「オーダリングシステム」は、病院情報システム(HIS、Hospital Information System)の1つです。新規に建設されている数多くの病院で導入されています。病院業務のデジタル化により、電子カルテや医事会計システムと同時にオーダリングもデジタル化する動きが増えています。本記事ではオーダリングシステムの導入を考えている方へ、基本機能から費用相場、導入方法までを解説していきます。
目次
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オーダリングシステムとは
オーダリングシステムは、病院情報システム(HIS、Hospital Information System)の1つです。患者の診察などを行う医師や看護師の検査指示や処方指示、リハビリ指示などを電子的に伝えるものです。
従来、こうした医師や看護師からの指示は、手書きの紙での伝達がほとんどでした。しかし、紙での伝達だと時間がかかるうえ、印刷費のコストがかかるなど課題が発生していました。オーダリングシステムでは、これらの指示を電子化することで患者情報の作成時間の短縮、伝達時間の短縮に貢献します。業務効率化が進み、より多くの患者に対応することが可能になります。
また、オーダリングシステムは病院情報システムの1つであるため、電子カルテや医事会計システムなどのほかの病院情報システムとも連携できます。連携することで病院内の情報をデータで管理するようになれば、病院業務のデジタル化にもつながります。
政府が行った「e-Japan戦略II」の効果もあり、オーダリングシステムや電子カルテを合わせた病院情報システムを導入している病院は、2021年には8割を超える調査結果もあります。
オーダリングシステムの基本機能
オーダリングシステムの機能は様々ですが、本章ではよく利用される3つの機能について解説します。
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カレンダー入力
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オーダ入力
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算定費用の伝達
オーダリングシステムの基本機能は、ほかにも「処方オーダ」「注射オーダ」「食事オーダ」「文書作成オーダ」「レジメンオーダ」など数多くの機能が備わっています。医療業務の細かいニーズまで対応ができるものもあるため、概要を押さえておくと良いでしょう。
●カレンダー入力
カレンダー入力とは、現在出されているオーダの情報をカレンダー形式で確認できるものです。状況をリアルタイムに確認し、入力が行える機能です。例えば、注射が必要な患者に対して注射オーダがある場合、何時にどの薬の注射を打つか確認できます。また、実際にカレンダーに沿ってオーダを行った際に、実施内容の入力や患者の状況などをその場で入力することも可能です。直感的な操作でオーダ指示や内容の入力が行えるため、誰でも簡単に利用できるのが特徴です。
●オーダ入力
オーダ入力とは、その名の通り、オーダ指示を入力できる機能です。オーダ指示を行うには、わかりやすい書式やすでに院内で利用している書式を用いて行うことがほとんどです。そのためオーダリングシステムでは、すでに利用している指示伝票をシステム上に反映させ、テンプレート化させることも可能です。
オーダ入力の作業は複雑ではなく、システムによってはドロップダウンリストを作成して、選択する形式を取ることもできます。また、ほかにもラジオボタンで選択することもできるなど、操作を簡略化させるカスタマイズも可能です。
また、オーダ入力を行う画面に患者情報を一緒に表示させることで、医療ミスを防ぐ工夫もされています。手書きでの運用だと時間がかかってしまったり、手入力での運用に慣れてない医師や看護師が戸惑ってしまったりします。診療をスムーズに行うための機能を備えることが重要です。
●算定の可能性のある費用の伝達
診療行為を行う病院において、診療報酬点数の請求は漏れなく行うことが求められます。しかしシステム化していない病院や、担当者の知識不足によって算定漏れを起こしてしまっている病院、医療行為がきちんと事務担当者に伝達されていない病院など、様々な面から算定漏れを起こしている病院が数多くあります。
医療報酬の改定は、薬価は1年に1度、そのほかの報酬などは2年に1度実施されます。担当者は常に最新の情報で対応することが求められます。算定漏れを起こしてしまうと、取り下げ願いを提出して再請求を行わなければならないなど、業務の手間が増えてしまいます。
オーダリングシステムには、こうした算定漏れを防ぐために医師の診察時に、医学管理や在宅指導料を抽出して知らせてくれる機能を備えています。過去の指導内容の参照も行えるため、継続的に適切な指導を行うことが可能です。
オーダリングシステムの普及率
厚生労働省の調査によれば、令和2年(2020年)のオーダリングシステムの普及状況は62%とされています。オーダリングシステムの普及状況は年々上がってきており、平成20年(2008年)は31.7%、平成23年(2011年)は39.3%だったため、約10年で倍の病院が導入した結果になっています。
また、病床規模別に見ると、400床以上の病院では93.1%、200〜399床の病院では82%、病床数が多い病院にはおおむね普及できているという結果になっています。病床数200床未満の病院の普及率は53.3%と、大病院と比較すると導入は進んでいません。しかし、平成20年の普及率が19.8%から比較すると、病床数が少ない病院でも急激に普及が進んでいることが読み取れます。今後は小規模の病院でもさらにオーダリングシステムの普及が広がり、全体の普及率は上がっていくと予想されます。
オーダリングシステムの普及状況は、電子カルテの普及状況よりも広がっています。令和2年の電子カルテシステムの普及状況は57.2%でした。電子カルテシステムの普及状況は平成20年の段階で14.2%だったため、伸び率はオーダリングシステムよりも高いと言えます。電子カルテシステムも今後さらに普及することが予想され、それに伴ってオーダリングシステムの導入を検討する病院が規模を問わず増えてくると考えられます。
オーダリングシステムの費用相場
オーダリングシステムの費用相場は、病院の病床数など規模によって大きく変わってきます。オーダリングシステムのみの導入する病院はほとんどなく、医事会計システムや看護支援システムなどと一緒に導入することが多いです。システムを同時に入れ替えることで、業務の刷新ができます。そのため、オーダリングシステムの導入を考える際は単体としての導入費用だけでなく、病院全体のシステム費用の一つとして検討が必要です。
本章では4つの病院の費用について解説していきます。
【A病院】
特徴:急性期病院。外来機能を分離しており、一般診療所として併設
病床規模:200床〜299床
導入費用:3億7,600万円(5年リース)※ほかのシステムも合わせての導入費用:4億円(5年リース&購入)
A病院では電子カルテシステムに、オーダリングシステム[手術部門システム・看護支援システム・放射線部門システム・栄養部門システム・リハビリ部門システム]の導入、医事会計システムや薬剤システム等との連携などを行いました。各システムとの連携は、病院と一般併設診療所の情報共有を迅速に行うため導入されました。それぞれの環境は独立したものではなく、1つのサーバで管理しているのも特徴です。
【B病院・C病院】
特徴:急性期病院(B病院)/ 亜急性期・慢性期病院(C病院)
病床規模:400~499床(B病院)/ 100~199床(C病院)
導入費用:6億5,000万円(購入)※ほかのシステムも合わせての導入費用:7億4,500万円(購入)
B病院とC病院は同一法人で隣接している病院でした。患者情報のスムーズな共有、また、B病院とC病院の院内情報の共有を図るため、システム導入を行いました。電子カルテシステムとオーダリングシステムを同じベンダーから導入し、薬剤システムや健診システムなどの部門システムを、それぞれ異なるベンダーか導入するマルチベンダー型を採用しています。また、院内共有をスムーズに行うために、それぞれの病院を光ファイバーで接続し、両病院の環境をB病院内に設置されているサーバで管理しています。
【D病院】
特徴:急性期病院
病床規模:500床〜599床
導入費用:約13億円(購入)※ほかのシステムも合わせての導入費用:14億1,000万円(購入&リース)
D病院では電子カルテシステムとオーダリングシステムの導入のほかに、調剤部門システムや病理部門システム、物流管理システムなど各システムとの連携を行いました。連携にはマルチベンダー型が採用されています。情報の共有はもちろんのこと、データを活用することで診療の質の向上も目指しています。病床数が500床以上という大規模な病院のため、導入費用も高額になっています。
オーダリングシステムの導入方法
オーダリングシステムの導入方法には、以下の3つの方法が挙げられます。
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パッケージ型
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オンプレミス型
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スクラッチ型
それぞれの導入方法について、解説していきます。
●パッケージ型
パッケージ型とは、すでに標準的な機能が備わっているシステムをそのまま利用するものです。パッケージ型のオーダリングシステムは、オンプレミス型、クラウド型それぞれでリリースされているので、自社の運用方法に沿って導入することが可能です。また、パッケージ型はゼロから開発するスクラッチ開発とは異なり、サーバにシステムを導入するだけなので、すぐに運用が開始できる強みがあります。導入費用のコストを抑えられるのもメリットです。
一方、どの病院にでも対応ができるように作られた汎用型のため、運営するうえで必要な機能が足りていない、操作性が不便などのデメリットがあります。
●オンプレミス型
オンプレミス型とは、病院内にサーバを設置し院内システムを構築して、運用を行っていく方法です。オンプレミス型の特徴は、院内ネットワークが構築されることによりデータ処理などが非常にスムーズになる点です。また、外部環境と切り離されるため、セキュリティリスクの低減にもつながります。パッケージ型と異なり、病院の運用方法に合わせてカスタマイズが行える点は魅力的です。
導入時の初期費用はシステム構築や、サーバ導入などが発生するため、高めになってしまいます。必要な機能や規模感を認識したうえで、導入作業を進めることが必要です。
●スクラッチ開発
スクラッチ開発とは、ゼロから独自のシステムを開発する方法です。病院独自の運用形態を行っているなどの場合、パッケージ型などでは対応できないケースがあります。その場合はスクラッチ開発を行うことで、病院の希望に沿ったシステムを開発して運用することが可能です。
ただし、スクラッチ開発の場合は、開発期間や導入までの期間などが長期間に渡ることがほとんどです。1年以上かけて導入に至るケースが多いので、長期的な計画が求められます。コストも、パッケージ型やオンプレミス型と比較すると高額です。費用対効果を見極めたうえで選択することが大切です。
●オーダリングシステムの開発・構築・改修・導入の違い
それぞれの考え方は以下の通りです。
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開発…プログラムの設計から完成したシステムのテストまでの作業
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構築…テスト作業後にシステム運用できるように組み立てていく作業
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改修…現状のシステムより使いやすいシステムにする作業
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導入…システムを導入する作業
「開発」とはその名の通り、病院に導入するオーダリングシステムを開発することです。また「構築」とは、オーダリングシステムにとどまらず、周りのシステムとの連携などシステム構築を行うことを指します。「改修」は既存でオーダリングシステムを導入している場合に、より現状に合わせたシステムへ改善していくことです。これらは捉え方の違いになりますが、オーダリングシステムを導入しようとする場合は、開発や構築の比率が大きくなります。
まとめ
オーダリングシステムを導入する病院は、病床数にかかわらず普及率も高まり、今後さらに増えていくと考えられています。導入を検討する病院も多いことでしょう。
導入方法は3種類あり、どの方法にも特徴があります。普及を焦って病院に合っていないオーダリングシステムを導入してしまっては本末転倒です。事前に必要な機能やほかのシステムとの連携を精査したうえで、選択することが大切でしょう。
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