CRM(Customer Relationship Management)は、主にマーケティング分野で活用されるシステムですが、病院経営においても非常に役立つツールです。患者情報の一元管理や、医療業務の効率化、患者満足度の向上に貢献します。
本記事では、CRMシステムの基本的な定義や機能、病院での具体的な活用例を詳しく解説します。また、病院がCRMシステムを導入する際のメリットやデメリット、選定のポイント、導入ステップについてもご紹介します。CRMシステムを通じて、病院経営の質を向上させるためのヒントをお届けします。
目次
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病院経営に役立つCRMシステムとは?
主にマーケティングで活用されているCRMを病院で使うイメージがない方も多いかもしれません。ここでは、CRMの定義や機能のほか、医療現場での活用例も併せて紹介します。
●CRMの定義と目的
CRM(Customer Relationship Management)は日本語だと「顧客関係管理」と訳され、顧客との関係性をマネジメントするためのシステムです。CRMの目的は、顧客と良好なコミュニケーションをとることで顧客満足度を向上させること、その結果として企業や事業の価値を高めることです。
マーケティング手法の一つであるCRMですが、病院という医療現場でも活用できるのです。CRMにおける「顧客」は、病院の場合は「患者」に該当します。病院にCRMを導入することで、診療履歴や投薬情報といった患者情報を一元的に管理する効果が得られます。
●CRMシステムの主要機能
ここでは、CRMの主要な機能について紹介します。
顧客情報管理機能
顧客情報管理は、CRMのメインとなる機能です。顧客に関する情報を一元的に管理できます。病院においては、患者の氏名や患者番号、生年月日といった基本情報のほかにも、診療履歴、投薬情報など病院特有の患者情報を総合的に管理・記録できます。
案件管理機能
営業では、商談の進捗状況や会話の内容などを記録する機能です。病院においては、患者との電話や来院時の対応記録、手術や長期治療の進捗状況、治療内容などを管理します。患者の状態や特性、治療の進み具合を医師や看護師、関係者全員で共有できます。
データ分析機能
CRM内に蓄積された患者データや病院データを分析してさまざまなレポートを作成できる機能です。病院の運営状況や患者の傾向を把握できるため、課題を見つけて改善に活かせます。
●医療現場での具体的な活用例
CRMシステムの医療現場での具体的な活用例として、まず患者データ管理の効率化が挙げられます。CRMで患者の診療履歴や治療計画を一元管理することで、医師や看護師、事務スタッフ全員が正確な情報をスムーズに把握できます。情報の共有が重要な医療現場において、正確な情報を関係者全員が把握していることは大きなメリットです。
●CRMとほかのシステムとの違い
CRMは、しばしばSFAやERPといったほかのシステムと混同されることがありますが、用途や範囲が異なります。
例えば、SFA(Sales Force Automation)とCRMの違いは、SFAが主に営業プロセスの自動化・効率化に特化しているのに対し、CRMは顧客関係全般を管理する点にあります。病院の場合、SFAは新規患者の獲得活動に、CRMは既存患者も含めた包括的な関係管理と、分けて考えるとわかりやすいでしょう。
ERP(Enterprise Resource Planning)とCRMの違いは、管理する範囲にあります。ERPが病院全体の資源(人材・物品・資金など)を管理するのに対して、CRMは患者情報を中心に管理します。
病院におけるCRMシステム導入の重要性
ここでは、なぜCRMシステムが病院に必要とされているのか、その背景について説明します。
●医療現場で業務効率化が求められる背景
医療現場で管理する情報は、患者情報、診療記録、治療計画など多岐にわたります。扱う情報の量は膨大ですが、患者の命にかかわるため正確かつ迅速な情報共有が求められます。そんな現場で、一人ひとりの患者ごとにデータが各所にある状態では情報の精度もスピードも損なってしまうでしょう。CRMなら患者の情報を一元管理できるため、既往歴や現在の服薬状況などの情報共有がスムーズに行えます。
●医療業界が抱える課題
医療現場の課題の一つとして、医療従事者の労働負担が大きいという点があります。医療という現場では患者が来るタイミングは選べないため、時間通りに勤務できないことも多々あり、人手不足と重なると現場は疲弊してしまいます。
その忙しさの中で、正確な患者のデータ・情報の管理は従業員にとって大きな負担です。手作業によるデータ入力は時間を要し、情報の重複や入力ミスのリスクも高くなります。
●CRMシステム導入の必要性
CRMシステムの導入は、多忙を極める医療現場の業務効率を高めます。
例えば、患者情報の一元管理により、受付での待ち時間短縮が実現します。患者の基本情報や過去の診療歴をすぐに呼び出せるため、受付での手続きが迅速化されるのです。
ほかにも、スタッフ間の連携強化ができる点も重視される理由です。患者の情報を関係する従業員に周知できるため、伝達不足のリスクを軽減できるでしょう。
病院がCRMシステムを導入するメリットとデメリット
新しいシステムを取り入れることには、プラスとマイナスの両面があるのも事実です。ここでは、病院がCRMシステムを導入する際のメリットとデメリットについて解説します。
●CRMシステム導入のメリット
CRMシステムを病院に導入することで、具体的にどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。
医療業務の効率化
CRMシステムの導入により、病院の日常業務が大幅に効率化されます。患者情報や診療履歴、予約情報などを一元管理することで、必要な情報に迅速にアクセスできることが一番のメリットです。従来の手作業でのデータ管理の負担が軽減され、スタッフは本来の医療業務に集中できるようになります。
患者管理の向上
CRMシステムを活用することで、診療履歴や治療計画の管理がしやすくなります。そのため、個々の患者に合わせたサービスの提供ができるようになり、満足度や来院率の増加に期待できます。
また、診療情報の即時確認が可能になることで、医師や看護師は患者の過去の診療履歴や現在の治療計画を迅速に確認でき、より適切な医療サービスを提供できるようになるでしょう。
内部連携の強化
CRMの活用で、医師、看護師、事務スタッフなど、異なる部門間での情報共有がスムーズになり、連携の強さが向上します。「伝達漏れ」が起きるリスクが軽減できることは、医療現場において大きなメリットです。
●CRMシステム導入のデメリット
ここでは、病院がCRMシステムを導入する際に考慮すべきデメリットについて紹介します。
導入コストと運用コスト
CRMシステムを新しく導入するには、当然ですが費用がかかります。まず、初期導入費用として、システムそのものの費用だけでなく、設定やカスタマイズ、スタッフのトレーニング費用なども必要です。また、システムや料金形態によっては運用費として、導入した後も費用が発生します。例えば、月々の利用料や定期的な更新費用、システムの保守管理にかかる費用などが運用コストにあたります。
導入コスト、運用コスト、求める機能や規模によっても大きく変わってくるため、費用対効果を充分に検討しましょう。
導入時のハードル
CRMシステムを導入する際には、いくつかのハードルがあります。その一つが、既存のデータを新しいシステムに移す作業です。この作業には時間がかかるだけでなく、データの正確さを確認する手間も必要になります。
また、新しいシステムは使い方を医師や看護師、従業員に教える必要があります。慣れないシステムを使うことで、一時的に仕事の効率が落ちる可能性もあります。スタッフがシステムに慣れるまでの間は、患者への対応に影響が出ないよう注意が必要です。
セキュリティリスク
CRMシステムには患者の大切な情報が入っているため、情報漏洩のリスクが存在します。漏洩が起きないよう、セキュリティ対策の徹底・チェックは必須です。
また、システムが突然動かなくなったり、問題が起きたりした時の対応も考えておきましょう。医療現場では患者の情報をすぐに確認できることが重要なので、トラブル時のフローをあらかじめ備えておきます。
医療機関向けCRMシステムの選定ポイント
医療機関に向いているCRMシステムとは、どのような特徴を持つのでしょうか。選定のポイントを紹介します。
●医療機関に適した機能とは
医療現場の特性を考慮し、患者ケアの質を向上させながら業務効率化を実現する機能が求められます。以下でいくつか紹介します。
患者データ管理
病院のCRMシステムには、患者情報、診療履歴、治療計画を一元管理できる機能が不可欠です。CRMの要ともいえるこの機能があることで、患者の過去の病歴や診察内容、処方歴に迅速にアクセスできるようになります。例えば、救急外来で新しい患者を受け入れる際、過去の診療情報をすぐに確認できれば、より適切な初期対応が可能になるでしょう。
予約管理とリマインダー機能
効率的な予約管理とリマインダー機能があると、患者対応がスムーズになります。患者の予約を効率的に管理し、自動でリマインダーを送信する機能があれば、予約の変更やキャンセルについてもれなく対応が可能です。予約忘れによる機会損失を減らすだけでなく、患者の利便性も向上させられます。
データ分析
CRMシステムに蓄積された患者データを分析し、診療の質や業務効率を向上させるためのインサイトを提供する機能も重要です。例えば、特定の疾患の患者数の推移や治療効果の分析結果を基に、病院の診療方針を改善することができます。さらに、患者の紹介データを分析することで、地域医療連携を強化するための情報も得られます。
●実績のあるCRMシステムの選び方
医療機関での導入実績が豊富なCRMシステムを選ぶことで、業界特有の課題に対応できる可能性が高まります。実際のユーザーレビューや導入事例を参考にすることで、システムの実用性や効果を具体的に把握できるでしょう。
また、ベンダーのサポート体制も重要な選定ポイントです。導入時のトレーニングから、問題発生時のサポート、システムアップデートへの対応まで、充実したサポート体制を持つベンダーを選ぶことで、システムの運用をスムーズに行えます。医療現場は24時間体制で動いているため、緊急時のサポート対応も確認しておくと良いでしょう。
●使いやすさとカスタマイズ性
医療スタッフが直感的に操作できるユーザーフレンドリーなインターフェースは、CRMシステム選びの重要なポイントです。トライアル期間が設けられているシステムで、実際の現場での操作感を試し、使いやすさを確認することをおすすめします。例えば、忙しい外来診療中でも、必要な情報にすぐにアクセスできるような設計になっているかどうかをチェックしましょう。
病院へCRMシステムを導入する流れ
病院へのCRMシステム導入は、患者サービスの向上と業務効率化の鍵となります。ここでは、準備から運用までの重要なステップを詳しく見ていきましょう。
●導入前の準備と必要な手続き
まず、導入の目的や背景を明確にすることから始めましょう。診療予約の効率化や患者情報の正確な一元管理、といったように目的を設定します。
次に、要件定義を行います。要件定義とは、必要な機能やシステムの仕様を具体的に定義することです。病院の規模や診療科目によって必要な機能は異なるので、現場スタッフの意見を積極的に取り入れることが大切です。
また、ベンダー選定も導入前の重要な検討事項です。複数のベンダーを比較し、医療機関での導入実績やサポート体制を確認しましょう。トライアルを通じて、システムの使いやすさを実際に評価することをおすすめします。
ベンダーが決まったら、初期導入費用、運用費用、カスタマイズ費用の見積もりを取り、予算と照らし合わせます。契約内容をしっかり確認し、双方で合意を得ることが大切です。
●導入時の設定とカスタマイズ
システムの導入が決まったら、実際の設定作業に入ります。まず、基本設定として、ユーザーアカウントやアクセス権限の設定を行います。医師、看護師、受付スタッフなど、職種ごとに適切な権限を設定することで、情報セキュリティを確保します。
また、医療機関特有の設定も必要です。例えば、電子カルテシステムとの連携や予約管理システムの統合などが挙げられます。
データ移行も重要なプロセスです。既存の患者データを整理し、必要に応じてクレンジング(データの洗浄)を行います。その後、新しいCRMシステムへデータをインポートし、正確に移行されているか検証します。
●導入後のフォローアップと運用サポート
システムの導入が完了したら、従業員へのトレーニングを実施しましょう。システムの使用方法を丁寧に説明し、実際の操作を体験してもらいます。また、いつでも参照できるマニュアルや操作ガイドを作成することで、運用がスムーズになります。また、ヘルプデスクやオンラインサポートなど、スタッフが困った時にすぐに相談できる体制を整えましょう。
最後に、PDCAサイクルを回すことが大切です。導入後の効果と現場からのフィードバックの収集を行い、システムの活用状況や課題を把握します。そして、継続的な改善活動として、業務プロセスの見直しや新たな機能追加の検討を行いましょう。
自院にあったCRMシステムの導入は、信頼できる外注先選びから
病院へのCRMシステム導入は、患者情報の一元管理や業務効率化、サービス向上など、多くのメリットがあります。しかし、これらのメリットを最大限に活かすには、自院に合ったシステムや信頼できる外注先を選ぶことが大切です。
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