
現在では「XR」と呼ばれる、CGを活用したさまざまなIT技術が登場しています。代表格がVRとARの2つであり、この2つを混ぜたような「Mixedreality(MR)」という概念も存在している点も注目のポイントです。MRを利用すると現実世界にいながらCGキャラクターと触れ合えるような没入感を味わえるのが特徴です。またビジネスにもMRは活用されています。今回はMRの概要やAR、VRとの違い、さらにできることや事例なども解説していきます。MRがビジネスシーンでどのように利用されているか知りたいといった方は、ぜひご覧ください。
目次
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Mixedreality(MR)技術とは
MRとは「CG技術で人工的に構築された仮想世界を、現実世界とリンクさせて表示することで現実ではできない体験を実現する技術」です。仮想世界と現実世界のどちらの世界も相互に影響し合うMRには、複雑な技術体系が必要なので、まだARやVRといった技術と比較すると普及しているとはいえません。ただし普及すればARやVR以上に高密度の体験ができるので、現代では注目されている技術です。
現代では、Windowsで知られるマイクロソフトがさまざまな方法でMRを普及させようとしています。たとえば「Microsoft HoloLens」はグラス型のスマートデバイスであり、MRを体験できるゲーミングデバイスとして機能するのがポイントです。クラフトゲームとして世界的に有名な「Minecraft」の世界をリビングルームに構築、クラフトをするといったプレイが可能になります。また音声認識でMinecraftのワールドを3D化したり、第三者視点でMinecraftのキャラクターを操作したりできるといったプレイが可能です。
未成熟の市場であるため、ARやVRと比べてもMRのデバイスは値段が高い特徴があります。技術の進歩に伴い、デバイスの価格を下げることができれば、MR普及のきっかけにできるかもしれません。
MR・AR・VRの違いとは
MRとAR、VRの3つは関連し合っている技術です。いずれの技術もCGを活用することで現実世界では不可能な体験を可能にしてユーザーメリットをもたらしてくれます。3つは現実空間へのアプローチの違いによって分けることが可能です。
●AR(拡張現実)は「現実に情報を重ねる」技術
ARは主に現実世界を基軸としています。現実世界に経路を示す矢印、機械のマニュアル、コミュニケーションが取れるキャラクターといった情報をCG処理することで、ゲーム性や利便性などを実現するのがポイントです。
●VR(仮想現実)は「仮想世界に没入する」技術
VRは主に仮想現実を基軸としています。現実世界を見せるのではなく、最初から仮想的に制作された現実の映像を見せるのが特徴です。仮想現実内を歩く、仮想現実内のモノに触れるといった体験を実現して、あたかも現実であるかのように仮想の映像を知覚させるのがポイントです。
●MR(複合現実)は「現実と仮想を相互に作用させる」技術
MRは、ARとVRの両者の特徴を統合し、よりリッチな体験ができるような技術です。基軸は現実世界にありますが、現実に投影する映像にはVRが活用されます。現実世界の情報をリアルタイムで処理、VR映像を重ねて表示することで下記のような体験が可能です。
- 机の上の映像を回しながら確認する
- 空間にUIを投影、パソコンの操作を行う
- 現実世界に映し出されたキャラクターの後ろに回り込む
現実世界に映像を投影するという意味では、「ARの体験をさらにリッチに昇華させたもの」と呼べるかもしれません。詳しくはこちらの記事で紹介しているので、さらに違いを理解したい方はご覧ください。
Mixedreality(MR)技術でできること
MRを使うと、以下のようなことができます。
●現実世界に3Dモデルを投影できる
MRでは現実世界に対して、3Dモデルを投影できます。これだけだとARと変わりありませんが、ただ投影するだけのARに対してMRではさらなるアプローチをとることが可能です。先ほど述べたように、後ろに回り込んだり、あるいは近づいて様子を確認したりといった操作が可能になっています。リアルタイムで周囲環境の確認を行い、ユーザーの動きを把握した上で3Dモデルへ反映できるMRならではの特徴です。
●3Dホログラムを目の前に投射できる
パソコンのUI(ユーザーインターフェース)などの3Dホログラムを、現実世界へ投影できるのもMRの特徴です。現実世界に投影されていますが、VRと同じ特徴を持っているので、実際にボタンに触れたり角度を変えたり、といった操作が可能になっています。つまり現実世界と仮想世界が融合しているので、境界線を感じさせないのがMRといえるでしょう。将来的にはディスプレイやキーボードなどを空間投影、ハードウェアは小型になって持ち歩けるといったパソコンもMRによって登場するかもしれません。
Mixedreality(MR)導入のメリット
MR技術をビジネスに導入することで、従来の業務プロセスや人材育成において、さまざまな効果が期待できます。ここでは代表的な5つのメリットを紹介します。
●現場作業の効率化・作業時間の短縮
MRを活用すると、作業手順や必要な情報を視界内にリアルタイムで表示できるため、マニュアルや図面を手元で確認する手間が不要になります。
製造現場での組立作業や設備点検、建設現場での施工確認など、両手を使いながら情報を参照できるため、作業の中断が減り全体の工程時間を大幅に短縮する効果が期待されています。
実際に製造業では、MR導入により作業時間が20〜30%削減されたという報告もあります。
●教育・トレーニングの質向上と習熟期間の短縮
MRを使った教育では、実物の設備や製品がなくても、3Dモデルを目の前に投影して実践的なトレーニングが可能です。
複雑な機械の分解手順や危険を伴う作業シミュレーションを、安全な環境で繰り返し練習できるため、新人スタッフの習熟スピード向上が期待できるでしょう。
また、従来の座学や動画研修と比べて体験的な学習ができるため、記憶への定着率が高いとされており、実務への移行がスムーズになります。
●ヒューマンエラー削減による品質向上
作業手順や注意点を視界内に常時表示できるMRは、確認漏れや手順ミスといったヒューマンエラーを防ぐのに効果的です。
特に、複雑な工程や多品種少量生産の現場では、作業者が都度マニュアルを確認する必要がなく、正しい手順をガイド通りに進められるため、品質のばらつきが抑えられます。
医療現場では手術支援、製造現場では検査工程での活用事例があり、いずれもエラー率の低減と品質安定化に貢献しています。
●遠隔支援による移動コスト・ダウンタイムの削減
MRデバイスを装着した現場スタッフと、遠隔地にいる専門家がリアルタイムで映像を共有しながら作業支援を行えるため、専門家の出張や現地派遣が不要になります。
設備トラブル時の復旧対応や、海外拠点への技術サポートなど、移動時間とコストを大幅に削減できる点が大きなメリットです。
また、ダウンタイムの短縮により、生産ラインの稼働率向上や顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
●ナレッジの見える化と属人化の解消
熟練者の作業手順や判断基準をMRコンテンツ化することで、暗黙知を形式知として組織全体で共有できるようになります。
これにより、ベテランスタッフの引退や異動による技術継承の問題を緩和し、誰でも一定水準の作業品質を維持できる体制を構築できるでしょう。
また、作業ログや視線データを記録・分析することで、さらなる業務改善やマニュアルの最適化にも活用可能です。
Mixedreality(MR)導入のデメリット
MR導入には多くのメリットがある一方で、コストや運用面での課題も存在します。導入を検討する際に重要な3つのデメリットを解説します。
●デバイス・システム開発にかかる初期コストの高さ
MR用ヘッドセットは一般的なスマートフォンやタブレットと比べて高価で、業務用のデバイスでは1台あたり数十万円から100万円近くするものもあります。
さらに、業務に合わせたMRアプリケーションの開発費用も必要で、要件定義から設計・開発・テストまで含めると数百万円から数千万円規模の投資となるケースが少なくありません。
特に中小企業にとっては初期投資のハードルが高く、ROI(投資対効果)を慎重に見極める必要があります。
●現場オペレーションへの定着と社内教育のハードルが高い
いくら優れたMRシステムを導入しても、現場スタッフが使いこなせなければ効果は得られません。特に、デジタルツールに不慣れな作業者が多い現場では、MRデバイスの操作方法やシステムの使い方を教育する時間とコストが発生します。
また、従来の業務フローを変更することへの抵抗感や、「本当に役立つのか」という懐疑的な意見が出ることもあるでしょう。
特に、導入初期は現場の協力を得ながら、段階的にトレーニングと運用を進める体制づくりが欠かせないため、社内教育のハードルが高いのもデメリットの1つです。
●ネットワーク環境やデバイス性能への依存リスクがある
MRは高精度な映像処理やリアルタイム通信を必要とするため、安定した高速ネットワーク環境が不可欠です。通信が不安定だと映像の遅延や途切れが発生し、作業効率の低下や安全上のリスクにつながる可能性があります。
また、デバイスのバッテリー駆動時間が限られているため、長時間の作業では充電や予備機の準備が必要です。さらに、ハードウェアの故障やソフトウェアのアップデート対応など、IT運用体制の整備も求められます。
導入前に、インフラ環境とサポート体制を十分に確認しておくことが重要です。
Mixedreality(MR)技術を使った事例を紹介
ここからはMRが利用されているビジネス事例をご紹介していきます。
●プリンター機器の点検作業等のサポート
MRを使った現場サポートソリューションを提供している事業者では、プリンターの点検作業等に関するMRの活用事例を紹介しています。
- ホームメニューから操作UIを立体表示
- UIを空間投影しながらプリンターの状態確認等を行う
- Webブラウザまで立体表示して情報を確認
- プリンターの作業する部分に矢印が表示され、ホログラムの作業手順とリンクする
- Teamsといったアプリとの連携および表示も可能
現実のパソコンやプリンターなどを操作して行う作業手順確認やアプリ起動といった手間が、ソリューション導入により簡略化され、作業の効率化を実現した事例です。将来的にMRの費用が安くなれば、プリンターといった機器がMR対応になって立体表示で作業手順を確認するといった専用のアプリが配布されるかもしれません。
●整備、修理等の効率化
大手自動車メーカーでは、自動車の整備や修理といった作業にMRを活用しています。製造業とITは相性の良い組み合わせであり、すでに「IoT(モノのインターネット)」といった技術は工場へ導入されて効果を上げています。大手自動車メーカーでは、自社製造の自動車を販売店へ卸して販売する際、各販売店が効率よく整備および修理できるツールとしてMRグラスなどを提供しているのがポイントです。MR活用によって、以下のようなメリットを得られています。
- 自動車の内部構造といった情報をリアルタイムで本物の自動車の箇所へ表示できる
- Webサイトや資料などを確認する必要がなくなり作業に無駄がなくなる
- さらに構造を実際に確認しながら作業ができるので、速いレベルで習熟度が上がる
整備員のスキルが属人化していると、整備員が辞めた場合に、サービスの質がダイレクトに落ちてしまう危険があります。しかしMRによって情報を共有しやすくなると、どんな整備員でもある程度の作業レベルを確保できるようになって、サービスの安定化にもつながるでしょう。
Mixedreality(MR)の活用に特別な機器が必要?
MRの体験には次のような機器が必要です。
●MR用ヘッドセット
MRの体験においては、単に映像を見るだけでなく自分も操作して参加する必要があります。そのため、単にスマートフォンを用意してヘッドセットを用意するだけでは体験するのが難しいでしょう。中に専用の処理用ソフトウェアが入っているような、本格的なヘッドセットが必要です。このヘッドセットには、パソコンなどと有線接続するノンスタンドアローン(PC接続型)、接続せずに単体で利用できるスタンドアローンといったタイプがあります。
概要の項で紹介したHoloLensのようなMRヘッドセットは、スタンドアローンタイプです。自由に動き回りやすいスタンドアローンタイプのほうがMRには適しているのかもしれません。なおMRヘッドセットは開発性の面で、ARやVRに劣ります。これは、マルチデバイスにMRソフトウェアを開発・提供できるプラットフォームというのが特に登場しておらず、MRヘッドセット専用にコンテンツを作り込む必要があるからです。
つまり、MRコンテンツを実現して顧客へ提供する際は、どのデバイスへ提供するのかといった点でも検討を重ねる必要があるでしょう。現代では、「Mozilla」といった企業・団体が、コンテンツを広く提供できるようにVRといったMR関連のプラットフォーム普及の動きを進めています。MRがこういった動きに便乗できれば、将来的にMRコンテンツを提供しやすくなります。
●インターネット環境
MRにはリアルタイムで現実世界の処理を行い、3Dモデルを投影できる安定した環境が必要です。このため中途半端なインターネット環境ではラグが出たり動きが反映されなかったりと、悪影響が出る可能性があるのでMRの利用はおすすめできません。
目安としては、光ファイバーが利用できる回線があると安心です。また一部の回線サービスでは最高速度10Gbpsといった超高速が出せる場合もあるので、MRを安定して楽しみたい場合はこういった高速回線を利用してみると良いでしょう。モバイル環境だと、あっという間に容量の上限を使い切って低速になる危険があります。超高速・大容量通信が簡単になる「5G」が広まれば、MRも普及しやすくなるでしょう。
Mixed Reality(MR:複合現実)に関するよくある質問(FAQ)
Q1: Mixed Reality(MR)とはどのような技術ですか?
MRとは、CG技術で人工的に作られた仮想世界を現実世界とリンクさせて表示し、現実ではできない体験を実現する技術です。「複合現実」とも呼ばれ、仮想世界と現実世界の双方がリアルタイムで相互に影響し合うため、ARやVRよりも没入感が高く、リアリティのある高密度な体験が可能になります。
Q2: MRは、ARやVRとどのような違いがありますか?
AR(拡張現実)が現実を主とし、VR(仮想現実)が仮想を主とするのに対し、MRはその両方を高度に融合させている点が異なります。MRは現実世界を基軸としつつ、そこにVRのような高品質な3D映像を重ね合わせます。現実世界の空間情報を正確に把握・処理するため、投影された物体に近づいたり、後ろに回り込んだりするリッチな操作が可能です。
Q3: ビジネスシーンでMR技術を使ってできることや事例には何がありますか?
現実の物体に対して3Dモデルやホログラムの操作画面を投影し、直感的な作業やシミュレーションが行えます。例えば、精密機器のメンテナンス時に手順を空間に投影して案内する点検サポートや、自動車修理において車体を透過したかのように内部構造を投影表示し、熟練度に関わらず効率的に作業を進められるようにする事例などが注目されています。
Q4: MRを利用するためには特別な機器や環境が必要ですか?
本格的なMR用ヘッドセット(専用プロセッサ内蔵型など)と、高速で低遅延なネットワーク環境が必須です。スマートフォン等で体験できる簡易的なものとは異なり、高度な空間認識と描写処理を同時に行う専用デバイスが求められます。また、リアルタイム性を維持するために、光ファイバーや5Gといった高速かつ安定した通信インフラも重要となります。
Q5: MRの開発を外部企業に依頼する際、どのようなポイントに注意すべきですか?
MR開発の実績、使用する開発ツールへの習熟度、および業界特有の要件への理解を確認することがポイントです。UnityやUnreal Engineといったゲームエンジン、C#やC++等のプログラミング言語に対応しているかは最低限の条件です。その上で、建築・医療・製造など、自社のビジネスドメインにおけるMR構築に強い会社かどうかを見極める必要があります。
Mixedreality(MR)技術を使った開発を依頼したい時のポイント
- MRソフトウェアを導入して業務効率化へ役立てたい
- MRシステムを活用して新しいビジネスを創出したい
- MRアプリを提供して消費者へ新しいコンテンツを提供したい
上記のように、MRを開発したい動機はさまざまです。もしMRに関する開発を外注する場合は、次のポイントに注意してください。
●MRの開発を得意とする会社へ依頼する
MRの外注を検討する際は、MRの開発を得意とする会社へ依頼するのが理想です。MRだけに限った話ではありませんが、開発企業ごとに得意な案件は異なるため、開発実績をしっかり吟味した上で、開発が得意な会社を絞って依頼を行うべきです。目新しさだけで「MRコンテンツを作ってほしい」というだけでは、開発企業を見つけにくくなり、現実的な成果には結び付きません。ただし、先見の明があり「これからこの業界でこういうMR活用が流行りそう」といった読みがあれば、積極的に依頼をかけてMRコンテンツを導入してみましょう。
●MR開発に必要な言語を使えるか確認する
MR開発にはC#やC++、Rubyといったプログラミング言語が必要です。UnityやUnreal Engineといったコードを触らずに、プログラミングができるツールも活用可能になっています。制作会社を探す際は、どの言語あるいはプラットフォームに対応してMR開発ができるのか見ておく必要があります。これは、言語やプラットフォームによって開発可能なコンテンツの種類および自由度などが変化するからです。
●どの業界のMR作成に強いのか把握しておく
以下のように、どの業界のMR開発の実績が豊富かは企業によって違います。
- 建築業界のMR作成に強い
- 教育業界でのMR構築に強い
- エンタメ業界でのMRサービス提供に強い
MRを外注できる企業は限られているため、ほかのIT系サービスの構築を依頼する際に企業検討を行うよりは、スムーズに選定が進むかもしれません。それでも、ミスマッチであれば意味がないため、良い関係を結ぶためにも自社の業界とマッチングしているか確認しておきましょう。特に、システム開発会社と発注者を仲介してくれるマッチングサイトを利用すると、上記3つの情報が検討しやすくなります。
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