神戸市立医療センター中央市民病院は、神戸市民150万人と近隣の阪神地区の市民を受け入れる地域の基幹病院だ。在宅でのオンライン診療の増加を受けて「誰もが簡単・安全に保険証をアップロードできるシステム」の導入を目指したが、病院が求めるハイレベルなセキュリティ基準や契約条件をクリアできるシステム開発会社が見つからないという壁にぶつかった。
そこで利用したのが発注ナビだった。神戸市立医療センター中央市民病院情報企画課の小前 哲治氏と、システム開発を担当したatma株式会社 コンサルティング事業部 事業部長の福岡 幸平氏に、発注ナビを使って良かった点、発注ナビが果たした役割についてお話を伺った。
在宅でオンライン診療(再診)の希望者が増加しセキュアなシステムが必要に
―― まずは、神戸市立医療センター中央市民病院様について教えてください。
神戸市立医療センター中央市民病院 小前氏:当院は1924年に設立され、2024年に100周年を迎えます。『神戸市の基幹病院として、市民の生命と健康を守るため、患者中心の質の高い医療を安全に提供する』を基本理念に掲げ、その理念通り、安全で安心な医療の提供に努めています。
また、兵庫県における『新型コロナウイルス感染症重症等特定病院』として同感染症の重症患者の受け入れ実績からも、当院の救急救命センターは、厚生労働省が発表した『救急救命センターの評価結果(令和4年)』において9年連続して第1位(298施設中)の評価を獲得しています。
―― 今回、発注ナビには『患者さんが保険証を簡単かつ安全にアップロードできるシステム』の導入でご相談をいただきました。このシステムを検討するにあたっては、どのような背景があったのでしょうか。
小前氏:はい、ひとつにはコロナの影響があります。当院は新型コロナウイルス感染症の患者さんを受け入れていましたが、診療に来られる患者さんの中には在宅からオンラインでの再診を希望する方も多くいらっしゃいました。自宅が遠いことや、病院へ出向いて診療を受けることで感染リスクがあるといった理由からです。
もうひとつの理由として、救急救命センターを有していることで、例えば交通事故など突発的な理由による搬送で、保険証を持ち合わせていない患者さんが多く運び込まれてくるという状況もあります。
自宅からオンラインでの再診を希望される場合も、交通事故などでの診療の場合も、保険診療とするには、何らかの方法で保険証を確認しなくてはなりません。保険証を確認できない場合、いったん診療にかかった費用を全額自己負担していただき、後日保険証を確認してから自己負担分を除いた分を返金するという仕組みです。
これまでは、後日保険証を持参の上で来院いただく、保険証のコピーをFAXで送っていただく、郵送していただくなどの方法を取っていましたが、これでは患者さんの負担が大きい。そこで、病院のホームページに入力フォームを作成して、患者さん自身で撮影した保険証の画像をアップロードしてもらったり、ホームページ上に当院のメールアドレスを埋め込んだQRコードを表示して、保険証の画像をメール送信できるようにと考えました。
atma株式会社 福岡氏:当社が最初に聞いた開発案件の内容も、今、お話があったように「患者さんが保険証の情報を簡単に安全に病院に送り届けられるシステムを作りたい」というものでした。
病院の近くに住んでいる人なら持参できるでしょうが、遠方の人は保険証を提示するために来院するのは難しいし、乳幼児や高齢者の場合にはコロナ感染のリスクをおかしてまで病院に来るのをためらうこともあるでしょう。FAXや郵送では患者さんの負担が大きいです。
―― なるほど。お話を伺うとQRコードを使ってメール添付でスキャンした保険証を送ればいいと簡単に考えてしまいましたが、それでは課題があったのですね。
小前氏:保険証は、いわば『個人情報の塊』です。ホームページに入力フォームを用意する方法もメール添付でも、フィッシングサイトへの誘導をされたり、QRコードに不正コードを忍ばせられたりするリスクがあり、どれもセキュリティ上の不安を払拭できません。コピーとはいえFAXや郵送で送ることに抵抗を感じる人もいます。
そこで、高齢の人もITに詳しくない人でも『スマホが使える』程度の知識があれば簡単に使えて、しかも大切な個人情報である保険証を安心・安全に病院に送れるシステムが必要だと考えたのです。
声をかけた全てのシステム開発会社から断られ、ネット検索で知った発注ナビを利用
―― そこで、簡単かつ安全に保険証をアップロードできるシステムの開発、導入に踏み切られたのですね。
小前氏:はい。ところが、いざやってみようとなるとさっそく壁にぶつかりました。病院には電子カルテなどさまざまなITシステムが導入されているので、お付き合いのあるシステム開発会社は多いのですが、どこに聞いても「うちにはできない」と良い返事がいただけなかったのです。
保険証という個人情報を扱うこと、昨今増えている病院へのサイバー攻撃に対して強固な情報漏洩対策とセキュリティ対策が必須だったこと、さらにはサーバーやシステムの維持・管理が不要なクラウドで構築することがこちらのリクエストでしたが、これらをクリアするにはハードルが高かったようです。神戸市にも開発いただけるベンダーを紹介してもらおうとしましたが、すぐには返事がいただける状況ではなかったです。
どうしたものかとインターネットで検索してシステム会社を探していたら、発注者とシステム開発会社をマッチングしてくれるサービスがあると知り、発注ナビの利用を検討したのです。
―― 発注者とシステム開発会社をマッチングするサービスはいくつもありますが、発注ナビを使ってみようと思ったポイントはどのようなところでしたか?
小前氏:当院は地方独立行政法人の病院ですから、システム開発会社を選定する際にも色々な規程があり、それに則して発注する必要があります。見積りは複数社から取る必要がありますし、金額次第では一般競争入札になり、随意契約も難しい。担当者がこのシステム開発会社が信頼できるとなっても、独自の判断で選ぶことはできません。
こうした状況の中で、発注ナビは、こちらから要件を提示すると、そこへエントリーいただいた複数のシステム開発会社の中から選りすぐりの数社を紹介してもらえる仕組みでした。信頼できる複数のシステム開発会社を紹介してもらえて、さっと見積もりを取れて、より良い提案をしてくれたところを選べるのが魅力でした。自身でインターネット検索もしたのでわかるのですが、信頼できると思えるシステム開発会社を自力で複数社探し出し、それぞれに要件を伝えて見積もりを取るという作業は、相当な時間と労力がかかることは容易に想像できます。
しかも、今回の保険証のアップロードシステムについては、在宅でのオンライン診療を希望する患者さんも増えていたことから、とにかく早く導入をしたかったのです。そこで、自分で一から探すよりもはるかに効率的で短期間に信頼できるシステム開発会社を探せる、しかも、見積もりを複数社から取って比較・検討できるので当院の業者選定のルールもクリアできるという発注ナビの利用を決めました。
実は今、私がお話ししたようなことは多くの自治体の担当者も悩んでいることだと思います。自治体の中には地元企業に優先的に発注しているところもあるでしょう。発注ナビなら、〇〇地域限定と指定することもできるので、自治体の推進担当者でシステム開発会社の選定に苦労されている人はぜひ利用を検討してみてはと思いました。
当院の件では、最終的に2社をご紹介いただきatmaさんに決めました。きちんと複数社の見積りと提案内容をもとに当院の規程に則って決定できたのがとても良かったと思っています。
発注者と受注者ではなくパートナーとして、お互いの意識合わせを重視してくれたことが決め手
―― 発注ナビからは2社をご紹介し、その中からatma様を選定されました。選定の決め手は何だったのですか。
小前氏:当時、病院ホームページがサイバー攻撃を受けたとか、病院のシステムがランサムウェアに感染したといったニュースをよく耳にしていました。一方、改正個人情報保護法で個人情報の取り扱いがより厳格になり、クラウドでのデータ管理などのハードルが高くなりつつありました。
こうした中、命を預かる現場でのシステムに求められることは、何をおいてもセキュリティ、安全性や信頼性でした。セキュリティを担保できるシステムを開発できるかどうかが、選定の大きなポイントだったと思っています。
―― atma様は、セキュアで安心なシステムの構築には自社の強みが活かせるという自信があったのでしょうか。
福岡氏:当社は2016年創業の比較的若い会社ですが、AI技術者、データサイエンティスト、データベーススペシャリスト(国家資格)、AWSに関する資格を有するエンジニアや UI/UXデザイナーが在籍しています。神戸市立医療センター中央市民病院さんからの要件は、『年配の人にもわかりやすく・使いやすく、かつ安心・安全に』というもの。操作は簡単に、その裏ではセキュアな環境を構築するという、当社の経験や知見、技術力を活かせる案件だと思いましたのでエントリーしました。
小前氏:当院ではセキュリティを担保できるかどうかを重視していましたが、それだけではなく、要件定義段階でのコミュニケーションも重視しました。システム開発は、求めていたシステムと違うものができてしまいトラブルになることもありますが、それを回避するには要件定義の際のコミュニケーション、認識合わせが重要だと考えています。atmaさんはシステム開発のスペシャリストでありながら、素人である私たちにもきちんとわかるような言葉で説明をしてくれるなど、お互いの意識合わせを重視してくれるシステム開発会社だなという印象を持ちました。それも選定の決め手でした。
発注ナビで『良い出会い』が生まれ、希望通りのシステムを構築できた
―― 神戸市立医療センター中央市民病院様では当初、要望していたシステムは実現されましたか。
小前氏:高齢の方でも入力しやすい、利用者の方々にやさしいシステムを作りたいという要望に対し、『こういう仕組みはどうですか』と数多くの提案をいただき、より使いやすいシステムになったと思います。
見てわかりやすく使いやすいことは病院のイメージアップにもつながりますので、デザイン性も重要だと思っていました。その点でも満足できるシステムに仕上がっていると思っています。
そして、もっとも重視していたセキュリティについても、患者さんの個人情報を安全にお預かりできるシステムを構築できました。
―― 今回の保険証アップロードシステムの開発において、発注ナビを利用してみていかがでしたか。
小前氏:まずは、とても良いシステム開発会社さんに出会えたと思っています。自力で探していたのでは、なかなか難しかったと感じています。発注ナビについては、最初の相談から開発の完了まで、担当者に定期的に連絡をいただき、進捗はどうか、何か困っていることはないかと、こまめにサポートいただけました。システム開発が終わった後も「どうでしたか」と連絡をもらい、終始、手厚いサポートをいただけたと感じています。
福岡氏:当社としては、今回の案件が大きな自信につながりました。一般的に病院向けのシステム開発案件では技術力や開発力はもちろんのこと、与信、個人情報を含めた情報管理の徹底など『企業としての質の高さ』を問われることが多く、技術力が高いだけではなかなか受注できないのです。
今回、新しいお客様と出会えて、要望されている厳しいセキュリティ基準も、契約に至るまでの難しい手続もクリアできました。開発した保険証アップロードシステムはクラウドベースですが、セキュリティを考慮して電子カルテなど診療系システムには接続しておりません。一般企業よりもずっと厳しい病院のセキュリティ基準を遵守しながらクラウドでシステムを構築したということは、神戸市立医療センター中央市民病院さんにとっても新しい取り組みだったと思います。その新しい取り組みに一緒にチャレンジさせていただけたことは、当社にとっての新しい実績と大きな自信になりました。
小前氏:保険証は1カ月に1回は確認が必要なものですので、導入したシステムはすでに多くの患者さんに使っていただき、利用者も増えています。このシステムは患者さんにとっても病院にとっても利便性が高く、今後の病院業務の効率化をさらに促進する大事な役割を担っていくと思います。クラウドベースでもセキュリティを考慮したシステム運用が実現できましたので、今後は病院の中にあるさまざまなニーズを吸い上げ、同じようにシステム化できるか、その可能性を探っていきたいと考えています。
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