla | Windows / macOS / Linux | 両方対応 | 高機能・高速、複数接続や中断/再開に対応 | パワーユーザー、複数OSで使う人 |
| WinSCP | Windows | 両方対応 | シンプルなUI、セキュア接続を重視 | Windowsユーザー、分かりやすさを重視する人 |
| FFFTP | Windows | FTPSのみ | 国産の伝統的2画面UI | 限定的なレガシー環境での利用 |
| Cyberduck | Windows / macOS | 両方対応 | モダンなUI、SFTP/FTPSに加え各種クラウドへ接続 | クラウドも併用したい人 |
FTPのメリットとデメリット
最後に、良い面と注意点を整理しておくと判断がしやすくなります。歴史的に広く使われてきた利便性と、現代基準でのリスクを並べて見比べましょう。
●メリット
大きなサイズのデータでも効率よく転送でき、ディレクトリ単位でのアップロードやダウンロードも可能です。画面が左右に分かれたクライアントなら直感的に操作でき、Web更新やサーバ整理の基本作業を一通りカバーできます。多くの無料クライアントが提供されている点も、導入のハードルを下げています。
●デメリット
最大の弱点は暗号化がないことです。ID・パスワードやファイル内容が平文で流れるため、盗聴や改ざんのリスクを常に抱えます。さらに、複数ポートを扱う構造やファイアウォールとの相性の問題が運用を難しくし、厳しいセキュリティ要件の環境では利用を避けるべきケースが増えています。
FTPを正しく理解して安全に使おう
FTPは、仕組みの分かりやすさゆえにWeb運用の現場で長く使われてきました。しかし現代では、暗号化されない通信は大きなリスクになります。まずはFileZilla、WinSCP、CyberduckなどSFTP/FTPS対応のクライアントを用意し、利用中のサーバがSFTP接続に対応しているか確認しましょう。
安全な代替手段へ切り替える準備を進めることが、データと利用者の信頼を守る最短距離です。暗号化された方式でのファイル転送を標準にしていきましょう。
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