医療業界におけるIT化は、業務効率の向上や医療サービスの質向上を目指すうえで不可欠な取り組みです。電子カルテやオンライン診療、AI技術の導入など、医療現場のデジタル化が進んでいますが、まだ多くの課題が残されています。IT化の進展によって、人手不足の解消や診断精度の向上、災害時のBCP対策など、現代医療における重要な課題を解決する可能性が広がります。
本記事では、医療IT化の現状とその必要性、さらに具体的なメリットとデメリット、そして成功するための外注先選定のポイントについて詳しく解説します。
目次
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医療IT化の現状とその必要性
医療業界のIT化は進んでいますが、まだまだ改善の余地があります。ここでは、現状やIT化の必要性について解説します。
●医療IT化の現状とは
医療のIT化は、医療機関の運営を効率化するだけでなく、利用者や患者により良いサービスを提供できるのが特徴です。ここでは、医療機関が導入しているIT化の例を紹介します。
電子カルテ
多くの医療機関では、電子カルテが導入されています。電子カルテは、情報の一元化や入力のしやすさのほかにも、紙カルテを持って院内を移動するといった物理的な負担も減らしてくれます。また、複数のクリニックを経営している場合、拠点間で情報共有ができる点も電子カルテのメリットです。また、オンライン診療にはデジタルデータは不可欠です。さらに、インターネットを介してデータをやり取りできるため、訪問診療時に紙カルテではなく端末を用いて対応できます。
オンライン診療
オンライン診療は、インターネットを介して通院できない患者へ医療サービスを提供するものです。遠隔地に住む患者や体の不自由な患者の診察ができるため、患者と医師の双方にとって利便性が向上します。例えば、離島の診療所と本島の医療機関をオンラインでつなぎ、遠隔地の患者を診断するといった実証実験も行われました。
AI技術の導入
AI技術の医療分野への導入は進んでおり、特に画像診断支援や病理診断支援の分野で大きな成果を上げています。AIは膨大な医療データを解析し、診断の精度を向上させるとともに、医師の負担を軽減する役割を果たしています。また、ウェアラブルデバイスを使うことで、日常的な健康データの収集が可能となり、患者自身の健康管理や早期診断に役立っています。これらのデバイスは、心拍数や血圧、睡眠状態などをモニタリングし、異常が検知された場合には早期に医療機関に通知される仕組みが整備されているためです。
今の課題と今後の対策
医療機関のIT化には多くの課題が存在します。まず、人件費やシステム導入コストの高さは大きな障害です。これを克服するためには、国や自治体の補助金制度の拡充が求められています。また、デバイスや機器類の操作の習熟には時間がかかるため、医療従事者向けの研修やサポート体制の強化も不可欠です。さらに、セキュリティの確保も重要な課題であり、医療情報の漏洩を防ぐための対策をしなくてはいけません。さらに、医療機関のITリテラシーの向上や適切なシステムの選定も必須です。
●医療IT化が必要な理由
医療IT化は、現代の医療業界において不可欠です。以下では、医療IT化の具体的な必要性について詳しく解説します。
人手不足と業務効率化
人手不足と業務効率化が求められる現代において、医療ITの導入は不可欠です。電子カルテの導入によって手書きのカルテ作成が不要になれば、実務作業の時間を大幅に短縮できます。結果、医師や看護師の時間ができ、患者対応に専念できるようになるのです。また、診療記録の検索や共有も迅速に行えます。
診断精度の向上
AI技術を使った診断支援システムは、診断精度を大きく向上すると期待されています。画像診断ではAIが膨大なデータから微細な異常を見つけ出すため、早期発見や誤診の防止につながります。また、診断にかかる時間を短縮できるため、医師の負担が軽くなるでしょう。
災害時のBCP対策
医療ITの活用は、企業におけるリスクマネジメントの一種であるBCP(事業継続計画)対策にも役立ちます。地震や洪水などの自然災害発生時にも、遠隔地からアクセスができるクラウドシステムにより迅速な医療支援が行えます。緊急時にも医療サービスが継続できるため、患者に必要な診療が行えるでしょう。
医療IT化がもたらすメリットとデメリット
医療のIT化は、効率化や品質向上のためにますます重要視されています。ここでは、医療IT化のメリットとデメリットを紹介します。
●医療IT化のメリット
医療IT化の導入には多くの利点があります。ここでは、業務効率化とコスト削減、データ共有による最適な医療提供、研究・開発分野での活用について説明します。
業務効率化とコスト削減
電子カルテや予約システムを導入すると、手書きのカルテ作成が不要です。また、必要な情報をすぐに取り出せるため、診療や事務作業の効率が大幅に向上します。さらに、予約システムの導入では、患者の待ち時間が短縮されるだけでなく、診療の流れもスムーズになります。人手不足の解消にも寄与し、医療現場のコスト削減が期待できます。結果として、病院経営の改善にもつながり、医療サービスの質の向上が図られます。
データ共有による適した医療の提供
IT化により、医療機関間での情報共有がしやすくなり、患者の診療履歴を一元管理できます。異なる病院や診療科でも一貫した医療を提供できるようになるのがメリットで、治療時の注意点が共有されることで誤診の防止が期待できます。また、患者の状態を複数機関で共有することで、確認の手間が省けるだけでなく、その時々に合わせた適切な治療が行えるでしょう。
研究・開発分野での活用
AIやビッグデータを活用することで膨大な臨床データを解析できるため、新薬の開発や新しい治療法の発見が進み、医療研究が大きく前進すると期待されています。また、AI診断により患者データを解析することで潜在的な病気のリスクを予測できます。過去の膨大な治療結果のデータを分析し、患者の状態に合わせた治療方法を見つけ出すことにも役立ちます。
●医療IT化のデメリット
医療IT化にはいくつかのデメリットも存在します。ここでは、初期導入コストの高さ、データセキュリティの課題、利用者のITリテラシーの必要性について説明します。
初期導入コストの高さ
医療ITシステムの導入には高額な初期費用が必要です。さらに、定期的なバージョンアップを含むランニングコストもかかるため、医療機関の財政を圧迫する可能性があります。特に小規模な医療機関にとっては大きな負担となる場合があるため、費用対効果を十分に考慮し、計画的に導入を進めなくてはいけません。
データセキュリティの課題
IT化の際は、患者の個人情報を保護するセキュリティ対策は万全でなくてはいけません。診療や研究にかかわるデータは非常に機密性が高いため、データ漏洩のリスクは徹底的に抑える必要があります。そのためには、強固なセキュリティの導入やデータセキュリティ意識をスタッフに持たせる取り組みが必要です。また、万が一の事態を想定し、インシデントが起きた場合の対応も決めておきましょう。
利用者のITリテラシーの必要性
医療従事者や患者がシステムを使えるようにしなければ、IT化によるメリットが薄れてしまいます。操作方法や情報修正のやり方について、スタッフや患者に習得してもらわなくてはいけません。それにはある程度の時間がかかるだけでなく、定期的な教育コストがかかります。また、情報の取扱いに関する研修も必要です。IT化の際には、こうした学習コストがかかり、ITリテラシーの向上をしなくてはいけません。
医療ITを進める方法
医療IT化を進める方法について、初期段階から具体的な方法までそれぞれ解説します。
●医療IT化のステップ
医療IT化の初期段階では、現状分析と計画立案が重要です。ここでは各ステップについて解説します。
現状分析と計画立案
まず、現状の業務フローや課題を詳細に分析します。医療機関内のどの業務が非効率であるか、どのシステムが改善の余地があるかを特定します。この段階では、スタッフや関係者からのヒアリングも重視したうえで具体的なIT化の目標と方針を定めましょう。次に、どのシステムや技術を導入するかを検討します。その際、導入にかかるコストや期待される効果も評価しましょう。
システム選定と導入
計画を立てたら、システムの選定に移ります。電子カルテや予約システムなど、必要なシステムを選びます。その際、操作性やセキュリティ、コストパフォーマンスなどを総合的に考えてシステムを選びましょう。選定が終わったら、システムの導入です。導入に際しては、システムの設定やデータの移行作業が発生します。また、スタッフへの操作方法の教育も重要なため、開発会社が用意している導入後のサポート体制も確認しておきましょう。
運用と改善
システム導入後は、実際の運用に入ります。不具合や操作上の問題が発生することもあるため迅速に確認・対応してシステムの安定的な運用を目指しましょう。また、定期的なシステムのアップデートやスタッフの再教育も大切です。特に、電子カルテやオンライン診療など、医療におけるシステムは患者の健康状態にかかわる部分が大きいため、常に安定した状態でシステムを運用することが重要です。
●医療IT化の具体的な方法
医療IT化を進めるには、いくつかの具体的な方法があります。それぞれの方法について詳しく解説します。
紙のカルテから電子カルテにする
電子カルテは、紙ではなくデジタルデータでカルテを作成するシステムです。医療機関内のサーバやPC、クラウドサーバなどにシステムをインストールして使用します。手書きのカルテは書く手間や管理スペースの確保が必要ですが、電子カルテではデジタルデータとして作成・管理をするため、それらが不要になります。その分、別業務に集中する時間ができるため、患者への問診やコミュニケーションに時間を充てられるでしょう。また、情報共有がしやすく、過去の診療履歴や投薬情報を簡単に確認できます。
訪問診療のみではなくオンライン診療も取り入れる
オンライン診療は、スマートフォンやPCを使って遠隔で診療を行うシステムです。ビデオ通話やチャット機能を活用することで、リアルタイムで医師と患者がコミュニケーションを取れます。通院が困難な患者に対しても医療サービスを提供でき、特に慢性的な病状の管理や遠隔地に住む患者への対応に向いています。自宅にいながら診察を受けられるため、移動時間や待ち時間の削減につながり、患者の利便性も向上します。自院と患者の住む場所が離れていても診察ができることで、近隣以外にも利用者を増やせる点もメリット。さらに、感染症の流行時には、感染リスクを避けつつ医療サービスを継続できるという利点があります。
データ分析とAIの活用
医療データの解析は、疾病予防や治療法の開発に欠かせません。AIを使った診断支援システムは、過去の診療データや患者の症状を分析し、最適な治療法を提案してくれます。医師の経験や知識とあわせて、膨大なデータをもとに診察が行えるため、病気やケガなどの見落としが防げるでしょう。医師の数が不足していても、幅広い診察が行えるのが特徴です。また、ビッグデータ解析により、病気の早期発見や予防策の開発も進んでいます。例えば、AIによるがんの早期診断は、治療の成功率を高めるのに役立っています。
医療IT化のためシステム開発を外注する際のポイント
医療IT化における外注先選定の重要性と成功するためのポイントを解説します。
●外注先選定の重要性
医療IT化のプロジェクトを成功させるためには、適切な外注先の選定が大切です。外注先の選定基準としては、実績や信頼性、技術力などがあります。システム開発会社の中でも医療系システムの開発経験が豊富な会社を選ぶと良いでしょう。また、外注のメリットとして、自社で開発するよりも時間を節約できる点が挙げられます。
●成功するためのポイント
外注先選定時には、契約前にいくつか重要なポイントをチェックしましょう。まず、費用や費用対効果、開発プロセスや進捗管理の方法、アフターサポートの有無などを優先的に確認します。ほかにも、プロジェクト進行中のコミュニケーションの方法や頻度も聞いておくと良いでしょう。定期的なミーティングを行い、進捗状況を共有することで、問題が発生した際に迅速に対応してもらえます。例えば、週に一度の定例会議を設けて外注先との連携を強化するといった方法が有効です。
医療業界のIT化は信頼できる外注先選びが成功の鍵
医療IT化を進めるためには、自社や自院に適したシステムを導入することが重要です。適切なシステム選びは業務効率を向上させるため、長期的な視点でコスト削減につながります。開発やカスタマイズといった選択肢もありますが、ビジネスパートナーとして信頼できる外注先を選ぶことが成功の要といえます。
しかし、外注経験がないと外注先選びの基準がわからないため、比較検討が難しいかもしれません。そんな外注先選びを効率化するためには、ぜひ発注ナビの利用をおすすめします。
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